著者
畑江 敬子 奥本 牧子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.133-140, 2012-04-05
参考文献数
9

煮物の味は冷めるときにしみ込むという言い伝えを検証するために,ジャガイモ,ダイコン,コンニャクを2cm角の立方体に成形し,1%食塩水中で食べられる軟らかさまで加熱後,0, 30, 50, 80, 95℃で90分まで保温し,30分後と90分後に外層部と内層部の食塩濃度を測定した。温度降下条件を各設定温度に試料を加熱した鍋のまま移す緩慢条件と,氷水に鍋をつけて設定温度まで下げた後保温する急速条件の2種とした。いずれの条件でも,保温温度が高いほど,食塩の内部への拡散は犬さく,このことは官能評価でも確認された。これらの結果から冷めるときに味がしみ込むということは見いだせなかった。ソレ効果についても検討したが,ソレ効果で煮物の調味料の拡散を説明することはできないことがわかった。冷めるときに味がしみ込むというのは,冷める時間に調味料が内部へ拡散することを言っているのではないかと考えられる。
著者
佐藤 久美 小川 友理江 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.200-205, 2011-06-05
参考文献数
17
被引用文献数
1

豆腐の凝固剤である'にがり'を用いてプディングを調製し,その製品の色差測定により外観の評価,テクスチャー測定および動的粘弾性の測定により物性の評価,抗酸化性の評価,官能評価による嗜好性を評価し,総合的にプディングの品質を検討した。その結果,無添加に比べて,'にがり'添加により黄度か弱く,明度が高い製品となった。テクスチャー測定では付着性が低く,軟らかいプディングとなった。抗酸化性においても'にがり'添加で増強されることがわかった。動的粘弾性測定では'にがり'添加濃度0.5wt%の製品が高周波領域では他の試料に比べ貯蔵弾性率ならびに損失弾性率が周波数に大きく依存し,ゲル構造が柔らかくしなやかなプディングであると考えられた。嗜好意欲尺度法による官能検査では0.5wt%添加が最も嗜好意欲が大であり,プディングへの'にがり'添加の有用性が認められた。
著者
永塚 規衣 大野 隆司 大川 祐輔 河村 フジ子 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.364-370, 2003-11-20
参考文献数
17
被引用文献数
2

ゼラチン溶液に糖及びアルコールを添加した場合のゲル化機構を動粘度モニタリングシステム,旋光度,動的粘弾性,レオメータの測定により検討した結果を以下にまとめた。1)糖及びアルコールの添加はアルカリ処理低温抽出ゼラチンのゾル-ゲル変換に影響を及ぼした。糖添加によりゲル化開始時間は短く,ゲル化が完了した時間は長く,ゲル化温度は高くなった。一方,エタノール20%添加ではゲル化開始時間,ゲル化時間は長く,ゲル化温度を低下させた。2)本試料ゼラチンのゲル化では,粘性率の増加から始まり,続いて弾性率の増加が起こり,最後に旋光度という順で変化が起きていた。3)ソルビトール添加はゼラチン分子のへリックス形成に有効であり,弾性率も上昇し,硬いゲルを形成したが,高濃度のエタノール添加はゼラチンのヘリックス形成に抑制的に働き,弾性率も低下し、破断波形において延性を増した。
著者
松田 康子 松本 仲子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.249-256, 2000-05-20
参考文献数
6
被引用文献数
1

調理素材の変化や新しい調理器具の出現によって、従来の調理法とは異なる、より望ましい方法があるものと考えられる。そこで日常の料理をもとに、簡便化を主目的に、各料理をいくつかの器具や操作で調理し、官能評価して、それらの間に差がみられるか否かについて検討した。あじの塩焼き、さけのムニエルでは、降り塩の時間を変えて比較したが、時間の間に有意差はみられず、またみそ漬け前の降り塩の時間の違いについても有意な差は認められなかった。ハンバーグについては、パン粉を牛乳に浸すものと浸さないもの、タマネギを炒めるのと炒めないものとを比較したところ、パン粉を牛乳につけるか否かについては有意差はみれなかったが、タマネギについては嗜好が二分した。厚焼き卵については、卵液を濾したものと漉さないものを比較した結果、有意差はみられなかった。ソテーに用いるホウレンソウの下処理については、適当な長さに切ってから茹でたものが有意に良いと評価された。かぼちゃのコロッケでは、かぼちゃを裏漉す、すりこ木で潰す、フードプロセサーで潰すの三方法に好みが分散した。豚カツについては肉叩きで叩く、叩かないの間には有意差は認められなかった。こんぶとかつお節のだし汁のとりかたについては、こんぶを沸騰直前に取り出さず、かつお節とともに加熱してから濾し取る方法が有意に高く評価された。みそ汁に用いる油揚げについて油ぬきしたものと、しないものについて比較した結果は、両者間に有意差はみられなかった。
著者
下村 道子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, 2005
著者
分部 麻希 村上 千秋 丸山 武紀 新谷 〓
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.221-228, 2000-05-20
被引用文献数
3

1)AsA及びDAsA標準水溶液の温度による安定性を比較すると、5〜50℃ではAsAの方が安定性が悪く90℃ではDAsAの方が悪かった。2)AsA及びDAsA標準溶液のpHによる安定性を比較すると、AsAはpH4〜pH7の範囲で安定だが、DAsAはpHが高いほど不安定であった。3)野菜ジュース中のAsA及びDAsAの挙動は野菜の種類によって異なり、保存中にAsAがほとんど酸化されない者、ジュース調製中にすべてDAsAに酸化され、保存中に総VCが著しく低下するものまで様々だった。4)ジュース調製後の加熱の影響は、加熱により総VCは低下するが、高温または電子レンジ加熱では、24時間保存後の残存率は未加熱に比べて高かった。5)ピーマンジュースのpHによるAsAの安定性はpH4以下またはpH7以上で良く、pH5.5付近で最も悪かった。6)ピーマンジュースの場合、食酢、レモン汁、牛乳の添加が効果的だった。パセリ、キャベツ、セロリ、にんじん及びレタスの各ジュースではレモン汁が特に効果的であったが、牛乳の添加で、無添加に比べ総VCの残存率が低下した。
著者
殿塚 婦美子 谷 武子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.14-19, 1995-02-20
被引用文献数
3

ブラウンルーの別法として, 油脂を用いず小麦粉を天板に入れ, 天火で焙焼する(以下焙り粉と略す)方法の焙焼条件の標準化を目的として, 焙焼条件の異なる焙り粉を調整し, 焙り粉の客観的指標, 天火設定温度と焙焼時間および焙り粉希釈加熱液(ソース)の煮込み時間について検討した。その結果, 次のことが明らかになった。1. 焙り粉の焙焼による色の変化は, 設定温度により異なり, 焙焼温度と時間の管理が重要であった。2. 焙り粉の色は, きな粉や米ぬかの色と似ており, 客観的指標は, 小麦粉(未加熱)に対する色差は31~36であった。3. 官能検査の結果から, 焙り粉の焙焼条件, すなわち天火設定温度と焙焼時間は180℃(120分), 190℃(60分), 200℃(45分)が適当であった。なかでも190℃(60分)は最も評価が高く, 品質管理, 作業能率の面からも最適と考える。4. 焙り粉希釈加熱液(ソース)の煮込み時間は, いずれの焙焼条件の焙り粉においても, 120分間に比べ, 5分間が有意に好まれた。5. 設定温度180℃(120分), 190℃(60分), 200℃(45分)で調整した焙り粉のみかけの粘土は, 類似であり, 煮込み時間による変化もわずかであった。6. 焙り粉の嗜好は, ブラウンルーに比肩した。
著者
山中 英明 河嶌 泰子 潮 秀樹 大島 敏明
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.206-213, 1998-08-20

4種類のイカ墨および2種類のタコ墨のエキス成分ならびに抗菌性の比較をおこない, 次の結果を得た。(1) 遊離アミノ酸総量はイイダコ, マダコ, スルメイカの墨において高かったが, 他のイカ墨では低かった。タウリンはいずれの墨にも高含量含まれていた。グルタミン酸, グリシン, アラニン, プロリン, チロシン, アルギニン, ロイシンがイイダコ, マダコ, スルメイカに高含量検出された。(2) 有機酸としてはコハク酸がトラフコウイカに, 乳酸がマダコとイイダコにかなり高含量検出された。(3) グリシンベタインがイイダコとスルメイカに1%以上含有されていた。(4) タコ墨の方がイカ墨より呈味に関与するエキス成分含量が高かった。(5) イカ墨, タコ墨をイカ, タコそれぞれの筋肉に添加すると揮発性塩基窒素(VBN)の上昇を抑えた。すなわち, イカ墨, タコ墨ともに抗菌性が認められ, 抗菌性の強さはほぼ同程度と考えられた。(6) イカ墨, タコ墨ともに酢酸の生成ならびにタコ筋肉のプトレシンの生成を抑えた。また, タコ墨はギ酸の生成も抑えた。
著者
小川 宣子 久塚 智明 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.148-155, 2002-05-20
被引用文献数
2

卵の鮮度が卵白を加熱した時に及ぼす影響について濃厚卵白及び水様卵白の20℃から85℃の加温過程における動的粘弾性(貯蔵弾性率G',損失弾性率G")と,卵白ゲルのテクスチャー(硬さ,凝集性)から調べた。また,この時の組織構造を走査電子顕微鏡により観察を行ない,卵白ゲルの物性と組織との関係を検討した。試料は産卵4時間以内の卵(新鮮卵)を殻付きのまま25℃で14日間保存を行ない,7日保存(7日保存卵),14日保存(14日保存卵)について調べた。濃厚卵白及び水様卵白いずれの場合も卵の鮮度が悪くなると熱変性温度が高く,加熱卵白ゲルのG'は大きく,硬さは軟らかくなり,熱変性しにくくなることが明らかになった。濃厚卵白と水様卵白では熱変性温度に違いがなかった。濃厚卵白と水様卵白の卵白ゲルの硬さは新鮮卵では違いがなかったが,7日保存卵,14日保存卵の濃厚卵白と水様卵白の卵白ゲルの硬さは水様卵白の方が軟らかった。これは水様卵白ゲルのtanδの方が大きいことより水様卵白ゲルの結合状態が弱いことが原因であると考えられた。軟らかな卵白ゲルの構造は新鮮卵に比べて緻密な構造ではなく,大きな紡錘体が存在した。
著者
下坂 智惠 杉山 静代 熊谷 佳代子 木下 朋美 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.344-351, 2004-11-20
被引用文献数
1

カスタードプディングの基本的な配合割合にクリームを添加し,嗜好性の高いプディングの配合割合を検討した。基本材料である鶏卵,牛乳,砂糖にクリームを加えてプディングを調製し,乳脂肪,植物性脂肪のクリームがプディングの物性,食味に与える影響を調べようとした。その結果,次のことが明らかになった。1.プディングは,牛乳の一部を乳脂肪クリームで代替することにより,破断荷重値が有意に低くなり,官能検査においても,基本と比べ,軟らかく,甘く,総合的においしいと評価された。植物性脂肪クリームを加えたプディングは,代替量が増加することにより硬くなる傾向を示した。鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,白く,やわらかく,甘く,なめらかなプディングとなり,総合的に好まれた。2.物性試験において,牛乳の一部を乳脂肪で代替すると破断荷重値が低下し,クリームの割合が高くなるにつれ,さらに低下した。一方,植物性脂肪クリームで代替すると,少量の代替ではやや低下したが,代替割合を高くすると逆に破断荷重値が高くなった。クリープメータによる荷重曲線から,プディングの物性が材料配合の割合で異なり,水分よりもクリームの種類,牛乳及び鶏卵の割合が影響することが示された。すなわち,牛乳の一部を植物性脂肪クリームで代替したプディングは,基本プディングとほぼ同様の荷重曲線を示した。しかし,乳脂肪クリーム代替では,荷重曲線にみられたピークが低く,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームでは,プディングの物性に対する影響が異なった。また,鶏卵の一部をクリームで代替したプディングは,非常にゆるやかな,破断荷重値が低い曲線となり,乳脂肪クリームと植物性脂肪クリームとの違いはほとんどみられなかった。3.プディングの組織を顕微鏡で観察すると,加えたクリームの種類により脂肪球の大きさか異なっていた。乳脂肪クリームでは,脂結球が大きくこれがたんぱく質の結合を阻害していると考えられた。植物性脂肪クリームでは,均一な細かい脂肪球が全体に分散していた。小さな脂肪球の多粒子が集まって凝集を起こし固化するために硬くなるものと推察した。なお,本研究の一部は,日本調理科学会平成14年度大会において発表した。
著者
綾部 園子 阿部 芳子 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.163-168, 2011-04-05

4種類の麺試料,『水麺』(小麦粉と塩水),『かん水麺』(小麦粉とかん水),『卵麺』(小麦粉と卵水)と『卵かん水麺』(小麦粉,卵水とかん水)の糊化特性を,β-アミラーゼ-プルラナーゼ法(BAP法)と全反射型赤外線吸収スベクトル分析法(FT-IR/ATR法)で測定した。FT-IRスベクトルの1,025cm^<-1>付近のピークの高さは,糊化小麦粉の比率が増すにつれて顕著に増加した。この波数の吸収度は,澱粉の糊化によって水和したOH基の増加を反映する。FT-IR法とBAP法の糊化度の間に高い相関関係があったが,BAP法による値はFT-IR法によりもわずかに高い値であった。これは,残留タンパク質の量と測定方法の違いによると考えられた。1日保存後では,FT-IR法とBAP法,破断応力,破断エネルギーと有意な相関関係があった。これは,麺の水分が内部に移行して,硬さが均一化していることが影響すると考えられた。
著者
島田 淳子 関本 美貴
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.113-119, 2010-04-05

明治時代初期からの日本の法律を,食文化との関連で解析した。明治時代から平成時代までに制定された全法律数は,日本で民主主義が確立された昭和20年(1945年)以降に激増した。食に関するキーワードを含む法律数も同様の傾向を示した。これらの法律を食文化との関連性の有無で解析した。「食文化」という表現は平成17年(2005年)に公布された食育基本法に初めて登場した。次にそれ以前に公布された法律について食文化との関連について調査したところ,食文化に関する表現は昭和29年(1954年)に公布された学校給食法に認められた。
著者
岡野 節子 岩崎 ひろ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.69-71, 1998
参考文献数
4
著者
赤石(喜多) 記子 長尾 慶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.351-358, 2010-12-05
被引用文献数
2

栄養成分が豊富でアレルギーを起こしにくいと言われているスペルト小麦を用いて加熱操作の異なるパンを調製し,外観,物性,機能性面から比較検討した。ベーグルパンは茹で操作中にドウ内部が予備加熱される為,パンの膨化は他の加熱法に比べて最大となった。パンの色調は乾式加熱でメイラード反応によりa^*値,b^*値の上昇とL^*値の低下がみられた。破断試験の結果,パン内層部の破断エネルギーは天火加熱と電子レンジ加熱で高値となり,ベーグル加熱,揚げ加熱,蒸し加熱で低値となった。クラスト及びクラムの水分の存在が力学特性に強く関与していることが推察された。普通小麦パンでは生ドウを加熱することで,抗酸化性が損失するのに対し,スペルト小麦パンでは低下せずに安定性が高いことが認められた。SDS-PAGE結果より,スペルト小麦パンと普通小麦パンでは分子量50kDa及び37kDa付近に差異が見られ,10〜15kDa付近のバンドは長時間加熱の天火加熱及び蒸し加熱法で消失することが確認された。