著者
岩崎 裕子 大越 ひろ 城 史子 高石 聡淑 島 宏治
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.268-275, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
23

飲料の粘度が“のどごし”に及ぼす影響を,官能評価および筋電図測定を行い検討した。被験者を若年群と熟年群について,更に飲用時の頭位を頭位0°(垂直)と頭位後屈として比較した。試料はずり速度50 s-1における粘度を,40,60,90 mPa・sとした3試料と,原液(1 mPa・s)の4試料とした。以後,η1,η40,η60,η90と示す。 官能評価における“のどごし”の結果,若年群は,η1,η40,η60には差が無く,η90が悪いと評価した。熟年群は η60の試料をのどごしが良いと評価した。共通して η90は後味が悪いと評価し,のどごしが良いというイメージは,ビールやすっきりした感じを求めることが示唆された。また,嚥下筋活動量を測定した結果,官能評価ののどごしと関連性はみられなかった。のどごしは粘度の影響を受けるが,個人の嗜好によるところが大きいため,適当な値を確定することは難しい。
著者
山本 誠子 鈴木 和歌子 鈴木 香緒里 山岸 冨美江 谷口 沙奈絵 小林 三智子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.242-249, 2002-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1

The physical properties were investigated and a sensory evaluation was carried out on imo-mochi containing various starches and starch gels.Textural and tensile rupture measurements were made with a Rheoner, and the sensory evaluation was rated by the scoring method.The physical properties of Imo-mochi containing a starch gel vary according to the kind of starch. Imo-mochi is considered to have a texture like rice cake because of its higher elasticity than that of a starch gel.The results of physical measurements showed that imo-mochi containing different starches could be classified into two groups: it had higher cohesiveness and extension when mixed with potato, tapioca, sweet potato or kuzu starch than with corn or wheat starch.The former group of imo-mochi is considered to be preferable.The sensory evaluation clarified that imo-mochi containing potato starch was the most preferable among four in the first group, having high transparency, extension, a texture like rice cake and low stickiness.
著者
中村 光良 光田 佳代 松田 秀喜
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.375-382, 2004-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
5
被引用文献数
2

水,本みりん,煮切りみりん,ショ糖溶液及びエタノール溶液で小豆を下ゆでし,煮汁の分析を行い,小豆色素の溶出抑制効果の解明を行った. さらに,ショ糖溶液で蜜煮にした小豆のてりつやの測定によりてり・つや付与効果,胴割れ豆,軟化豆,軟化未了豆の割合,テクスチャーの測定を行い,煮崩れ防止効果について解明を行った. 1.下ゆで時の煮汁の濁度から,小豆の可溶性成分の溶出抑制効果は,溶液に含有する糖であることが示唆された. 豆に含まれる赤色色素の溶出抑制に関しては,加熱30分後までについては,糖を含有する区で溶出抑制効果が認められた. ショ糖,煮切りみりん,本みりんでは,本みりんが最も溶出抑制効果が高かった. エタノール及び水では,30分加熱以後,赤色度は増加しなかった. 濁度も同様に本みりん20%溶液,煮切りみりん20%溶液,92%ショ糖溶液の糖を含有する溶液は,2.8%エタノール溶液及び水よりも濁度が低く,可溶性成分の溶出を抑制している成分は糖であることが示唆された. 2,小豆の蜜煮に対するてり・つや付与効果は,本みりんを使用したものが最も高く,本みりんのてり・つや付与効果が確認された. 3.小豆の煮崩れ防止に寄与する成分は,糖であるが,糖は煮崩れ防止に寄与すると共に,軟化を抑制することがわかった. また,エタノールは軟化を促進するため,本みりんのように両成分を含有する調味料が煮崩れを防止し柔らかい豆を得ることが可能であることがわかった. 4.小豆蜜煮においては,柔らかさと食感の好ましさは一致しており,柔らかい小豆蜜煮を作ることがおいしさにつながることがわかった. 本みりんを用いた場合,予め水だけで10分間加熱してザルにあげて,渋切りを行い,その後,本みりん溶液で下ゆでをし,加熱調理することによって,柔らかい小豆蜜煮を得ることが可能である.
著者
名倉,秀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, 2003-05-20

雑煮の構成内容から地域の特徴を知る目的で,全国を12地域に分割し,各地域に在住する学生の家庭を対象に,アンケートによる実態調査を行った。雑煮のもち,だし,調味料,具,盛り付けの器,伝承など雑煮の地域的な特徴について以下のような結果が得られた。1)もちの形態は角もちが北陸,東海以北,丸もちが近畿以西にそれぞれ80%以上出現した。もちの扱い方は「焼く」が関東以北4地域,「ゆでる」が北陸,中国,北九州の3地域,「そのまま汁へ」が東海,近畿1,近畿2,四国,南九州の5地域に分類できた。2)だしの種類は魚介類が東海および中国以西,肉類が東北,海藻類が北海道,北陸,九州,野菜・きのこ類が九州でやや高めの出現率を示した。3)調味料の種類から,すまし仕立て系が北海道,東北,関東1,関東2,北陸,東海,中国,北九州,南九州の9地域,味噌仕立て系が近畿1,近畿2,四国の3地域に分類できた。4)具の種類は人参,大根,鶏肉が全国的に高い割合で出現した。野菜類の緑色系において,北海道の三つ葉,東北のせり,関東1の小松菜,関東2と北陸の三つ葉,東海のもち菜,近畿1の水菜,近畿2と中国のほうれん草,北九州のかつお菜,南九州の京菜にみられるように地域に限られた野菜や正月の期間だけの野菜が出現していた。また,かまぼこやなるとの出現は地域の特徴を捉えていた。5)盛りつけの器の材質は全国的に椀の出現率が70%をしめ,母方系統の雑煮を20〜29年前から調理していることが明らかとなり,伝承について地域的な特徴は見出せなかった。
著者
小原 章裕 松久 次雄
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.333-340, 2010-12-05

各種調理条件の違いによって豚肉を加熱処理した際に生じる変異原性をAmes testで測定した。豚肉を焼いたものは,鶏肉を焼いたものよりも多くの変異原物質を含んでおり,試料を高温処理して調理した際に多量の変異原物質量を生成した。また,野菜6種(ナス,キャベツ,モヤシ,ニンジン,タマネギ及びダイコン),香辛料(ショウガ,ピーマン,コショウ,トウガラシ)及び調味料4種(ミソ,ショウユ,穀物酢,黒酢)を豚肉を焼く際に添加すると変異原物質の生成量が減少した。そこで,これら試料を利用して実際に豚肉野菜炒めを調理してみると,モヤシやキャベツと同程度に変異原物質生成を抑制した。
著者
深井 洋一 坂槇 秀夫 塚田 清秀
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.347-351, 2007-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

天日干しと熱風乾燥の乾燥手法の差異が品質に及ぼす影響を検討した。官能検査では,総合味および硬さの3項目において,天日干しは熱風乾燥と比べ,有意に優れることが評価された。炊飯品質では,天日干しは熱風乾燥より,食味スコァ等の5項目において品質指標が向上する傾向を示した。糊化特性は,天日干しは熱風乾燥と比べて,糊化開始温度が低く,最高粘度は高かった。電子顕微鏡では明確な差の断定には至らなかったが,天日干しと熱風乾燥の澱粉粒の形状の違いが膨潤性に影響している可能性が考えられた。これらのことから,本条件下では,天日干しは熱風乾燥を上回る米の品質を具備している可能性が示唆され,米本来のおいしさを損なわない乾燥処理に起因すると推察した。
著者
峯木 眞知子 渡邊 康一
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.155-162, 2005-04-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
25

Ostrich and hen eggs were subjected to a microstructural comparison of the shell and shell membrane in the raw condition and of the albumen and yolk in the hard-boiled condition. The observation methods used were optical microscopy, scanning electron microscopy and low-vacuum scanning electron microscopy. The ostrich eggshell had a finely crackled surface. The structural components of the transverse section of the ostrich eggshell were similar to those of the hen eggshell. The shell and its vertical crystal layer of the ostrich egg were approximately five times thicker than those of the hen egg, and the spongy matrix region occupied three-quarters of the thickness of the ostrich eggshell. The results suggest that these factors were involved in the hardness of the ostrich eggshell. The ostrich eggshell membrane was two-to three-fold the thickness of the hen eggshell membrane, being composed of thick twisted fibers. The intermediate layer of the ostrich albumen showed a fine-layered structure, which seemed to be composed of thick albumen. The inner layer of the ostrich albumen comprised about 40% of the whole thickness, although its structure was indeterminate. The intensity of staining of the inner and outer layers of the ostrich albumen by the PAS reaction was stronger than that for the hen egg albumen. The ostrich yolk was packed with polyhedral yolk spheres, these yolk spheres having a similar shape and size to those of the hen yolk.
著者
桐渕 壽子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.210-216, 1995-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
7
被引用文献数
2
著者
三好 隆行 石原 克之 中村 和哉 古賀 秀徳
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.277-282, 2006-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
16

A study was conducted to determine how frying slices of potato would enhance the antioxidative activity. The content per unit weight of such antioxidants as L-ascorbic acid and chlorogenic acid in raw potato was nearly doubled when the slices were fried. Ultrafiltration of the water-soluble extract taken from the potato chips revealed the medium moleculare weight fraction of 3,000 to 20,000 to have high anti-oxidative activity, although the amount was small. This medium moleculare weight fraction had a strong brown color, due to melanoidin. There was a large amount of the fraction with a molecular weight of less than 3,000, and this fraction contributed 91% of the total antioxidative activity. It appears that chlorogenic acid and melanoidin were responsible for the antioxidative activity of this low molecular weight fraction.The DPPH radical scavenging activity of 19 kinds of potato snack foods was compared. There was higher activity in the potato chips made from raw potato than in those that had been more highly processed.
著者
石原 克之 奈良 一寛 米澤 弥矢子 星野 文子 有馬 正巳 古賀 秀徳
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.32-37, 2009 (Released:2015-02-27)
参考文献数
14

炭水化物を多く含む食品を高温で加工された食品中からアクリルアミド(AAm)が検出されたと2002年4月にスウェーデンの研究者により発表された。その後,種々の加熱加工食品中に存在していることが明らかとなった。しかしながら,加工食品同様に食材に加熱加工を施す家庭での調理食品についての検討はあまりなされていない。そこで,家庭での調理食品に着目して調査を行った。種々の加熱調理食材にAAmが認められ,含有量の高かったのは,もやし,次いでにんにくであった。また,食材中のアスパラギン(Asn)含量と加熱後のAAm含量との間に強い相関(R2=0.66)が見られた。しかし,Asn含量が低くても加熱が強いとAAm含量が高くなる可能性があることが分かった。このことから,家庭での調理においても過度な加熱調理を避けることでアクリルアミド生成が抑制されることが示唆された。
著者
貝沼 やす子 江間 章子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.364-371, 1997-11-20
参考文献数
9
被引用文献数
8

1)料理を作るのを嫌いと答えた人は少なかったが,約半数の人が献立を考えるのは面倒と答えていた。2)献立の決定は,専業主婦では朝,在庫の材料を確認してが多く,次いで夕方買物時に店先でとなっており,就業主婦ではこの順位が逆転した。いずれの場合も比較的無計画に献立が立てられていることがわかった。3)気軽にできる料理の条件は作り方をよく知っていることであり,次いで食べる人の好みにあっているであったが,比較的よく作る献立ではこの順位が逆転した。4)夕食献立は主薬をまず決め,材料を変えた他の材料を組み合わせていくという回答が多かった。また,主菜として利用しやすい材料は肉・魚であり,就業主婦では肉の利用が多かった。5)Aグループには調理上不可欠であるとともに,基本的,極日常的な器具,材料,操作が分類され,面倒に思わず気軽に使い,行われていた。C,Dグループには面倒に思う,できたら使いたくない,行いたくない,器具,材料,操作が分類された。これらには,特殊な機能や用途がある,使い方や後始末が面倒である,日常的でない,などの要因が考えられた。Bグループには,あれば便利な器具,少し複雑な操作,比較的よく使うと思われる材料が分類され,少し面倒ではあるが,調理方法や調味方法に広がりや変化を付与するものであった。