著者
高橋 恭子
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

腸管のマスト細胞及び上皮細胞と腸内共生菌との相互作用の解析を行った。その結果、腸内共生菌がマスト細胞の最終分化過程に影響を及ぼすこと、腸管上皮細胞における菌体認識に関わる遺伝子の発現を調節することが明らかとなった。腸内共生菌によるマスト細胞及び腸管上皮細胞の機能の調節に関わるこれらの機構は、腸共生系の恒常性の破綻に起因する炎症反応を食品により制御するための有用なターゲットとなることが期待される。
著者
王 福林
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度には建物周辺における緑の日射遮蔽や蒸散は,どの程度の省エネルギーが達成できるか,空調システムの屋外機の効率向上にどの程度貢献するのかなどを明らかにすることを目的とする。そこで本年度には,植物の生育が制御しやすいサツマイモの葉を使う水気耕栽培屋上緑化を使用し,緑化による気温低減効果で空調熱源の効率改善にも寄与するようなシステムを構成し,そのシステムの気温低減効果・省エネルギー効果を実測・解析・モデル化した。それらを用いて,北方から南方までの代表都市4箇所において,本システムの省エネルギー効果がどの程度あるかをシミュレーションを用いて確認した。結果,1)水気耕栽培屋上緑化の日積算蒸散量:平均は6.3kg/m2であり,期間最大値は8.3kg/m2であった。既往研究と比較すると,期間最大の日積算蒸散量は潅水のない屋上緑化(セダム)の13.8倍,潅水のある屋上緑化(セダム)の1.8倍にあたり,単木にも匹敵する値であるということがわかった。2)冷却温度差:日射量が十分にある10:00〜16:00の冷却温度差の測定結果は,降雨日を除いた期間の平均冷却温度差は1.3℃であった。これに対し,散水実験日の平均冷却温度差は3.0℃と,約2.3倍になっている。3)冷房熱源の効率向上効果:オフィス用熱負荷標準問題に準じ,簡略化した建物モデルを作成し,札幌・東京・大阪・那覇の四地域にある建物の熱負荷をシミュレートし,提案したシステムが各地域でどの程度省エネ効果を得られるかを検討した。8月1日〜9月30日の期間において緑が成長し,冷却効果を利用できるとし,省エネ効果を試算した。結果,2ヶ月間の積算エネルギー消費量は,効率向上率の小さい空調機のグループが約1%,中のグループが約6%,大のグループが約8%,エネルギー削減できることがわかった。
著者
鴻巣 努
出版者
千葉工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では眼球運動計測により, 非漢字系孤立語の言語特性について考察した. タイ語読解においては,難易度の上昇により注視回数だけでなく,注視時間の増加が認められた.これは,日本語の傾向と異なっており,タイ語読解時では認知処理レベルが高くなる傾向が分かった.読解時の注視点分析より,タイ語には,日本語における漢字,英語におけるスペースなどの形態的に特徴を持った要素への注視は少なく, PSG(周辺探索誘導)が優位に機能している傾向は認められなかった.一方で,単語の末尾に存在するドーサコット(終末子音)に注視が集まる傾向が認められた.ドーサコットは,通常使われる子音と同じ形態で日本語や英語のように形態的特徴だけで通常子音かドーサコットかの区別ができない.視覚探索においては,CSG(認知探索誘導)を優位に働かせることが必要である. 一注視あたりの情報受容量は日本語やドイツ語のデータと比べて 20~30bits 程度多く,これはタイ語の認知特性に起因していると推察される.
著者
山田 直子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究はオランダおよびインドネシアの文書館における文献調査と現地でのオーラルヒストリー調査を通して、近代インドネシアにおける婚姻の制度化の歴史を、オランダ植民地政府、現地知識人、村落社会という三つの視点から考察した。特に、伝統的に母系制を維持する社会慣習を守りながら、一方でイスラームという父系的な宗教規範が根強いスマトラ島ミナンカバウ社会を中心に分析し、植民地社会に存在した多様な規範が交錯する社会空間を明らかにした。
著者
村松 芳多子
出版者
千葉県立衛生短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

昨年は主に市販スターターを用いて、胞子の耐熱性効果を検討した。それをもとに本年度は実際に納豆を製造した時のヒートショック状況と納豆菌胞子の種菌(スターター)化を試みた。大豆はフジキャビアイエローを使用し、蒸煮した大豆に、納豆菌を10^n/mlを納豆100g当たり0.1ml接種し、鈴与工業製SY-NO/20自動納豆製造装置(製造プログラムA)を用いて納豆を製造した。さらに納豆製造中の納豆菌の発芽状態と発酵状況得るために酸素電極による酸素濃度と、温度センサーによる温度変化を測定した。70℃,5分間、70℃,10分間、100℃,5分間、100℃,10分間で加熱した時の胞子を用い、ヒートショック後の納豆菌の納豆製造におけるヒートショック効果をみたところ、期待したほどの発芽促進効果はみられなかった。納豆発酵過程における容器内酸素濃度の影響はヒートショックをしない方が酸素吸収が多く、100℃でヒートショックを行った場合は、酸素吸収が少なかった。ヒートショックを行い発芽が良くなれば、少量の菌液でもヒートショックを行っていない菌液と同様の酸素濃度が見られると考えられたが、酸素濃度は菌液中の生菌数に比例しているように思われた。容器内温度も菌の生育に応じて変化していた。官能検査の結果、KFP419では100℃,5分間の菌液で糸引きが良かったが、熱処理をしていないものとの有意差は見られなかった。しかし、KFP1では70℃,10分間と100℃,5分間で糸引きが良くなりその差が見られた。ヒートショックの効果は糸引きに影響が見られると思われた。種菌化方法は、NBP培地に胞子を生産に不可欠と思われる微量物質を添加し検討した。胞子の割合は遊離胞子数/(有胞子細胞数+栄養細胞数)×100で求めた。100%スタータ化することは困難で、添加する物質により胞子割合は55〜80%であった。培養温度は添加する物質により異なったが、37℃と40℃では40℃の方が適していた。
著者
武田 祐輔
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、脳波や脳磁図から運動意図に関連する脳活動を抽出し、ブレイン-コンピュータ・インタフェース(BCI)の精度向上に役立てることを目的とした。運動意図に関連する脳活動を抽出するために、運動想像中の脳波から、様々な未知のタイミングで現れる波形(非同期波形)を推定し、その性質を明らかにした。そして、非同期波形の機能的役割を推測するための方法を確立した。さらに、レスト中の脳活動データから繰り返し現れる時空間パターンを推定する手法を提案した。
著者
アラキマトゥカフ 直子
出版者
福岡女学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、福岡市小学校英語活動の発展を目指し、演劇表現活動を取り入れた児童英語カリキュラム開発・実施の提案である。本研究は、第一に「演劇の一環であるEducational Drama教授法を取り入れた小学校英語活動の推進」を行った。この課程では、「ドラマの手法/Educational Drama(演劇表現活動)」を使った英語活動カリキュラムを導入した。このカリキュラムの「開発」「実行」「振り返り」の作業を文部科学省「小学校における英語活動等に関する国際理解活動推進拠点校」である福岡市横手小学校の教員と共に行った。本研究代表者は、6年生2クラスの英語活動に長期にわたって参加し、教員と児童に直接現場で指導した。その結果、言語学習中心であった英語活動が活性化され、英語を「覚える」活動ではなく、英語でコミュニケーションをとる「楽しさ」を実感できる活動へ変わった。また、英語に苦手意識があった児童や、学習意欲が低かった児童も、生徒主体の「ドラマの手法」特に「なりきる」ことを通して、「自己再発見」「他者再発見」ができ、積極的に授業に参加する姿が見られた。本研究者が現場で直接指導することで、先生方が日頃抱える英語活動に対する不安が解消され、担任中心で行う英語のコミュニケーション活動への取り組み方を直に伝えることができた。第二に「小学校英語活動分野においての教員教育・研修」を福岡市立小学校教員が主催する「英語活動サークル」や「英語活動研究委員会」の定例会にて行った。そこでは「ドラマの手法」を用いたオーストラリアでの外国語教育の事例や、横手小学校の実践経過報告を発表した。19年6月30日に行われた横手小学校英語活動公開授業にて、「ドラマの手法」を取り入れたカリキュラムを起用した6年生の授業を400人近くの教育関係者が見学し、児童の活き活きとした積極的な姿からこのカリキュラムの成果を実感した。さらに「ドラマの手法」を広く理解してもらう為に、Japan Drama/Theatre and Education Association(JADEA)の学会を設立し、20年2月14日15日の両日にJADEAシンポジウムを開催した。オーストラリアや台湾から著名な教育者を招き講演とワークショップを行い、本研究者も横手小学校の教員と共に本研究結果発表を行った。シンポジウムには、教育関係者をはじめ大学生や一般市民、多数の方々が参加された。
著者
松原 和純
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヘビにおける性染色体の分化過程を解明することを目的として、3 種のヘビ(インドニシキヘビ、シマヘビ、ハブ)において性染色体の構造比較を行った結果、インドニシキヘビのZW 染色体は分化の初期状態を保持してきたことや、シマヘビとハブの共通祖先においてW 染色体の矮小化が進んでいたことが示唆された。また、ヘビにおいて性分化関連遺伝子群の染色体上の位置を同定した結果、哺乳類において卵巣形成に関わるとされるβカテニン遺伝子が性染色体に位置することが明らかとなった。さらに、いくつかの性決定関連遺伝子の胎児期の性腺における発現パターンの雌雄差を調べた結果、産卵後10 日以前に性分化が開始することが明らかとなった。
著者
池田 菜穂 GURUNG Janita GYALSON Sonam
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ネパール・ヒマラヤ高地と,インド・ヒマラヤ西部のラダーク地方において,地域住民の災害リスク認識と災害対応に関する研究を行った。ネパールでは,高山帯全体を対象として,地域社会の社会環境及び住民の生業活動に関する現状と近年の変化を調査したほか,国の防災実務に関する文献調査を行った。インドでは, 2010年8月にラダーク地方で発生した豪雨災害について,災害被害が地域住民の生活に及ぼした影響と地域住民の災害対応に関する現地調査を行った。今後は,これらの成果を元に,災害に関するヒマラヤ高地住民の知識と対応力の向上に貢献する活動を実施したい。
著者
勝川 路子
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

レモングラスは調味料や香料として世界的に広く利用されているハーブであり、鎮痛や消炎作用を目的として用いられるが、その分子メカニズムは明らかになっていない。本研究において、我々はプロスタグランジン産生に重要な酵素であるCOX-2や生活習慣病の分子標的であるPPARを指標としてレモングラス精油の評価を行い、レモングラス油主成分のシトラールがCOX-2を抑制し、PPARを活性化することを同定した。
著者
石黒 仁揮
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

大規模アナログ・ディジタル混載回路に搭載されるアナログ回路の周波数応答および時間応答をモニターする回路を開発した。高速に正負双方に昇圧されたクロックを生成するブートストラップ回路を考案し、サンプリング回路の動作周波数およびダイナミックレンジを拡張出来ることを実験で確認した。位相特性測定用の面積効率の良い位相補間回路を考案して、回路設計および測定を行った。開発したモニター回路は0.1mm角以下のサイズで、LSIのチップ内に多数搭載してアナログ回路の特性モニターおよびそのキャリブレーションに利用することができる。
著者
武田 将明
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

18世紀初頭、英国小説は、匿名を用いて実録の体裁を取ることで、娯楽的なロマンスから現実的な文学様式を新たに作り出すことに成功した。しかし、事実によって虚構性を抑圧することは、小説の可能性を狭めることにもつながった。そこで18世紀中ごろから、この新様式の特徴を損なうことなく、いかに巧みなプロットを構築するかという試みがなされ、これと同時に作者の名前が表面化する。本研究は、18世紀英国小説におけるリアリズムと物語性との相互作用を、匿名性の問題と関連づけて考察したものである。
著者
落合 信寿
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,安全色の国際規格と諸外国の規格との規格整合化に寄与するため,日本,中国,韓国の東アジア3カ国4地域における安全色のリスク認知の普遍性と文化的差異について国際比較を行い,東アジアにおける安全色(特にJIS独自の採用色であるオレンジ)の有効性を検証することを目的とした。調査結果から,東アジア3カ国4地域においては,黄より高い危険レベルを示す安全色としてオレンジを用いることが不適切である事などが明らかになった。
著者
山崎 龍
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

環の中に軸が入って抜けない状態にある分子をロタキサンと呼び、これまで多くの合成法の開発が試みられてきた。ロタキサンに機能を付与するためには、これまで多くのロタキサンにおいて環成分に用いられている軟らかい構造の環を堅い構造とすることで分子全体の構造を規定でき、デザインがしやすくなるのではないかと考え、その合成法確立を目指した。その結果、堅い構造かつ非対称な環(SPM)の合成法確立に成功し、さらに環の中で嵩高い置換基をもった軸同士をクリック反応によりつなげることで堅い環構造をもったロタキサンの合成を行った。
著者
山本 千映
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は、昨年度に収集したスタッフォードシャー州文書館所蔵の四季裁判所記録、Calendars of Prisonersのデータベース化を進めた。デジタルカメラで撮影した1777年から1860年までの記録のうち、1777年から1820年まで、タイプされている部分のみであるが、データ入力が完了している。欄外に手書きで評決や判決等の追加情報が書き込まれているケースも多々あるが、これは未入力となっている。平成19年2月9日から3月2日まで、資料収集のために渡英し、国立公文書館(NA)およびスタッフォードシャー州文書館(SRO)を訪れた。昨年度は、NA所蔵の巡回裁判の起訴状(indictments)のトランスクリプトを行ったが、情報量は豊富なもののデジタルカメラでの撮影が難しいため、数週間の渡英では意味のある年数分のトランスクリプトが不可能と判断し、代わりに、情報量は落ちるが、冊子の形態をとっていて撮影が容易な、Crown Minute Books(National Archives, ASSI 2)を閲覧し、1775年から1791年まで撮影した。これにより、Calendars of Prisonersに掲載されている拘留者のうち、巡回裁判での判決によるものの罪状があきらかになる。また、SROでは、Quarter Sessions Order Booksを閲覧した。これは、犯罪のみならず、民事訴訟や行政手続について、四季裁判所が下した判断を網羅したものであり、Calendars of Prisonersの作成の背景を知る上で重要な史料である。昨年8月には、早稲田大学社会科学部中野忠教授の科研セミナーにて「生存戦略と非公式経済」と題して、公式の経済活動以外の、生存(make shift)のための活動について報告した。またCalendars of Prisonersのパイロット的な分析を、「産業革命期イングランドの貧困と犯罪」として執筆中である。
著者
谷口 幸代
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

大正期の野村胡堂は、『報知新聞』文芸欄で、記事の執筆、新聞小説の企画などの編集作業、自らが連載読物を書く創作、と多彩に活動した。胡堂は,記者や学芸部長の活動を通して把握した文壇の動向と読者の好みに基づき、新聞小説において、新しい書き手の充実、作品の質の向上、既成の枠組みに囚われない新しい分野の開拓をめざした。大正期に始まった輪転機印刷の普及による激烈な発行部数競争を背景に、胡堂は純粋芸術とは別の新聞小説というジャンルを切り開いた。このことは『報知新聞』に森鴎外や芥川龍之介の作品が掲載されなかった理由を考える手掛かりとなり得る。
著者
上保 秀夫
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

過去や現在に関する情報に焦点を当ててきた従来の情報検索研究に対し、本研究では未来に関する情報の検索技術および検索行動に焦点を当て、その技術評価基盤の構築を行った。その結果、未来情報に関する検索行動が、過去や現在の検索行動と比較して、どのように異なるのか明らかになった。また、未来情報の検索技術を評価することが可能な研究用データセットを構築し公開した結果、米国、英国、フランス、ドイツ、インド、中国、日本の研究グループに活用され、技術開発に貢献した。
著者
河野 荘子
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成14年度は、非行少年の自己統制能力に関して、非行進度と家庭環境との関連性から検討し、学会で口頭発表をおこなった。本研究では、非行少年(少年鑑別所に入所中の男子少年、平均年齢16.4歳)の自己統制能力と、非行進度(過去の施設入所歴の有無・少年鑑別所への入所回数・非行の初発年齢の3つの下位分類からなる)、家庭環境(実父の有無・実母の有無の2つの下位分類からなる)の関連性を検討するため、共分散構造分析をおこなった。その結果、実父母と何らかの要因によって、生別もしくは死別し、家庭環境が不安定な状態になると、自己統制能力が低くなることが示された。家庭環境が不安定になると、しつけがおろそかになってしまいがちとなり、自己統制能力の低さに結びつくと解釈できた。しかし、自己統制能力の低さと非行進度との関係性は、意味のある結果を見出すことができなかった。こうなった要因の1つとして、少年鑑別所入所者は、受刑者よりも比較的犯罪傾向が進んでいないため、施設入所歴や少年鑑別所入所回数といった客観的指標のみでは非行進度が明確になりにくい可能性が考えられた。非行行動に関わる機会が多いなどの環境の問題も考慮に入れる必要があるかもしれない。上記の結果を、犯罪者の自己統制能力の構造と比較すると、どちらも、実父母の有無は、自己統制能力の形成に大きく影響を及ぼすことが指摘できた。ただ、犯罪者は実父の有無の影響をより大きく受けていることが示されていたが、非行少年に両親の間で影響の差は見られなかった。非行少年から犯罪者へと、反社会的傾向を強める者は、実父との関係に何らかのより大きな問題を抱えていることが推測された。
著者
鈴木 利一
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

春季から夏季にかけて、東シナ海の広い範囲(特に北東域を中心に)で、群体形成藍藻であるトリコデスミウムを採集し、その表層分布の特性と付着生物(トリコデスミウムを特異的に摂餌するカイアシ類Macrosetella gracilis幼生に注目)との量的関係を調査した。細胞糸が複雑に絡み合う群体を形成するこの藻類は、体容積を測定することが困難である為、細胞内に存在するクロロフィルa量でその生物量を指標した。また、この藻類のクロロフィルaと、他の植物プランクトンが含有するクロロフィルaとを確実に区別する為に、20μm目合いのプランクトンネットにより採取されたサンプルの中から、トリコデスミウム細胞糸のみを直ちに実体顕微鏡下で分離し、ジメチルホルムアミド溶媒で抽出した後に、蛍光光度計で測定した。この研究を通してわかったことは、以下のとおりである。(I)塩分が増加すると、トリコデスミウム現存量の最大値が指数関数的に増加した。(II)海水温が増加すると、トリコデスミウム現存量は指数関数的に増加した。(III)植物プランクトン現存量に対して、トリコデスミウム現存量が占める割合はクロロフィル濃度にして0.05〜17%になった。(IV)細胞分裂途中の割合で指標した相対的な細胞増殖速度は、現存量の大小とあまり関係がなかった。(V)Macrosetella gracilisの成体の現存量と、トリコデスミウム現存量との間には量的な関係が見られなかった。(VI)Macrosetella gracilisの幼生の現存量と、トリコデスミウム現存量との間には正の関係が見られた。(VII)ネット動物プランクトンの乾燥重量とは負の関係がみられた。これからの課題としては、付着生物群のなかで、微細なものに焦点を絞り、その相互関係を中心に研究を進めていくことが急務であると推察された。
著者
堀澤 健一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、タンパク質の試験管内スクリーニング技術であるin vitro virus (IVV)法を応用し、アルギニンメチル化酵素群の標的となる基質タンパク質を、試験管内で網羅的に解析する系の構築を目指した。代表的なアルギニンメチル化酵素であるPRMT1の基質タンパク質の試験管内スクリーニングのモデル系を構築し、種々の検討を行った。その結果、夾雑タンパク質存在下において既知基質タンパク質が1度のプルダウン操作により約11倍濃縮されることを確認でき、PRMTs基質タンパク質の試験管内探索のモデル系を確立することができた。