著者
杉山 寿美 三宅 彩矢 多田 美香 水尾 和雅 都留 理恵子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.64-71, 2011 (Released:2014-08-08)
参考文献数
25
被引用文献数
1

加熱過程および保存過程における煮汁に含まれるコラーゲン,グリセリド,塩化ナトリウムの大根への浸透と大根の硬さについて検討した。その結果,加熱過程では大根の重量が減少すること,グリセリドおよびコラーゲンは大根内部へほとんど浸透しない一方,塩化ナトリウムは速やかに浸透することが示された。グリセリド,コラーゲン,塩化ナトリウムのいずれも大根表面部と内部の量は有意に異なっていた。また,加熱温度が高く,加熱時間が長い場合は内部よりも表面部が硬いことも示された。保存過程では,温蔵,冷蔵保存のいずれでも大根の重量が増加すること,大根表面部と内部の塩化ナトリウム量の濃度差が認められなくなる一方,グリセリドおよびコラーゲン量には差が認められること,大根表面にはコラーゲンが温蔵保存で浸透し,グリセリドが冷蔵保存で表面に付着することが推察された。これらのことから,保存過程が煮物のおいしさに影響することが推察された。
著者
中町,敦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, 2004-05-20

デュラム小麦のセモリナ粉100%使用,標準ゆで時間11分のスパゲティを用いて,ゆで時間を5〜20分まで変えて試料を調製し,アルデンテについての官能評価,水分音量・ゆで歩留測定,拡大写真撮影,糊化度測定,破断試験を行い,以下の結果を得た。1)官能検査の結果,9,10,11分ゆでが「アルデンテである」と評価され,10,11分ゆでが「少し芯がある」,「好ましい」と評価されたので,好ましいアルデンテは10,11分ゆでであった。2)日本人のアルデンテの10,11分ゆでは,ゆで歩留2.3〜2.4,水分含量63〜64%に相当し,これらは中心の白い芯がなくなった状態で,糊化度は90%以上であった。イタリア人のアルデンテはゆで歩留2.1〜2.2とすると,ゆで時間8〜9分,水分含量約60%に相当し,中心にまだら状に白い芯が残り,糊化度は約80%であった。3)破断曲線を微分すると,ゆで時間の違いによってダブルピーク,肩,シングルピークの3つに分類された。日本人が好む10,11分ゆではシングルピークの形で,イタリア人が好む8,9分ゆでは肩がある形であった。破断曲線の微分はスパゲティの芯のゆで状態の指標になった。4)20分放置により,拡大写真撮影では中心部への水分移動が見られたが,糊化度はゆで直後と差が認められなかった。また破断曲線の肩はシングルピークになり,破断特性値は全体的に低下した。
著者
清原 玲子 山口 進 潮 秀樹 下村 道子 市川 朝子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.294-299, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
17
被引用文献数
2

我々は揚げ物,炒め物に独特のコク,うま味の一因として,加熱調理に伴って生成する油脂酸化物の影響を考えた。そこで本研究では油脂酸化物の味への影響を調べるため,主にヒトでの官能評価によって以下のことを明らかにした。リノール酸,リノレン酸,ドコサヘキサエン酸,エイコサペンタエン酸,アラキドン酸(AA)の5種類の脂肪酸を35℃24時間酸化させ水で抽出し,それぞれ醤油希釈水に添加したところ,添加無しに比べて有意に醤油の味が強まった。なかでも酸化AA水抽出物の添加作用が最も強いことが示された。AAを数%添加した植物油で調整したコロッケ,炒飯,野菜スープは有意にうま味,コク味,後味などが強まり,嗜好性も高まる傾向がみられた。以上より,油脂酸化物が食品の味を強める作用を持つこと,また植物油にアラキドン酸を添加することで,油脂調理食品のおいしさを向上できることが示唆された。
著者
長島 万弓 石山 絹子 七野 知子 福田 靖子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.455-461, 2005-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
22

Changes in the antioxidative activities and contents of sesame lignans and polar components, and in free amino acids of two kinds of sesame seed during germination were investigated. Gold sesame (Turkey), which is marketed as germination sesame, and gomazou, which contains large amounts of sesamin and sesamolin, were used. The sesamin and sesamolin contents of the two kinds of sesame seed during germination didn't decrease by any notable extent, and it is presumed that their physiological functions were retained. The contents of polar components in gold sesame increased during the first 24 hours of germination, but suddenly decreased 48 hours later. Although their contents in gomazou also decreased with germination, more remained than in gold sesame. It is presumed that the changes in DPPH radical-scavenging and SOD activities of both types of sesame seed during germination were both correlated with change in polar components. The organoleptic evaluation produced the highest score for the germinated gold sesame, but the taste score was not correlated with the content of free amino acids. GABA was found to increase during the germination of gomazou.
著者
遠藤 瑶子 今泉 有喜 香西 みどり
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.403-412, 2012 (Released:2013-12-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

水温上昇速度1.5~20℃/minで加熱する場合もしくは沸騰水加熱におけるジャガイモの内部温度および硬さの変化をプログラム計算により予測し,最適加熱時間を算出した。計算の結果,沸騰のみで加熱を行った場合に比べて,水温上昇期を利用することで適度な硬さとするための沸騰継続時間が短縮され,試料形状の違いによる沸騰継続時間の差も小さくなった。水温上昇速度が3℃/minよりも緩慢になると硬化の影響が大きくなり,沸騰継続時間は長くなった。水温上昇が1.5℃/minと緩慢な加熱,もしくは95℃一定温度での加熱により試料内部の硬さは均一となり,煮くずれしにくいことがシミュレーションにより示された。5段階評点法による官能評価を行ったところ,1.5℃/minでの加熱により調製した試料よりも煮くずれがほとんどないと評価された。
著者
早川 文代
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.148-153, 2008-04-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
35
被引用文献数
1
著者
峯木 真知子 小林 正彦
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.53-57, 2000-02-20

卵黄球の大きさは卵黄の部位や鶏卵の品種の違いによって異なる(峯木と小林,1997 ; 峯木,1999)。卵黄球の大きさと卵の大きさの関係を調べた。また,卵黄一個中にどのくらいの数の卵黄球が包み込まれているのかを検討した。大きさの異なる市販卵を用い,重量を量り加熱した。加熱した卵黄の外層部,中層部,内層部に存在する卵黄球の横断面積,最大幅,最大長を画像処理技術で測定した。卵黄球の横断面積は,3.20×10^3〜9,88×10^3μm^2で最大幅は60〜99μ,最大長は71〜124μであった。外層部の卵黄球は中層部より小さく,内層部は中層部より大きかった。卵黄球の大きさは全卵の重量および卵黄の重量と正の相関があった。1個の卵黄に含まれている卵黄球の数を,卵黄と卵黄球の体積から計算した。その結果,卵の大小にかかわらず,卵黄球,の数は約1.8×10^7個であった。小さい卵には小さい卵黄球が,大きい卵には大きい卵黄球が存在した。
著者
岩崎 裕子 大越 ひろ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.23-30, 2013 (Released:2013-11-22)
参考文献数
23
被引用文献数
2

大根とゾルを混合した混合系試料を調整し,固形物の硬さの相違が混合系試料の食べやすさへ及ぼす影響を検討するため,力学的特性の測定,官能評価,筋活動測定を行った。 混合系試料は大根とトロミ調整食品を混合して調製した。大根は,加圧加熱,蒸し加熱,生,と硬さを段階的に変化させた三試料を用い,それぞれMR,MS,MPとした。コントロールとして蒸し大根のみの試料を大根Sとした。 喫食者にとっては試料全体ではなく,固形物の硬さが重要であることが示された。また,大根Sが混合Rよりも総筋活動量が低く,官能評価において飲み込みやすいと評価され,ゾルと混合することよりも,食品の硬さをある程度軟らかくすることが,きざみ食の食べやすさの改善に有効であることを示した。
著者
山崎 貴子 伊藤 直子 大島 一郎 岩森 大 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.176-183, 2008-06-20

マイタケに含まれるプロテアーゼの作用と低温スチーミング調理の併用による牛肉軟化について検討した。マイタケ抽出液は50-70℃で最もカゼイン分解活性が高く,70℃で8h反応させたあとでも30-40%の活性が残っており,熱安定性が高かった。マイタケ抽出液とともに牛モモ肉を低温スチーミングすると,茹でた場合や,水またはしょうが抽出液を使った場合に比べて,溶出するタンパク量が多かった。しかしうま味に関係するグルタミン酸は特に溶出は増えておらず,むしろマイタケとともにスチーミングした肉で有意に増加していた。組織観察の結果,マイタケ抽出液で処理したものはタンパクが分解されている様子が観察された。破断測定および官能評価では,マイタケ抽出液とともにスチーミングしたものは有意に散らかく,噛み切りやすいという結果となった。マイタケと低温スチーミング調理を併用すると,効果的に食肉を軟化できることが示唆された。
著者
石渡 奈緒美 堤 一磨 福岡 美香 渡部 賢一 田口 靖希 工藤 和幸 渡辺 至 酒井 昇
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.275-284, 2012-08-05
参考文献数
25

IHクッキングヒーターとフライパンによりハンバーグを片面焼成し,一度反転させた際の伝熱と形状変化の解析ならびに,大腸菌O157:H7を対象とした殺菌価を算出した。初期中心点の温度が20, 30, 40および50℃到達時,反転させた伝熱解析値ならびに形状変化は実験値と一致した。なかでも形状変化は,反転直前は初期中心点が厚みの半分より上に,調理終了時は半分より下に位置する実験結果を再現した。殺菌価は,50℃反転試料以外は初期中心点が75℃ 1分を保持していても,調理終了時の試料上面の殺菌価は不十分であると判明した。そこで試料全体が十分な殺菌価を得るのに要する時間を算出した結果,40℃反転試料が最も焼成時間が短く,加熱負荷が最も少ないことが明らかとなった。また,厚みを変化させ,反転温度40℃を対象とした同様な解析を行ったところ,厚み2.0cm程度が本調理条件において最適な試料の厚みであると示唆された。
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 今村 美穂 小幡 明雄 安原 安代
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.301-307, 2015

本研究の目的は,魚の漬け焼き―醤油を用いて調味した焼き魚の1種―において,その調理特性や食味におよぼす醤油の影響を評価することである。メカジキを異なる配合割合の醤油や食塩濃度の調味液に浸し,250℃オーブンで加熱した。<br> 基準配合のNaCl 5.2%(w/w)調味液の場合,加熱歩留りには醤油配合割合の影響が見られなかった。しかし,醤油配合割合が25%以下の場合,加熱魚肉の嗜好性は低下した。<br> 0.5時間の浸漬において,生臭みは標準と醤油無添加の調味液のみに有意差がみられ,このことは醤油配合調味液の短時間の浸漬の有用性を示した。調味液の食塩濃度が2.6%(w/w)以下の場合には,加熱魚肉の嗜好性が低下した。更に,漬け焼きとして好まれるには,調味液の食塩濃度が少なくとも3.9%(w/w)であることが認められた。
著者
久塚 智明 小川 宣子 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.312-316, 1999-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
6

Samples of savory cup custard obtained from the food service industry were analyzed for the concentration of egg solution by the amount of protein, for the ratio of egg yolk solution by the total amount of phophorous, and for the quantity of dried bonito by the amount of histidine.The concentration of egg solution in the samples of savory cup custard prepared by the food service industry varied from 21.9% to 33.2%. The ratio of egg yolk to egg solution and the bonito concentration in the samples from special shops were larger than in those from general shops.The sensory evaluation result showed that the savory cup custard with an egg solution concentration of 25%, a breaking strength of 3734±267 Pa and a storage modulus of 135±18 Pa was most favored by the panelists.The ratio of egg yolk to egg solution corresponded to the breaking strength. It is clear that both the 30∼40% and 65∼80% ratio of egg yolk to whole egg contributed to the firmness of a good savory cup custard. It is suggested that the addition of egg yolk to whole egg is the best method for preparing savory cup custard. The samples prepared at the ratio of 65∼80% egg yolk to whole egg did not have a smooth texture and strong egg yolk flavor which is not a desirable feature in a good-quality savory cup custard.
著者
孟 琦 今村 美穂 小幡 明雄 菅原 悦子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.249-254, 2015 (Released:2015-09-05)
参考文献数
18
被引用文献数
2

醤油にみりんと砂糖を添加した調味液の加熱による香気の質的変化とその寄与成分を解明するために,醤油とその調味液から香気濃縮物を調製し,香気濃縮物を比較した。香気濃縮物のGC-O分析の結果,調理加熱によって感知できる香気成分数は醤油では減少したが,調味液では増加した。AEDA分析の結果,調理加熱前後の調味液中のFDfが最も高かったのはカラメル様のHEMFで寄与度に変化はなかったが,醤油ではHEMFの寄与度が低下した。みりんの主要成分であるグルコースを添加したモデル調味液は,調理加熱後に感知できる香気成分数が増加し,HDMFとHMFの寄与度が上昇した。このような香気成分の変化は,調味液と酷似していた。これらの結果は,グルコースを多く含むみりんの添加が調味液の調理加熱による香気の形成に大きく寄与することを示している。
著者
石田 丈博 福井 裕 松田 秀喜 的場 輝佳
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.480-485, 2005-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
5

Takehiro Ishida Hiroshi Fukui Hideki Matsuda Teruyoshi Matoba The anti-oxidative effect of mirin on whole sardines and sardine fish-balls was investigated during thermalcooking. The thiobarbituric acid (TBA) values of both after cooking with mirin were lower than those cookedwith mirin-like seasoning or sugar.The TBA values after cooking with mirin or ethanol- eliminated mirin were also lower than those cooked withethanol or water.The 1, 1-diphenyl-2-picrylhydrazyl (DPPH) radical-scavenging activity of the whole sardine, its broth and itsfish-ball after thermal cooking with mirin were all higher than those cooked with mirin-like seasoning or sugar.