著者
島谷 康司 田中 美吏 金井 秀作 大塚 彰 沖 貞明 関矢 寛史
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.721-725, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

[目的]本研究の目的は,くぐり動作を用いて,発達障害児と健常児の障害物への身体接触を比較検証することであった。[対象]5~6歳の健常児と発達障害児,各9名を対象とした。[方法]課題は7種類の遊具と高さの異なる6つのバーを交互に設置したコースを通り抜けることであった。障害物との接触回避に関する注意喚起を与えない条件,接触回避を与える条件,そして接触回避および早く移動することを促す条件の3条件を設け,それぞれ1試行ずつ行わせた。[結果]発達障害児は健常児に比べて,条件に関わらず接触頻度が高かった。また,発達障害児は腰部の接触頻度が高かった。[結語]発達障害児の接触の多さは,注意の欠陥が原因ではないと考えられる。また,視覚フィードバックを随時利用して,接触しないようにくぐり動作を行うことが困難な状況において身体接触が多いことから,身体特性情報に基づく行為の見積もりの不正確さが,発達障害児の身体接触の多さの原因であることを示唆した。
著者
対馬 栄輝
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.181-187, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
15 6

最近,理学療法における研究報告では,検査・測定に対する信頼性を検討する機会が増えてきた。それと同時に適用上の問題も出てきたと考える。信頼性係数として級内相関係数(ICC),クロンバックのα係数,Cohenの一致係数(κ係数),Kendallの一致係数(W係数)を挙げ,これら信頼性係数の特徴を個別に検討し,シミュレーションも行って正しい適用を見出すことが目的である。 ICCは適用範囲の広い信頼性係数であるが,検者または繰り返し測定間と被検者・測定のばらつきの比によって値が決まるため,SEMの併記が必要となる。κ係数は,3人以上の検者の場合はFleissによるκ係数が適用となるが,それと比較するときは検者が2人であってもFleissのκ係数を使う方が妥当である。また,W係数とκ係数を同時に用いて両者の欠点を補うような使用が望ましい。理学療法では順序・名義尺度のデータを扱う機会が多く,ICCよりもκ係数やKendallの一致係数が適用となるケースの方が多い。しかしどの係数も利点欠点があるため,いくつかの注意点を勘案して適用する必要がある。なによりも重要なのは,データをよく観察することであり,また係数やその有意性のみに固執しないことが挙げられる。
著者
原 幹周 吉田 英樹 片石 悠介 谷脇 雄次 花田 真澄 前田 貴哉 照井 駿明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.63-68, 2015 (Released:2015-03-18)
参考文献数
17
被引用文献数
2

〔目的〕生理学的指標に基づいたTENSの疼痛軽減効果の検討に加えて,TENSの刺激強度の違いによる疼痛軽減効果への影響を明らかにする.〔対象〕健常者16人とした.〔方法〕人為的な疼痛に対して周波数100 Hzでの高強度(運動域値以上)TENSと低強度(感覚閾値レベル)TENS,およびTENSを一切実施しない条件(コントロール)を実施した.各条件間での疼痛軽減効果を主観的指標であるNRSと,生理学的指標である前頭前皮質の脳血流量および自律神経活動を用いて各条件間を比較した.〔結果〕交感神経活動には明らかな違いが認められなかったが,NRSと前頭前皮質の脳血流量の結果では高強度TENSの疼痛軽減効果が最も高かった.〔結語〕高強度TENSが,主観的にも生理学的にも優れた疼痛軽減効果を示した.
著者
稲田 竜太 藤井 裕一 井上 裕貴 谷 綾花 佐藤 望 花城 健太 安浦 優佳 荒明 拓 森川 裕喜 出水 精次
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.899-903, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
26

〔目的〕膝前十字靱帯(ACL)再建術後1年のHop test回復状況を調査し,回復基準に至りにくいHop testを明らかにすること.〔対象と方法〕ACL再建術を施行した218症例を対象とし,術後1年のVertical Hop(VH),Single Leg Hop(SLH),Triple Hop(TH)が健患比90%以上に回復した割合と3種のHop test全項目が健患比90%以上に回復した割合を調査した.〔結果〕Hop testの回復割合はVH 67.9%,SLH 78.4%,TH 78.9%であり,VHの回復割合が最も低かった.Hop test全項目が健患比90%以上に回復した割合は59.2%であった.〔結語〕約4割の症例においてHop testが健患比90%未満であり,特にVHの回復率が低かった.
著者
木下 恵美 浦辺 幸夫 前田 慶明 藤井 絵里 笹代 純平 岩田 昌 河原 大陸 沼野 崇平
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.227-231, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
15
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,片脚着地動作時の前・後足部運動と膝関節外反運動の関係を明らかにすることである.〔対象〕対象は健常成人女性13名とした.〔方法〕課題動作は高さ30 cm台からの非利き脚での片脚着地動作とし,台より30cm前方に着地させ,片脚立位を保持させた.課題動作中の膝関節外反角度,前足部回内角度,後足部外反角度,アーチ高を算出し,膝関節外反角度と各足部角度,アーチ高との相関関係を調べた.〔結果〕片脚着地動作時の前足部回内運動と膝関節外反運動に有意な相関関係は認められなかった.一方,後足部外反運動と膝関節外反運動には有意な正の相関が認められた.〔結語〕片脚着地動作での膝関節外反運動を予防するためには,後足部外反運動を少なくすることが重要であることが示唆された.
著者
吉田 啓志 近藤 駿 増田 裕里 嶋尾 悟 浜岡 克伺 成冨 博章
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.323-326, 2018 (Released:2018-04-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

〔目的〕本研究は,リハビリ後自宅退院した脳卒中患者の活動範囲を屋内群と屋外群に分類し,屋外活動の可否を最も予測可能な退院時身体的因子のカットオフ値を明らかにすることとした.〔対象と方法〕自立歩行可能で自宅退院した脳卒中患者31名を対象とした.退院3ヵ月後の活動範囲をLife Space Assessment(LSA)を用いて調査した.退院時評価項目のうちLSA合計点と有意に相関する指標を抽出し,屋外活動判別に最も適したカットオフ値を求めた.〔結果〕6分間歩行距離(6MD)のカットオフ値が最も高い判別能を示し,その値は358.5 mであった.〔結語〕脳卒中患者の自宅退院後の屋外活動を維持・向上させるためには入院中の6MDにおいて350 m以上を目指す必要があることが示唆された.
著者
弓永 久哲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.567-570, 2011 (Released:2011-11-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2

〔目的〕脳卒中患者の連合反応の出現機序を検証するための基礎的研究として,健常者を対象に歩行中の上肢筋に対応する脊髄レベルの興奮性をF波を用いて検討した.〔対象〕対象は健常成人男性30名とした.〔方法〕歩行前,歩行中,歩行終了直後,終了1分後,2分後における右上肢筋のF波を記録した.〔結果〕出現頻度は歩行中に有意に変化したが,振幅F/M比と潜時は有意な変化を示さなかった.〔結語〕以上より健常者の歩行では上肢筋レベルの脊髄の興奮性は増加する傾向を示した.このことから脳卒中患者においても歩行中に上肢筋レベルの脊髄の興奮性は増加することが考えられ,治療プログラムを立案する際考慮する必要があると考える.
著者
吉田 一也 江尻 廣樹 磯谷 隆介 原 和彦 藤縄 理
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.277-282, 2014 (Released:2014-05-22)
参考文献数
17
被引用文献数
3

〔目的〕自然立位の脊柱アライメントと肩甲骨位置と肩甲上腕関節外転可動域の関係について検証した.〔対象〕運動器障害のない成人男性40名(25±5歳)とした.〔方法〕測定肢位は自然立位とし,頸部屈曲角,円背指数,骨盤傾斜角,胸郭周径,肩甲骨位置,肩甲上腕関節外転可動域を測定した.統計解析として,重回帰分析で脊柱アライメント,肩甲骨位置,肩甲上腕関節外転可動域の関連性を検討した.〔結果〕胸椎後弯と胸郭周径,肩甲骨位置に特に高い関連性があった.〔結論〕骨盤前傾,腰椎前弯・胸椎後弯・胸郭周径の増大による肩甲骨の外転・上方回旋が示唆された.肩甲骨は胸郭上にあるため,胸椎弯曲・胸郭形状から大きな影響を受けると考えられる.
著者
渡邉 五郎 藤平 知佳音 星 賢治 蒲田 和芳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.593-599, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
31

〔目的〕ハイヒール着用での歩行は,しばしば歩容の変化や足部・足関節の疼痛,捻挫などの外傷を引き起こす.本研究の目的を,ハイヒール用インソール(IHS)が,ハイヒール着用中の立位バランス能力向上に及ぼす効果を明らかにすることとした.〔対象と方法〕対象者は若年健常女性20名で,ハイヒール着用下で,①開眼片脚立位,②開眼片脚スクワット,③開眼足踏み動作の3試技を重心動揺計上で行った.各試技での総軌跡長,単位軌跡長,外周面積,前後・左右の位置ベクトルを記録し,IHSの有無で比較した.〔結果〕IHSの使用により,開眼片脚スクワットと開眼足踏み動作で重心動揺が有意に減少した.〔結語〕IHSの使用はハイヒール着用下での階段降段,歩行の安定性向上につながる可能性が示唆された.
著者
田坂 厚志 沖 貞明 田中 聡 島谷 康司 長谷川 正哉 金井 秀作 小野 武也 大塚 彰 坂口 顕
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.577-580, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕超音波療法の客観的な有効性を明らかにするために,動物実験を行った。〔対象〕実験には10週齢の雌Wistar系ラットを16匹用いた。〔方法〕右足関節をギプス固定し,1日1回固定を除去して超音波照射後にトレッドミルで走行を行わせる超音波群(8匹)と1日1回固定を除去し超音波を照射せずにトレッドミル走行を行わせる対照群(8匹)の2群に分けた。〔結果〕個々のラットにおける実験開始前と実験開始1週間後の足関節背屈角度の変化をもって2群を比較したところ,超音波群では42.5±6.0度,対照群では51.2±11.7度となり,超音波群は角度変化が有意に少なかった。〔結語〕関節拘縮発生抑制効果に関する超音波の有効性が確認できた。
著者
清水 陽介
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.723-727, 2016 (Released:2016-10-27)
参考文献数
18
被引用文献数
1

〔目的〕股関節外転筋力と10 m最大歩行速度(以下10MWS),歩行自立度の関連性,歩行自立のためのカットオフ値を算出することとした.〔対象と方法〕対象は,片麻痺患者31例とした.方法は,10MWSと歩行自立度を算出し,Hand-Held Dynamometerを使用し,股関節外転筋力を測定した.〔結果〕10MWSと麻痺側股関節外転筋力(r=0.74)には有意な相関が認められた.歩行自立度に影響のある因子として,麻痺側股関節外転筋力のみが抽出され(オッズ比11.917,オッズ比95%信頼区間2.18971-65.146),歩行自立のためのカットオフ値は,0.230 kgf/kgであった.〔結語〕麻痺側股関節外転筋力は,歩行速度,歩行自立度に対する重要な因子である可能性が高い.
著者
吉田 昌弘 菅原 一博 吉田 真 谷口 圭吾 片寄 正樹
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.499-503, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

〔目的〕超音波画像診断装置を用いて安静時と足関節前方引き出しテスト(ADT)時における前距腓靱帯(ATFL)の伸張距離の計測を行い,検者内および検者間の再現性を調べること。〔対象〕過去1年以内に足関節捻挫の既往がある大学生8名10足。〔方法〕8 MHzのリニアプローブを足関節前外側部にあて,安静時およびADT時における超音波画像撮影を行った。PC上にて距骨-外果の骨間距離をATFL伸張距離として計測し,検者内および検者間の再現性について級内相関係数(ICC)を用いて調べた。また,安静時およびADT時の距骨-外果距離を対応のあるt検定で比較した。〔結果〕安静時,ADT時ともに検者内および検者間において高い再現性が得られた。安静時の外果-距骨間距離は16.5±3.9 mm,ADT時では20.0±4.9 mmであり,両者に有意な差を認めた。〔結語〕安全性および高い再現性から,足関節捻挫群に対するADTに超音波画像を併用する定量評価の有用性が確認された。
著者
神田 賢 北村 拓也 佐藤 成登志 古西 勇 鈴木 祐介 渡辺 慶 久保 雅義
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.483-487, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
25

〔目的〕若年女性の本態性慢性肩こり有訴が頸部に影響を及ぼす因子を比較検討した.〔対象と方法〕若年女性40名(有訴群20名,無有訴群20名,平均年齢21.4 ± 0.7歳)を対象に,頸部屈伸筋群持久力および最大筋力,頸部機能不全度(NDI)を評価した.〔結果〕肩こり有訴群は無有訴群と比較して,頸部屈伸筋群持久力時間において有意に低い値を示したが,屈伸筋群最大筋力においては,有意な差を認めなかった.頸部機能不全度では,有訴群が無有訴群と比較して有意に高い値を示した.〔結語〕若年女性においては,本態性慢性肩こり有訴は頸部屈伸筋群持久力に影響を及ぼす因子となる可能性が示唆された.また,本態性慢性肩こり有訴は,頸部機能にも影響を与える可能性が示唆された.
著者
川井 謙太朗 舟崎 裕記 林 大輝 加藤 晴康 沼澤 秀雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.309-313, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

〔目的〕野球投手において,投球時に肩関節に痛みのある群(有症状群)とない群(無症状群)で,上腕骨頭後捻角,ならびに,それを除いた2nd肢位での肩回旋可動域(補正角度)を比較した.〔対象〕男性の野球投手69名(有症状群38名・無症状群31名)とした.〔方法〕超音波画像診断装置を用いて上腕骨頭後捻角,ならびに補正角度を計測し,それぞれを2群間で比較した.〔結果〕上腕骨頭後捻角は2群間で有意差はなかった.有症状群は無症状群に比べて,投球側の補正外旋角度が有意に大きく,補正内旋角度は有意に小さかった.一方,非投球側の補正回旋角度に有意差はなかった.〔結語〕投球時痛に伴う回旋可動域の変化は,上腕骨頭後捻角より軟部組織性因子との関連性が示唆された.
著者
平尾 利行 竹井 仁 佐久間 孝志 妹尾 賢和 近藤 貴揚
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.297-302, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
24
被引用文献数
1

〔目的〕閉鎖筋の筋活動を賦活するのに適した運動負荷を検討すること.〔対象〕腰部および下肢に器質的疾患を持たない成人男性11名とした.〔方法〕高負荷の課題1(60°/sec)と無負荷の課題2(500°/sec)における等速性股関節外旋運動前後で,MRIのT2強調画像から内閉鎖筋,外閉鎖筋,大殿筋,中殿筋,縫工筋のMR信号強度率を抽出し比較した.〔結果〕抽出された課題1において内閉鎖筋,外閉鎖筋,中殿筋,縫工筋で,課題2において内閉鎖筋,外閉鎖筋,縫工筋で,運動前に比べ運動後にMR信号強度率が有意に上昇した.〔結語〕速筋線維を多く含む閉鎖筋に対しては,高負荷のみならず無負荷の運動も筋活動を得ることを可能にすると考える.
著者
小林 恵理 萩野 浩
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-28, 2020 (Released:2020-02-28)
参考文献数
35

〔目的〕変形性膝関節症(osteoarthritis of the knee:膝OA)患者の足部形態を調査し,転倒発生との関連を検討することである.〔対象と方法〕対象:一次性膝OAに対する手術目的で入院した40歳以上の女性患者30名.方法:手術前日に転倒歴の聴取,自己記入式アンケート調査,足部形態評価,歩行分析,運動機能評価を実施した.〔結果〕手術適応のある膝OA患者において,舟状骨沈降度(navicular dropping test:NDT)が転倒リスク因子として挙げられた.〔結語〕手術適応のある膝OA患者において,足部の機能訓練やテーピング,足底挿板療法などを用いた物理療法など,足部へ介入することは,患者の転倒を予防する可能性があると考える.
著者
宮﨑 茂明 鳥取部 光司 帖佐 悦男 石田 康行 河原 勝博 渡辺 将成 屋嘉部 愛子 平安 堅吾 濱野 友生 常盤 直孝 加藤 浩
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.703-708, 2013

〔目的〕投球動作における体幹回旋運動と肩甲帯周囲の筋活動の関連性を検討することである.〔対象〕高校の野球部投手(疼痛既往肩8名,コントロール10名)とした.〔方法〕検討項目は投球動作時の胸郭および骨盤回旋角度とその変化量,表面筋電図周波数解析による肩甲帯周囲の筋活動(平均周波数とその差分)とした.〔結果〕疼痛既往肩の投手は,胸郭回旋角度の変化量ではコッキング期に有意に低値を,加速期に有意に高値を示した.骨盤回旋角度の変化量はコッキング期に有意に低値を示した.肩甲帯周囲の筋活動はコッキング期に僧帽筋下部線維,前鋸筋で有意に低値を示した.〔結語〕投球障害肩の発生要因として,体幹回旋運動減少と肩甲帯周囲の筋収縮リズムに生ずるインバランスにより,肩関節への負荷が増大した可能性がある. <br>
著者
南場 芳文 藤井 瞬 大谷 啓尊 井上 由里 上杉 雅之 武政 誠一 宮本 重範 弘津 貴章 田中 日出樹
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.799-803, 2014 (Released:2014-10-30)
参考文献数
29

〔目的〕上肢挙上位におけるclosed kinetic chain(以下,CKC)運動が腱板筋の筋活動に及ぼす効果を明らかにし,腱板筋の機能回復に有効な徒手抵抗による運動方法を検証することである.〔対象〕健常な男女29名(平均年齢21.5 ± 4.7歳)の右29肩に対して行った.〔方法〕肩甲骨面上での拳上150°または,120°及び,外転位,下垂位にて棘下筋,三角筋(中部線維),僧帽筋(上部線維)の徒手抵抗に対する筋活動を積分筋電法(5秒間)にて計測した.〔結果〕肩甲骨面上での挙上150°,体重比5%の徒手的な負荷を用いたCKC運動は,棘下筋の随意最大収縮の約30%の筋活動を認めた.〔結語〕肩関節挙上位でのCKC運動は棘下筋の理学療法に有効である.
著者
芳野 純 佐々木 祐介 臼田 滋
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.495-499, 2008 (Released:2008-10-09)
参考文献数
7
被引用文献数
4 3

[目的]回復期リハビリテーション病棟退院後患者のADLの変化の特徴と影響を与える関連因子を解明する。[対象]回復期リハビリテーション病棟より自宅退院した患者117名。[方法]退院後のADLに影響を与えると思われる因子,退院時および退院1ヵ月後のFIM運動項目を調査し,統計学的に分析した。[結果]退院時と比較すると退院1ヵ月後のFIM運動項目は有意に低下していた。各項目では,セルフケアが有意に低下しており,排泄コントロールは有意に向上していた。退院時のFIM運動項目が50~69点(半介助群)の患者および通所系サービス利用者が有意に低下していた。[結語]回復期リハビリテーション病棟退院患者は,退院1ヵ月後においてADLが低下する恐れがあり,低下を予防する必要性がある。
著者
石井 慎一郎 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-16, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

スクリューホームムーブメントの特性を明らかにするため,非荷重位での膝関節伸展運動をPoint Cluster法を用いた三次元動作解析により計測した。対象は20~65歳までの健常成人30名とした。その結果,19人の被験者は膝関節の伸展運動中に脛骨が外旋し,5人の被験者は終末伸展付近から脛骨が内旋し,6人の被験者は伸展運動中に脛骨が内旋していた。終末伸展付近から脛骨が内旋する被験者は女性が多く,全ての被験者がLaxity Test陽性という身体的特徴を有していた。また,膝関節伸展運動中の脛骨前方変位量も大きいという特徴も認められた。伸展運動中に脛骨が内旋する被験者は,40~60歳代の年齢の高い被験者であった。スクリューホームムーブメントは,靭帯の緊張や加齢変化によって影響を受けることが明らかとなった。