著者
坂本 薫 森井 沙衣子 井崎 栞奈 小川 麻衣 白杉(片岡) 直子 鈴木 道隆 岸原 士郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本の市販グラニュ糖やザラメ糖のスクロース純度は,99.9%以上と大変高くスクロース結晶とみなすことができるため,製品間で品質に差はないと考えられてきた。しかし,グラニュ糖の融点にはメーカーによって異なるものがあり,融点の異なるグラニュ糖は加熱熔融状況が異なり,示差走査熱量分析(DSC 分析)において異なる波形を示すこと,さらに,スクロース結晶を粉砕することにより,その加熱特性が変化することをすでに明らかにした。焼き菓子の中には,マカロンや焼きメレンゲなど粉砂糖の使用が通常とされるものがある。そこで,グラニュ糖と粉砂糖を使用して焼きメレンゲを調製し,焼き菓子における砂糖の粒度の違いによる影響を検討した。<br><br>【方法】3社のグラニュ糖(W,X,Z)およびそれぞれを粉砕した粉砂糖(Wp,Xp,Zp)を用いた。砂糖のみについて,焼きメレンゲと同条件で加熱し,色差測定,HPLC分析を行った。また,焼きメレンゲを調製し,外観観察および重量減少率測定,密度測定,色差測定,破断強度測定を行った。<br><br>【結果】砂糖のみの加熱では,グラニュ糖のほうが色づきやすく,粉砂糖のほうが着色の度合いは小さかった。また,加熱により,W,Xでは顕著に還元糖が生成していた。砂糖のみと焼メレンゲでは,加熱後の色づき方の逆転現象が認められ,粉砂糖メレンゲのほうが色が濃い結果となった。外観では,粉砂糖メレンゲでは表面はなめらかであったが表面が硬い傾向が認められ,表面に亀裂や気泡が見られた。グラニュ糖メレンゲは,色が白くきめが粗かった。本研究により,砂糖の粒度の違いにより,焼き上がりの外観,色調やきめ,テクスチャーが大きく左右されることが明らかとなった。
著者
島村 知歩 太田 暁子 喜多野 宣子 志垣 瞳 冨岡 典子 三浦 さつき
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】近年、伝統的な行事食が親から子へ伝承されない傾向にあるといわれる中、奈良県における年中行事の認知と経験、それに関連する行事食の状況について、学生世代、親世代、祖父母世代の三世代間で比較を行い、世代間での伝承状況についての現状を把握することを目的とした。 <br>【方法】平成21~23年度日本調理科学会特別研究で実施した「調理文化の地域性と調理科学:行事食と儀礼食」の全国統一様式の調査票により、大学生およびその家族にアンケート調査を実施した。そのうち、奈良県内で10年以上居住経験のある子世代(10・20歳代)150名と親世代(40・50歳代)114名、祖父母世代(60歳以上)32名について、調査項目17行事の年中行事の認知度、経験、行事食の経験、調理状況について検討を行った。<br> 【結果】17行事中、11行事はいずれの世代も認知度85%以上と高かったが、春分・秋分の日、春・秋祭り、重陽の節句の認知度は低く、世代間で違いがあった。80%以上が経験している行事は、祖父母10行事、親9行事、子は正月、クリスマス、大晦日、節分、上巳の5行事と少なかった。祖父母と親の行事の経験率は似ているが、重陽の節句と春祭りの経験は祖父母(21.9%・37.5%)親(9.6%・14.9%)子(5.3%・15.3%)と親は子に近かった。行事食では3世代共に90%以上が経験している料理は正月の雑煮・黒豆・かまぼこ、クリスマスケーキと年越しそばであった。行事食も祖父母と親の喫食経験は似ているが節分の炒り豆、月見だんご、冬至の南瓜は世代間に差がみられた。春祭り・秋祭りの行事食は祖父母でも約30%と経験は低く、親・子は約10%とさらに低かった。
著者
竹下 温子 勝又 真里奈 高林 由佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】昨今、食育は日本の教育の中で重要視され、地産地消によって食文化を守ることも重要な役割とされている。その中で食育の一環として、鹿児島の管理栄養士らが地産地消と地場の活性をテーマに「川内きびなご鮨」を考案した。その製造工程にきびなごの昆布締めがあり、保存期間の違いによってうまみが増し、爽やかな酸味が生まれるという。 我々はこの味の変化について保存期間の違いによる微生物の動態変化、および微生物の関与が人の味覚に影響を及ぼすか、遊離アミノ酸量を押さえながら比較・検討することを目的とした。【方法】保存法の異なった4種のサンプルを用い、菌数測定に、標準寒天培地(T)およびGYP白亜寒天培地(G)を用いた。全サンプル200の菌について高分子DNAを抽出(Benzyl chloride法)、グループ分け(RAPD法)、16S rDNAのPCR増幅、塩基配列決定後DDBJの相同検索にて同定した。遊離アミノ酸測定はOPAプレラベル法を用いた。【結果】菌数はT・G培地ともに冷蔵保存期間が長いものほど多かった。次に22グループに分かれた代表菌株はすべて<i>Stapylococcus</i>属と100%の相同性を示した。遊離アミノ酸の総量は保存期間の長い順で増加していた。この結果は菌数増加量と一致しなかった。官能試験の総合評価は遊離アミノ酸の増加量に比例せず、最も遊離アミノ酸量が多かったサンプルについては、熟成からさらに腐敗に進んでいる可能性があると考えられた。その他、微生物が関わるとされている酸味・香気は嗜好調査との相関は見られなかったが、菌数と総合評価の傾向が近く、やはり何らかの形で美味しさに影響を与えていると考えられた。
著者
間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子 小出 あつみ 山内 知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】愛知県は中京圏の中心である名古屋市を含む尾張と、八丁味噌で知られる三河の2地域に大別できる。どちらの地域も長年にわたり独特で豊かな食文化を育くんできた。本研究では両地域における雑煮に関する摂取状況調査を実施して比較検討した。【方法】調査の対象はN女子大学の学生401名(21歳)である。方法は質問数15問の自記式質問紙を使用して留め置き法で行い、配布3週間後に回収した。期間はH23年12月31日~H24年1月3日で、回収率は92%であった。得られたデータはエクセルで集計してχ⊃2;検定を行い、統計的有意水準を5%で示した。【結果】雑煮の摂取頻度では、「元旦に食べる」に地域差はなかったが、二日目と三日目では、尾張地域(OA)が三河地域(MA)より多く食べていた。元旦の具ではOAは餅菜と小松菜、蒲鉾と鳴門、鰹節、青菜類の順で多く、MAは白菜、蒲鉾と鳴門、餅菜と小松菜、鶏肉の順で多かった。この内、餅菜と小松菜、白菜、人参、鶏肉、豆腐と油揚げの摂取経験の地域間に有意差を認めた。正月二日および三日の具は元旦より具の種類が減る傾向を示した。だしの種類のOAでは鰹節だしが多く、MAでは鰹節だしと同程度にだしの素が使われており、だしの素の使用頻度に有意差を認めた。味付けは両地域ともにすましの味付けが約90%であったが、MAでは味噌味の割合がOAより高かった。餅では角餅が両地域で80%摂取されており、加熱法では共に「煮る」が最も多かったが、OAでは「焼く」と「焼いた後煮る」の両方を用いる割合が高かった。以上の結果から、尾張と三河地域の雑煮の摂取経験、味付け、餅の形に地域差を認めなかったが、具とだしの種類で有意な地域差を認めた。
著者
石井 克枝 竹之内 美香
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】わが国においては飯を主食として位置付けてきた。米の摂取量は1962(S37)年をピークに減少している。そこで本研究では大学生を対象に食意識と実態を把握し、現代の食生活において米飯を主食としてどのようにとらえているのかを明らかにすることを目的とした。【方法】1)主食に注目した食事実態調査は千葉大学の学生19名を対象として、連続した7日間の食事の写真を対象とした。2)千葉大学の学生100名を対象とし、米の摂取に関する意識及び実態、複数の主食からなる食事に関するアンケート調査を行った。【結果】7日間の食事調査(19名)結果から、主食は米飯、パン類、麺類の順に多かった。朝食ではパン、昼食では、米飯、夕食では、米飯が多かった。一食あたりの品数を主食別にみると、米飯食では平均3.46品と最も多く、パン食では2.33品、麺食では1.57品であった。米飯の摂取量は、一食当たりの平均は160.3gであった。一週間の米飯摂取量はおよそ600~2675gと、個人差が大きくみられた。米飯摂取のアンケート調査結果では、80.0%の者が毎日米飯を食べたいと回答し、86.0%の者が主食として最もよく食べるもの、75.0%の者が主食として米飯を最も好むと回答した。複数の主食の組み合わせ15種類について、摂食の実態と主食意識の結果では、多くの者が食べると回答したラーメンとチャーハン等は外食の割合が高く、複数の主食からなる食事は外食を通して普及、定着していると考えられた。複数の主食の食事をよく食べる者は主食を副食として捉えるなど、主食に対する意識が低いと考えられた。
著者
菊地 和美 菅原 久美子 木下 教子 酒向 史代 坂本 恵 高橋 セツ子 土屋 律子 芳賀 みづえ 藤本 真奈美 村上 知子 村田 まり子 山口 敦子 山塙 圭子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】年中行事や通過儀礼を行うハレの日には、食事も日常とは区別され、各家庭や地域で独自の習慣がみられている。食生活が多様化する中、地域における年中行事や伝統食を大切にし、次の世代への継承にむけた取り組みが推進されるようになってきた。そこで、本研究は北海道の行事食と儀礼食について、親子間(学生とその親)からみた認知状況や摂食状況などの実態把握を行い、地域性を明らかにすることを目的として検討した。【方法】調査は日本調理科学会特別研究(平成21~23年度)に基づき、北海道に居住する親181名と子181名(計362名)を対象として、調査時期は平成21年12月~22年8月に実施した。データは単純集計および親子間によってクロス集計を行い、χ2検定により分析した。【結果】親子間で認知・経験が一致する回答は、行事食が74.0%、儀礼食は49.8%であった。行事食と儀礼食を認知している割合は親が子よりも多く、親子間で有意差がみられたのは盂蘭盆、お七夜、百日祝い、初誕生、厄払いであった(p<0.01)。行事食と儀礼食の経験がある割合も親が子よりも多く、有意差がみられたのは春分の日、端午の節句、盂蘭盆、土用の丑、お月見、秋分の日、出産祝い、お七夜、百日祝い、初誕生、成人式、結納、婚礼、厄払い、長寿であった(p<0.01)。北海道の正月料理のうち、親子間で「現在、家庭で作る」という回答が一致していたのは、たこ刺身が7組(親子間一致なし12組)、くじら汁が2組(親子間一致なし3組)、いずしが2組(親子間一致なし2組)であった。今後はさらに、北海道における特徴的な行事食・儀礼食の親子間による伝承を検討する必要性が示唆された。
著者
中島 君恵 橋爪 博幸 田中 景子 関﨑 悦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】昨年度の本学会において生活科学科として「環境目的」を掲げた2つのプロジェクト「ダイズプロジェクト」と「トマトプロジェクト」の活動及び食と農についてのライフスタイルアンケート調査を報告した。今回は平成23年度に継続して行われた「ダイズプロジェクト」と「トマトプロジェクト」の2年間にわたる活動報告と、この活動に加わった栄養士養成課程学生40名を対象にしてアンケート調査を実施したので報告する。【方法】1.平成22年度から継続して学内で作られた腐葉土を野菜作りに利用し有機肥料の入った土壌にダイズやトマトを作付けする「ダイズプロジェクト」と「トマトプロジェクト」を行う。特にダイズについては1年生はダイズを春蒔きして7月に枝豆として収穫したのち学内実習の授業において「ずんだ」を作り、白玉団子ととともに試食した。2年生については前年度の秋に収穫した大豆を冬に味噌に加工して、2年生の秋に調理実習でシルバーランチ(みどり市社会福祉協議会との連携事業)の授業において調味料として用いた。2.「ダイズプロジェクト」と「トマトプロジェクト」に2年間関わった栄養士養成課程学生40名に対して食と農に関するアンケート調査を実施した。【結果】食と農に関するアンケート調査結果から、2年間の野菜づくりプロジェクトを中心とした農業について実践的に学ぶ体験から農業や農作物への高まり、卒業後も継続したいと考える学生が80%を超えていた。今後、これらの活動を継続することにより、食教育、環境教育、食農教育をさらに連携させたプログラムづくりに発展させていきたいと考える。
著者
木村 久江 大村 省吾
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】日本の伝統的な和食文化である正月料理が現在の食専攻学生のなかでどのように根付いているのかを調査することにより、調理教育の参考に資することを目的とする。【方法】西南女学院短大食専攻84名を調査対象とした。参考として大学3、短期大学1、専門学校3、計7校の食栄養・食生活指導専攻学生560名を比較対象とした。(地域別には、仙台・埼玉・長野・奈良・北九州各1、東京3校)「年末および年始の料理内容」、「正月料理への参画状況」、「おせち料理への関心」「誰から教わり誰と食したか」などの質問内容についてアンケート調査を行った。【結果】当学院生では、年末年始の伝統的な食材である蕎麦、餅(雑煮)を食したと回答した者がそれぞれ62%、60%であった。おせち料理を食べたものは85%(和風67%)と伝統的な食習慣が継承されており、調査全大学の平均79%(和風65%)をやや上回った。おせち料理作りに参画したと答えた者は40%いたが、参画は部分的との回答が9割を占めた。71%がおせち料理に関心のあると回答し、関心のある献立としては、栗きんとん、数の子、黒豆が上位3つを占めた。家族から教わった者46%に対して、39%が授業などからと答え、世代間の伝承が少なくなってきていることが分かった。
著者
片平 理子 池田 とく恵 橘 ゆかり
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目 的】 管理栄養士養成教育内容が高度化する中で、食事の基本について学ぶ調理学等の科目の割り当て時間は限られる現状にある。本研究では、食事作りの理解のために「調理を習慣化させる」ことを最終目標として、「野菜を切る操作を含む料理を作る」という条件のみを設定し、学生が自宅で行う実技課題を課した。昨年度の本大会では、課題が学生の食生活に対する関心、調理に対する意欲や自己効力感に及ぼした影響について報告した。今回は、課題実施内容の傾向を分析し、課題の妥当性、難易度、実行可能性を考察し、調理初学者に対する効果的な指導方法を検討した。【方法】管理栄養士養成課程1年生前期の開講科目「調理実習」において、自宅で「野菜を切る操作」を含む調理をする課題を出した。課題は週に1度のペースで前期授業終了までに合計5回課した。全課題終了後に各課題後に提出した料理のレシピを元に、実施内容の詳細と感想・意見をまとめ、ファイル書式で提出させた。提出物から課題の実施状況と課題に対する学生のとらえ方を整理した。【結果】学生が一度の課題に費やした時間は、「30分以内~2時間以上」(頻度が高かったのは、30分~1時間)、使用した野菜は「1~8種類」(同、2~4種類)、行った切り方の種類は「1~6種類」(同、1~3種類)の範囲であった。一方、作った料理は「家の定番」の中から「食べたい料理」を選択する頻度が高く、調理法別では、炒め物・汁物が高く、蒸し物・揚げ物は低い傾向があり、カレー、丼物のような主食・主菜一体型の料理の調理頻度が高かった。調理習慣の無い学生が調理行動を学習するきっかけを提供するという点では、意義のある課題であったと考えられる。調理を学び始めた学生に、効果的に食材や調理法等の知識を広げさせ、様々な技術を習得させるためには、課題各回の目標を設定し、系統的に学ぶ流れを提示する必要があることが示唆された。
著者
山田 直史 太田 晴子 岡本 紗季 小橋 華子 榊原 紗稀 秋山 史圭 植田 絵莉奈 郷田 真佑 正 千尋 妹尾 莉沙 中村 宜督
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】食品に含まれる抗酸化活性が注目される中、食品の相互作用による抗酸化活性の変化について研究を進めてきた。本研究では、キュウリによるトマトの抗酸化活性の低下作用を、抗酸化活性、ビタミンC含有量およびポリフェノール含有量の測定から解明を試みた。また、サラダの盛りつけを意識して接触状態での影響についても検討を行った。【方法】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁し、抗酸化活性をDPPHラジカル捕捉活性法で、ビタミンC含有量をヒドラジン法で、ポリフェノール含有量をフォーリンチオカルト法で測定した。また、輪切りにしたキュウリをトマトの断面に接触させたのちに、トマトの抗酸化活性を測定した。【結果】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁させることで、抗酸化活性およびポリフェノール含有量が、総和から期待される値よりも小さくなった。一方で、総ビタミンC含有量はキュウリとトマトの総和から期待される値とほぼ等しくなったが、酸化型ビタミンCの割合が大幅に増加していた。この結果から、キュウリに含まれるアスコルビン酸オキシダーゼがトマトの抗酸化活性の低下に大きく関与すると考えられた。また、トマトとキュウリを5分間の接触によって、トマトの抗酸化活性はわずかながら低下した。これらの結果から、キュウリにってトマトのアスコルビン酸の酸化が敏速に起こることが示唆された。
著者
岡本 洋子 吉田 惠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】日本のだしを中心とした薄味の和食には,健康維持とおいしさが両立できる世界でも希な食事体系である。さらに,和風だしを用いた食事を実践することは,生活習慣病のリスクを低減する一要因となると考えられている。そこで,本研究では和風だしの代表的素材である,かつお節とコンブを用いただしについて好ましく受容できることが重要と考え,それらの天然素材だしならびに風味調味料だしを用いた調理食品を調製し,識別ならびに嗜好性を調べることを目的とした。【方法】天然だしおよび風味だしを用いた調理食品の識別と嗜好性については,官能評価法(3点識別試験法,2点嗜好試験法,3点嗜好試験法)によって行った。評価者は年齢18~20歳の健康な女子学生27~32名である。試料として,だしを用いた調理食品7種(主食:醤油味飯,汁かけうどん,主菜・副菜:高野豆腐煮物,だし巻卵,サトイモの煮物,ゴボウの煮物,汁物:味噌汁)を調製した。データは,有意差の検定(2項検定)により解析した。【結果】① 7種のだしを用いた調理食品では,天然だし食品と風味だし食品の「おいしさ」が異なることを有意に識別できた(p<0.01, p<0.05 )。 ② 7種のだしを用いた調理食品では,天然だし食品と風味だし食品の嗜好性に有意差はみられなかった。しかしながら,7種のうち6種において,天然だし食品と比べ,風味だし食品を好む傾向がみられた。③ おいしさを評価する際の背景要因として食体験があげられるが,今回は食経験と官能評価の関係については明らかにできなかった。本研究の評価者は,これまでに,天然素材のだしではなく,日常的に風味調味料だしを調理のときに使用していたのかもしれない。
著者
三浦 加代子 今西 あみ 西川 有香 坂内 綾乃 藤井 千紗 守山 由佳理 杉原 正治
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】手動の泡だて器や電動ハンドミキサーで撹拌した場合、ホイップクリームの含気率(オーバーラン)には限界がある。しかし、撹拌器「キスワン」は、圧力を調節しながら撹拌ができ、通常よりも大きなオーバーランが得られ、通常の器械ではいくら撹拌しても泡立たないものでも泡立てることができるという特徴をもっている。この器械を用いて新規食品開発を行うための基礎的なデータを得ることを目的として研究に着手した。今回は、生クリームを試料として圧力をかけて撹拌し、どのような特性をもったホイップクリームができるのかを検討した。また、ホイップクリームの保存性についても調べた。【方法】ステンレス製ボールに生クリームを一定量入れ、圧力を加えて5℃で撹拌した。撹拌回数は70回転/minとし、圧力は0.2MPa, 0.4MPaで行った。同様に常圧で撹拌したものを対照とした。生クリームの種類を変え、撹拌時間とオーバーランの変化を調べた。また、調製したホイップクリームの保存性をオーバーランおよび色調の変化等で検討した。【結果】生クリームの種類により、撹拌時間ごとのオーバーラン値は大きく異なった。例えば、乳脂肪分47%(種類別名称:乳等を主要原料とする食品)では、最高オーバーラン値が、常圧では撹拌時間6分で146%となったが、0.2MPaにすると105秒で約330%、0.4MPaでは105~120秒で約400%となった。即ち、1/3の時間で2倍以上の最大オーバーラン値が得られることがわかった。また、乳脂肪分35%(種類別:クリーム)の生クリームを圧力(0.2MPa)を加えて撹拌し、250%のオーバーランになったホイップクリームを調製し、その泡の安定性を経時的に調べた結果、保存温度が重要であることがわかった。
著者
小平 将太
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】ホイップクリームは、調製に時間と手間がかかり、水と油の分離が起こりやすい事が作製上の注意点である。レモン果汁はpH変化やクエン酸のキレート作用により多様な調理機能を発揮することが知られている。そこで本研究では、レモン果汁を生クリームへ添加することで、調製時間や、物性の変化におよぼす影響について報告する。【方法】ホイップクリームは、生クリームに適宜レモン果汁を加え、ハンドミキサーを用いて調製した。ホイップは最大オーバーランを終点とした。ホイップクリームの物性は、離漿量、気泡径、テクスチャーアナライザーの変形応力およびレオメーターの貯蔵粘弾性、損失粘弾性で評価した。また、レモン果汁を添加した際の理化学変化としてエマルジョンのζ-電位、粒子径、pHを測定した。さらに、評点法で官能評価を行った。【結果】レモンの添加量に比例して、調製時間が短縮されると共に、エマルジョンの粒子径が大きくなりやすい傾向を示した。これはpHの低下によるζ-電位の絶対値の減少で、粒子が凝集しやすい荷電状態となったためと推察された。また、レモン添加量に比例して離漿量と、経時による気泡径の拡大が低減した。さらに、レモンを1%添加した際に、経時による変形応力の低下が減少したことから、保型性が向上していることが示唆された。貯蔵粘弾性、損失粘弾性に有意差は認められなかったが、最大オーバーランは、1%レモン添加で最大化した。さらに官能評価でも食感の軽いホイップクリームになる傾向を示した。以上の結果から、ホイップクリーム調製時にレモンを添加することで、短時間で保型性や食感の良いクリームが調製できることが分かった。
著者
四宮 陽子 夛名賀 友子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】一般的に嚥下困難者の食事は、外観、味共に好ましくない料理が多く、「えん下困難者用食品」の市販品も少ない。高齢化が進行する社会的なニーズからも嚥下困難者の食事をおいしく調製することは大きな課題となっている。消費者庁の定める「えん下困難者用食品」許可基準3は、やわらかいペースト状又はゼリー寄せのように複数の食材や不均質の物を含んでも良い。そこでこの基準に該当するおいしい食事を調製することを目的とし、公開されている流動食のレシピを調査して調製法を検討、食事つくりとテクスチャー測定を行った。 【方法】調査はインターネットや文献、またホテルメトロポリタンエドモンドのフレンチレストラン「フォーグレイン」で流動食フルコースを体験した。これらを基に鮭のムース(以下Aとする)、パンのムース(以下Bとする)、比較としてヨーグルトナチュレ恵(日本ミルクコミュニティ(株)以下Cとする)を調製した。テクスチャーはクリープメーター(RE2-3305B、(株)山電)、テクスチャー解析Ver.1.3で消費者庁の基準に準じて測定し、消費者庁の「えん下困難者用食品」許可基準3、嚥下食ピラミッド、ユニバーサルデザインフード(以下UDFとする)と比較検討した。 【結果】好まれる流動食は色が美しく、色の混濁を避けるため食材は単一でミキサーにかけてピューレにする、食材の味、旨味、風味を引き出す為にじっくり煮込む、食感をなめらかにするためにミキサーで粉砕、裏ごすなどを行っていた。この結果を参考にAは主材料の鮭、はんぺん、豆腐にコンソメスープを加えミキサーで粉砕、Bはパンのクラムと牛乳を煮詰め、蜂蜜を加えミキサーで粉砕を繰り返した。Cはヨーグルトに砂糖を加え攪拌した。テクスチャーは許可基準3の範囲に入り、嚥下食ピラミッドではL2~L3、UDFかたさ区分では3~4の範囲であった。
著者
東根 裕子 上村 昭子 八木 千鶴 山本 悦子 渡辺 豊子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】食事の簡便化等に伴い、行事食の伝承が難しい時代になってきている。平成21年・22年度の日本調理科学会特別研究として実施した「行事食」の調査結果のうち、雑煮の手作り度と他の行事食との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】平成21年12月から平成22年3月、日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いて調査を実施した。今回は、大阪府に10年以上住み、40歳以上で調理担当者である301人を分析対象とした。正月料理の雑煮は家での手作り度が高く、雑煮の手作り度と他の行事との関連を検討した。調査を行った17行事のうち、行事食を家庭で作っている割合が高い正月、節分、上巳の節句、クリスマス、冬至を検討対象とした。【結果・考察】調査対象者の年齢は40・50歳代が79.7%、60歳代以上20.3%であり、同居の家族構成は2世代が65.8%、職業は専業主婦が46.2%、次いでアルバイト・パートが34.6%であった。行事食の影響は、58.1%の人が母方から受けていると答えた。雑煮を手作りする人は、79.7%であり、正月料理の煮しめ・なます・魚料理、節分のいわし・巻きずし、上巳の節句のちらしずし・潮汁、クリスマスの鶏肉料理の手作り度が、雑煮を手作りしない人に比べて高く、有意差が認められた(p<0.05)。雑煮を手作りしない人は、他の多くの行事食においても手作り度が低かった。また、手作り度と喫食状況は必ずしも同じ傾向ではなく、節分の巻きずしやクリスマスケーキの手作り度は低い(21.3%と16.4%)が、ともに60%以上の人が毎年食べていると答えた。食の簡便化・外部化の流れを受け止めつつ、行事食伝承の方策を探っていきたい。
著者
香川 実恵子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】少子化・小家族化が進んでいる近年,保育施設や学校教育機関は,子育て支援の拠点として,家庭や地域への食情報の初受信の場としても期待されている。そこで,本研究では,保護者のニーズを捉えた子育て支援食育活動として English Kitchenの企画・運営を行い,その成果と課題を検証することにした。【方法】子どもに習わせたい習い事ランキングで常に上位にあげられている英語を取り入れ,英語と調理の両方を楽しみながら体験するという多目的な食育活動を企画した。対象は5~6歳児とその保護者とし,本学教員の2名のネイティブ講師と一緒に3回シリーズの講座を企画実践した。1回目の英語遊びでは「果物」や「色」,「はいどうぞ」の学習を絵本を取り入れながら学習した後,それらの英語を用いてカラフルフルーツ白玉をつくるというクッキングを行った。最後に保護者アンケートおよび子どもへの聞き取りを行った。【結果】英語遊びでネイティブ講師とやり取りを行った子どもたちは,「ドキドキした」,「楽しかった」と感想で答えるなど,適度な緊張と興奮とともに達成感を味わっていた。英語遊びで学んだA(Apple),B(Banana),C(Cherry)が,実際にその後のフルーツ白玉の調理に出てくるように工夫したり,絵本「はいどうぞ(Here you are)」の後に,デモンストレーションしながら食材のやり取りを子どもたちにも行ったりするなど,英語遊びとクッキングを関連づけながら流れのある展開が実現できた。また,家庭でも親子で簡単に実践できるヘルシーな調理を提案し,実践することができた。保護者の満足度も高く,質の高い英語を取り入れた子育て支援食育講座を提供できたことが示された。
著者
久保田 賢 山本 悠 山岡 耕作
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】キューバでは食糧確保の目的で1999年に繁殖力の高いアフリカヒレナマズを導入した。2001年11月に到来したハリケーンにより、世界自然遺産候補であるサパタ湿地をはじめとする自然の淡水域および汽水圏への流出が起こり,貴重な固有種の駆逐が懸念されている。これらの環境保全策の一つとして、移入種の漁獲と利用が効果的であると考え、ヒレナマズ肉を原料とした製品のキューバ人に対する嗜好性を知ることを本研究の目的とした。 【方法】キューバの首都ハバナ市内およびサパタ湿地地区の住民に対して魚食の習慣や嗜好について聞き取りおよびアンケート調査を行なった。ヒレナマズ肉製品の嗜好調査には,ハバナ市内で販売されていた養殖ヒレナマズの冷凍フィレーまたはサパタ湿地で漁獲されたヒレナマズを用いた。フードプロセッサーまたはすり鉢を用いて調製したすり身からフィッシュボールや野菜を入れたさつま揚げを作製して食味試験を行なった。また,煉り製品をはじめとした日本で市販されている様々な水産加工食品についても嗜好性を調べた。 【結果】魚食を好むキューバ人が多かった一方で,半数以上は摂食頻度が2回/月以下と回答した。魚種としては海産の魚や魚介類が,料理法としては主に揚げ物料理やソース料理が好まれていた。板付けかまぼこやちくわなど、食経験のない一部の製品を苦手とする回答はあったものの、日本の加工食品の評価は決して低くはなかった。しかしながら、現地で調達したヒレナマズ肉で作製したフィッシュボールやさつま揚げに対する評価はさらに高かった。