著者
渡辺 豊子 大喜多 祥子 福本 タミ子 石村 哲代 大島 英子 加藤 佐千子 阪上 愛子 佐々木 廣子 殿畑 操子 中山 伊紗子 樋上 純子 安田 直子 山口 美代子 山本 悦子 米田 泰子 山田 光江 堀越 フサエ 木村 弘
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.288-295, 1999
参考文献数
15
被引用文献数
5

腸管出血性大腸菌O157食中毒を予防するためには,牛ひき肉を用いたハンバーグの焼成においては、内部全体が75℃に到達する必要がある。しかしその到達を判断する方法は明確ではない。そこで,焼成中のハンバーグ内部の最低温度と,流出する肉汁の状態との関係を明らかにすることによって,一般家庭の調理において,食品衛生上安全なハンバーグを焼くことが出来るよう,ハンバーグの焼き終わりを検討した。1個100gのハンバーグ3個をガスオーブン230℃で焼成し,焼成中にハンバーグ内部6点の温度を測定した。また6分・9分・12分・15分・18分間の焼成後,直ちに一定の厚さ圧縮して肉汁を採取し,その色や濁りを観察して以下の結果を得た。1) ハンバーグの最低温度は6分間の焼成では44℃,9分間の焼成では55℃と低く,両者の汁液は赤みが強く濁りもあった。2)12分間焼成したハンバーグの最低温度は66℃であり,その汁液は茶褐色を呈したが,透明な油脂と混じって流出するため濁りを見定め難く,透明と判断される可能性があった。しかし注意深く観察すると濁りが確認された。なお,内部には余熱によっても75℃に達しない部分があり,食品衛生上安全であるとは言えなかった。3) 15分間焼成したハンバーグは食品衛生上安全(最低温度は75℃)であると判断された。その汁液は黄色みを帯びて透明であった。従って透明な肉汁の流出は75℃到達の指標になることが確認できた。4) ハンバーグを軽くおしたときに流出する肉汁の量・ハンバーグ表面の焼き色・断面の色・硬さで75℃到達を判断するのは難しいと思われる。5) 官能検査において,15分間焼成したハンバーグの焼き加減は適切であるとされた。以上より,おいしさと安全性の両面からみて,ハンバーグの焼き終わりは「肉汁の赤みが完全に消失して,透明になったことを確認した直後」が適切である。オーブンの種類やハンバーグの大きさなど焼成条件が異なると,焼成時間と内部温度の関係も変化する。しかし、内部温度と肉汁の色や濁りとの関係は変わらないので,「肉汁の色や濁りを見て焼き終わりを判断する」と言われることは,牛ひき肉ハンバーグに対しては有効であると思われる。
著者
深井 洋一 坂槇 秀夫 塚田 清秀
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.347-351, 2007-10-20
被引用文献数
1

天日干しと熱風乾燥の乾燥手法の差異が品質に及ぼす影響を検討した。官能検査では,総合,味および硬さの3項目において,天日干しは熱風乾燥と比べ,有意に優れることが評価された。炊飯品質では,天日干しは熱風乾燥より,食味スコア等の5項目において品質指標が向上する傾向を示した。糊化特性は,天日干しは熱風乾燥と比べて,糊化開始温度が低く,最高粘度は高かった。電子顕微鏡では明確な差の断定には至らなかったが,天日干しと熱風乾燥の澱粉粒の形状の違いが膨潤性に影響している可能性が考えられた。これらのことから,本条件下では,天日干しは熱風乾燥を上回る米の品質を具備している可能性が示唆され,米本来のおいしさを損なわない乾燥処理に起因すると推察した。
著者
大谷 貴美子 尾崎 彩子 松本 裕子 南出 隆久
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.204-211, 2000-05-20
被引用文献数
3

器と料理との色彩調和について研究する足がかりとして、最も単純な系として、つけ醤油と皿に着目し、醤油を入れるのに相応しい皿の色について、CRT上のカラーパレットを用いて検討を行った。白磁の皿に醤油を入れた画像を基本画像としてCRT上に取り込み、皿全体または皿の縁のみに、basic vivid colorの8色(スペクトラムブルー、サマサマーグリーン、若草色、カナリア、蜜柑色、シグナルレッド、マゼンダ、本紫)と各々の色の明度を50%から80%まで上昇させたものを用いて彩色した。そして、料理別(刺身、寿司、餃子、漬け物)に相応しいもの、醤油が美しくみえるもの、つけ醤油の皿の色として不適当なものについて検討を行った。その結果、刺身や寿司など生ものの新鮮さが要求される料理の場合は、ブルー系が好まれたが、漬け物や餃子ではむしろ、黄色を含む暖色系の方が好まれた。また、皿の縁のみに彩色した場合、餃子では、シグナルレッドが好まれるなど、同じつけ醤油の皿であっても用途によって、選ばれる皿の色が異なることが示唆された。色の世界は多様であり、実際の器を用いての研究には限界があるが、コンピューターを用いることで、視覚による美しさ、特に料理と器との関係について研究できる可能性が示唆された。
著者
春日 敦子 青柳 康夫
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.309-318, 2005-08-05
被引用文献数
1

干し椎茸の水戻し汁の, 料理への利用の是非を検討する為, 3通りの水戻し方法を試みた。水戻し方法「P」は, 230分水戻しを行った。水戻し方法「Q」は始めに30分間水戻しを行い, その水戻し汁は捨て, 等量の新たな水を加え, 更に200分水戻しを行った。水戻し方法「R」は水戻し時間以外は「Q」と同様の方法であり, 一度目の水戻し時間は90分, 2度目の水戻し時間は140分であった。3通りの水戻し方法にて, 無機質, 遊離アミノ酸, 5'-ヌクレオチド, 有機酸含量の分析, 及び官能検査を行った。これらの結果を基に, 干し椎茸の水戻しは, 水戻し90分後水戻し汁を一旦捨て, 新しい水を加え, 干し椎茸中心部の堅い部分が柔らかくなるまで更に水戻しを継続する, という新しい方法を提案したい。
著者
内山 裕美子 築舘 香澄 加藤 みゆき 山口 優一 陳 栄剛 大森 正司
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.320-325, 2014 (Released:2015-01-09)
参考文献数
13
被引用文献数
2

緑茶を浸出する際の水の種類を変えることにより,緑茶浸出液の呈味の比較を行った。その結果,一般に硬水は緑茶の浸出には不適切であるとされていたが,硬度の高いevian水を用いて緑茶を浸出したところ,味覚センサーによるうま味強度が最も強いことが示された。evian水で浸出した緑茶と,次位のクリスタルガイザー水で浸出した緑茶について,三点比較法で官能評価を行ったところ,evian水で浸出した緑茶が有意に好まれる,との評価であった。また,CaCl2を用いて硬度を調節した場合には,うま味強度に対する正の効果は認められなかったが,CaCO3と組み合わせて用いることにより,CaCO3の濃度依存的にうま味強度が強まった。人工硬水を用いて緑茶を浸出し,味覚センサーと官能評価において測定したところ,evian水と同程度のうま味強度を持つ緑茶を浸出することが可能であった。
著者
ノーリタ サンセダ 上田 久美子 ジュリア イバニェズ 鈴木 恵美子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.231-238, 2007-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
16

インキュベートしたあひるの卵の有精卵と無精卵である“balut”と“penoy”の歴史的背景および化学成分について調べた。試料はフィリピンで市販されているインキュベートした有精卵, 無精卵のゆで卵と日本で卵を購入し, 大学の研究室で調製したものを用いた。本研究の結果,“balut”と“penoy”はフィリピンに元々あるものではなく,中国の取引業者や移民があひるの有精卵を食べるという考えをフィリピンにもたらしたことが判明した。しかし,balut製造の知識や技術をもっているのはbalut製造業者に限られている。今日までbalut製造は伝統的な手作りによっており,機械化されていない。インキュベートした試料の総遊離アミノ酸量はインキュベートしていないものより高かった。タウリンは有精卵,無精卵ともにインキュベートすることで有意に高くなった。このことはインキュベートすることで栄養的にプラスの効果があること示している。ゆでた後,インキュベートした有精卵にはかなりの量のドリップがあり,無精卵には少量みられたがインキュベートしていないものにはほとんどなかった。
著者
池 晶子 山本 紗由美 川瀬 雅也
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.74-81, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
8
被引用文献数
3

水道水の水質は,原水である河川水,地下水,湧水の質を反映する。なかでも含有ミネラル成分濃度や硬度は水道水の味に多様性を与えているとの報告がある。本研究では水道水に比較的高濃度に含まれるNa, Ca, K, Mg, Siの濃度およびpHやTOCなどの物性をもとに国内の20か所の水道水を主成分分析にて分類し,判別分析により味の評価結果との関連性を調べた。その結果,水道水は地域ごとに似かよった水質特性を示し,水道水の取水地の地表水,地下水の別に共通する特徴が見られた。また,Si濃度やCa濃度が低いグループには,地表水が多く,味の評価の高いものが多く含まれていた。さらに,判別分析ではSi濃度,Ca濃度,pHの判別係数が高く,主成分分析での結果と矛盾しなかった。
著者
駒場 千佳子 日笠 志津 高橋 敦子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.229-235, 2000-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
11
被引用文献数
1

the taste of liver by physical/chemical measurements and sensory test of taste.Reduction in iron content was observed when the liver was soaked in water or milk. In short time boiling liver,45% of iron secretion was observed.No iron secretion was observed when the liver was broiled, but, significant iron secretion was observed when the liver was simmered.There was no significant difference in iron secretion by cooking between one-day and three-day-old liver after slaughtering.In sensory tests of broiled liver by three preparations, one-day old liver after slaughtering, there were no significant differences in overall evaluation.In broiled liver that soaked in milk, three-day old after slaughtering, significant positive result was observed in terms of tasting.In sensory test of liver simmered, preparation did not effect the taste.
著者
内山 裕美子 築舘 香澄 加藤 みゆき 山口 優一 陳 栄剛 大森 正司
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.281-286, 2013 (Released:2013-10-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1

茶の淹れ方による味の変化については,今までにも多数報告されている。今回は,味覚センサーを用いて茶の味を測定し,淹れ方の違いによる茶の味の評価を行った。 茶の淹れ方において煎じ回数,浸出時間,茶葉量の違いにおいては,それらの変動とともにアミノ酸,カテキン含量も変化し,また,味覚センサーによる測定値である味強度も同様に変化した。 浸出温度の違いによるうま味強度と渋味強度の変化については,渋味強度は同じ茶葉を5°C,40°C,100°Cと順次温度を変えて反復浸出しても,また,5°C,40°C,100°Cで浸出する際に新しい茶葉を用いて浸出しても,温度とともに増加傾向として示された。しかしながらうま味強度においては,同一茶葉を用いて反復浸出した場合には,5°Cで浸出した場合に比べ,40°Cで浸出した場合には減少し,以後,熱湯で浸出しても,うま味強度に変動は認められなかった。
著者
阿部 真紀 澤山 茂 秋田 修
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.142-150, 2018 (Released:2018-06-22)
参考文献数
20

本研究は,豚肉の塩麹漬け調理における塩麹中の酵素や食塩の効果を調査する目的で行った。組成の異なる塩麹で漬け込みした豚ロース肉を湿熱加熱した試料の食感についての官能評価では,塩麹にタンパク質分解酵素を1.2%添加したものが最もやわらかいと評価された。塩麹試料に漬けた肉では,すべての官能評価項目において漬け込みしない対照肉よりも高評価であった。やわらかさについての官能評価結果と機器測定結果には相関が認められた。肉の遊離アミノ酸総量は,塩麹と酵素1.2%添加した塩麹に漬けた試料で対照に比べて2~3倍増加し,グルタミン酸量は対照の2倍以上となった。アミノ酸の増加は,塩麹中のタンパク質分解酵素の効果によるものと考えられた。また,塩麹中の塩分には酵素の肉中への浸透を促進することで酵素作用を高め,さらに肉の保水性を高め加熱損失を低下させることなどの複合的な効果によって,塩麹が肉の食味性を向上させていることが示唆された。
著者
森髙 初惠 中西 由季子 不破 眞佐子 谷井 涼子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.115-122, 2012 (Released:2014-03-14)
参考文献数
24
被引用文献数
1

米飯摂食後の血糖値上昇抑制を目的として,米飯へ0~2.5%寒天を添加した効果について,嗜好特性,熱特性ならびに血糖値を測定して検討した。 高い濃度の寒天を添加した米飯においては,味,香り,外観は悪いと評価され,硬さは硬いと評価された。昇温DSC曲線における最も高温の吸熱ピークは,寒天添加により高温側へシフトし,エンタルピーは小さくなった。米飯摂取後120分間の血糖応答曲線において,寒天の添加により血糖値は緩慢に増加し,最大血糖値は低下した。グリセミックインデックスは,寒天無添加米飯で大きく,寒天濃度が増加すると減少した。
著者
吉田 真美 後藤 潔 田名部 尚子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.255-265, 2003-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
24
被引用文献数
4

1.中国,朝鮮,日本料理中のショウガ利用を,25冊の料理書を調査することにより,様式別に比較研究した.2,629品のレシピから,ショウガ使用の有無,主材料,調理法,切り方,併用香味野菜・香辛料の面から調べた.2.中国料理では48%のショウガ使用率であり,特に肉類や魚介類を,煮る料理や蒸す料理において高率であった.主に消臭を中心として,香り付けや味付けの目的で使用されていた.3.朝鮮料理では,ショウガは小形状で使われ,多種類の香味野菜・香辛料と共に複合的な食味形成のために用いられていた.特にキムチ料理に高頻度で使用されていた.4.日本料理においては,ショウガは料理の唯一の香味野菜として使用される場合が多かった.料理表面に盛り付けられ,生の芳香や辛味を直接賞味できる使用法が多く,また装飾的役割もはたしていることが特徴的だった.
著者
三橋 富子 田島 真理子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.39-44, 2013 (Released:2013-11-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2

スープストック調製時のアク生成に及ぼす水の硬度の影響を検討した。3種類のミネラルウォーターおよび硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムで調整した様々な硬度の調整ミネラル水を用いてスープストックを調製した。3種のミネラルウォーターでは蒸留水よりも有意に多くのアクを生成したが,水の硬度とアクの生成量は比例していなかった。カルシウムのみ,又はマグネシウムのみで作ったすべての調整ミネラル水のアクは蒸留水よりも有意に多く,また硬度に比例して多くなっていたが,カルシウムのほうがマグネシウムよりもアク生成に強く働いていた。加えて,カルシウムとマグネシウムの混合調整ミネラル水の場合,カルシウムだけの調整ミネラル水よりもアクの生成は抑制されていた。アク中のカルシウム含量はスープストック調製に用いたミネラルウォーター中のカルシウム含量に比例して増加していたが,タンパク質とそれ以外のミネラル類は大きな差はなかった。 アクの生成は,硬度1,000位までは水の硬度よりもカルシウム含量の関与が大きく,またマグネシウムの比率が増加するとアクの生成は抑制されていた。
著者
和泉 眞喜子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.268-272, 2004-08-30 (Released:2013-04-26)
参考文献数
24
被引用文献数
2

ホウレンソウのシュウ酸含量が同じ産地で季節によりどのくらい変動するのか,さらにゆで調理による変化や無機成分の変動について2カ所で調べた. 次の結果が得られた. 1.水分含量は夏期には多く,冬期には少ない傾向だった. それは特に露地栽培で顕著だった. 2.同じ産地,生産者,同じ品種であっても月により総シュウ酸含量は300mg%以上の変動があった. しかし,変動幅が大きい地区と小さい地区がみられた. 3.ゆで後の総シュウ酸の残存率は夏より冬が高い傾向だった. 4.ゆでホウレンソウの遊離シュウ酸の値が高いとえぐみが強かった. 5.K含量とシュウ酸含量は月別変動が同じ傾向を示した. 6.K含量が多いものはシュウ酸含量が多く,えぐみも強いことが示唆された. 本報告の一部は日本調理科学会平成14年度大会において発表した.