著者
北川 裕之
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

高性能方向に優先方位を有するBi_2Te_3系熱電変換材料作製を行うための結晶成長法として, スライド・ボート法による液相成長プロセスを開発した.スライドボート法によりマイカおよびサファイア上に成長させた結晶は, 基板と平行に高性能面が揃っていることが確認された。高配向により,p型Bi_<0.5>Sb_<1.5>Te_3のホール移動度は、同程度のキャリア濃度を有する焼結体と比較して室温で1.8~2倍程度の値を示した.高移動度により低抵抗化が実現され,室温における電気的性能指数(出力因子)は同程度のキャリア濃度を有する焼結体と比較して約1.3~1.5倍程度向上した.
著者
ブランチャード フランソワ
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的はTHz電磁波を用いて、様々な生体物質の化学組成・特性を非破壊で評価可能、生体活動に伴う物質移動をリアルタイムで可視化可能な手法を構築することである。これまでに構築してきたTHz近接場顕微鏡を改良し、共同研究先であるオリンパスの顕微鏡を組み合わせて、より使い勝手の良い顕微鏡システムを構築した。この顕微鏡ではビデオレートで370×740μm^2と広範囲の画像を分解能10μm以下(THz電磁波の波長は数百μmなので、波長/100以上の分解能)で得ることが可能である。また、様々な環境下で測定が可能なように、この顕微鏡専用のインキュベータや、パージボックスも同時に設計、作成した。この顕微鏡を用いて、本年度(最終年度)行ったことは以下の通りである。1.電場増強のための大口径リング共振器の評価をおこない、リング共振器内での電場増強効果(3倍)を確認した。リング内にサンプルを設置することで、より高強度THz電磁場による高感度な評価が可能となると予想される。2.この共振器のデモンストレーションとして、微少量(~10ng)の機能性物質(porous coordination polymers(PCPs))の特性評価を行った。THz近接場顕微鏡で共振器内にPCPのあるものと、共振器内に無いもののTHz応答を空間分解して同時測定することで、長時間でもS/Nの良い測定が可能となる。この研究期間内に6本のレビューを含む論文、および1本の特許出願を行った。レビュー論文では本研究課題を含むこれまでの成果をまとめるとともに、最近の成果についても述べている。最近の成果であるメタマテリアル近傍の電場、放射電場の観測についてはこの8月に論文が掲載された。機能分子PCPのにおける分光イメージの結果については論文化する予定である。
著者
吉田 樹
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、観光地域における生活者と観光者がともに快適な環境を創出するために、生活者と観光交通の折り合いに配慮した交通計画に関する理論化と計画技術の構築を目的として実施したものである。具体的には、以下の二点について検討した。第一には、青森県奥入瀬渓流地域を事例として、観光地域における交通問題の現象解析とその発生構造の分析を行い、観光バスによる車窓観光が地域の道路交通に与える影響を定量的に示した。第二に、鉄道と自転車の融合利用の一つであるサイクルトレインに着目して、地方鉄道の活性化や観光における周遊手段としての可能性を検討した。
著者
福澤 利江子
出版者
甲南女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

米国で開発・実施されたListening to Mothers質問紙の日本語翻訳と文化的改変を進めるため、プレテストを拡大した。妊娠・出産・産褥早期版では220名、産後後期・育児・就労版では翻訳と専門家による内容妥当性評価を経て130名の産後の女性より参加が得られた。妥当性、信頼性、同質性をさらに高めるため、尺度開発のプロセスは今後も続く。今回の調査結果はホームページを通じて社会へお返ししていく。
著者
秋山 麻実
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の成果は、以下の二点に集約される。第一に、本研究では、19世紀を中心に多数出版された宗教小冊子で扱われる死のテーマについて、その構造を明らかにした。そこには、忍苦と信仰、幸福な死を描くと同時に、残された者の喪の作業とグリーフ・ケアという側面も含まれていた。第二に本研究は、そうした小冊子が生まれてきた系譜について明らかにした。これは17世紀宗教改革後に著された多くの宗教書との関連において捉えられるべきであり、そうした大人のための宗教書と、子どものための本との内容的な一致点と相違点を明らかにした。
著者
宇佐美 覚
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本申請研究では、rho依存性転写共役因子MRTF-Aの病的心筋リモデリングにおける役割とその分子機構に関する研究を行った。まずMRTF-Aが心筋肥大刺激により心筋細胞において細胞質から核内にrho-actin dynamics依存性に移行することを確認し、MRTF-Aノックアウトマウスを用いて、MRTF-Aが心肥大に重要な役割を果たしている結果を得た。さらに心臓ホルモンであるBNP遺伝子の発現制御領域に新たにMRTF-Aに反応するSRF結合部位を同定することに成功し、BNPが新たなMRTF-A-SRF経路の直接的な標的遺伝子であることを明らかにした。
著者
藏田 耕作
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

骨細胞ネットワークの健全性に着目して骨リモデリング機序を調査することを目的とし,局所的なひずみや破断を与えながら骨細胞を培養できる実験系およびマウス脛骨に疲労亀裂を付与できる動物モデルを開発して実験を行った.その結果,骨基質に生じる大ひずみにより骨細胞ネットワークが損傷を受け,その周囲でアポトーシス細胞が誘導されることが分かった.これがシグナルとなり,損傷部位をターゲットとした骨リモデリングが開始されたり,骨強度低下を補償する骨形成が生じたりすることが示唆された.
著者
久本 雅嗣
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

赤ワインは熟成すると色が紫色から赤、レンガ色になり、味もスムースでマイルドになる。瓶内での熟成による赤ワインの成分の変動を観測するため、製造直後の赤ワインとその1年後に超高速液体クロマトグラフィー-飛行時間型質量分析装置で測定を行い、多変量解析を行った。その結果、ピラノアントシアニンやピラノアントシアニン重合体が熟成した赤ワインの熟成に貢献していることがわかった。
著者
井村 英人
出版者
愛知学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

口蓋突起癒合後に解離し,口蓋裂が発症している現象に着目し,口蓋裂発生のメカニズムを細胞・分子レベルでのシグナル伝達の相互作用と、制御機構から解明することを目的とした。口蓋形成期における口蓋突起癒合時に,上皮索基底膜のパールカンおよびコラーゲンIVの消失が認められ、口蓋突起上皮細胞が分泌したヘパラナーゼは間葉系細胞の分化・増殖を惹起する可能性が推測された。また、口蓋突起が伸長する際、口蓋突起鼻腔側の基底膜にLamininの陽性反応を認めた。癒合前の口蓋突起全体にPCNA の局在を認め、活発に細胞増殖が行われていることが考えられた。
著者
高 台泳
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は国内外の諸観光ガイドマップに対し、その地図記号を収集・分析したものである。その目的は従来の諸地図記号を見直して、新たな地図記号を開発するための研究基盤を設けることである。そこで、国内外の約34カ国から様々な観光ガイドマップを収集した。収集にあたっては自らユーザーの立場で諸観光ガイドマップの検証と分析も同時に努めた。これらの資料をデジタルデータ化してから、幾つかのカテゴリに分けて整理・分析した。
著者
秋元 忍
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、スポーツ用具業者がイギリスのホッケー普及過程において果たした役割について検討を行った。スポーツ用具業者は、19世紀末のゲームの組織化を契機としてホッケー関連用具製造に参入し、大量の用具を市場に提供した。またホッケー用具の供給に注力した複数の用具業者は、プレイヤーの満足度を高める工夫を試みていた。ホッケーのゲームの多様な普及を一面で支えていたのは、彼らが供給した用具であった。
著者
田甫 綾野
出版者
玉川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、家庭科における「触れ合い体験」学習を、家庭科教育における視点からだけではなく、幼児教育の視点からも意義あるものとするためのプログラムの構築を行なった。様々な幼児をめぐる世代間交流の参与観察の分析の結果、「身体的同調性」が高く、「共感性」が高い交流については、互恵性が高く、その後の活動や学びにも影響を与える交流となることが明らかとなった。そのためには、年少者の興味関心が高く、さらには年長者がその活動の魅力やおもしろさを実感し、異なる役割をもつのではなく〈共に活動を楽しむ〉ことが重要であると考察された。
著者
宮脇 さおり
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

近年、ケモカインであるSDF-1(CXCL12)がヒト皮膚において間質、線維芽細胞、表皮細胞などに発現していることが報告されていたが、その生理機能は未知であった。我々はSDF-1が濃度依存性に表皮角化細胞の細胞遊走を促進させることを見出した。さらにその細胞遊走にはEGF受容体の活性化とそれに引き続くERK(p42/44)の活性化が中心的な役割を果たしていること明らかにした。
著者
河野 公一
出版者
東北工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,ロシア極東地域で毎年発生している森林火災の状況を把握するため,衛星画像を用いて7年間分の解析を行った.その結果,焼け跡は4月と10月に多く,また,火災煙は5月に多く検出された.これらの結果の分析から,前年の10月の焼け跡がその後に雪で覆われ,翌年の4月に雪が融けて再び検出されることが分かった.さらに,5月に多く観測される火災煙の発生場所は,前年の10月の焼け跡の多くと一致していることも分かった.提案法ではこれらの情報を複合的に用いることにより,森林火災の発生メカニズムの一つを明らかにした.
著者
田久保 圭誉
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

造血幹細胞(HSC)はニッチと呼ばれる特殊な微小環境で維持される。本課題ではHSCは骨髄内骨膜近傍領域において低酸素状態で細胞周期を静止期にとどめていることを見出した。また、こうした性質の維持のためには低酸素応答因子HIF-1alphaとその蛋白を破壊するために必要なE3 ユビキチンリガーゼVHLが必須であり、HIF-1alphaが失われるとHSC は老化してストレス耐性を失った。一方、VHL欠損でHSCの細胞周期がより静止状態になったことから、HIF-1/VHL制御系の精密な制御はHSC維持に必須であることが示された。
著者
三好 美織
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

科学的素養の内実は、科学そのものの知識のみならず、現実社会で必要とされる問題解決や科学的手続きに関わる能力と態度をも含むものであり、それらを総合的に運用することのできるコンピテンスとして捉えられる。学校教育において科学的素養を育成するために、小学校から高等学校まで方向性を一にした一貫性あるカリキュラムの作成、評価規準の具体化、実際的で多様な文脈を基盤とした児童・生徒を主体とする探究的な学習活動の導入、及び教員に対する情報提供と支援が必要である。また、学際的な学びを実現するため、既存の教科の枠組みをこえた新たなカリキュラムを検討する必要がある
著者
藤井 宝恵
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

易感染症患者は食事からの感染防止を目的とした食事制限が行われるため、本研究は、給食以外の患者の摂取希望の高い食の提供方法について、細菌学的に検討した。その結果、市販食品の衛生状態は製造メーカーで異なり、加熱可能な食品の細菌数は、食品の中心部温度が90度以上となる電子レンジ加熱により低減した。また、果皮の平坦な果物の除菌は水洗で十分であった。調理前の手指を低細菌状態にするには、石鹸洗浄後に手指を乾燥させた方がよい、等を確認した。
著者
稲垣 明子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

膵島移植において安定して質の高い膵島を得る方法を確立することは移植成績の向上に直結する重要な課題のひとつである。そこで、本研究では保存過程の虚血状態や、膵島分離工程での溶存酸素濃度の低下による膵島損傷を解決するために、膵臓摘出直後から膵島分離終了までの間の酸素供給システムを確立することを目的とした。膵組織の保存の酸素化についてはは人工ヘモグロビンを膵管から導入したが、分離膵島の収量や質の向上は確認出来なかった。いっぽう、膵島分離工程における中空糸加圧モジュールを用いて閉鎖分離回路内を酸素化することで、膵島の収量、energy statusが向上し、アポトーシスを回避出来ることが明らかになった。
著者
岡村 雅史
出版者
北里大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

Campylobacter jejuni 汚染鶏肉に関連する食中毒事例が国内外で頻発している。一般的に、C. jejuni は 3 週齢前後の鶏群から検出され始め、7-8 週齢での出荷時には鶏群内汚染率約 100%に達するが、それ以前の日齢における定着はほとんど起こらない。本研究では、3 週齢までの鶏に C. jejuni が定着しにくい要因として、当初着目した腸内細菌叢だけでは説明できず。むしろ、環境中に低濃度で存在する菌の状態とその遺伝子発現状況が、鶏体内に入った直後から定着増幅するまでの時間を延長させるように働いているものと推測された。