著者
宇都宮 由佳 伊尾木 将之 瀬尾 弘子 江原 絢子 大久保 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本人の食文化は年中行事と密接に関わって育まれてきた。2015年度農水省「「和食」の保護・継承推進検討会」が実施した「食生活に関するアンケート調査」(10,235人)データを分析した結果、「正月・大みそか」が最も実施され、行事食を食べていることが分かった。そこで本研究では、和食の保護・継承のため正月行事及びその食について、より詳細な現状を把握することを目的に、2017年の正月に関するアンケート調査を実施した。<br /><br />【方法】調査は2017年1-2月全国の和食文化国民会議のメンバーおよび本研究に賛同を得た大学教員・学生を対象に実施した。調査票2047件回収しデータクリーニングをしたのち統計分析を行った。世代別、性別、地域別、子の有無でクロス分析、相関分析等を行った。<br /><br />【結果】正月への準備は、大掃除が最も多く、次いで年越しそば、年賀状、雑煮、おせち料理であった。食関連では祝箸、鏡餅、お屠蘇が、年齢の高い世代ほど準備をしており有意な差がみられた。2017年正月、雑煮とおせち料理は8割以上の人が食べていたが、お屠蘇は全体で約2割、世代差があり50歳以上で4割弱、20歳未満は約1割であった。子の有無による違いをみると雑煮やおせちは、子有または子の年齢が若い方が喫食する率が高い傾向がみられた。雑煮の餅、調理法、調味料については地域差があり、特に餅の形状は東側(角餅)と西側(丸餅)で明確な違いが見られ、地域の食文化継承の様子が伺えた。一方、お屠蘇や祝箸は若年層で準備や実施率が低く、薄れつつある現状が明らかとなった。学校の授業では雑煮やおせちは取り上げることが多いが、今後は屠蘇や祝箸、鏡餅などについても意味等伝えていく必要があろう。
著者
宮原 葉子 北原 詩子 金子 美帆子 三成 由美 徳井 教孝 印南 敏
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.86, 2010

【目的】管理栄養士が特定健診・特定保健指導で栄養指導をする際には、個々人に対応した献立や調理品を提案し、行動変容につながる継続可能な指導をしなければならない。本研究では、長期食生活調査における食物繊維と食塩に寄与する調理品について検討した。<BR>【方法】1999年~2000年の夏季、冬季の各2週間、福岡県志免町在住の一般主婦28名を対象にした。調査内容は、食事評量記録法を用い、食事区分、献立名、食品名、可食量が記録されたものである。食事記録票の調理品は、三成らが開発した6桁の調理品コードを用いて入力し解析した。食品の栄養価計算はエクセル栄養君Ver.4.5を用いた。<BR>【結果】夏季、冬季の食事記録日数は総計784日、調理品出現回数は11,646回、全調理品数は1,110品であった。食物繊維摂取に寄与する上位2品は2季節ともに1位が味噌汁で夏季8.4%、冬季8.8%、2位が飯で夏季4.2%、冬季4.0%であった。寄与率50%の夏季28品、冬季30品中共通のものは、味噌汁、飯など13品であった。夏季のみ、そうめん、冷やし中華などであり、冬季はみかん、鍋物であった。食塩摂取に寄与する上位1品は2季節ともに1位が味噌汁で夏季8.1%、冬季は8.4%であった。寄与率50%の夏季32品、冬季36品中共通のものは、味噌汁、梅干しなど15品であった。夏季のみ、冷やし中華、冷奴などであり、冬季は漬け物、鍋物であった。<BR>【考察】食物繊維の寄与率の高い調理品は味噌汁、飯などであり、食塩の寄与率の高い調理品も味噌汁であった。飯を美味しく食べることのできる献立の提案、また味噌汁を減塩し、食物繊維を増やす方法の提案が今後の課題であると考えられた。
著者
佐藤 靖子 鈴木 惇
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】採卵を終えた廃鶏の肉は、膠原線維が発達して硬いため市場に流通することはなく処分されている。しかし、この硬い肉を軟化させて美味しく食する方法を見出すことは、タンパク質の有効な供給源として望ましいと考える。本研究では、食酢およびすりおろしたキウィの25%希釈液で前処理した廃鶏の肉について、好ましい肉の軟化状態を見出すことを目的とした。【方法】材料には、廃鶏のムネ肉を用いた。試料は、縦2.5cm&times;横2.5cmに切り出し、食酢およびすりおろしたキウィの25%希釈液に、5時間および24時間浸漬した後10分間茹でた。組織構造の観察は、10%ホルマリン液で固定後パラフィンに包埋して薄切し、ピクロシリウス染色を行った。官能評価は、10項目の評価項目について東北生活文化大学健康栄養学専攻の学生40人でおこなった。軟化度の測定は、クリープメーターにより破断荷重および破断歪率を測定した。【結果】食酢で前処理した肉では、膠原線維が部分的に大きく切断された、キウィで前処理した肉では膠原線維への影響は小さかった。破断荷重は、食酢で前処理した肉では、破断荷重および破断歪率ともに低下したが、キウィで前処理した肉では、破断歪率が低下しなかった。官能評価により最も好まれた肉の軟化は、食酢25%液に5時間浸漬した肉であった。この肉は、軟らかく歯ごたえが適度にあり、酸味が殆ど残らなかった。廃鶏の肉は、食酢25%液前処理後の調理への展開が期待できると考える。
著者
古谷 彰子 大西 峰子 三星 沙織 米山 陽子 平尾 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】ワラビの根から抽出されるワラビ澱粉は、高価で保存性も悪い。わらび餅の調製に用いるわらび粉の市販品には安価な甘藷澱粉やクズ澱粉が混合されているもタピオカ澱粉を利用したものが多い。しかし、これらの澱粉は安価であるという利点はあるものの、ワラビ澱粉で調製した本わらび餅とは食味・食感がかなり異なっていた。本報告では、加工タピオカ澱粉を用いて、本わらび餅に近い食感のわらび餅の調製法を検討した。<br />【方法】澱粉は、未加工タピオカ澱粉(NT)、リン酸架橋タピオカ澱粉(P)、Pの酵素処理澱粉(PE)、アセチルリン酸タピオカ澱粉(AP)、APの酵素処理澱粉(APE)の5種(グリコ栄養食品(株))とし、上白糖(三井製糖)と蒸留水を用いてわらび餅を調製した。加水量は各澱粉の水分量を求めて調整した。またシェッフェの単純格子計画法を用い、NTと2種の加工タピオカ澱粉(PE、APE)を3成分として配合割合の異なる9つの格子点を設定した。物性測定はクリープメータ((株)山電)、官能評価は本わらび餅を対照として、つり合い不完備型ブロック計画法を用いて行った。<br />【結果】官能評価の嗜好では、PEとAPEを用いたものが総合評価の項目で有意に好まれたが、どちらも本わらび餅の食感とは異なっていた。そこで、シェッフェの単純格子計画法を用いて3種澱粉(NT、PEおよびAPE)の配合割合の影響を検討したところ、格子点⑦のNT:PE:APE=1:1:1の配合割合のわらび餅が本わらび餅に最も近い物性値を示した。官能評価の特性評価においても、弾力と口どけの項目で有意にあると評価された。嗜好においても、本わらび餅と同様に「好き」「非常に好き」と評価され、有意に好まれた。
著者
西澤 千惠子 中村 佳織 高松 伸枝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.144, 2010

【〈B〉目的〈B〉】だんご汁は大分県の郷土料理としてよく知られているが、レシピに関する約束事はない。そこで大分県におけるだんご汁の実態を明らかにするため、大学生とその保護者を対象にアンケート調査を行った。〈BR〉【〈B〉方法〈B〉】別府市にある4年制の大学生と保護者を対象に、平成21年12月にアンケート用紙を配布し、自己記入式で回答してもらった。平成22年1月に回収し、データを整理した。〈BR〉【〈B〉結果と考察〈B〉】回答者は大分県出身者のみを対象とした。地域別では大分市周辺に住んでいる人が50%となり、大分県の人口分布とほぼ一致した。回答者の性別は女性が89%で、保護者の年代は40代が50%を占めた。大学生と保護者の全員がだんご汁を知っていて、84%が最近食べていた。このうち内食は74%であった。だんごの形状はひも状が73%で最も多く、次いで団子状、手で握ったものの順で、だし汁は煮干し(いりこ)で35%、昆布で25%がとっていた。60%以上がにんじん、大根、里芋、ごぼう、ねぎ、しいたけ、白菜を使っていた。また味付けは合わせみそが65%であった。以上のことから大分県人が普段食べている「だんご汁」は煮干し出汁あるいは昆布だしに合わせみそで味を付け、大根、里芋、ごぼう、ねぎ、しいたけ、白菜と、ひも状のだんごが入っているものであった。なお大学生と保護者間には有意差はなかった。
著者
奥西 智哉 岸根 雅宏 足立 由希
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】玄米はビタミン、食物繊維等を多く含むことにより健康志向ニーズに対応している。特に発芽玄米は白米との混合炊飯による食味維持で消費が大きく伸びた時期があり現在も底堅く推移している。機能向上により家庭用炊飯器においても玄米の炊飯は可能になっていることから、玄米類の白米混合炊飯の基本知見を得たので報告する。【方法】平成22年茨城県産コシヒカリ玄米から精米機(VP-31T、山本製作所)を用いて1分搗き米(搗精度99.2%)、3分搗き米(97.0%)、5分搗き米(94.9%)、精白米(90.2%)を調製した。発芽玄米は(株)ファンケルから供与された。試料を脱イオン水に浸漬後、増加重量を吸水量とした。炊飯米をテンシプレッサー(MyBoySYSTEM、タケトモ電機)により低圧縮(25%)-高圧縮(90%)連続試験を行い、各物性値を得た。【結果】吸水速度は分搗き程度により異なっていたが、玄米も含め最終的な吸水量は白米と同等であった。一方、発芽玄米は吸水量が白米および玄米類に比べ大きなものであった。玄米類(分搗き米および発芽玄米)の単独炊飯を行った場合、精白度に対し、米飯の硬さは正、粘りは負の相関があった。浸漬時間を設けることによって、硬さは低下、粘りは増加する傾向にあった。炊飯時の加圧により、硬さは低下、粘りは増加する傾向にあった。玄米類の白米混合炊飯では、単独炊飯に比べて、玄米類の粘りは増加したが、白米の粘りは低下した。混合する白米の品種により、発芽玄米の硬さおよび粘りに違いが出る可能性が示唆された。白米と玄米類の混合炊飯を行う場合、それぞれの単独炊飯で得られている従来の知見に加えて、混合炊飯特有の特性があることが示された。
著者
山口 智子 田村 麻美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】いもジェンヌは、新潟市西区で栽培されているさつまいもで、品種は甘みが強くしっとりした食感が特徴の「べにはるか」である。2012年から新潟の砂丘地域における耕作放棄地解消のために栽培が導入され、ブランド化を目指した取り組みが行われている。ペーストを使った菓子の商品化や給食での利用も進んでいる。本研究では、さらなる普及を図るために、いもジェンヌの特性を明らかにし、家庭でおいしく食するための調理法を検討することを目的とした。<br><br>【方法】試料として、JA新潟みらいで栽培された平成29年産いもジェンヌ、市販品のべにはるか(新潟県産)、紅まさり(茨城県産)、紅あずま(茨城県産)、鳴門金時(徳島県産)、シルクスイート(茨城県産)、安納芋(新潟県産)を使用した。Brix糖度、還元糖量、β-アミラーゼ活性、抗酸化性の評価としてDPPHラジカル捕捉活性と総ポリフェノール量を測定した。加熱調理には、オーブン、電子レンジ、炊飯器を用い、加熱時間の異なるいもジェンヌの官能評価を行った。<br><br>【結果】生芋の糖度、還元糖量、β-アミラーゼ活性を測定した結果、いもジェンヌの糖度は、べにはるかに次いで高く、紅まさり、鳴門金時、シルクスイートよりも有意に高かった。還元糖量は安納芋に次いで高く、その他の品種より有意に高かった。β-アミラーゼ活性では、べにはるか、紅まさり、鳴門金時、シルクスイートよりも有意に高い値を示した。DPPHラジカル捕捉活性と総ポリフェノール量は、べにはるか及び他品種に比べてやや低い傾向にあった。3種類の加熱調理法の中で、いもジェンヌの甘さとしっとり感を最も引き出す調理法はオーブン加熱であり、抗酸化性も高かった。
著者
山本 悦子 阪上 愛子 澤田 参子 原 知子 東根 裕子 八木 千鶴
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】平成24年から日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の研究から山海に恵まれ商都として栄えた大阪府内に1960年から70年頃までに定着した家庭料理・郷土料理の「主菜の特徴」を抽出することを目的とした。<br>【方法】大阪府の行政区分、日本の食生活全集「聞き書大阪の食事」の分類を参考に8地域(泉南・泉北・南河内・中河内・北河内・大阪市・三島・豊能)に分け、その土地に30年以上暮らしている27名を対象に聞き書きを行った。<br>調査時期は2013年11月から2015年9月、方法等は学会ガイドラインに則った。<br>【結果】物流や商業の中心地大阪は「天下の台所」とよばれた。昆布は北海道から北前船で大阪・堺の港に入り、かつおぶしは、薩摩・土佐・紀州から入り、「だし文化」が生まれた。だし巻き卵・小田巻蒸し・関東煮(かんとだき)・どて焼き・ハリハリ鍋などは、だしを利用した主菜である。朝食やお弁当のおかずに作るだし巻き卵は、甘い関東の卵焼きに比して、だしの旨みと塩味(淡口醤油)で味つけされる。小田巻蒸しは、うどんの入っただしたっぷりの茶碗蒸しである。大阪の商家では祝膳に出された。鶏肉、えび、なると、干しいたけ、みつば、ゆずなどをを入れる。関東煮は江戸風味の濃口醤油のだしではなく、淡口醤油が主体のすっきりした味である。大阪では具材に鯨の皮の「ころ」や牛すじ肉、タコ、煮込みちくわ、丸天、ごぼう天などが好まれる。どて焼きは牛すじ肉を茹で、昆布だし、白味噌やみりんでじっくり煮込んだ料理。ハリハリ鍋はくじら肉(尾の身・赤身)と水菜だけのシンプルな鍋で、かつお昆布だしに淡口醤油と酒だけで味つけし、さっと煮て食する。大阪のコナ文化の代表である、きつねうどん・お好み焼き・たこ焼きにもだしは欠かせない。
著者
平田 なつひ 伊藤 正江 坪内 美穂子 龍 祐吉 柵木 嘉和 三矢 誠 河合 清
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.147, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 愛知県の三河湾は、豊富な海産物が多くとれる。特に愛知県一色町は、えびせんべいの生産量が日本一といわれている。えびせんべいの歴史は古く明治中期頃から食べられるようになったといわれている。最初は、中国製のえびせんべいの原料として製造されていたのが始まりといわれており、天むすと呼ばれそれが元祖であるようだ。本研究では、地域の小学生を対象にして手焼きせんべい作りの体験学習を行った。体験を通して、地場産業であるえびせんべいの理解とその加工や流通等の食に関する理解を深めることを主な目的として行った。<BR><B>【方法】</B><BR> 愛知県一色町の小学生を対象に、平成元年から開始した。(平成14年~16年の3年間については、文部科学省の研究開発学校として生活総合学習の一貫として本企業は地域の支援として関わった。)体験学習として工場にて1.手焼き体験、2.栄養価を考えたオリジナルせんべい作り、3.地域の地場産業に関する話を行った。<BR><B>【結果考察】</B><BR> 1.手焼き体験では、手焼き調理の基本である決められた分量と手順があることを教えた。手焼きの技術である押しつける力についても体得させた。2.体得した技術や調理加工のコツをもとにオリジナルせんべいを作成した結果、しらすやねぎ入りせんべいなど栄養価を考慮したせんべいを焼こうとする動きが見られた。3.地域の地場産業に関する話を行った結果、働くことの意義ややりがいを理解することが出来た。このような地域の教材を通しての体験学習は、豊かな外部依存の日常生活を営む現代社会において、新鮮な目で地域の伝統文化や産業をみることが出来ると思われる。今後も地域の企業として食育に明確なテーマ性をもって関わっていきたい。
著者
磯部 由香 松屋 彩 平島 円
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.176, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 近年、血圧降下作用、精神安定作用などをもつ機能性成分としてγ-アミノ酪酸(GABA)が注目を浴びている。今回、本研究室にて滋賀県産こけらずしから分離したGABA生成能を有する乳酸菌<I>Lactobacilus buchneri</I>を用いて、豆乳を発酵させヨーグルト様食品を調製し、新規GABA含有食品の製造の検討を行った。<BR><B>【方法】</B><BR> 豆乳はスジャータ製の無調整豆乳を使用した。豆乳ヨーグルト中のGABA量はHPLCによって測定した。糖添加試料にはシュクロース10%を添加した。<BR><B>【結果】</B><BR> 豆乳に分離株を接種し、37℃で発酵させたところ、2日後に豆乳は凝固しヨーグルト状となった。発酵中のGABA量は5日目には発酵前の約4倍に当たる26mgにまで増加した。pHは、発酵初日の7.54から徐々に下がり、3日目にpH 5.32まで下がるが、4日目から上がりはじめ、5日目にはpH6.04となった。pHが5.5付近になる2日目以降でGABA量が大幅に増加した。一方,糖を添加すると発酵5日目までGABA量に変化はなかった.無添加試料のpH は発酵初日から徐々に低下するが、3日目のpH5.32でpHの低下が終了しているのに対し、添加試料は5日目まで低下し続け、このときのpHは3.76であった。このことから、糖添加による乳酸発酵の進行がpH低下を継続させ、乳酸菌のGABA生成を抑制したのではないかと考えられた。37℃と25℃で発酵させた試料について、GABA生成量とpHの変化の差はほとんどなかった。今回用いた分離株のグルタミン酸脱炭酸酵素活性はpH4.0において最大となり、pH5.5以上で大幅に酵素活性が低下した。この結果より、発酵2日目以降GABA量が大幅に増加するのはpHの低下によりグルタミン酸脱炭酸酵素活性が高くなることが要因であると思われる。
著者
藤井 わか子 藤堂 雅恵 小川 眞紀子 山下 広美 我如古 菜月 人見 哲子 槙尾 幸子 畦 五月 青木 三恵子 大野 婦美子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】岡山県は,地形からみると県北の中国山地,県中部の吉備高原,県南の平野・丘陵地帯,瀬戸内沿岸・島しょ地帯の四地域からなる。各地域には異なった作物が生み出され,特色ある食文化が伝承されていると言われている。一方で歴史的には,岡山県は備前,備中,美作と呼ばれてきた。そこで,現在の県民局(備前,備中,美作)の管轄で分け,年中行事・通過儀礼の地域による違いを把握することを目的とした。【方法】平成21~23年日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-行事食・儀礼食-」の調査データから,岡山県に10年以上居住している者334名を対象に,岡山県を3地域に分けて認知度・経験度・喫食経験等について集計し検討した。検定はカイ二乗検定を行った。【結果】岡山県の年中行事・通過儀礼の認知・経験度は,全国調査結果と類似していた。3地域でみると,認知度では秋祭りと人日,重陽の節句(p<0.01)に,経験度ではお月見(p<0.05),秋祭り(p<0.01)で3地域間の差がみられた。正月では,お雑煮の喫食割合は地域差がみられなかった。すまし仕立てが最も多く,丸もち,茹でて食べており,3地域において差異がないことがわかった。お節料理は,黒豆,かまぼこが全体的に最も高い結果であった。次いで,数の子,昆布巻き,煮しめが高かった。その他の年中行事の食べ物は,節分のいわし料理(p<0.01),端午の節句のちまき(p<0.01),盂蘭盆と七夕の麺 (p<0.05),お月見のだんご(p<0.01),大晦日の尾頭付きいわし料理(p<0.01)等で地域間に差が認められた。通過儀礼の認知・経験度は,出産祝い(p<0.01),百日祝い(p<0.01),厄払い(p<0.05)で,またその食べ物では,お七夜と初誕生の赤飯・小豆飯,厄払いのもち(p<0.01)において差がみられた。
著者
後藤 月江 遠藤 千鶴
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】近年、豆腐製造工程で大量に生じるオカラを乾燥させた「乾燥オカラ」は、食物繊維や大豆たんぱく質、イソフラボンを豊富に含む健康食品として見直され、それらを利用した食品が注目されている。「乾燥オカラ」を揚げ物料理の衣として用いた場合の、衣の付着率、吸油率、極性化合物量を求め、さらに官能評価を行い、乾燥オカラの衣としての利用について検討した。<br>【方法】乾燥オカラはソヤミールおよびおからパウダー(さとの雪食品(株))を使用し、衣の付着率を求めた。植物油5種類を用い調理を行い、調理前後の油の重量差から吸油率を求めた。極性化合物量はデジタル食用油テスター((株)テスト- testo270)を用い、調理前後の油の極性酸化物量を測定した。官能評価は本学の学生と教員を対象に、5段階評点法により行った。統計解析はSPSS ver.20を使用し、クロス集計を行った。<br>【結果】「トンカツ」、「エビフライ」、「コロッケ」、「唐揚げ」の、衣の付着率を求めた結果、パン粉に比べ乾燥オカラの方が低かった。吸油率は油の種類により違いが認められた。しかし、揚げ物の素材料によって同一の油であっても衣の種類により吸油率が異なり、パン粉の方が低くなる場合もあった。極性化合物量でも素材料が異なると同一の油であっても極性化合物増加量が異なったが、唐揚げは全ての油で乾燥オカラの方が極性化合物量の増加が非常に高かった。官能評価では「トンカツ」、「エビフライ」は全ての項目でパン粉を衣にしたものが、好ましい評価を得た。しかし、唐揚げは10歳~40歳代で乾燥オカラのものが高い評価を得た。揚げ物料理の種類により、乾燥オカラを揚げ物料理の衣として利用できることが示唆された。
著者
金山 麻美 高橋 さとみ 宮島 央奈 岩森 大 伊藤 直子 山崎 貴子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.105, 2011

【目的】食事は健康維持に重要な役割を持つが、加齢に伴い咀嚼機能が低下し、高齢者では摂取する食品が制限される。そのため、施設や病院などでは咀嚼・嚥下困難者に対して、個々の状態に応じた食事を提供する必要がある。本研究では、高齢者の食事の実態を知るため、施設高齢者の料理の嗜好と咀嚼力、食事のテクスチャーとの関連について調べた。<BR>【方法】平成22年5~7月に新潟県内の高齢者施設(ケアハウス)2施設に入居しており、身体的に自立している高齢者を対象とした。事前に研究目的・内容を説明し、同意が得られた41名(K施設23名、N施設18名)に対し、一般的な料理および施設で提供されている料理の嗜好度、食べられない食事とその理由、歯の残存数について聞き取り調査をした。また、施設で提供している食事のテクスチャーおよび残食の有無について調査した。<BR>【結果】普段食べている食事について、普通に食べられると答えた者(普通群)は30名、軟らかくしてあれば食べられると答えた者(低咀嚼群)は11名であった。平均残存歯数は、普通群12.7本、低咀嚼群3.0本であった。一般的な料理では、タコの刺身やステーキなどが硬いという理由から全体的に嗜好度が低く、低咀嚼群は普通群に比べ、肉料理の嗜好度が低かった。一方、施設で提供している料理では、比較的硬いものでも嗜好度が高い料理があり、硬さと嗜好度や残食率との間に関連は見られなかった。この理由として、今回調査した施設で提供している料理の硬さはほとんどユニバーサルデザインフードの区分1(5×10<SUP>5</SUP> N/m<SUP>2</SUP>)以下であり、一般的な料理よりも軟らかく調理してあったことに加え、対象者が比較的咀嚼能力が高かったことが考えられる。
著者
ヒューズ 美代 谷口(山田) 亜樹子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.157, 2011

【<B>目的<B>】豆類は昔から好まれ食されている身近な植物性食品で、ミネラル、食物繊維が豊富で機能性があることから、食品素材として注目されている。そこで、本研究では豆類に関する知識および嗜好性に関してアンケート調査を行い、女子大生の豆類に対する意識調査を行った。<BR>【<B>方法<B>】アンケート調査は、20歳前後の女子大生(132名)を対象に実施した。調査項目は豆類に対する嗜好、摂取頻度、認知度、よく食べる豆料理、豆類を使った食品開発に関するアイディア等である。<BR>【<B>結果<B>】アンケート調査の結果、83%が豆を好きと答え、64%が週1回以上食べていると答えた。よく食べる豆の種類は、「大豆」が91%と最も多く、2位「小豆」21%、3位「落花生」10%と続いた。豆の認知度については「大豆」、「小豆」の認知度がそれぞれ90%、72%と高く、以下「えんどう」39%、「枝豆」37%、「そらまめ」36%と続いた。よく食べる豆料理については、1位「煮豆」、2位「納豆料理」、3位「豆腐料理」と和風料理が多く占めた。これに対し、食べてみたい豆料理は、1位「ケーキ」、2位「スープ」及び「アイス・ジェラート」、4位「ハンバーグ」と洋風料理が多く占め、「よく食べる豆料理=和食」、「食べてみたい豆料理=洋食」と相反した結果となった。最後に、豆類を使った新規食品の開発について記述してもらったところ、「アイス」「ケーキ」「プリン」など菓子類の回答が68%と最も多く、「ハンバーグ」10%、「パスタ」「ラーメン」など麺類が9%と続いた。以上の結果より、今後は従来の和風中心の豆料理だけでなく、ヘルシー志向の高い消費者のニーズに合った洋風料理・菓子への応用・発展を検討する必要があると考えられた。
著者
武山 進一 笹島 正彦 関村 照吉 遠山 良
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.14, pp.85, 2002

盛岡冷麺は澱粉含量が高く、独特の食感を有している。しかし、茹でたのち短時間でその食感が失われるために、うどん、そば、中華麺のような茹で麺での販売には向かない。そこで、茹で麺状態での製品化をめざして電子レンジで再加熱して調理する方法(レンジアップ冷麺)を検討した。茹で時間を1分にして調整した冷麺を7℃で冷蔵保存した場合、冷麺100gの加熱時間は600Wの電子レンジで80秒であった。冷麺を電子レンジで加熱すると、その食感はゴムの様な弾力性が増した。テンシプレッサーによる物性測定では、Hardness(かたさ)、Work(破断エネルギー)ともに減少した。物性変化の抑制を目的とし、大豆レシチンを添加したところ、弾力性の質の変化を少なくすることが出来た。
著者
小出 あつみ 山内 知子 武藤 亜有 大羽 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.92, 2006

<BR><B>目的:</B>最近、食肉中に存在する抗疲労ジペプチド、アンセリン(Ans)・カルノシン(Car)に抗酸化作用があることと、牛肉・豚肉に比べ鶏肉中に多く含まれることが報告された。本研究は、鶏肉中のAas・Carを有効に活かす貯蔵と加熱調理操作を探ることを目的に実施した。<BR><B>方法:</B>試料は屠殺後32時間以内のブロイラー(B肉)、三河赤鶏(M肉)、名古屋コーチン(K肉)の生肉、貯蔵肉、加熱調理肉を用いた。Ans・Carの含有量比較は、部位別、種類別、貯蔵方法別、加熱調理操作別に行った。加熱は電子レンジ、真空調理、スチーム、フライ、ロースト、ボイルで行った。試料肉を5%スルホサルチル酸溶液で抽出し、Ans・Car含有量を ODS C18カラムHPLC法で測定した。ラジカル捕捉活性は試料肉を80%エタノールで抽出し、DPPH法で測定した。<BR><B> 結果:</B>ジペプチドのAns・Car含有量は生肉、貯蔵肉、加熱肉で、もも肉より胸肉で有意に多かった。これらの含有量比率(生の胸肉⁄もも肉)は、Ansで3.28倍、Carで2.84倍が最大であった。鶏種類別では、Ans・Carともに有意にB肉に多く、K肉で少なかった。胸生肉比較で、AnsではB肉中にK肉の1.16倍、Carで2.15倍と多かった。塊生肉を冷凍貯蔵してもAnc・Car量は変化しなかったが、ミンチ肉にして冷凍貯蔵すると有意に増加した。増加量はB胸肉よりK胸肉で多く、Ancは1.43倍、Carは2.3倍に増加した。加熱調理操作によりAns・Car量は全般に減少したが、B胸肉の真空調理、ボイル(茹で汁含む)で、K胸肉のスチーム、フライでAns量は変化しなかった。
著者
長尾 慶子 十河 桜子 三神 彩子 松田 麗子 喜多 記子 荻野 泰子 萱島 由香 杉山 宜子 加藤 和子 土屋 京子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.189, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 現在の家庭での日常の食事献立における朝食・昼食・夕食別に上位頻出メニューを取り上げ、それぞれについて、エコロジーを配慮した調理をすることによる、ガス・電気・水・生ゴミ量のCO<SUB>2</SUB>削減効果を検討した。<BR><B>【方法】</B><BR> 測定の対象にした献立は、トースト、ベーコンエッグ、チャーハン、味噌汁、魚のたれ焼き、野菜浸し、和風煮物、カレーライスである。それぞれの献立を通常のレシピにそって調理した時と、エコロジー的配慮で調理した時とで測定した。ガス・電気・水の使用量は調理台横に敷設した各測定器とパソコンを連動させて調理に伴う使用量の経時変化と積算量を記録させ、生ゴミ量はチラシのゴミ入れを使用し終了後に計量した。それらの積算一次エネルギーの換算量とCO<SUB>2</SUB>換算量を算出し、比較検討した。<BR><B>【結果】</B><BR> トースト:トースター(電気)とグリル(ガス)では一次エネルギーに差はみられないが、CO<SUB>2</SUB>排出量はグリル使用が少ない。ベーコンエッグ:鉄よりもテフロン鍋使用がCO<SUB>2</SUB>排出量が少なく、且つ〔油・水なし・蓋使用〕法が特に効果的である。チャーハン:飯と卵の加え方3通り法のうち、飯に生卵を合わせ炒める方法が、飯のべたつきも少なくCO<SUB>2</SUB>排出量が少ない。魚焼き:フライパンよりもグリル使用、且つ魚を1/2に切ると加熱時間の短縮と一次エネルギー削減になる。味噌汁:煮干はあらかじめ粉末にしておくと使用量が1/2で済む。野菜浸し:茹で水量は3倍量で済み、他の茹で物と合わせて使用すると効率的である。煮物:落し蓋、油の使用が効率的。カレーライス:煮込み加減の好みでガス使用量に差が見られた。野菜の切り方や水量を工夫することで生ゴミおよび水使用量の減少効果が大であった。
著者
根津 美智子 依田 萬代 樋口 千鶴
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】山梨県と本学は2008年から連携事業を行っている。事業活動はゼミ演習が多く、本ゼミは県からの要請で本県特産品「あけの金時芋」の知名度向上とお菓子レシピ開発を行った。2010年から2011年の学生の取り組み内容を報告する。【方法】2010年にさつま芋に関するアンケート調査を行い、あけの金時芋のお菓子レシピの開発及び「やまなし食のマッチングフエァー2011年」に参加し、学園祭でお菓子販売と評価アンケートを行った。また、両2年間あけの金時芋の知名度調査(学生・主婦)を行った。【結果・考察】レシピ作成に当たり学生、主婦にアンケート調査を行った。さつま芋は学生、主婦共96%以上に好まれ、味では甘さが共に約7割好まれていた。どの位の頻度で食べるは、学生月1回34%、主婦週1から2回が68%で主婦層の摂取率が高かった。さつま芋料理は天ぷら、大学芋が両者共に約3割食べられ、その他の料理は少なかった。芋菓子として思いつくものは学生スィーツポテト70%、主婦47%次いで芋ケンピ学生、主婦共約2割でお菓子として知っている種類が少ないことが伺えた。あけの金時芋を使用したお菓子レシピを18種作成し「あけのサンドアイス」、「あけのボール」、「あけの李ナッツ」の3品を「やまなし食のマッチングフエアー2011」に出展し試食してもらった。「あけの李ナッツ」の評価が最も高く、学園祭でもこの3品を販売した「あけの李ナッツ」の評価が高かった。併せてあけの金時芋の宣伝・販売も行った。2010年の知名度は学生15%、主婦25%、2011年では学生54%、主婦42%と学内での指導、メデァ、新聞等の情報発信などから知名度の向上は見られたが、更なる宣伝活動が必要と感じた。販路開拓には市場調査・分析、価格設定、広告・宣伝などの広報活動などのマーケティングが重要であると感じた。
著者
立山 千草 坂口 淳 本間 伸夫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.174, 2005

<br>【目的】地域の風土に根ざした多様な地方野菜は四季折々の郷土料理の素材としてその地域で生活する者の健康をも支えてきたと考えられる。しかし、現在、全国地方野菜、地方品種の作物における生産と消費の現状および今後の展望については、様々な視点から注目を集めながらも不明な部分が多く、新潟県の地方野菜においてもおおよそ同様な状況下にある。そこで、新潟県の37種の地方野菜に関する認識の程度を把握する目的で調査を行った。<BR>【方法】県立新潟女子短期大学生活科学科食物栄養専攻生、専攻科食物栄養専攻生の96名およびその家族(72名)を対象に新潟県の地方野菜に関する事項について2004年12月に調査票を用いた記述方法によるアンケート調査を行った。さらに、インターネット会社の協力を受け、2005年3月にWeb上でネット調査登録している全国約35万人を年代(20から29歳、30から39歳、40から49歳、50から59歳の4段階)ごとに無作為抽出し、アンケート協力の依頼のメールを送付し、アンケート調査(n=701)を実施した。<BR>【結果】37品種の地方野菜について、本学学生とその家族(回答者168名)に調査を行った結果、知名度が高い品種、極めて低く、食べたことがない品種も複数存在することがわかった。一方、本学関係者の間で知名度が比較的高い品種について全国ネットによる知名度調査の結果、今回のアンケートではじめて知ったと答えたパネリストがほとんどであった。地方野菜が市場に流通されることなく生産された土地で消費される傾向にあること、歴史にはあまり関心がなく、利用に強い関心がもたれていることが原因と考えられる。
著者
高橋 啓子 松下 純子 後藤 月江 遠藤 千鶴 金丸 芳 有内 尚子 田村 咲江
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.166, 2005

<br>【目的】昨年、徳島県の魚食の実態について調査した結果、魚の入手方法では自給、もらうという回答が多かった。そこで本研究はその背景を明らかにするとともに、魚食の状況や魚を使用した郷土料理の摂取について現状を把握することを目的とした。<br>【方法】魚食の状況を把握するために、徳島県居住者を対象に学生を通してアンケート用紙を配布し、留め置き法により記入してもらった。留め置き期間は約2週間で、実施時期は2004年11月_から_2004年12月である。<br>【結果】アンケ_-_ト回答世帯は86世帯であり、調理担当者は40歳代(50.6%)、50歳代(28.3%)であった。魚を購入以外で入手する方法では趣味で釣る(28.3%)、釣ったものをもらう(62.7%)であった。このことは三方を海に囲まれ、大きな河川にも恵まれた環境にある徳島県の余暇の活用として釣りをする人口比率が高いことを裏付けている。摂取頻度の多い魚の調理法は焼き物(37.3%)、なま物(19.8%)であった。また、購入する魚料理も焼き物(26.5%)、なま物(23.0%)、煮魚(13.8%)、すし(13.3%)の順に多く、すしについては二世代世帯の方が三世代世帯よりも購入する割合が高かった(χ2検定:p=0.046)。徳島県の魚を使った郷土料理の摂取状況を現在と過去(10-20年前)で比較すると、アジ、アユ、ボウゼ(イボダイ)などの姿ずしは調理して食べることが少なくなり、購入して食べる割合が高くなっていた。一方、鮎の塩焼き、太刀魚の酢の物などは過去、現在も手作りで食べられていた。徳島県の魚の摂取頻度は現在も多いが、手間のかかる姿ずしなどは中食という形で摂取されている傾向が明らかとなった。