著者
竹原 卓真 栗林 克匡
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.123, 2007

日常生活では、高頻度で電子メールが送受信されている。電子メールには、顔文字や絵文字など、エモティコンと呼ばれるオブジェクトがしばしば付加されるが、本研究では、それらエモティコンを付加した場合に、電子メールの感情情報がどのように認識されるのかを検証した。その結果、喜び感情については先行研究と同様に、顔文字を付加しない条件よりも、付加した条件のほうが喜び感情の認知が促進された。また、悲しみ、怒り、恐怖、嫌悪の4つのネガティブ感情を表現する電子メールに、対応する顔文字を付加しても、当該感情の認知が促進されることはなかった。中性感情と位置付けられる驚きについては、喜び感情とほぼ同様の結果が示された。他方、感情表出している静止した絵文字を付加した場合、顔文字よりも視覚的情報量が多いため、当初は感情認知が促進されると推測したが、結果的に感情認知が促進される感情と、促進されない感情が存在した。
著者
久野 雅樹 青山 毅
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.120, 2009

Google Earth,Google Street View を用いて,国内外8都市(新宿,渋谷,銀座,札幌,大阪,パリ,ニューヨーク,ブリスベーン)の景観画像960点を収集した。この画像中の建築物を対象に,xy色度図を用いて地域色の分析を行った。その結果,全体として低彩度の無彩色が多いことが確認できた。また日本の各都市は黄赤系統に偏りがあり,外国の各都市は黄赤系統と紫青系統に偏りが認められた。得られた各都市の色彩の特徴は既存の知見と整合的であり,また多数でかつ多様なサンプルを対象とした分析が容易に行えることも確認でき,景観イメージの研究に Google のサービスが有用であることが示された。
著者
三雲 真理子 高橋 美帆
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.94, 2011

本研究では、多種多様のミネラルウォーターが商品化されている近年の傾向を踏まえ、市場で有名なミネラルウォーターのパッケージラベルが中身の味の評価に影響を及ぼすかを調べることを目的として、20代と60代の対象者に対して実験を行った。実験で使用したペットボトルは、市販の「天然水」、「クリスタル」および本来のラベルの代わりに「水道水」のラベルを貼った3本であり、中身はいずれも水道水であり、ラベルによるプラシーボ効果の検証をおこなった。その結果、20代も60代も「水道水」ラベルの水のほうが市販の他の2本のペットボトルの水より臭みを感じ、逆に市販の2本のペットボトルの水のほうが「水道水」ラベルの水より甘みを感じた。また、20代に比べて60代はプラシーボ効果が大きく、ラベルによる暗示効果が得られた。
著者
重森 雅嘉 佐藤 文紀 増田 貴之
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.48-48, 2011

一般的に多くの人に当てはまる事柄であっても、心理検査や占いの結果として提示すると、自分に特別な内容として受け取られやすい(バーナム効果)。この効果を注意や警告を強化するものとして用いることができれば、安全や教育においての有効な活用が期待できる。本研究では日常的な展望記憶課題(一連の実験セッションの最後にID札を返却する課題)を用い、展望記憶エラーに対する警告をおみくじのように被験者が選択することにより、同様の内容を実験者から与えられるよりも警告の効果が高まることを明らかにした。
著者
高橋 翠
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.100, 2011

顔の魅力に対する進化的アプローチでは、ヒトは自身の繁殖に有利となる異性個体を見抜く適応上の課題として、望ましさに寄与する特性のシグナルを敏感に察知し、魅力という形で検出していく心的機能を備えていると仮定される。しかしながら、これまで「女らしい」印象を与える女性顔が常に高い魅力評価を受ける一方、男性顔における「男らしさ」は、健康や身体的強靭さといった配偶者として望ましい特性のシグナルであるにも関わらず、必ずしも魅力的と評価されないという。本研究では、「男らしい」印象を与えるような男性顔は、それが無表情時に知覚者に怒りが認知されることで覚知される脅威性が魅力評価を抑制していることを示した高橋(2010)の知見を拡張し、表情と視線方向の異なる条件における「男らしさ」と魅力の関係について検討を加えた。その結果、比較的笑顔や逸視といった脅威性が覚知されにくい条件においては、「男らしさ」が魅力評価に反映されるようになる可能性が示唆された。
著者
安田 晶子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.21-21, 2009

多くの人が経験する音楽聴取による感動の生起メカニズムの一端を明らかにするため,以前の研究では,感動と身体反応の関係性を検討した。その結果,音楽聴取による感動と複数の身体反応が複合的に関係していることが示唆された(安田他, 2008)。そこで本研究では,感動と関連する身体反応が,どのような音響特性によって喚起されるのかを検討した。特に本研究では,数ある音響特性の中から音量の変化傾向に着目し,音量の変化傾向が感動と関連の深い身体反応に及ぼす影響について検討することを目的とした。聴取実験の結果,鳥肌が立つ,胸が締め付けられる,背筋がぞくぞくする,興奮するといった身体反応は,音量が増大傾向(クレッシェンド)の場合に生起しやすいことが示唆された。
著者
高山 智行
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.92-92, 2011

大喜利に対して感知されるユーモアのタイプが、その時の生理反応(脳波)に及ぼす影響を検討した。まず,予備実験において,36名の大学生が30の大喜利作品を,遊戯的ユーモアあるいは攻撃的ユーモアを感知する程度について評定し,それらの中から,どちらか一方のユーモア感知度が相対的に高い作品を3作品ずつ選別した。本実験では,それらタイプ別各3作品を刺激材料として,18名の大学生を対象に,大喜利閲覧前後での脳波を計測するとともに,大喜利作品のユーモア感知度の評価を改めて行った。その結果,両タイプの材料は「おかしさ」の評価自体には違いが認められなかったが,遊戯的ユーモアの感知度が高い作品に対しては,広範囲の測定部位でα波,β波ともに有意に増加し,攻撃的ユーモアの感知度が高い作品に対しては,主に側頭部位でβ波が有意に増加した。遊戯的ユーモアはリラックスと同時に脳活動の広範な活性化をもたらすのかもしれない。
著者
Na Chen Katsumi Watanabe Tatsu Kobayakawa Makoto Wada
出版者
The Japanese Society for Cognitive Psychology
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
pp.91, 2022 (Released:2022-04-20)

スイカは、世界で最も人気のある果物の一つです。日本では、スイカの自然な甘さを引き立てるために、塩を振って食べる人がいます。しかし、この食行動に関連する要因については、ほとんど知られていません。ここでは、スイカに塩のヘドニック反応、味の好み、および自閉傾向との関係を調べました。参加者は90名で,オンラインアンケートを実施した。その結果、スイカに塩のヘドニック反応は、苦味の好みと負の相関があり、苦味が苦手な参加者ほど、スイカに塩を美味しく食べる傾向があった。これらの結果は、塩が苦味を抑制する効果があることを示している。さらに、スイカに塩のヘドニック評価や基本味の好み評価には、自閉傾向の影響は見られなかった。このように、自閉傾向は、食行動や味の嗜好にほとんど影響しない可能性があると示している。
著者
Saito H Lin C. Saito G. Gyoba G. Itukushima Y.
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

対面する虚偽報告者(Liar)と虚偽検出者(Detector)の脳活動の同期(coupling)現象を、近赤外分光法(NIRS)を用いて検討した。Liarは、単独で視覚呈示された単文を「音読」するか、あるいは単文内容を右手の「動作」で表現することを求められ、次に実施行動(音読、動作)の再認検査を受けた。最後にLiarは対面状況下で、各単文に付与される命令語(真実・虚偽)に応じた実施行動をキー押し判断し、直後に口頭で「音読」または「動作」しましたと報告した。例えば、ある単文に「動作」を行い、「虚偽」命令を受けると、Liarは「音読しました」と虚偽を報告した。DetectorはLiarの報告に対する真偽判断の直後に各判断の正誤を知らされた。Detectorの虚偽検出(正答)率は約50%であった。両者のNIRSデータは、Detectorの正答反応試行でのみ、右IFGで正の脳間相関を示した。
著者
尾田 政臣
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.148, 2015

顔の選好を表す言葉として「美しさ」「魅力」「好ましさ」が使われている。この三つの評価項目が異なる意味として使われているのか、あるいはほとんど同義として使われているかについてはあまり調べられていない。本稿では顔のイメージを評価させる方法で、12人の有名人の顔について19人の被験者にそれぞれ3項目の評価をさせた。その結果を評定の平均値を用いて分析をすると、美人度と魅力度の間には差が無い結果となった。一方、被験者ごとに3項目間の評定値に違いが生じる率を求めた。その結果、最大でも4割程度の一致率であった。3つの評価項目は異なる意味として使い分けられていることが明らかになった。また、相関係数で比較すると魅力と好みの評価項目間の相関が他のものより高いことが明らかになった。
著者
向居 暁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.143, 2015

「運命の出会い」という言葉は日常生活でよく聞く言葉である。本研究では、女子大学生を調査対象にし、初対面の異性と出会う仮想場面を設定し、その人物の外見的魅力、および、出会い状況の偶然性を操作することで、「運命の出会い」と感じる傾向に差異がみられるのかについて検討した。その結果、1つの仮想場面のみであるが、外見的魅力の高い人ほど、その出会いが運命だと感じられ、内面的魅力が高く、好意的に感じられることがわかった。また、外見的魅力が低い人において、偶然性は、運命度を高めないまでも、内面的魅力と好意度を上昇させることがわかった。
著者
原田 悦子 鈴木 航輔 須藤 智
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

視覚的探索は日常的にもしばしば発生する活動であるが,同一のダミー項目が複数ある中からターゲットを見出す実験室課題とは異なり,日常では,個々別々のダミー項目の中から一つのターゲットを探し出す課題である.そこで本研究では,「本棚から特定タイトルの本を選び出す」課題を作成し,その視覚探索過程において,経験的手がかり(ターゲット発生確率の偏り)もしくは意味的手がかり(カテゴリーによる位置情報の付加)を加えた場合の効果を,手がかりに合致する優先条件/合致しない非優先条件の比較から検討することを目的として,時間圧の付加ならびに加齢効果を分析した.その結果,若年成人では両手がかりとも通常条件,時間圧下条件のいずれでも有効な促進効果を示したが,高齢者の時間圧下では,意味的手がかりにおいて「非優先領域への探索」を抑制することが示された.問題解決場面における手がかり利用と目標維持の関係性について考察する.
著者
今井 史 小川 健二
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>物の動きを描く動的視覚イメージには,身体運動の結果を心的に予測するための運動シミュレーションが関わるといわれている。しかし,たとえば機械を操作するとボールが飛ぶという身体的要素の少ない内容や,ボールが空の彼方まで飛ぶという身体運動では実現できない内容のイメージにも運動シミュレーションが関わるかは,定かではない。そこで本研究では,運動シミュレーションの妨害課題の有無を参加者間要因,イメージ内容の身体的要素の多寡,身体運動による実現可能性の二つを参加者内要因として参加者に飛翔するボールをイメージさせ,その鮮明性を調べた。実験の結果,運動シミュレーションの妨害との交互作用は身体的要素の多寡についてのみ検出され,妨害のない群では身体的要素の多い内容のイメージがより鮮明化したが,妨害のある群ではその効果はなかった。これは動的視覚イメージの身体的要素に運動シミュレーションが関わっていることを示唆する。</p>
著者
李 岩
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>本研究では,二つのタイプの漢字四文字表記語(四字成語と四字慣用語)を認識する際の区別,また, 四字熟語を構成する前半部分と漢字四文字表記語全体の関連を,プライミング法を用いた語彙判断課題を使用し,異なる前半部分タイプ「独立語(四字成語),独立語(四字慣用語),結合語(四字成語),統制語」ごとに検討した。その結果,前半部分タイプの効果が有意になり,有意な促進効果が確認された。二つのタイプの四字熟語の認識過程が違うこと,また,四字成語と比べて,四字慣用語を構成する二つ部分の間のつながりがより弱く,熟語全体より部分的の方に意識することが分かった。</p>
著者
井隼 経子 中村 知靖
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.134, 2010

レジリエンスとは,我々が精神的な困難に対してうまく対処するのに必要な能力である。本研究では,井隼・中村 (2008) によって作成されたレジリエンスの四側面を測定する尺度に項目反応理論を適用し,識別力と境界特性値の項目パラメタから項目の詳細な検討を試みた。その結果,全体的な傾向として,項目の境界特性値に関しては中・低程度のものが多く,識別力に関しては高い項目が多かった。これらの結果に基づき,我々はレジリエンスの四側面における項目レベルの特徴について議論した。
著者
京屋 郁子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.86, 2007

本研究は、2カテゴリからなる架空の動物の線画を用い、ルールと事例が同時にカテゴリ判断に使用されるか否かを検証した。それぞれの事例にカテゴリ判断の手がかりとはならない特徴を付随させ、その特徴の影響を分析した結果、カテゴリ判断にはカテゴリ判断の手がかりとはならない特徴は影響を与えず、ルールが使用されていたことが示された。一方、カテゴリ判断に対する確信度にはカテゴリ判断の手がかりとはならない特徴が影響を与え、当該カテゴリにおける中心的な事例と同じカテゴリ判断の手がかりとはならない特徴をもつ事例は、同じ特徴をもたない事例よりも確信度が高く、中心的事例そのものが使用されていたことが示された。これらの結果より、カテゴリにおいてルールと事例が同時に存在し、カテゴリ化に際しては両者が使用されることが示された。
著者
中山 友瑛 片山 正純
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>身体意識の成立には,意図した運動,運動指令の遠心性コピーから予測した運動,感覚情報のそれぞれの比較が重要である.この観点から,身体所有感の成立に必要となる最小限の身体の視覚情報を明らかにするために,仮想空間内に手の指先・関節位置に点を表示する光点提示および骨格提示に対する身体意識(運動主体感と身体所有感)を調査した.各提示条件において手指の運動課題を3セット繰り返し,セット毎に身体意識のアンケート調査を行った.この結果,運動主体感は両条件における全てのセットで高い評定値となった.一方,身体所有感を評定値の高いグループと低いグループに分けて評価した結果,高いグループにおいて骨格条件では全てのセットで高い評定値となった.しかし,光点条件ではセット毎に評定値が徐々に高くなり,第3セット後には骨格条件と同程度に高くなった.以上より,手の光点提示に対しても身体所有感が成立することを明らかにした.</p>
著者
木原 健 武田 裕司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

怒りを感じていても作り笑いを浮かべるなど、我々は頻繁に本当の感情とは異なる表情を作っている。また、そのような偽りの表情を本当の表情と区別することもできる。しかし、その区別にどのような視覚情報を利用しているかは不明である。表情の認識には空間周波数情報が重要であることから、それが偽り表情の認識にも関与している可能性がある。これを検討するため、低・高空間周波数(LSF・HSF)情報で構成された顔画像の表情の強さを変化させて、教示された表情の作成を求める実験を行った。表情の強さは、明確な笑顔(+10)から明確な怒り顔(-10)まで21段階に変化できた。教示された表情は、本当の笑顔、本当の怒り顔、怒りを偽った笑顔、笑いを偽った怒り顔の4種類があった。実験の結果、偽りの笑顔はLSFが中立表情、HSFが弱い笑顔で構成されることが分かった。これは、LSFとHSFの表情の違いを利用して偽りの笑顔を認識していることを示唆する。
著者
吉村 直人 山田 祐樹
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>我々が情景を眺め,それを思い出そうとする時,実際には眺めていなかった景色の範囲までも眺めていたかのように想起されることがある。この現象は「境界拡張」と呼ばれ,空間的連続性を有する外界に適応するための一種の記憶エラーとされている。この境界拡張が生じる要因の一つとして情景の奥行き感の想起が重要であると言われている。また境界拡張は情景の記銘の時点で生じている可能性が報告されている。これらの報告から,記名時の奥行き感覚が境界拡張に影響を及ぼす可能性が考えられる。そこで本研究では観察者の奥行き感覚が境界拡張にどのような影響を及ぼすのかを検討する。上体を逆転させて股の間から観察すると奥行き感が不明瞭になると言われている。そこで,本研究は,正立状態あるいは股のぞき状態で記名を行い,その後の境界拡張の程度を比較する。上体の逆転によって奥行き感が損なわれた場合,境界拡張は弱まることが予測される。</p>