著者
三神 彩子 喜多 記子 松田 麗子 十河 桜子 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.300-308, 2009-10-20
被引用文献数
3

本研究では,現在の家庭での上位頻出献立10種類を取り上げ,調理機器や調理道具の選択,調理操作の違いによる省エネルギー効果およびCO_2排出量削減効果を計測した。トーストは,トースターに比べグリルは約30%,ベーコンエッグは,鉄製フライパンに比べテフロン加工フライパンで約44%,さらに油なし・水なしで調理すると約59%,コーヒーは,コーヒーメーカー方式に比べ,やかんを用いて湯を沸かすドリップ方式で約42%,チャーハンは,卵とご飯を混ぜ合わせてから一緒に炒める方法が他の方法と比べ約25%,ガスコンロでの炊飯は,電気炊飯器に比べて約39%,焼き魚は,グリルはテフロンフライパンに比べ約19%,さらに切り方の工夫で約18%,味噌汁は,煮干しを粉砕し丸ごと使用すると約38%,野菜の和風煮物は,油膜使用で約20%,落し蓋使用で約26%,青菜のおひたしは,青菜の3倍の茹で水量は6倍の茹で水量に比べ約16%,カレーライスは,ジャガイモの形状を小さく切ると約72%,さらに茹で水量を同重量にすると7倍水量と比べて約46%のCO_2排出量削減効果が得られた。
著者
貝沼 やす子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.88-94, 2003-05-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
37
被引用文献数
1
著者
駒場,千佳子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, 2000-05-20

豚レバーの下処理の方法及び調理による鉄分量の損失及び食味への影響を、屠殺後の時間経過を含めて検討した。1)レバーを水・牛乳にさらすことによって鉄分の減少が見られた。また、茹でこぼしの水分を介した処理方法では、約45%の鉄分の溶出が見られた。2)乾式加熱の焼き物調理では加熱による鉄分の損失はほとんどみられず、湿式加熱の煮物調理では鉄分の溶出が多く見られた。3)屠殺後1日目と3日目のレバーでは、さらし方法に関わらず鉄分の流出に有意差は見られなかった。4)焼き物調理の食味の官能検査では、屠殺後1日目では総合評価の差は見られなかった。屠殺後3日目では牛乳さらしが有意に良い評価を得た。5)煮物調理の食味の官能検査では、下処理は食味に影響を与えなかった。
著者
大石 恭子 渡邊 暦 渋川 祥子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.184-191, 2010-06-05

調理済み冷凍食品の揚げ上がりは表面の色で判断されることが多く,中心温度は調べられていない。そこで,冷凍コロッケとミートボールを用いて揚げ調理中の中心温度の変化を調べ,適度な揚げ色と中心温度を満たす揚げ条件について検討した。一般的に用いられる油温で揚げると,適度な揚げ色になった時点では中心温度の上昇は十分ではなかった。この傾向はコロッケよりもミートボールのような揚げ衣のない揚げ種の方が著しかった。ミートボールを揚げるには,加熱初期に低温の油で揚げ,中心温度が0℃に達した時点で火力を上げるのが最も良い方法であり,加熱終了時の中心温度は十分に上昇し,かつ揚げ色も適度であった。この条件で揚げたミートボールは,表層はより硬く,もろくなり,揚げ物として好まれるテクスチャーであった。
著者
永嶋 久美子 小川 睦美 島田 淳子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.391-399, 2011 (Released:2014-04-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

凍みもちは鎌倉時代に端を発し,特に東北地方を中心に日常食として広く食されてきた伝統的保存食品である。伝統的凍みもちの製造における,凍結・乾燥工程中の内部温度は温度履歴より,凍結・融解を繰り返しながら最大氷結晶生成帯で長時間保持されており,極めて狭い温度帯に限定されていることを明らかにした。乾燥後は水分含量,重量,体積,密度の減少が見られた。乾燥後の伝統的凍みもちの内部組織構造を観察したところ,大小さまざまな空隙が生じ,切りもちとは異なる多孔質構造を有していた。水浸漬後では,密度の変化は見られなかったものの,吸水率は非常に高く,内部組織構造が影響を及ぼしていることが明らかになった。さらに,食味特性においては,伝統的凍みもちは焼成後の軟らかさを維持し,軟らかく,崩れやすいもちであり,切りもちとは明らかに異なる食感を有し,この特徴を長時間保持し得ることが明らかになった。
著者
伊藤 有紀 福留 奈美 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.351-358, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
34
被引用文献数
1

一汁三菜の食事に適した食器や盛り付けの要点を調理初心者に示すことを想定し,好ましい食器の組み合わせの数値的な指標を明らかにすることを目的とした。まず,もっとも影響が大きいと考えられる飯碗・汁椀以外の食器の大きさについて調べた。飯碗・汁椀の面積(=大きさ)を1.0としたときの三菜(主菜,副菜,副副菜)の大きさ比を種々に変化させて組み合わせた10通りの写真を作成した。料理を盛り付けた状態で女子大学生に好ましさを評価させたところ,主菜2.5:副菜1.5:副副菜1.0の食器の大きさ比がもっとも評価が高く,これを食器の大きさの基準とした。次に,大きさが同一のときの形の影響を調べるためコンジョイント分析を行なった。基準の大きさ比で三菜の食器の形の組み合わせを変えた8通りの写真の好ましさを調理実習指導経験者に評価させたところ,主菜の食器が縦1:横1.6(楕円や長方形)で,副菜の食器が縦1:横1(正円形や正方形)の組み合わせが好まれた。
著者
逵 牧子 内川 輝美 森末 裕希 寺本 忠司
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.344-347, 2008-10-20
参考文献数
5
被引用文献数
1

市販野菜サラダの生菌数,大腸菌群数および大腸菌数の汚染実態を調査し,衛生基準のガイドライン作成を試みた。また,従来法のデソキシコーレイト寒天培地と発色酵素基質法を用いたアガートリコロール培地で大腸菌群を定性および定量的に比較した。さらに大腸菌数を調べた。1.市販野菜サラダ100検体の生菌数は10〜10^6個/g以上と広範囲であった。また,デソキシコーレイト寒天培地とアガートリコロール培地による大腸菌群陽性数はそれぞれ82検体および97検体と高率であり,両者の大腸菌群数は10〜10^6個/g以上と広範囲であった。2.市販野菜サラダの大腸菌陽性数は6検体と低く,その菌数は10〜10^4個/gであった。3. 発色酵素基質寒天培地は消費期限の短い市販野菜サラダの大腸菌群数および大腸菌数検査を1日で判定できる迅速検査法であった。4.発色酵素基質寒天培地から分離された大腸菌群陽性検体の菌種は,Klebsiella pneumoniae,Enterobacter intermedium等であった。
著者
岡野 節子 堀田 千津子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.73-78, 2002-02-20
被引用文献数
1

今回,鈴鹿市における食べ物と行事について聞き取り調査やアンケート調査(郷土料理,天王祭,報恩講,山の神祭り,粥占い)を行った。さらに前述において地域別による検討をした結果,次の回答が得られた。1) 鈴鹿地域の16市町村(69.6%)に郷土料理や行事に関係する食べ物が伝承されていた。2) 鈴鹿地域の北西部には郷土料理や行事は数例であった。3) 鈴鹿地域の中央部や南東部には郷土料理と行事の関する食べ物は北西部と比較すると多かった。その背景には中央部が農業地帯であったことや南東部は沿海地域であったことが示唆された。また,それらの地域には旧街道が通っており,人々や物の往来も多く,そこに文化が生まれ,現在に伝承されていったのではないかと思える。以上,鈴鹿地域における郷土料理と行事に関する食べ物は他の文献から数例しか収集できなかったが,今回の調査により地域別に把握することができた。
著者
林 知子 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.299-305, 2004
被引用文献数
3

動作解析法を用いて,調理技術の習得度の違いにより「輪切り」の包丁の動きにどのような差が生じるのかを検討した. 試料はきゅうり,人参を用い,試料の違いによる包丁の動きの差についてもあわせて検討し,以下の結果を得た. (1) 熟練者群と非熟練者群を比較すると,包丁の持ち方には大きな違いはなく,ほとんどが全握法と卓刃法であったが添え手には大きな違いがあり,熟練者群全員に添え手があるのに対して非熟練者群は半数に添え手がなかった. また明らかに非熟練者群は3切れ分の所要時間が長く,仕上がった輪切りの試料は厚く不均等であった. (2) 非熟練者には包丁の上下,前後方向に細かい動き及び,試料を切って包丁を持ち上げる時に右側に大きく動く動作が認められた. また,まな板平面に対する包丁腹面角度にばらつきが見られ,全体を通して包丁の動きが極めて不規則であった. (3) 試料聞の差を分析した結果,厚さや所要時間に差が見られたが,包丁の最大切り下ろし速度,角度の平均値には差がなかった. ただし,熟練者でも人参では切り下ろす時にギザギザとした動きが見られた.
著者
高倉 裕 河辺 達也 森田 日出男
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.37-43, 2000-02-20
被引用文献数
4

水,本みりん,煮切りみりんおよびエタノール溶液に豚肉(ヘレ部)を浸漬した時の浸漬液の成分分析を行い,可溶性成分の溶出抑制効果の解明を行った。さらに,加熱処理後の豚肉切断図を電子顕微鏡で観察し,豚肉の筋線維崩壊抑制効果について解明を行った。(1) 豚肉に含まれる可溶性成分の溶出を抑制する調理効果に寄与する浸漬液中の成分は,エタノール及び糖であるが,エタノールまたは糖単独では可溶性成分溶出抑制効果は低く,本みりんのように両成分を含有する調味料がもっとも豚肉の可溶性成分溶出抑制効果が高かった。(2) 豚肉を加熱する前にあらかじめ浸漬調理を行なうと,浸漬液の成分によっては加熱処理した豚肉の筋線維が崩壊するのを抑制する効果があることが明らかとなった。筋線維崩壊抑制効果は豚肉内部で発現しており,エタノール成分が重要な役割を果たしているものと考えられる。(3) 豚肉の筋線維崩壊抑制に寄与する成分は,エタノール及び糖であるが,エタノールまたは糖単独では筋繊維崩壊抑制効果は低く,本みりんのように両成分を含有する調味料が最も筋繊維崩壊抑制効果が高かった。
著者
野坂 千秋 星川 恵里 久保田 浩二 小川 宣子 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-9, 2001-02-20
参考文献数
10
被引用文献数
1

専門店シェフちょうせいひん[VP]と一般市販品[VM]のビシソワーズの食感の差異を,物性面を主体とする品質評価から把握し,ジャガイモの裏ごし条件の特に裏ごし時の温度と裏ごし器のメッシュサイズに着目し,ビシソワーズ物性との関連を明らかにした。更に,好ましいビシソワーズの調整操作の条件を定めることを目的に検討を行った。1.市販品の物性評価 VPは,VMに比べ,見かけの粘度が低く,そこに含まれるジャガイモ細胞の粒子径が大きく,ジャガイモ細胞の粒子積分率が高いスープ物性を示した。ジャガイモ細胞の組織観察の結果,デンプン粒が細胞内に存在し,一方,VMでは細胞外へ溶出して糊化した状態にあった。このように,VPはVMに比べて調理工程において細胞が受ける損傷が少ない為に,粘りが弱く,いもの流感のあるスープとなっていることが分かった。2.ジャガイモ裏ごし調理条件が及ぼすビシソワーズ物性の影響 裏ごし時の調製条件として,裏ごし器のメッシュサイズをジャガイモの細胞経を考慮した250μmとし,かつ90℃で行なうことにより,細胞の損傷が少なく,粒子体積分率が高く,かつ見かけのの粘度の低い,品質の良いビシソワーズが調製できた。これらの条件は,シェフの経験的調理条件と一致した。一方,ミキサーによる調製では,破砕による糊化デンプンの細胞外への流出と破砕された細胞の存在から,好ましい調製法には至らなかった。3.裏ごしミキサー調製法の品質効果 裏ごし製法品(条件 : 裏ごし温度90℃,裏ごし器メッシュサイズ250μm)と,ミキサー製法品(条件 : 90℃,9,000rpm×30sec.)のビシソワーズを官能評価した結果,前者は後者に比べて弱りが弱く,いもの粒間を有し,のどごしがよく,食感全体が好ましいという条件で有意に好まれた。以上のことより,ビシソワーズの調理操作条件として,裏ごし製法の適用と,その際の処理条件として温度90℃,裏ごし器メッシュサイズ250μmが好ましいことを明らかにした。
著者
孟 琦 熊丸 陽奈 今村 美穂 中尾 隆人 小幡 明雄 菅原 悦子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.214-220, 2014

調理加熱前後の生醤油と火入れ醤油から,香気濃縮物を調製した。香気濃縮物のGC-O分析により生醤油では火入れ醤油より甘く香ばしい香気成分が多く感知でき,スモーク様の香気成分は少ないこと,生醤油は調理加熱により感知できる香気成分が加熱前より増加することが判明した。AEDA分析により,生醤油で最も高いFDf成分は甘いカラメル様のHEMFと花様の2-phenylethanolであり,火入れ醤油ではHEMFと燻製様の4VGであることが判明した。さらに,調理加熱後も生醤油ではHEMFの寄与が最も高く,火入れ醤油ではHEMFの寄与度が低下した。甘く香ばしい香りを持つ生醤油は,調理加熱後も火入れ醤油と比較してより複雑な香りになることが明らかになった。さらに,官能評価により,調理加熱した生醤油の甘く香ばしい香りは調理加熱した火入れ醤油より有意に強いことが確認され,この香りの特徴は「豚肉のしょうが焼き」において好まれる傾向があることが判明した。
著者
春日 敦子 荻原 英子 青柳 康夫
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.329-336, 2007-10-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
22

低濃度の食塩水を用いた脱塩は“呼び塩”と言われ,多くの料理本では数の子の塩抜きに塩を用いることを薦めている。塩漬け数の子の脱塩中に,拡散による味成分の溶出のみが数の子の味に影響する要因であるのか,またどのような味成分が影響を及ぼされるかを明らかにするために,数の子を水と食塩水を用いて脱塩し,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,遊離アミノ酸,5'-ヌクレオチドの分析を行った。ナトリウム,マグネシウムは,水よりも食塩水を用いた脱塩の方が溶出量は少なかったが,カリウムは食塩濃度とは関係がなかった。脱塩中に浸漬液中の遊離アミノ酸は時間と共に増加し,数の子中の遊離アミノ酸は減少した。水で15時間脱塩した時の,数の子と浸漬液中の総遊離アミノ酸含量の合計は,脱塩前の塩漬け数の子の総遊離アミノ酸含量より1.8 倍多かったが, 3% 食塩水を用いて脱塩した時は全く増加していなかった。さらに, 水で15 時間脱塩した時の数の子中の総遊離アミノ酸含量は, 3% 食塩水を用いて脱塩したときより2倍多かった。これらの遊離アミノ酸の中では, 味が苦いと言われる疎水性アミノ酸が70% 占めていた。これらの,結果は,遊離アミノ酸が水を用いた脱塩中にプロテアーゼによって生成されたことを示唆している。