著者
根来 宏明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.694-700, 2016 (Released:2018-08-06)
参考文献数
9

酒臭い息で帰宅して家族に顔をしかめられる,多くの人が身に覚えがあるのではないだろうか。飲酒後の呼気のにおいは,お酒を敬遠する要因の一つかもしれない。著者らは,GC-olfactometry/MSを用いて呼気の「酒臭さ」に関わるにおい成分を同定し,さらに,お酒の種類やタイプの間でもその成分に違いがあることを明らかにした。今後,「酒臭くならない」お酒の開発などにもつながっていきそうな,興味深い研究である。
著者
青島 均
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.208-222, 2008-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
41

アルコール飲料が生体に及ぼす影響は多岐にわたるが, 最近その香気成分が注目され, 神経受容体, 特にGABAAレセプターに対する効果について著者らにより検討されてきた。本稿では中枢神経の受容体機構との関連からウイスキービール, カフェインに対するGABAAレセプターの応答に関する新しい知見を紹介していただいた。
著者
安渓 貴子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.9, pp.629-636, 2002-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
16

多様性の大陸アフリカには, おどろくほど多彩な地酒づくりの文化が花開いている。サハラ以南のアフリカの伝統の酒造りの中には, 乾燥地の狩猟採集民の果実酒や, 季節的に雨が降るサバンナ帯のハチミツ酒とさまざまな穀物を発芽させてつくるビールの仲間, 湿潤な森林地帯のヤシ酒や泡盛にも似た風味をもつカビ付けした米の蒸留酒などが連綿とつくられてきた。これは, そうしたアフリカの地酒づくりの技術の科学的理解のための覚え書きである。
著者
金子 健太郎 進藤 斉 佐藤 和夫 高橋 康次郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.7, pp.539-549, 2013 (Released:2018-01-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1

不飽和脂肪酸の水和化能の高い乳酸菌を用いて,焼酎もろみ中でγ-ラクトン類を生成させるための諸条件を検討した。1.水和化能の高い乳酸菌をどぶろくから分離し,その中から能力の高い乳酸菌26-a株,26-d株及び41-d株 の3株を分離した。同定の結果,26-a株及び26-d株はLb.brevisと同定されたが,41-d株は同定に至らなかった。2.焼酎もろみでの不飽和脂肪酸の供給源として麹エキスや酵母の自己消化物,90%精白米よりは玄米が好ましいことがわかった。3.玄米を掛け原料として黒麹(90%精白)を用いた焼酎仕込条件を検討した結果,酵母は,清酒酵母K701より焼酎酵母SH4,泡盛酵母AW101が優れていた。また,乳酸菌の添加時期は2次仕込の1日目に,添加菌数は106cfu/mlが好ましかった。4.この条件で仕込んだ焼酎には0.070~0.15ppmのγ-nonalactone,0.16~0.35ppmのγ-dodecalactoneが生成された。また,乳酸菌26-d株のみに0.09~0.12ppmのγ-decalactoneが検出された。5.官能評価では,対照に比べ乳酸菌を添加して醸造した焼酎は,γ-ラクトン類の香りが高く味が濃いというコメントが見られた。また,低沸点香気成分の量が多いこと等から,香りの評価がいずれも高く,また,味及び総合評価でも26-d株及び41-d株で醸造した焼酎が対照よりもかなり良い結果であった。
著者
喜多 常夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.458-476, 2012 (Released:2017-12-12)
被引用文献数
2

2011年日本産酒類の輸出額は,約190億円である。このうち清酒が88億円だが,農産物ではりんごが65億円,緑茶が30億円であるのでかなり貢献しているといえる。しかも,近年増加傾向が続いており,清酒や焼酎の海外イベントも活況を呈している。また,海外生産も好調で本格的に国際化が始まり成長期を迎えた感がある。本稿では,著者が独自に収集されたデータから,海外生産を含め成長期にある清酒と焼酎の現状分析とともに,この成長を継続するための課題への現実的な提言がなされている。筆者は,実に好奇心旺盛な方で,氏の経営する社のHP(http://www.kitasangyo.com/)には,本稿に関係した情報以外にも,酒類に関係する様々な情報が掲載されているので,こちらも参考にされることをお勧めする。
著者
久米 堯 伊藤 明徳
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.187-200, 1999-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
22

前2回に引き続き, 今回は麦味噌及び豆味噌を取り上げる。麦味噌は, 九州, 四国・中国地方あるいは関東の一部などで作られ, 味噌の全生産量の約10%を占める。豆味噌は東海3県のみで作られ, 生産量は約5%である。豆味噌, 麦味噌を素材とした調合味噌を含めて, 永年, それぞれの味噌作りに携わって来られた筆者に, 詳しく解脱いただいた。
著者
丸山 勝也
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.7, pp.432-439, 2010 (Released:2016-01-21)
参考文献数
6

節度ある飲酒として純エタノールに換算した場合,1日あたり20g程度が適量とされている。これはどのような医学的根拠から導かれるのか,飲酒家にとっては興味を惹かれる問題である。本稿ではアルコール関連障害の診断,治療を行ってこられた専門医にお願いし,アルコールの作用,アルコール代謝と個人差ならびに関連疾患について医学的側面から簡潔に説明して頂いた。更に,その知見から導かれる病気にならない飲み方についても解説して頂いた。特にアルコール依存症の早期発見や予防のために,自己診断によるスクリーニングテストは有用である。
著者
池田 和隆 小林 徹 曽良 一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.2, pp.124-130, 2002-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

アルコールが脳に与える影響は, 酔いをはじめとして様々あり興味ぶかくかつ重要である。ここではアルコールの鎮痛作用とイオンチャネルの一つであるGIRKチャネルとの関係を中心に紹介していただいた。また, アルコールは, 人の情動などを脳機能として調べる上でも重要な糸口を与えてくれる物質であるようだ。
著者
高山 卓美
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.172-186, 2007-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
25

マルコポー口の「東方見聞録」は, 13世紀末の25年間にわたるシルクロード周辺地域を含む元朝中国や南海諸島でつくられていた酒とその飲酒風俗を現在に伝える貴重な資料である。著者は, 同書に記録された酒の種類や製法, 地域などの情報から, ユーラシア大陸における酒文化圏の形成を次の類型から説明した。(1) ユーラシア大陸ワイン街道, (2) 米酒文化圏, (3) 乳酒文化圏, (4) 椰子酒文化圏, これらの酒文化圏をマルコポー口の旅行地図上に印した,「酒文化圏マップ」(Fig.1) は, 著者の独創史料である。
著者
童 江明 李 幼均 伊藤 寛
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.815-821, 1997-11-15 (Released:2011-09-20)

日本の味噌・醤油のプロトタイプといわれる醤は古い歴史の中で発展してきただけあって, その種類は多岐にわたり, 今日では非発酵のドロドロした調味料も含まれる。その醤の歴史, 原料と製造法, 製品の品質特性および用途などについて, 中国で製造と研究の実務を担当している著者の情報を中心に纏めていただいた。その1は原料別に異る醤についての総論であり, その2, 3は代表的生産地における醤の各論である。
著者
猪谷 富雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.719-732, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
70

日本人は普段コシヒカリに代表される限られた品種のお米ばかり食べているが,稲の世界は多様である。本稿では,「古代米」をきっかけに,稲の多様性から稲と稲作のルーツまで解説いただいた。是非ご一読を。
著者
成澤 直規 池田 真有花 竹永 章生
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.114, no.9, pp.550-556, 2019 (Released:2023-12-10)
参考文献数
22

魚醤油は,生産量は醤油の僅か0.2%にも満たないが,国際化が進むにつれて,調理における隠し味として人気を博してきている。今回は海外の魚醤油の中でも,中国の魚醤油 魚露(イールー)について焦点を絞って,その成分の特徴について日本の魚醤油と比較して丁寧に解説いただいた。同じ調味料の仲間として醤油や醸造の研究開発に関わっている関係者の皆様には是非ご一読をお勧めする。
著者
松橋 通生 遠藤 成朗 大島 英之
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.12, pp.892-898, 2000-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19

醸造物の品質は醸造用微生物の増殖と深くかかわっており, 増殖制御は重要な管理ポイントである。現在の増殖制御は発酵温度などの温度を主体に行われているが, その他の制御法についても興味があるところである。本稿では, 微弱な音波の微生物の増殖に対する作用という新分野に取り組んでおられる筆者に, これまでの研究成果を中心に解説していただいた。b
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.56-61, 1993-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15

日本に伝来した洋酒の歴史を紹介した文献は刊行されているが, 逆に外国人が日本酒をどのように自国に紹介していたかは, 大変興味深いテーマであるがまとまった文献はない。本稿は16~19世紀にかけて日本に渡来した宣教師, 貿易商, 外交官などの著作を調査し, 考証を加えたものである。(I) では16世紀を中心に, (II) では17, 18世紀, (III) では19世紀と3部作の膨大なものである。読み物として興味があるばかりでなく, 経営・製造の両面に有益なヒントが含まれている。
著者
喜多 常夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.604-616, 2015 (Released:2018-05-18)
参考文献数
8
被引用文献数
2

日本は世界的に見て,稀に見る長寿企業の多い国であるという。その中でも,とりわけ清酒製造業は長寿である。欧州では,ドイツなどでもワインやビール醸造業には長寿企業が多い。その理由は那辺にあるか,著者も長寿酒造業者のリストを整理・解析し考察を加えているが,明確な答えは見つかっていないようにも窺える。しかし,我が国の清酒製造業者が何代にもわたって酒造業を脈々と続けて来たことは厳然たる事実である。 貴重な調査記事の一読をお勧めするとともに,読者諸賢におかれてはそれぞれ考えをめぐらせ,将来への清酒製造業の維持・発展のよすがとして頂くことを希望したい。
著者
蛸井 潔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.479-488, 2015 (Released:2018-05-10)
参考文献数
43
被引用文献数
1

分析機器の発展とともに,ビールの香り,ホップの香り,酸化劣化臭,それらがヒトに与える影響などについての研究が盛んに行われ,今では多くの知見が得られている。本内容は,過去に行われたそれら研究について振り返り,酒類が醸し出す香りについて論じたものである。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.579-587, 1997-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
6

筆者は, 発酵食品を中心とした日本科学技術史を研究しており, 東アジア諸国へ出かけて行った日本人がその国の伝統的な酒をどの様に紹介しているか等, 日本人とアジアの酒の歴史的なかかわり方について興味深い調査を行っている。台湾の米酒は日本人の手でアミロ法が導入され近代的製造法に切り換えられた。筆者は, 本年春再度台湾を訪れて米を原料とする伝統的な地方酒づくりの現場を約1週間にわたり見学し, 詳細な説明を受け新しい知見を得た。本稿ではあまり知られていない台湾の酒造工業の現状について御紹介していただいた。読み物として興味があるばかりでなく, 我が国の製造にも有益なヒントが含まれており参考になると思われる。