著者
三浦 理代
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.253-256, 2002-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
2

醸造物 (味噌, 醤油など) をはじめ, 食品 (パン, クッキー, 麦茶, コーヒー焼き肉など) の加熱・調理・加工・熟成, 貯蔵中の複雑な反応 (メイラ-ド反応) は芳しいフレーバーの生成と共に着色 (非酵素的褐変) を起こす。メイラード反応の最終生成物はメラノイジン (褐色色素) である。本号では, 食品とくに醸造物にとって身近な成分であるメラノイジンの生理機能について, 筆者らの研究成果を紹介・解説していただいた。
著者
佐藤 洋一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.732-738, 1992-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

最近, 縄文時代遺跡の発掘により日本へのイネの伝来がこれまで定説とされていた年代よりももっと古いことがわかってきた。それにしてもイネはどこからきたのか米に携わるものにとって永年の疑問である。著者は, これまでの一元説に対し, 遺伝学の立場から検証し, 南北二元説という新しい考えを発表している。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.823-828, 2007-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
29

現在清酒は, 台湾, 韓国, 中国, ベトナム, オーストラリア, カナダ, 米国, ブラジルなど多くの国で造られている。本稿によると, 20世紀初めからの台湾における清酒醸造は, これらの先駆けであり四季醸造技術や理研酒など様々な試みが行われている。先人達の努力と経験に学ぶところ, 日本と台湾の深いつながりについて考えさせられるところが多い技術史である。
著者
古林 万木夫 谷内 昇一郎 田辺 創一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.2, pp.96-101, 2005-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

大豆と小麦は醤油の主原料である。そのうち小麦はアレルギー物質を含む食品として表示が義務づけられている。大豆は義務表示ではなく推奨となっている。筆者らはこれまで全く解明されなかった醤油中の小麦アレルゲンについて測定法を確立し, 製造工程の各段階・原料比の変更等様々な場面を想定して小麦アレルゲンの消失を確認している。その詳細を解説していただいた。大いに参考になるであろう。
著者
藤田 晃子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.271-279, 2011 (Released:2016-11-15)
参考文献数
29
被引用文献数
1

酒が充分にない頃は酒が飲めるというだけでも喜びであったはずだが,誰と飲むか,どこで飲むかを気にすることが多くなり,酒の種類が増えてくると,売り場のPOPをはじめ何の料理ではどの酒ということが情報として必要とされている。酒と料理の相性に関する研究は,まだ始まったばかりであり幅広い方に興味を持っていただき,様々なアプローチが行われればと思う。
著者
加藤 寛之
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.426-432, 2014 (Released:2018-03-14)
参考文献数
13

ワインのコルク臭や清酒のカビ臭の原因物質であるTCA (トリクロロアニソール) は、極低濃度で異臭として感じられることが知られている。コルク臭やカビ臭はワインや清酒の品質を大きく損ねてしまうが、TCAには「異臭」だけでなく、他の香りを感じなくさせてしまう強力なマスキング効果があるという興味深い結果が筆者らによって明らかにされた。運悪くコルク臭ワインやカビ臭清酒に当たってしまったら、他の香りがマスクされるか試してみてはいかがだろう。
著者
金子 ひろみ
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.7, pp.447-454, 2010 (Released:2016-01-21)
参考文献数
6

この度日本酒造組合中央会は,日本酒が常備されていない家庭にも,飲用以外の用途で日本酒をおいていただくことを目的として,「日本酒を,すべての家庭に」というキャンペーンをスタートさせた。健康や美容に良い日本酒を健康的に飲むためのおつまみなどについて研究をしてこられた管理栄養士,料理研究家そして日本酒スタイリストとしてご活躍中の筆者に,その経験を生かして,飲用以外に日本酒を使う実例やその効果・効能などをわかりやすく解説をしていただいた。このキャンペーンをとおして,日本の全世帯に日本酒が備えられ,料理などに幅広く活用されることを願っている。
著者
土田 靖久 大江 孝明 岡室 美絵子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.489-495, 2015 (Released:2018-05-10)
参考文献数
25

梅酒は製造工程がシンプルであるため,原料ウメの特性や状態が梅酒品質に及す影響は大きい。しかしながら,この分野での研究例は未だ少なく,十分な知見が蓄積されていないのが実情である。 本稿では,原料ウメの栽培条件とそのウメを使用して製造した梅酒品質との関連性について,これまでの試験研究結果を含め貴重なデータをご紹介いただいている。梅酒製造に関心ある方は,是非ご一読いただきたい。
著者
黒田 利朗
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.136-148, 2012 (Released:2017-10-24)

黒田利朗氏は,1981年にパリに翻訳やビジネス関連調査を行うシンクタンク会社KSMを設立され,この分野では長く活躍されておられますが,2004年から日本食レストラン(現在3軒),2007年から日本食材・調味料,酒類の輸入販売を行うワークショップ・イセを始められました。ワークショップ・イセでは「ホンモノの食材を通じて日本の風味を伝える」をコンセプトに,欧州への日本の生活文化の発信に取り組んでおられます。氏のフランスでの長い経験と交友関係を生かした,ジャーナリスト,ソムリエ,飲食業関係者を対象とした日本酒試飲会の取り組み,また,ビジネス経験に基づくアルコール関連事情の分析等から,今回大変新鮮かつ価値のある報告をいただいております。
著者
大浦 新 鈴木 佐知子 秦 洋二 川戸 章嗣 安部 康久
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.10, pp.781-788, 2007-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1 8

Amazake is a traditional Japanese beverage made from sake cake or rice-koji produced in sakebrewing process. Recent progressive studies showed that sake cake and rice-koji had various physiological functionalities, such as anti-hypertension, anti-obesity and anti-amnesia. Such functionalities were anticipated in amazake, so we investigated the effects of amazake in mice. Administration of amazake to mice fed a high fat diet for 2 weeks suppressed increases in body weight, serum concentrations of triglycerides, and intraperitoneal adipose depots accumulations. When amazake was orally administrated to salt-induced hypertensive mice, blood pressure showed a significant decrease after 50days of breeding. When impairment of learning and memory in mice was induced by a subcutaneous injection of scopolamine, prior oral administration of amazake prevented a decrease in performance for memory and learning even in a single dose. These results demonstrated that amazake has three types of health-promoting benefits--anti-obesity, anti-hypertension, and anti-amnesia--resulting from attributions of sake cake, rice-koji, and other elements of sake-brewing. These functionalities indicated that amazake should be newly recognized as a natural and healthy drink for the prevention of lifestyle-related diseases.
著者
橋口 知一
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.352-356, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
16
被引用文献数
1

東日本大震災から3年が経過し,瓦礫の処理,インフラ,建物も整備されつつあります。しかし,原発からの放射能汚染は本調査のとおり酒類では問題は出ていませんが,今後も注視する必要があります。清酒の輸出や国内の汚染の状況など考える上で貴重な資料だと思います。ご一読下さい。
著者
溝口 晴彦 原 昌道
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.124-138, 2010 (Released:2012-02-17)
参考文献数
50
被引用文献数
7 6

酒母は麹造りと共に酒造りの大切な工程で,乳酸発酵を伴う生もと系酒母と乳酸を添加する速醸系酒母に大別され,従来よりいろいろな切り口で比較がなされてきた。今回,生もと系酒母の複雑な環境の場がそこで育てられて酵母に与える膜リン脂質の脂肪酸組成と関連づけて生もとの不思議な現象を明快に解明した本総説は,現場に従事する人にも興味を持って一読出来るものと確信している。
著者
赤田 圭司
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.749-754, 2006-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
31

大豆はタンパク質, 脂質, ミネラル, ビタミンなどを含む栄養価の高い食品である。また, 大豆の機能性成分が最近は注目を集めており, 抗酸化作用, 血圧降下作用, コレステロール調節作用など生活習慣病の予防にも効果がわかっている。大豆の伝統的な加工食品である納豆は, 大豆の栄養・成分をまるごと摂取できるだけでなく, 納豆の機能性として, ナットーキナーゼによる血栓症予防, 骨代謝に必須なビタミンK2による骨粗しょう症の予防, ビタミンB, による疲労回復や成長促進の役割, 納豆菌による整腸作用などがある。最近, タカノフーズ株式会社では納豆のヒト皮膚に及ぼす影響について研究を行っているので, その効果についてお伺いした。
著者
後藤 奈美
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.116-120, 2011 (Released:2016-06-14)
参考文献数
21
被引用文献数
1

甲州は,日本を代表する伝来のブドウ品種であるが,これまで隠れていた香気特性が見出され新しいスタイルの甲州ワインが誕生し,また,欧州への甲州ワインの輸出が始まるなど,今注目のブドウ品種である。著者は,必ずしも明確ではなかった甲州の由来,分類の問題に一貫して最先端のDNA多型解析によって取り組み数多くの成果を上げてこられた。今回,その研究成果とともに甲州の分類にかかわる興味深い諸問題について解説していただいた。
著者
中村 明弘 飯盛 直樹 須藤 茂俊 三上 重明 伊藤 清 石川 雄章
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.114-119, 1990-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

焼酎白麹菌Aspergillus kawachii IFO 4308を使用した清酒醸造を実施し, 次の知見を得た。1. 清酒醸造において乳酸の代わりに白麹に含まれるクエン酸の抗菌力を利用した清酒醸造の可能性が示唆された。2. 白麹のα-アミラーゼ力価は黄麹菌の1/16であったにもかかわらず, 発酵に支障を及ぼすことなくもろみの溶解は進行した。この理由としてAspergillus kawachii由来のα-アミラーゼはもろみ中で蒸米に無効吸着されにくい・ことが考えられた。3. 対照として実施した黄麹仕込が糖化優先型の並行複発酵であったのに対し, 白麹を使用した場合は全般的に糖化と発酵がパラレルに進行した。4. 白麹仕込で得られた清酒はクエン酸のさわやかな酸味を呈するとともに, 黄麹仕込で得られた清酒と比べて遊離アミノ酸がやや少なく, またペプチドを構成するアミノ酸数はやや多い傾向にあった。
著者
多山 賢二 西澤 直行
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.792-796, 1999-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

従来, 食酢がカルシウムの吸収を促進すると言われていたが, ラットを使い, 食酢と同時にカルシウムを与えるとその吸収が促進され, さらに食酢の主成分である酢酸も同様の効果を有することを動物実験で明らかにした。さらにカルシウムの大腿骨への蓄積量, 骨形成・吸収マーカーなどの測定結果から食酢とカルシウムの関係の全容を解説していただいた。
著者
上田 誠之助
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.12, pp.947-950, 1998-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5

前報までに古代の酒の変遷について, しとぎ (米粉を固めて造る餅) に着目して解説されたが。今回は現在における全国の神社でのしとぎの分布を調査し, その地域的特徴等からわが国古代史や日本人の起源との関わりに至る部分まで解説して頂いた。