著者
児玉 聡
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

今年度は、ジェレミー・ベンタムの功利主義に基づく政治思想を中心に研究し、それを口頭で発表したものをベースにした論文を現在校正中である(『公共性の哲学を学ぶ人のために』に収録)。また、功利主義的立場から生命倫理における臓器移植の問題について学会発表を行ない、発表に基づいた論文を現在執筆中である。1.ベンタムの政治思想に関しては、口頭発表に基づき、「何のための政治参加か--19世紀英国の政治哲学に即して--」という論文を現在校正中である。これは、ベンタムやジェームズ・ミル、ジョン・ステュアート・ミルの政治思想をもとにして、デモクラシーにおける二つの政治観(経済学的な理解と、参加や討議を通じた公共心の育成を強調する理解)を対比的に描き出し、政治参加における公共精神の役割を検討するものである。2.ベンタムの功利主義思想の応用として、生命倫理学の分野で、「慢性的な臓器不足問題についてのささやかな提案」という口頭発表を学会で行なった。これは、富の再配分の問題に関するベンタムの議論を参考にして、現在見直しが喫緊の課題となっている脳死・臓器移植法に関する提案を行なうものである。とくに、今日の英米圏で問題になっている限定的市場化や臓器提供の義務化の議論を検討し、提供臓器の慢性的不足を解決するために提案されている臓器移植に関する推定同意制、報償制度、市場化、義務化の持つ倫理的問題について、比較検討を行なった。現在、この発表に基づいた論文を執筆中である。
著者
岩崎 雄一
出版者
横浜国立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

水生生物の保全を目的とした亜鉛の水質環境基準の妥当性を検討する上での資料を得るために,以下の研究を行った。1.河川上流域において亜鉛濃度が河川底生動物群集に及ぼす影響去年度の成果より,底生動物群集の種多様性は基準値(30μg/L)の2倍程度の亜鉛濃度でも顕著に減少しないことが示唆された。本年度はこの成果を広く公表するべく,国際学会での発表や国際亜鉛協会への訪問等を行い,高い評価を受けた。さらに,この結果をより多く調査データを用いて検証するために,英国に3ヶ月間滞在し,英国・米国等の重金属汚染河川約400地点における底生動物調査結果を用いた解析に着手した。本研究の成果は日本の水質環境基準や海外で提示されている安全濃度の妥当性を検討する上で有用な資料となることが期待される。2.河川下流域において亜鉛濃度が河川底生動物群集に及ぼす影響前述した上流域の結果が下流域に適用可能かを検討するために,群馬県碓氷川水系及び粕川での野外調査を去年度実施した。暫定的な結果ではあるが,碓氷川での調査結果より下流域でも上流域の結果と同様な傾向が得られている。今後は,有機汚濁の進行した河川(粕川)での調査結果をまとめ,これら成果をできるだけ早く公表する予定である。上記に加え,亜鉛等重金属がファットヘッドミノー個体群に及ぼす影響を数理モデルを用いて評価した。その結果,当該個体群が維持される亜鉛濃度は約80μg/Lと推定された(掲載雑誌において,注目論文に選出された)。
著者
水間 大輔
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究は中国古代の秦・漢において、いかなる防犯体制及び刑事手続体制が設けられていたのかを検討し、当時の国家が犯罪の予防をどのように実現させようとしていたのかを明らかにすることを目的とする。平成20年度は犯罪の捜査から、逮捕・取調べ・裁判を経て、刑罰の執行に至るまで、いかなる手続が設けられていたのかを明らかにしようと試みた。具体的には、(1)各手続の名称及びその内容、(2)各手続の際に作成される文書の名称及びその伝達、(3)各手続をいかなる者が担っていたのか、などの問題を中心に検討した。如上の問題を検討するため、秦律・漢律(秦・漢で行われていた法律)及び関連する史料の中から、刑事手続に関する史料を抽出して分析を加えた。秦律・漢律に関する史料は近年中国で出土した竹簡・木牘が中心となるので、それらを分析したり、あるいは中国の博物館へ赴いて実見したりした。さらに、秦・漢の刑事手続制度を後世の唐代以降の制度と比較することによって、秦・漢の刑事手続制加が前近代中国の中でも相対的にいかなる性質を有するものであったのかを把握するよう努めた。以上の検討、及びこの三年間の検討を通して、秦・漢の県における防犯体制及び刑事手続制度の全体像が明らかになった。それによると、秦・漢では地方の末端に至るまで、防犯と刑事手続を担う機関が設置されていた。また、裁判は県以上の機関によって行われるのが原則であったが、一部の郷・亭でも裁判を行う権限があったこと、県でも死刑判決が下せたことなど、秦・漢の刑事手続制度は唐代以降と比べると、地方機関の権限が大きかった。それゆえ、秦・漢では犯罪の予防をより強く地方へ浸透させる体制になっていたといえる。
著者
山本 伸一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

当初の研究計画が、ゲルショム・ショーレムによる先行研究の批判的検討であったのに対して、以下に述べるように、当該年度の研究の過程において、より新規性に富む視点からシャブタイ派運動を分析することができた。そのなかで私が研究の目的として設定したのは、シャブタイ派思想における反律法主義の起源の解明であり、これはシャブタイ派思想のカバラーの性質を究明しようとした所期の目的をより厳密にしたテーマである。律法主義(nomism)を本質とするユダヤ教において、戒律の変更と更新を目指す反律法主義(antinomism)は、単に律法を副次的に理解する非律法主義(anomism)とは区別されねばならない。現段階の想定によれば、メシアの時代における救済の実現のために行われた祭日、慣習、戒律の大胆な変更は、(1)ツファット盛期のカバラー、及び(2)中世の占星術に影響されていた現象である。反律法主義の起源を研究するために、それぞれの点について以下のことを研究した。(1)ツファット盛期のカバラー(16世紀にパレスチナの小都市で起こったカバラーの復興運動)においては、神秘家によって伝統的な戒律や慣習がより厳密に規定され直したことが知られている。このカバラー的律法主義を終末論的に解釈したのが、シャブタイ派の反律法主義であることを立証する。(2)中世の占星術は、ユダヤ教徒、キリスト教徒、ムスリムなど宗教の枠組みを越え、多くの知識人が共有した普遍的な学問領域であった。すでにカバラーはその初期から占星術を採用しており、こうした言説のなかには、反律法主義的な性格のものが存在する。シャブタイ派文献のなかにもその影響が見られるため、その関連性を一次資料に依拠しながら研究する。現在のところ、研究成果の発表にはいたっていないが、以上の論点はシャブタイ派思想研究においては、極めて本質的かつ独創的な試みであると考える。
著者
城田 愛
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

下記のとおり調査・研究をおこない、これまでに得られたデータをもとに、以下の口頭発表にて、成果の一部を報告した。1 琉球大学移民研究センターおよびWorldwide Uchinanchu Business Association共催「Worldwide Uchinanchu Business Association第9回世界大会in関西」における「移民会議」のワークショップ「在日ウチナーンチュのアイデンティティ」「大阪沖縄系三世の視点・始点からFrom the」(Starting) Point of An Osaka-born Sansei Uchinanchu」平成17年4月6日、スイスホテル南海大阪2 北海道調査(5月20日〜23日)(1)北海道開拓記念館・開拓村の調査(2)日本文化人類学会の第39回研究大会に参加した。(3)アイヌ民族博物館の調査を実施した。3 沖縄調査(5月27日〜31日)(1)国際交流基金・琉球大学の招聘で来日中のハワイ生まれの沖縄系二世の作家について、移民に関する作品執筆調査等に関するインタビューに応じてもらった。(2)第二次世界大戦前、ハワイ移民し帰郷した移住者に関する聞き取り、およびテニアンへ移住し、戦後に引き上げした本人の移住に関するライフヒストリーの聞取り調査をおこなった。(3)上記(1)の二世が琉球大学のアメリカ文学の授業での「Lucky Come Hawaii」(1965年アメリカで出版)に関する特別講演、その後、作品および作家本人や家族のライフヒストリーに関する調査を実施した。4 横浜調査(6月17日〜19日)6月17日には、JICA海外移住資料館における館内でのボランティア活動、研究、各種事業に関して、当館の研究員たちにインタビューを行った。また、常設展示の内容に関する調査を実施した。6月18日には、ハワイ大学マノア校夏期特別授業社会学部人類学部共通科目"Okinawans Locally and Globally" Tour-Summer 2005の当館見学に関する参与観察を行い、当スタディ・ツアーの参加者に当館の展示に関する筆記アンケートに応じてもらい、数人にはインタビュー調査を実施した。また、鶴見沖縄県人会館に移動後、鶴見沖縄県人会会計部長・川崎沖縄芸能研究会副会長仲宗根嘉氏に、沖縄県からの移住に関するご本人の来歴および鶴見地区在住の沖縄系移住者たちの活動等に関するインタビューを行った。5 沖縄調査(6月22日〜29日)ハワイ大学マノア校夏期特別授業社会学部人類学部共通科目"Okinawans Locally and Globally" Tourに同行し、(1)沖縄県立平和祈念資料館、(2)沖縄県立博物館、(3)南風原文化センター、(4)琉球大学移民研究センター、(5)読谷村立歴史民俗資料館、(6)石川市立歴史民俗資料館、(7)旧海軍司令部壕資料館、(8)沖縄県立図書館、(9)沖縄県公文書館において調査を実施した。6/23は上記(1)常設展中の「国策移民」等、6/24は(2)常設展中の海外移住に関する展示、(3)常設展中の「移民」のコーナー等に関する調査を実施し、また(4)にて、ハワイ大学と琉球大学移民研究センターおよびアメリカ研究センターの教員・学生たちとのワークショップに参加した。6/25は(5)と(6)の沖縄の民俗に関する展示に対してハワイからの沖縄系移民たちにインタビューを実施した。6/26は(1)と(7)における沖縄戦に関する展示の調査、6/27〜6/29は(8)と(9)において沖縄からの移民に関する沖縄県および琉球政府関連の書類、新聞記事、雑誌『雄飛』、移民の展示に関する論文等の調査、複写入手を行った。6 博士学位論文(平成18年3月22日提出)これまでの研究成果の一部を、博士学位論文「エイサーにみるオキナワンたちのアイデンティティ:ハワイ沖縄系移民たちにみる『つながり』の創出」としてまとめ、京都大学大学院人間・環境学研究科に提出し、現在、審査中である。
著者
紺野 茂樹
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

まず取り組んだのは、「苦しむことを望まない」という、全人類に共通する属性に依拠する、「共苦の連帯」の反対物である、排外主義的民族主義の分析である。集団的な「些細な差異に拘るナルシシズム」(フロイト)に基づく、この排外主義的民族主義は、1930年代から40年代にかけて猛威を振い、冷戦後、世界各地で不死鳥のように蘇った。その最も陰惨な形が、90年代の旧ユーゴやルワンダ等における、そしてイスラエルによる現在進行形の、「民族浄化」である。具体的には、まずは従来から親しんできた、30年代から40年代にかけての『権威と家族』をはじめとするフランクフルト学派とその周辺の思想家達による、ファシズム-ナチズムおよび反ユダヤ主義の分析や、丸山眞男による天皇制軍国主義の分析等を繙き、今日でも学ぶに値する洞察にアクセントを置いて、再構成した。これらの社会心理学的研究で展開されているのは、マルクスの唯物論とフロイト精神分析の総合を目指して行われた、ファシズムの大衆=群衆心理分析である。しかし大いに驚いたのは、この30-40年代の大衆=群衆心理のかなりの部分が、90年代以降の日本のそれも含めた排外主義的民族主義において、反復しているという点であった。更に、他者の苦しみに対する想像力として、これまでのホルクハイマー-ショーペンハウアーにおける「共苦(Mitleid)」に加えて、ルソーにおける「憐れみ(pitie)」やスコットランド啓蒙における「同感(sympathy)」の思想史的・現代的意義と問題性についても、イグナティエフやマルガリートといった、現在存命中の内外の思想家による研究と照らし合わせながら探究した。そして、この過程の中で、これまではあまり視野に入っていなかった、世界人権宣言をはじめとする、人権を国家の枠組みを超えて普遍化しようとする、国際法上の試みにも取り組み始めた。
著者
石川 宏之
出版者
横浜国立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

1.研究の背景と目的近年、都市や農村では市街地空洞化や過疎化、少子高齢化など様々な地域課題を抱えている。そうした中、英国では地域再生の手段としてミュージアム活動が用いられている。但し、持続可能なまちづくりを展開させていくには地域住民の協力と行政による支援が不可欠であり、さらに専門家で組織されるNPOなどがミュージアムの運営に関わっていくことが重要である。本研究では、都市にアメニティを与える地域遺産をミュージアム活動により管理運営するための諸要因や諸条件を明らかにすることを目的とする。2.研究方法と調査概要方法として先ずミュージアムの活動経緯から事業手法の特徴を把握し、次に財源及び公的補助金どの関わりから経営方法を捉え、最後に地域遺産を管理運営するための条件を明らかにする。調査対象は、イングランド中西部のシュロップシャー州で活動するアイアンブリッジ・ゴージ・ミュージアム・トラストである。選定理由はチャリティ団体によるインディペンデント・ミュージアムとして独自で資金調達を行ないながら総合的に地域遺産を管理運営しているからである。調査手法として現地を訪れ文献資料を収集し、関係者に対して聴き取り調査を行なった。3.結果ミュージアム活動の視点から地域遺産の管理運営の方法を捉え、以下の2つのことが指摘できた。民間非営利団体のトラストにより都市空間にアメニティを提供する自然や文化・産業などの地域遺産を管理運営することが可能である。但し、それらの公的活動に対して行政機関からの資金援助が必要であることがわかった。ミュージアムの持つ文化・芸術的なイメージは、衰退した地域の環境を一新させ、新たな企業の誘致や観光客を引き寄せる働きもあることがわかった。但し事業を拡大するには安定した自主財源を確保することが重要であり、民間企業並の経営手法のノウハウを取り入れることが必要である。
著者
王寺 賢太
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

1)「哲学的歴史」と考証学レナルの「哲学的歴史」は、ベイルらの「歴史の懐疑主義」の提起したユダヤ-キリスト教的な世界観の批判、あるいは王と信仰と法の統一性の証明を志すべくベネティクト会士の考証学の批判を受け入れたところから出発する。しかし、レナルにとって一層重要なのは、「歴史の懐疑主義」による歴史認知一般の真理妥当性の否定を退け、「蓋然性」にもとづく歴史認識を理論的に擁護したのみならず、新旧論争における相対主義の提起、聖書の創造譚を規範とする中国の歴史的・民俗学的叙述の批判を行った碑文アカデミーの考証学者フレレである。だが、キリスト教的な世界観にかわる近代的な世界観を示唆したフレレも、過去の事実の検討に目標をおく考証学の言説の内部では、新たな歴史叙述の枠組み自体を示すことはできなかった。世紀中盤考証学の忠実な読者であったレナルが近代ヨーロッパの歴史叙述を選択する背景には、十八世紀の考証学の認識論的な発展によってあきらかにされたその限界を乗り越えようとする企図が控えている。2)「哲学的歴史」と法思想マキャヴェッリの政治思想とベイルにいたる懐疑論の継承者であるレナルは、ストア=キリスト教的な目的論的枠組みのなかで、「真正な理性」や「社交性」から絶対王政の法秩序を導き出す自然法思想を否定する。また、当時「書かれた理性」ないし自然法を体現するとみなされていたローマ法については、フランス王国を近代におけるローマの帝権と法の継承者とみなすボシュエやデュボスの「ロマニズム」をしりぞけ、ブーランヴィリエの「ゲルマニスム」をうけてローマ帝国と近代ヨーロッパ諸国家の断絶を強調する。レナルにおいて法の起源は理性にではなく社会内部の権力関係にあり、近代の王国の政治的秩序は、とりわけ暴力装置と所有の分配の変動を通じて歴史的に生成したものなのである。この認識はモンテスキューによる法についての歴史的で政治的なアプローチを受け継いだものだが、さらにレナルは、「法を歴史によって、歴史を法によって説明する」モンテスキューを批判して、実定法以前にある多数者の意思とその間の社会的な諸関係の存在を強調する。そこで歴史は法を特権的な参照項として叙述されるものであることをやめ、法体系に断絶さえもたらしかねない、社会的な諸関係総体の変動として把握されることになるのである。以上2)の研究内容は、4月25日、パリのフランス国立科学研究所において開かれる『十八世紀における法学的知の形成』研究会で発表される。
著者
松浦 正孝 SKABELUND A.H
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

第二次世界大戦後、日本では、軍隊の役割及び「兵士」の意味が大きく変わった。「平和憲法」の制定、教育改革、また強い平和精神の定着により軍への支持は薄れていった。軍隊及び軍隊の理念は、20世紀の後半、世界中で、大きな不信感を持たれるようになったが、日本ほどこの傾向が強く、また永続的だった国はない。この研究は、「日本軍」の戦後の社会史に着目するにあたり、3つのテーマを提示する。第一に、帝国軍と自衛隊の間の組織的、思想的な連続性と断絶性である。第二に、米軍と自衛隊の対等でない同盟関係である。第三に、自衛隊と社会の関係である。自衛隊において目に見える大きな組織的な変化と目に見えない人事的あるいは思想的な連続性が存在したという視点は、今まで論じられてきた日本戦後の政治史と経済史とは異なった新たな歴史的文脈を提示するものと考えている。本研究実績として、自衛隊と米軍と地域社会との関係を探るために次の二つの研究手段をとった。第一に、自衛隊と米軍のやりとりを回顧録、口述歴史、また基地周辺地域でのインタビューによって見直した。この米軍のプレゼンスこそが、自衛隊の存在が不透明である理由の一つであると考えるからである。第二に、地域社会との関係を探る為に、北海道や他の地域で資料収集や隊員および自衛隊関係者とのインタビューを行った。半世紀の間、自衛隊は社会から敵意を受けることなく、関心を持たれず、殆ど尊敬されなかったのが実情であった。組織として、それに対して自衛隊はどういう対策を取ってきたか、また隊員はどういう経験をしてきたか調べた結果、特に災害援助と地域社会への貢献(札幌雪祭りなど)の経過に注目した。
著者
長谷部 信行 BEREZHNOI A. A.
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

月・惑星研究において、ガンマ線と中性子による核分光法を利用して天体表面全域の元素の濃度分布や平均質量を求め、月・惑星の形成と進化の研究を進めている。主な研究成果を以下に示す。1)月表面から放出される核ガンマ線のシミュレーション2)月表面における揮発性元素H,CO_2,SO_2の存在可熊性3)流星群衝突と月震による月からの電波放出1)月表面におけるガンマ線及び中性子の発生と輸送機構を実験的及び数値計算的にシミュレートし、元素濃度の評価方法の基礎過程を構築した。それに基づけば、ガンマ線分光計のエネルギー分解能が5keV以下の場合、水素及び硫黄の検出が可能であるという結論を得た。従って、月の極域にそれらの揮発性物質が存在すれば検出できることを示した。2)月面揮発性元素の彗星起源説について評価を行った。その結果、炭素に富む彗星では現在までに推測されている揮発性元素の存在量を説明することはできず、酸素に富む彗星であれば、十分に存在量を説明することができるとの結論に至った。水、二酸化酸素及び二酸化硫黄が安定に存在できる極域内の面積を算出し、それら元素の注入率に制約を与えた。SELENEで水、イオンの検出ができることを可能性を示した。3)1999年から2001年までのしし座流星群到来時の電波観測データの解析を複数の波長を用いて行った。1999年のデータからは月からの信号を見出すことはできなかったが、2000年、2001年においては流星群によると思われる信号を発見した。また、数分にもおよぶ振動の存在を確認した。
著者
印南 洋
出版者
神田外語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、「タスク(出題)形式」が「英語リスニングテスト得点」にどのような影響を与えるかを調べることである。2年計画の最終年度の目的は、多肢選択式と記述式の比較に焦点を当て、英語テスト得点へ与える影響を量的に調べることである。研究方法は、公刊・未公刊両方の先行研究を幅広く収集するため、以下3点の方法を用いた。第1に、ERICなどのデータベースを使用した。第2に、言語テスト、第2言語習得、教育測定の分野の本、ジャーナルを参照した。第3に、出題形式の影響を研究している研究者に連絡を取り、関連する先行研究についての情報を聞いた。収集した先行研究を、特徴ごと(例:L1の研究か、L2の研究か)にコーディングした。コーディングは、訓練を受たけ複数の研究者で行った。その後、各先行研究ごとに出題形式の影響の大きさを算出し、それらの値を研究間で統合した。研究の結果、以下の2点が分かった。第1に、多肢選択式が記述式よりも容易になるのは、L1リーディングの研究・L2リスニングの研究で見られた。一方、L2リーディングの研究において多肢選択式が記述式よりも容易になるのは、受験者間デザインを用いたとき、受験者をランダムに配置したデザインを用いたとき、出題形式間で設問が平行(stem equivalent)に作られているとき、受験者のL2レベルが高いときのいずれかを満たした場合であった。第2に、多肢選択式が記述式よりも容易になることには多くの要因が関わるが、L1リーディングの研究・L2リーディングの研究・L2リスニングの研究間で共通した要因として、受験者間デザインを用いたとき、受験者をランダムに配置したデザインを用いたとき、出題形式間で設問が平行に作られているときの3要因が見られた。
著者
乙藤 洋一郎 KIDANC Tesfaye Birke KIDANE Tesfaye Birke
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

古地磁気学的方法によってアフリカ大陸東北部にあるアファー三角帯内部の地殻ブロックの運動様式を明らかにすることを目的として、Main Ethiopia Riftのファンターレ地域を研究対象地域とした。この目的のために、2006年11月にファンターレ地域において岩石試料採取をおこなった。52箇所において鮮新・更新生層の溶結凝灰岩と玄武岩溶岩層から採取した600個の試料を、研究対象岩石とした。ファンターレ地域東部域のカレーユロッジに見られる高低差300mのアワシュ川の崖の24層で採取した溶結凝灰岩に関しては、古地磁気の測定を10月末に完了した。ファンターレー地域中央部から採取した28箇所の古地磁気測定もすでに終了している。52箇所の古地磁気方向の分散の大きさから、試料採取した岩石厨は地磁気永年変化を平均できるだけの十分長い時間間隔で形成されることがわかった。カレーユロッジの磁気層序から、Reunion subchronに相当する正磁極期がみつかったことは、52箇所の岩石層の形成に永年変化を平均化できる十分な時間がかかったことをうらずけるものである。52箇所の古地磁気方向は、アフリカで予想される地球磁場より束へ7.1°±4・3°偏っていることがわかった。以上のことから、ファンターレー地域はリフトバレーが形成されたあとに、7度の時計周り回転を経験したと結論した。大陸の分裂初期の大陸地殻の拡大に伴い、リフトバレー内部で新たにブロックが形成されるとともに、形成されたブロックはさらにリフトの拡大とともに回転運動することが、世界で始めて発見されたことになる。この研究について、現在投稿のために論文が準備されている。
著者
西岡 あかね
出版者
岡山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年度前半は主に、昨年度アメリカ合衆国で行った文書館調査(フランツ・ヴェルフェル関連資料と遺稿、カリフォルニア大学ロサンジェルス校及びペンシルヴァニア大学所蔵)の際に得た資料の整理と分析を行った。対象となった資料は以下の通り:1)フランツ・ヴェルフェルの書簡2)フランツ・ヴェルフェル宛ての書簡3)フランツ・ヴェルフェルの未発表原稿とノートこの資料調査・分析の結果の一部は、2007年10月にヴィラ・ヴィゴーニ、ドイツ・イタリアセンターでの国際シンポジウムで行った口頭発表の中で公表した。(この口頭発表の原稿は、来春出版予定のシンポジウムの論集に収録される。)また、この発表では公表しなかった資料については、今後、ドイツ表現主義の朗読理論や文学実践の諸相を研究する際に利用し、その成果は順次発表していく予定である。今年度の後半は、これまでの研究で得られた知見を様々な学会で口頭発表した。すなわち、上述のドイツ・イタリアセンターでの発表の後、日本比較文学会関西大会では、ドイツ表現主義の芸術実践と日本の大正期における新興芸術運動を、村山知義の初期戯曲を例に比較した。また、この発表から出発して、前衛運動の国際性に関する考察を、2008年3月、立教大学におけるフンボルト・コレークにおいて口頭発表した。その他、昨年度から進めていた、前衛芸術家の自己演出に関する研究を最終的にまとめ、この成果を、2008年3月、日本独文学会主催の第50回ドイツ文化ゼミナールで発表した。この発表原稿は今後、学術雑誌に投稿を予定している。
著者
林 良嗣 XIANMIN Mai MAI Xianmin
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

高度経済成長と急激な都市化が進む中国・北京市の都市計画においては、公共交通の重要性が高まっているにも関わらず、その整備を推進する政策が不十分である。このため高度な公共交通システムを実現している日本・名古屋市の公共交通政策と北京市を比較することにより、将来、北京市が持続可能な公共交通政策を制定することに資する提案を行うことを目的として研究を行ってきた。今年度の成果は主に以下の3点にまとめられる。1.総合政策の比較分析初年度より行ってきた公共交通総合政策の比較分析の枠組みを基礎として、名古屋市と北京市の技術推進政策、インフォメーション総合政策及び経済のコントロール政策などを整理し、比較研究を行った。また、各種の政策が公共交通に与える影響の評価方法を整備し、両都市の公共交通の総合政策を評価分析した。2.総合政策の枠組み構築両都市の公共交通の総合政策を比較し、有効な公共交通政策を選択する総合政策の枠組みを構築した。その際、都市公共交通政策の問題点と重点課題について重点的に検討した。これによって、どのような政策が有効な都市公共交通システムの構築の促進に資するか、その際の費用対効果は適切かについて検討した。また、都市発展の過程における政策の実施時期の及ぼす影響についても検討を行った。3.具体的な政策の提案初年度に整理した両都市の発展過程と現状の整理および比較分析の結果を組み合わせ、都市公共交通政策の枠組みを基本として、両都市の公共交通の発展に適切な施策を提案した。その際、それぞれの都市の公共交通の問題点および両政府の運営管理の特徴を踏まえた上で、公共交通の発展を促進するように努めた。
著者
舟橋 健太
出版者
日本女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

今年度(平成19年度)は、一昨年度(平成17年度)まで2年間実施した現地(インド)調査の成果を博士論文としてまとめることを主たる研究活動として行った。並行して、学会誌への論文投稿・掲載と、学会にての研究発表を行った。これらの成果は、いずれも、博士論文の一部を担うものである。詳細(具体的内容、意義、重要性)は次の通りである。1.学会誌への論文投稿・掲載日本南アジア学会の学会誌『南アジア研究』第19号に、「仏教徒として/チャマールとして-北インド、ウッタル・プラデーシュ州における『改宗仏教徒』の事例から-」と題する論文を投稿、掲載されるに至った。当論文は、これまで、改宗前の宗教であるヒンドゥー教との断絶を過度に強調していた先行研究に対して、改宗前後の「連続性」に焦点をあてて、かれら「改宗仏教徒」たちの生活実践・儀礼実践を検討したものであり、運動としての仏教ではなく「生活としての仏教」という新たな観点から考察を行ったものである。2.学会にての研究発表2007年6月2、3日に開催された日本文化人類学会第41回研究大会において、「『リザーヴェーション』論再考一北インド、ウッタル・プラデーシュ州における『改宗仏教徒』の事例から-」と題する発表を行った。本発表においては、リザーヴェーション(留保制度)の恩恵から少なからず登場している「エリート」とされるダリト(「不可触民」)について、現地調査のデータをもとに、社会的階層の家族・親族系譜での固定化の指摘と、仏教を媒介としたエリート・ダリトと非エリートとの関係性のありようについて提示・考察を行った。先行研究においても指摘されているエリートの固定化の確認と、これまでは一方的あるいは断絶的な関係とされていたエリートと非エリートとの関係が、仏教を媒介することによって、そうした一面的理解には収まらないことを示した。
著者
松本 詔
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

今年度の主な結果は、コンパクト対称空間に対応するランダム行列に対して、その特性多項式の積の平均を計算したことである。それらの平均を、対称空間の制限ルート系に応じて、長方形ヤング図形に対応したジャック多項式または多変数ヤコビ多項式で表すことができた。特性多項式の平均をこのように一つの知られた直交多項式で表すことができたことは、ランダム行列の研究において、ジャックまたはヤコビ多項式が重要な役割を果たすことを示す。またこの結果に現れる直交多項式を見ると、特性多項式の平均について以下のようなことが考察される。すなわち、直交多項式のパラメータを見ると、ランダム行列の双対性が見える。というのは、円型のβアンサンブルを考えた場合、βに自然に対応するジャック多項式ではなく、4/βに対応したジャック関数が現れる。これは、βと4/βにそれぞれ対応するランダム行列間の双対性を示唆している。また、特性多項式平均が長方形のヤング図形で表されることは、前年度の研究代表者の研究結果から、それはさらにハイパー行列式で表されることも分かる。これは対応するランダム行列に対してハイパー行列式の理論を適用できる可能性を示唆している。
著者
三王 昌代
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

蘇禄(スールー)は東南アジア島嶼部に位置し、入手可能な資料が極めて少ないとれるだけでなく、中国との交渉において「外国文字」を用いていた地域でもあり、これまで当時の文書の内容に関する研究はほとんど行われていない。申請者は、東アジア・東南アジア世界に関する相互交渉・相互認識の実態や独自性を明らかにする必要があると考え、18世紀においてスールーと中国のあいだに交わされた国書に着目して研究を進めた。ジャウィの文書解読のため、マレーシア国民大学・マラヤ大学などを訪れて諸情報・資料収集を行った。スールーから中国に届けられた現地語の文書、すなわちジャウィの文書の解読を進め、漢訳されて上奏された文書などをはじめとする漢文資料との比較検討を行った。その結果、おもにマレー(ムラユ)語のジャウィが用いられていたことや、漢文になる段階で文言の置き換え・書き換えが行われたり、ジャウィの文書にはなかった皇帝賛美の文言が加えられていたりしたことなどが分かってきた。現在、このスールーと中国とのあいだの文書往来に関し、研究成果を纏める作業を行っている。また、中国福建省泉州でのフィールドワークの成果は、2008年度日本社会科教育学会で、「泉州(中国福建省)に残る文化交流・交渉の跡を辿る」(滋賀大学教育学部、10月11日、二谷貞夫先生と)と題して発表した(発表要旨は、『日本社会科教育学会全国大会発表論文集』第4号、2008年10月、88-89頁に掲載)。
著者
高橋 英也
出版者
岡山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究は、魚類では不明のミネラルコルチコ千ド系の役割を、遺伝子変異メダカを用いて明らかにすることを目的としている。昨年度は、Targeting Induced Local Lesions In Genomes(TILLING)法によりミネラルコルチコイド受容体(MR)遭伝子を人為的に破壊したメダカの作製を試みた。MR-遺伝子の変異スクリーニング結果では、リガンド結合領域をゴードする第4エクソン上に3種のアミノ酸置換を生じるミスセンス変異(754番目のロイシンがプロリン(P754)、767番目のスレオニンがアラニン(A767)、770番目のアスパラギン酸がグルタミン酸(E770))が同定された。本年度は、同定されたこれら受容体の転写活性をレポーター遺伝子アッセイ法により解析した。コルチゾルや11-デオキシコルチコステロンなどの副腎皮質ホルモンに対して、A767は野生型と同程度の転写活性を有していたが、P754は野生型より強い転写活性を示した。一方、E770はいずれの副腎皮質ホルモンに対しても転写活性を喪失していた。以上より、リガンド結合機能が喪失した変異体の作出に成功した。また、MRはメダカでは中脳視蓋や小脳顆粒層に多く存在していることから、胚期のメダカの行動をモニターする装置を開発した。胚期のメダカが1時間あたり数回動くことを確認している。この装置を用いて、E770の行動を解析する予定である。
著者
石 瑾
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

既存研究が示唆したように、小売の国際化プロセスにおいては、進出先が市場環境の類似性が高い市場である場合、集権-標準型ビジネスシステムをもつ企業が短期的志向になり、分権-適応型ビジネスシステムをもつ企業が長期的志向になる。しかし、進出先を類似性の高い市場から異質性の高い新興市場に切り替えられるとき、既存研究の想定したビジネスシステムと成果スパンの対応関係が依然として成立するのか、それとも反転するのか、本研究はそれを問題意識とする。そこで、本研究は、まず小売の国際展開に関する先行研究のレビューを行った。そして、新興市場の代表として中国を取り上げ、新興市場の異質性をまとめた。さらに、本研究の分析視点と分析枠組みを提示し、それに基づいて理論的な分析を行い、新興市場では、集権-標準型ビジネスシステムをもつ企業が長期的志向になり、分権-適応型ビジネスシステムを持つ企業が短期的志向になるという仮説を導き出している。続いて、仮説検証を行うために、カルフール中国とウォルマート中国の事例を取り上げた。本研究は膨大な二次データと12回にわたる現地でのインタビュー調査によって収集した一次資料を用いて詳細な分析を行い、これまでほとんどブラックボックスとされてきた中国市場における両者のビジネスシステムの内実を明らかにした。さらに、本研究は両事例の比較分析を行い、理論的なインプリケーションをしている。最後に、従来の研究で示されているビジネスシステムと経営成果スパンとの対応関係が、新興市場において反転する論理をまとめた。さらに、集権-標準型ビジネスシステムと分権-適応型ビジネスシステムの識別、新興市場における小売外資と現地市場のさまざまな主体との相互作用といった問題に関するインプリケーションも示している。本研究の詳細を、2005年1月19日に経営学研究科に提出した博士論文「新興市場における小売外資のビジネスシステム-カルフール中国とウォルマート中国の事例-」に参照されたい。
著者
松田 史生
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

ある代謝経路の活性の変化とは、その経路を流れる化合物量、すなわち代謝フラックスの増減を意味している。ジャガイモ塊茎組織に傷害を与えると、フェニルプロパノイド経路の活性化がおこり、chlorogenic acid (CGA)が顕著に蓄積する。一方、同じくフェニルプロパノイド代謝産物の一つであるN-p-coumaroyloctopamine(p-CO)の含量は生合成酵素が活性化しているにも関わらず微量しか増加しない。本代謝制御の詳細を明らかにすることを目的として、これらの化合物の生合成フラックスの実測を試みた。ジャガイモ塊茎からディスクを作成し、24時間後に10mM L-phenyl-d_5-alanine水溶液を処理した。経時的にディスクを回収し、抽出液中のCGAおよびp-COとその重水素ラベル体の含量をLC-MSで測定した。重水素ラベル体比の経時変化を表す式を、実測値に非線形回帰法で近似させ、CGAとp-COの生合成フラックスをそれぞれ4.2および1.1nmol/gFW/hと求めることができた。以上より、生成したCGAはほとんどが蓄積するのに対し、同じオーダーのフラックスで生成しているp-COは速やかに代謝され、蓄積しないものと考えられた。また、バレイショ塊茎中にはフェノール性アミド化合物の他にもグリコアルカロイド類のα-ソラニンが存在している。α-ソラニンはほ乳類のみならず菌類などにも毒性を持ち、植物への病害抵抗反応への関与が示唆されているが、α-ソラニンの組織中含量を定量することが難しく、その詳細は不明である。そこで、高速液体クロマトグラフィー/タンデムマススペクトロメトリー(LC/MS)を用いたα-ソラニンの簡便な定量法を開発した。この方法は抽出操作が非常に簡便であり、検出限界も10pmolとバレイショ塊茎中のα-ソラニンの定量には十分であった。