著者
和田 拓郎 五十嵐 圭里 松田 秀喜
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.405-410, 2007-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1

塩化ナトリウム及び塩化カリウム濃度差が与えるしょうゆの味への影響について,官能検査と味覚センサーで評価解析し,その相関性について検討を行った。結果,塩化ナトリウム及び塩化カリウムの濃度差は味覚センサーにより識別され,主成分分析による解析で,それぞれの成分濃度の方向性が示された。主成分分析による解析から得られた成分濃度の方向性と,そのユーグリッド距離の計算結果は官能検査を支持した。さらにPLS回帰分析による解析結果においても官能検査との相関が具体的に認められた。このことにより,主成分分析及びユーグリッド距離の解析結果を指標として,減塩しょうゆの味質の違いを客観的に評価することができる可能性が示されたと考えられる。以上の結果を基に,この方法を用いて市販しょうゆに対し評価を実施した結果,官能検査を支持する味覚センサーの解析結果が得られた。
著者
堀江 秀樹
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.346-351, 2012-10-05

グアニル酸がグルタミン酸の味を強めることはよく知られている。何種類かの野菜(ナス,トマト,ニンジン,ダイコン,ネギ,ホウレンソウ)の蒸し処理によりグアニル酸が生成することを見いだした。ニンジンジュースへのグアニル酸の添加(蒸し野菜に含まれる濃度レベル(10mg/l))をパネルは官能的に判定できた。蒸し野菜に含まれるグアニル酸はグルタミン酸のうま味を強めることにより,味に寄与することが示唆された。トマトのオーブン加熱は呈味成分を濃縮し,グアニル酸も生成した。焼いたトマトのうま味は,濃度の増加したグルタミン酸とグアニル酸の間の相乗効果のために,生のトマトよりも非常に強いものとなる。グアニル酸含量は調理野菜の味研究における重要な指標となるものと考えられる。
著者
和泉 眞喜子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.240-243, 2006-06-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
丸山 悦子 坂本 薫 岡井 紀代香
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.224-230, 1995-11-20
被引用文献数
6

ジャポニカ米とインディカ米について, 調理特性を比較検討し, 炊飯時に流出する成分と食味特性との関係を明らかにする目的で実験を行い, 次のような結果が得られた。1. 白飯の官能検査による総合評価では, あきたこまちが最も好まれ, 次にコシヒカリ, きらら397, アスカミノリの順であった。ホシユタカ, A1-333はつやがなく, 硬く, 粘りやうま味が少なかったが, RINX-89は粘りがあり軟らかく, 独特の香りがあり, 硬さとうま味は総合評価と高い相関があった。2. 炊飯液のヨード呈色度は, ジャポニカ米よりホシユタカ, RINX-89, A1-333は高く, 溶出固形物量においても同様の傾向がみられた。また, RINX-89, A1-333はタンパク質は10%前後で比較的多い。3. 米粉のアミログラム特性値と官能検査の硬さ, 粘りとは有意に相関し, ホシユタカ, A1-333の糊化開始温度は高く, 最高粘度, ブレークダウン, 最終粘度はジャポニカ米とRINX-89が高い。4. 飯粒洗浄液の全糖, 還元糖量はジャポニカ米に多く, これは官能検査の総合評価とよく相関している。ホシユタカ, RINX-89, A1-333はβ-アミラーゼ分解限度が比較的高く, 米によって飯粒外層部の溶出でんぷんに構造的な違いがあるものと考えられる。5. 飯粒洗浄液の糖組成では, あきたこまち, コシヒカリには単糖, 二糖, 三糖類が多く含まれ, ホシユタカ, A1-333ではこれらの値がやや低い。6. 各種調理法による米飯のテクスチャーでは, 常法飯はホシユタカとA1-333が硬く, 付着性は小さいが, バターライスでは官能検査における差が小さく, インディカ米は, 常法飯よりもバターライスに適することを明らかにした。
著者
真部 真里子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.191-192, 2011 (Released:2014-07-25)
参考文献数
2
被引用文献数
2
著者
小宮山 誠一 目黒 孝司 加藤 淳 山本 愛子 山口 敦子 吉田 真弓
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.336-342, 2002-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
13

We examined the relationship between the starch content of potato and its cooking quality. Potato tubers were assigned according to their starch content from 12% to 16%. They were cooked by different methods and a sensory evaluation then carried out. In the case of boiling, steaming, frying and heating in a microwave oven, potato with the high starch content (HS) was evaluated as having a richer and more mealy feeling and better taste than potato with the low starch content (LS). On the other hand, in curry and nikujaga (pototo stewed with pork), LS was evaluated to be better than HS because of less collapse after cooking. In potato salad, HS was evaluated more highly than LS in taste only by the manufacturers' panel. The glutamic acid content was particularly low in potato tubers with a starch content of 15% and above.
著者
日本調理科学会加熱調理研究委員会 余熱研究グループ
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.72-78, 2011 (Released:2014-08-08)
参考文献数
3
被引用文献数
2

「大量調理衛生管理マニュアル」には,肉類を加熱する場合,75°Cに達してから1分以上の加熱することとなっている。しかし,焼き物などの場合,過加熱で調理成績が低下することがあることから,余熱を利用することの可能性について検討した。オーブン加熱について直径50 mm,厚さ15 mmの円筒形の豚肉試料を用いて実験を行った。庫内温度を270°C以上に設定した場合には,70°Cに達してから1分間加熱すると,余熱により75°C以上を1分以上保持できることが明らかとなった。これらの肉は,75°Cに達してから1分間加熱した試料より,重量減少は有意に小さく,破断応力も小さく,軟らかいことが明らかとなった。肉類をオーブンで加熱する場合75°C 1分を保持するには,設定温度と肉の大きさによっては,余熱を利用することが有効であることが明らかとなった。
著者
高橋 ひとみ 佐治 伸郎 柳沢 幸江
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.315-325, 2018 (Released:2018-12-17)
参考文献数
39

本研究は,調理の初心者と熟練者の調理行動を分析し,調理操作,調理の段取りの特性を明らかにすることを目的にした。豚肉のしょうが焼き,ほうれん草のお浸しの2品の組み合わせを2回連続して調理させ,1回目調理と2回目調理の差を検討した。 調理操作で初心者と熟練者で有意差がみられた項目は,全調理時間,レシピを見た時間,レシピを見た回数,総移動距離,キャベツせん切り時間とせん切り太さ,ほうれん草の加熱時間,及び仕上がりの硬さであった。 調理の段取りでは,初心者の1回目調理は,レシピの提示順に則った段取りであった。一方,熟練者は時間のかかる操作を先にした効率のよい段取りを導きだすことができた。初心者も2回目調理では,熟練者の段取りに近づいた。 すなわち,段取りの策定に関しては,自ら調理することは,1回の経験でも学習効果が得られることが示された。
著者
赤石(喜多) 記子 五月女 まりえ 小林 愛美 山下 美恵 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.153-162, 2011-04-05
被引用文献数
2

スペルト小麦粉にレーズン,麹,ヨーグルトより得た発酵液を添加したドウ及びパンを作り,物性面,機能面,嗜好面から検討した。・麹発酵液添加ドウは[ストレート法]よりも[中種法]で調製した方が,グルテンの伸展性が低下し,パンの膨化性が悪く,破断エネルギーが高値を示した。・ヨーグルト発酵液添加ドウは[ストレート法]よりも[中種法]で調製した方がパンの比容積は上昇し,破断エネルギーは低値を示した。・走査型電子顕微鏡観察よりパン内部の気泡状態は物性に影響を及ぼすことが明らかとなった。・ドライイーストパンよりもこれら発酵液添加パンの抗酸化性は高く,官能評価でもレーズン,ヨーグルト発酵液添加パンの嗜好性は高かったことより,パンに食品素材由来の発酵液を添加することの有用性が認められた。
著者
三橋 富子 戸田 貞子 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.241-247, 2008-08-20
被引用文献数
6

塩化ナトリウム,ショ糖およびクエン酸の検知および認知閾値を測定して,加齢および性差の味覚感受性に及ぼす影響について検討した。また,食物嗜好と味覚感受注の関係についても調べた。被験者は65歳以上の男子22名,女子32名,および20歳前後の男子54名,女子54名である。加齢による味覚への影響は顕著に見られた。高齢者は若者に比べ統計的に有意に高い検知閾値を塩化ナトリウムとクエン酸について示し,認知閾値においてはショ糖とクエン酸について示した。クエン酸については性差も認められ,高齢者男子は高齢者女子よりもクエン酸の感受性が低かった。プロビット法により分析したすべての閾値は,ショ糖の検知閾値を除いて,若年者女子,若年者男子,高齢者女子,高齢者男子の順に高くなっていた。塩化ナトリウムに対する感度の低い人は漬物,あるいは塩辛のような塩辛い食物を感度の良い人よりも好んでいた。味覚感受性と食品嗜好の関係についてはほかには認められなかった。
著者
冨岡 典子 太田 暁子 志垣 瞳 福本 タミ子 藤田 賞子 水谷 令子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.120-130, 2010-04-05

日本においてエイの食習慣が形成された背景および地域性を明らかにすることを目的に,「平成15・16年度日本調理科学会特別研究-魚介類の調理」および『日本の食生活全集』を主な資料として検討した結果,以下のことが明らかになった。エイは,東北,近畿,中国地方の海から遠い内陸部や山間部地域の晴れ食には欠くことのできない食べ物として供されていた。エイの魚肉は尿素含量が高く,魚類としては腐敗しにくい特性を持ち,日持ちのする無塩もの(鮮魚)として調理できること,また,乾物にして保存し,利用できることなど,海から遠い地域でも利用できる条件を満たす海魚であった。エイは,肉,ひれ,骨のすべてが食用になり,軟骨特有のコリコリとした歯ごたえおよび煮もの調理によって形成されるゼラチン質の煮こごりなどの食感は,日本人の嗜好に合い,本草書に記されたエイの食品価値は,民間に伝わったアカエイの肝の薬効とともに高く評価されてエイの食習慣が定着した。
著者
寺本 あい 治部 祐里 渕上 倫子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.194-202, 2006-06-20
被引用文献数
3

本研究の目的は,冷凍卵液ゲルの物性の改良への高圧力と糖(グルコース,トレハロース,スクロース)の役割を調べることである。糖無添加およびグルコース,トレハロース,スクロースを5%添加した卵液ゲルを作成し,0.1〜686MPa,-20℃で冷凍した。-20℃で高圧処理中,糖無添加ゲルでは200〜400MPa,糖添加ゲルでは200〜500MPaで過冷却を保ち凍結しなかった。過冷却されたゲルは,圧力解除時に急速凍結(圧力移動凍結)し,細かい顆粒状の氷結晶が生成した。このため,圧力移動凍結した卵液ゲルは,物性(破断応力と破断歪率)の変化が少なかった。また,卵液ゲルへの5%糖添加は,冷凍卵液ゲルの組織及び物性からみた品質の向上に効果的であった。しかし,3種の糖の間で大きな差はみられなかった。