著者
山田 健二 須藤 明治
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.183-186, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

〔目的〕足把持力と足関節周囲筋との関係について明らかにすることとした.〔対象と方法〕健康な男子大学生8名を対象とした.足把持力の計測は,足指筋力測定器を用いて任意の片足とした.最大把持時における前脛骨筋,腓腹筋外側頭,母趾外転筋,短趾屈筋の筋活動量を計測した.〔結果〕足把持力と筋活動量との関係において,前脛骨筋,母趾外転筋,短趾屈筋との間に正の相関関係が認められた.〔結語〕足把持力と筋活動量の関係が明らかになった.足把持力には,母趾だけでなく全ての趾が重要であることが考えられ,全ての足趾を鍛えることが重要であると推察された.
著者
隈元 庸夫 世古 俊明 田中 昌史 信太 雅洋 伊藤 俊一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.371-375, 2014 (Released:2014-07-03)
参考文献数
8
被引用文献数
3

〔目的〕骨盤側方移動運動中に骨盤固定による受動抵抗をうけることが移動方向と反対側の中殿筋活動へ及ぼす影響を異なる立位姿勢条件で比較し,閉鎖性運動連鎖での股関節外転筋トレーニング法の筋電図学的根拠を得ることとした.〔対象〕健常成人男性20名とした.〔方法〕左方向に骨盤を側方移動させる運動課題を両股関節内旋位・外旋位・中間位の3条件,右下肢への荷重を最大にした時と体重の半分の大きさにした2条件で実施した.左右の中殿筋,大内転筋を導出筋とした.〔結果〕股関節内旋位・最大荷重での運動課題実施時に右中殿筋活動量が最も高くなった.〔結語〕立位骨盤固定位で骨盤を側方へ移動させる運動は片脚立位が困難でも立位で実施可能なCKC外転筋トレーニングとなることが筋電図学的に支持された.
著者
髙橋 真 岩本 浩二 水上 昌文 井波 博 桑水流 学 宮田 賢児 山口 勝也 嶽本 伸敏 井河 武 宮内 幸男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.155-158, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
11

〔目的〕本研究の目的は足関節捻挫(捻挫)における外果骨損傷の有病率と治癒過程を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は2015年1月から2017年1月に受診した捻挫患者の37例とし,骨損傷(14例)と靭帯損傷(23例)に分類した.〔結果〕骨損傷の有病率は38%,年齢は47.4歳,安静期間は49.1日,完治期間は102.7日,スポーツ受傷は14例中3例であった.年齢は骨損傷が靭帯損傷と比較して高値を示した.骨損傷はスポーツ動作での受傷が少なかった.〔結語〕骨損傷は捻挫の約4割に認め,年齢が高く,スポーツ動作での受傷が少なかったため,日常生活動作へのアプローチが必要と示唆された.骨損傷は完治期間が約3ヵ月であり,靭帯損傷との有意差がなかったことから,約7週の安静期間は損傷部位の治癒に重要と考察された.
著者
松原 由未子 粟井 瞳 木村 護郎 今野 宏亮 徳元 仁美 佐々木 誠
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.341-345, 2004 (Released:2005-01-29)
参考文献数
29
被引用文献数
10 2

本研究の目的は,緊張性振動反射による興奮性効果と振動刺激による抑制性効果のいずれが,筋疲労時の筋硬度に影響するかを明らかにすることである。健常な学生20名(平均年齢24.4歳)を対象に,筋の疲労に至る等尺性運動直後に5分間,105 Hzの振動刺激を与える場合と振動刺激を与えない場合の筋硬度の変化を比較検討した。その結果,最大努力での等尺性運動によって筋疲労が生じ,これに伴って増した筋硬度は,振動刺激を与えることによって5分以上15分未満の間で回復が遅くなることが示された。振動刺激は疲労した筋に対して,緊張性振動反射による興奮性効果が優位に影響し,これに加えて,遮断された血流の除去作用の低下による疲労代謝物質の局所への停滞を増長することで,筋硬度を低下・回復させるのに有効に作用しないものと推察された。しかし,運動後15分には運動前と同程度の筋硬度に回復したため,筋硬度の増大は一過性であり,比較的早く影響がなくなるものと考えられた。
著者
松野 悟之
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.521-525, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
16

〔目的〕要介護高齢者を対象に,ゲーム機を用いた脳トレーニング(脳トレ)に関するアンケート調査を実施した.〔対象と方法〕要介護高齢者24名とした.ゲーム機は,任天堂スイッチ,ゲームソフトは脳を鍛える大人のトレーニングを用いた.アンケートは,教育歴,ゲームを経験しての楽しさや難しさ,ゲーム機の操作,脳トレを今後も継続したいかを調査した.〔結果〕脳トレをやや楽しく感じ,今後もやや続けてみたいと返答した者が有意に多かった.しかし,ゲーム機の操作においては,教えてもらわないとできない者が有意に多かった.〔結語〕要介護高齢者におけるゲーム機器を用いた脳トレは,機器の操作を適切に誘導することで楽しみながら継続できる可能性が示唆された.
著者
鈴木 克彦 佐藤 貴広
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.313-316, 2021 (Released:2021-06-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1

〔目的〕扁平足における機能的靴インソールの体幹に及ぼす効果を立位の脊椎アライメントおよび側腹筋筋厚より検証した.〔対象と方法〕成人13名の無症候性扁平足者を対象とした.脊椎アライメントはスパイナルマウスを用いて静止立位で測定した.腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋の筋厚は超音波画像を用いて静止立位と側方並進立位で測定した.これらはインソール装着と裸足の2条件を比較した.〔結果〕インソール装着により腰椎前弯角と仙骨前傾角が有意に減少し,腹横筋と内腹斜筋の筋厚が静止立位と側方並進立位ともに有意な増加を示した.〔結語〕扁平足のインソール装着は,後足部回内だけでなく腰椎および仙骨のアライメントを変化させ,腹横筋と内腹斜筋の筋活動を高める可能性が示唆された.
著者
谷本 正智 水野 雅康 田村 将良 磯山 明宏
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.451-457, 2009-06-20
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

〔目的・対象〕今回我々は,HTLV-I associated Myelopathy(以下HAM)患者に対して外来リハビリテーション(以下リハビリ)を行った。HAMは,その病態から廃用症候群を惹起しやすく,意欲を持って継続実施できるホームエクササイズ(以下Home ex)の設定が必要であった。そこでHome exを従来から実施している筋力訓練期間と乗馬マシンでの運動期間とに分け,その効果を比較することを目的とした。〔方法〕ABAB型シングルケーススタディにより乗馬マシンを用いたHome exを操作導入期に実施し,基礎水準測定期には体幹・下肢筋力訓練を用いた。〔結果〕評価項目の座位側方Reach,Functional Reach Test,重心動揺検査において操作導入期の改善が認められた。〔結語〕乗馬マシンでのHome exにより姿勢バランス向上を認め,主目標である家事動作,伝い歩きの向上を認めた。HAM外来患者へのリハビリの際,患者を取り巻く家庭環境等に合わせた具体的なHome exの設定が重要であり,これらが緩徐進行性で難治性神経疾患であるHAMに対しても,機能改善が図れることが示唆された。<br>
著者
青木 修 香川 真二
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.491-494, 2008 (Released:2008-10-09)
参考文献数
14

[目的]変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の膝関節位置覚は健常高齢者に比べ低下しているかを検討した。また膝OA患者に対し,局所圧迫を加える膝装具が位置覚に与える影響を検討した。[対象]対象は膝OA患者20名,健常高齢者20名であった。[方法]測定は角度測定ができるよう改良した持続的他動運動装置を用い,膝OA患者および健常高齢者の位置覚を測定した。膝OA患者に対してはさらに,膝装具を装着した状態でも位置覚を測定した。[結果]膝OA患者は健常高齢者に比べ,位置覚は低下していた。膝OA患者は装具装着により位置覚の改善がみられた。[結語]膝OA患者では装具装着により位置覚が改善するという,限局的な面においては装具が有効であることが示された。
著者
平瀬 達哉 井口 茂 中原 和美 松坂 誠應
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-5, 2011 (Released:2011-03-31)
参考文献数
20
被引用文献数
4 1

〔目的〕在宅虚弱高齢者に対し異なる運動介入を行い,身体機能に及ぼす影響について経時的な変化から検討することである。〔対象〕65歳以上で要支援1~要介護1の在宅虚弱高齢者51名とした。〔方法〕対象者を事業所別にバランス運動群24名,筋力増強運動群27名に振り分け,週1回1時間の運動を3ヶ月間実施した。身体機能として,開眼片足立ち,椅子起立時間,Timed Up & Go Test(TUG),下肢筋力を評価し,各運動群におけるそれらの経時的変化を解析した。〔結果〕経時的変化では,バランス運動群は下肢筋力が1ヶ月後より有意に増加し,その後全ての身体機能評価が有意に改善されていた。筋力増強運動群では,下肢筋力が2ヶ月後より有意に増加し,その後椅子起立時間,TUGが有意に改善されていた。[結論]各運動群ともに下肢筋力の増加後にパフォーマンス能力が向上していた。また,バランス運動と筋力増強運動では効果の反応が異なることが示された。
著者
安田 良子 栗原 俊之 篠原 靖司 伊坂 忠夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.345-352, 2021 (Released:2021-06-20)
参考文献数
34

〔目的〕本研究は大学野球選手のポジションにおける足部静的アライメントと動的バランス指標の特徴を明らかにし,これらの関連性を検討することを目的とした.〔対象と方法〕対象は大学野球選手106名(投手31名,野手75名)とした.足部静的アライメント指標は両足立位時の内側縦アーチ高率,第1趾・第5趾側角,開張角,足幅/足長比とし,動的バランス指標は重心安定化時間とした.〔結果〕投手と野手で両足の重心安定化時間に有意な差は認められなかったが,投手にのみステップ足の足幅および足幅/足長比と重心安定化時間に有意な正の相関関係を認めた.〔結語〕投手はステップ足接地後に前足部横アーチを剛体化することで,ステップ足にかかる荷重負荷を軽減し,安定させている可能性が示唆された.
著者
生田 太 出口 広紀 岡本 貢一 名古屋 幸司 佐藤 史也 水沼 由貴 金子 礁 新井 恵実 蒲田 和芳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.339-344, 2015 (Released:2015-07-07)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

〔目的〕変形性膝関節症(膝OA)を有する高齢者の膝内転モーメントや活動性に対するRRR(膝回旋エクササイズ)プログラムの効果を明らかにすることを目的とした.〔対象〕膝OAを有する女性高齢者を無作為に割り付け,被検者数は慣習エクササイズ群12名,RRRプログラム群9名であった.〔方法〕介入前後で歩行時の膝内転モーメントとKOOS,SF-36の計測を実施した.〔結果〕SF-36はRRRプログラム群の方が有意に向上した.KOOSと膝内転モーメントに群間差は認められなかったが,膝内転モーメントはRRR群にて減少傾向であった.〔結語〕RRRプログラムは膝OA患者の生活向上に効果的であることが示された.
著者
藤田 博曉 潮見 泰藏
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.319-324, 2007 (Released:2007-08-18)
参考文献数
15
被引用文献数
6 3

本稿では,理学療法モデルの変遷を述べ,新たな理学療法介入として「課題指向型アプローチ」,「Motor Relearning Program」について論じた。脳卒中を中心とする中枢神経系の理学療法介入は,単に麻痺の改善を目的とするだけでなく,生活を見据えた実践的な治療が求められている。
著者
藤高 紘平 藤竹 俊輔 来田 晃幸 橋本 雅至 大槻 伸吾 大久保 衞
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.263-267, 2012 (Released:2012-08-01)
参考文献数
25
被引用文献数
3 1

〔目的〕足部アーチ保持筋力トレーニング効果が大学サッカー選手の足関節と足部のスポーツ傷害に及ぼす影響を検討した.〔対象〕大学サッカー選手30名とした.〔方法〕対象を2群に分け,足趾把持筋力,アーチ高率,最大1歩幅,片脚立位保持時間などを測定し,経過観察中に発生したスポーツ傷害を調査した.トレーニング群には,1年間の足部アーチ保持筋力トレーニングを実施し,2群間で測定・調査項目を比較した.〔結果〕トレーニング群では足趾把持筋力,最大一歩幅,片脚立位保持時間が有意に増加し,足関節捻挫発生数が有意に少なかった(χ2=4.66).〔結論〕足部アーチ保持筋力トレーニングにより,足趾把持筋力の向上や姿勢制御能の改善が導かれ,足関節捻挫の発生数低下に影響を与えたと推察された.
著者
加辺 憲人 黒澤 和生 西田 裕介 岸田 あゆみ 小林 聖美 田中 淑子 牧迫 飛雄馬 増田 幸泰 渡辺 観世子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.199-204, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
30 20

本研究の目的は,健常若年男性を対象に,水平面・垂直面での足趾が動的姿勢制御能に果たす役割と足趾把持筋力との関係を明らかにすることである。母趾,第2~5趾,全趾をそれぞれ免荷する足底板および足趾を免荷しない足底板を4種類作成し,前方Functional Reach時の足圧中心移動距離を測定した。また,垂直面における動的姿勢制御能の指標として,しゃがみ・立ちあがり動作時の重心動揺を測定した。その結果,水平面・垂直面ともに,母趾は偏位した体重心を支持する「支持作用」,第2~5趾は偏位した体重心を中心に戻す「中心に戻す作用」があり,水平面・垂直面での動的姿勢制御能において母趾・第2~5趾の役割を示唆する結果となった。足趾把持筋力は握力測定用の握力計を足趾用に改良し,母趾と第2~5趾とを分けて測定した。動的姿勢制御能と足趾把持筋力との関係を分析した結果,足趾把持筋力が動揺面積を減少させることも示唆され,足趾把持筋力の強弱が垂直面での動的姿勢制御能に関与し,足趾把持筋力強化により転倒の危険性を減少させる可能性があると考えられる。
著者
杉本 諭 古山 つや子 関根 直哉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.237-243, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
19

〔目的〕Short Physical Performance Battery(SPPB)が要介護高齢者に対するパフォーマンステストとして利用 できるかを検討すること.〔対象と方法〕要介護高齢者90名の身体能力をSPPBとBerg Balance Scale(BBS)で評価し, BBS得点により対象を高身体能力群と低身体能力群に分け,両項目間の相関分析を行った.〔結果〕高身体能力群では, SPPBとBBSの間に相関係数ρ=0.793の強い相関を認めたが,低身体能力群では,相関係数ρ=0.625と中等度の 相関にとどまった.〔結語〕身体能力が比較的良好な場合には,要介護高齢者のパフォーマンステストとしてSPPB が利用できることが推察された.
著者
佐藤 博志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.331-339, 2007 (Released:2007-08-18)
参考文献数
6
被引用文献数
1

神経学的障害を持つ患者が機能的活動を再獲得するための過程において,患者が持つ潜在能力を適正に捉え,その顕在化を阻害している因子を改善することは,その評価と治療的アプローチにおける課題である。これらの患者の多くは姿勢制御不全を来たし,機能的活動の阻害因子となっている。随意運動としての行動の発現には姿勢制御が先行すること,姿勢制御のためには異なる種類の多くの感覚入力が必要である事などを考慮すると,姿勢制御を獲得する過程が適応行動の神経基盤として重要であると考える。本稿では臨床的な視点での姿勢制御の構成要素に注目し,神経学的障害を持つ患者の評価と治療的アプローチについて述べる。
著者
川端 悠士 日浦 雅則
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.441-445, 2008 (Released:2008-07-28)
参考文献数
22
被引用文献数
4 13

〔目的〕下肢の筋力低下は高齢者の転倒のリスク要因の1つに挙げられる。CS-30(30-seconds chair-stand test)は簡便な下肢筋力評価法として近年広く使用されているが,CS-30と転倒との関係についての報告は少ない。本調査では転倒予測テストとしてのCS-30の有用性を検討することを目的とした。〔対象と方法〕地域在住高齢者135例を対象にCS-30を行い,転倒歴との関連を調査した。〔結果〕CS-30のROC曲線を作成した結果,最も統計学的に有効なcut-off値は14.5回であった。また転倒歴を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析により,算出したcut-off値の妥当性が確認された。得られたcut-off値14.5回における転倒予測の感度は88%,特異度は70%を示し, AUCも85.2%と高値を示した。〔結語〕これらの結果からCS-30の転倒予測テストとしての有用性が示唆された。
著者
藤原 愛作 小野 秀幸 山野 薫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.13-18, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
20

〔目的〕妊娠期から育児期における女性のセラピストの健康管理や労務管理に関する諸問題を明らかにすることである.〔対象と方法〕次世代育成支援対策推進法に基づいて子育てサポート企業の認定を受けた医療・介護施設の中で,リハビリテーション科を標榜している九州圏域の24施設を対象に,郵送による質問紙法を実施した.〔結果〕調査票の回収率は62.5%であり,妊娠期のトラブルは約半数の施設で発生していた.また,妊娠期のマイナートラブルなどの諸問題について職員教育が不足していた.〔結語〕今後,心身の不調に対応できる多様な勤務体制の整備と職員教育を行うことは,妊娠期から育児期における女性療法士が勤務しやすい風土を作るために重要といえる.
著者
高田 雄一 矢崎 香苗 岩本 浩二 飯島 光博 又村 貴大 山本 可奈子 宮本 重範
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.893-896, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
11

〔目的〕足部形状に変形のない健常足と内側縦アーチが低下した扁平足では地面へ接する部位は異なる.扁平足は足底感覚閾値にどのような影響を与えるのか検討することであった.〔対象と方法〕対象は健常群22名,および内側縦アーチが低下している扁平足群21名とした.モノフィラメント圧痛計を用いて9つの足底部位(母趾中央,示趾中央,中趾中央,環趾中央,小趾中央,母趾球,小趾球,内側縦アーチ中央,踵中央)において足底感覚閾値をそれぞれ測定した.測定した閾値を部位ごとに群間比較した.〔結果〕小趾球でのみ扁平足群で有意に閾値が低かった.〔結語〕扁平足群では健常群に比べ荷重量の少ないと考えられる小趾球の感覚閾値が低いことがわかった.
著者
芹田 透 工藤 宏幸 坂井 建雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.675-681, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
41

〔目的〕肩関節の臨床症状評価の一助とするため,肉眼解剖手法により棘下筋に分布する動脈を観察した.〔対象と方法〕解剖実習遺体17体19側の棘下筋に分布する動脈の走行および分布領域を調査した.〔結果〕棘下筋に分布する主な動脈は肩甲上動脈と肩甲回旋動脈で,どちらも筋の内面を走行していた.肩甲上動脈が,上肩甲横靱帯と肩甲切痕で形成されるトンネル内を走行して棘下筋に達する例もあった.2動脈の分布領域は標本により異なった.〔結語〕棘下筋に分布する動脈には,深層を走行し,トンネル内を通過するなど,圧迫を受けやすい特徴がみられた.また,動脈分布形態は多様であり,臨床症状の個人差への影響が示唆された.