著者
加納 修
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は、平成17年度より行ってきたフランク時代の国王文書の分類作業から得られたデータを検証するために、フランク時代、とりわけメロヴィング朝期(481年〜751年)の国王文書の伝来状況を詳しく検討した。前年度に滅失文書(現在まで伝わっていないが、作成されたことが他の史料から証明される文書)を調査し、分類した結果、売買や贈与を王が確認した文書が実際には数多く作成されたことを明らかにしていたが、いかなる種類の文書が伝来しやすいか、あるいは言及されやすいかを検討した結果、とりわけ私人が受け取った文書の伝来可能性が極めて低い事実を証明することができた。私法行為を確認する文書は、私人が受け取った文書の代表なのである。こうした文書の多さは、公権力としてのメロヴィング王権の性格をよく表している。より具体的な研究成果としては、この種の私法行為確認文書の一カテゴリーをなす「仮装訴訟」(国王裁判で私法行為を確認するための特殊な手続き)の記録を、文書の機能の面から再検討したフランス語論文を、フランスの古文書学雑誌であるBibliotheque de l'Ecole des chartesに投稿した。この論文は平成17年度に投稿し、その後大幅な修正を経て掲載が決定した。「仮装訴訟」を記録する国王文書が、実際には土地所有を証明する権利証書ではなく、土地の所有をめぐって裁判になった場合に当該の土地の売主を召喚するための文書であったことを証明することによって、メロヴィング朝の国王証書が単に権利を保障する「証書」の機能にとどまらず、きわめて多様な機能を有していたこと、そしてこうした文書の機能がローマ法やローマ帝国の行政制度に大きな影響を受けていたことを示した。なお平成19年5月に予定していたフランス語での研究報告は、椎間板ヘルニアの罹患のために、断念せざるを得なかった。
著者
須藤 義人
出版者
沖縄大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

弥勒芸能を図像学の視点から体系化するために、来訪神信仰に関する資料収集と調査を行った。弥勒芸能は「マレビト芸能」の一種であると位置づけ、他の来訪神(マレビト)を表象する仮面芸能との比較研究を進め、『マレビト芸能の発生』(芙蓉書房出版)という研究書にまとめた。
著者
後藤 元
出版者
学習院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

株主が会社に対して拠出した財産が少なすぎる場合(過少資本)には、株主は会社債務について責任を負い、また株主の会社に対する債権を劣後化すべきであると主張していた従来の学説を、法と経済学の見地を踏まえて再検討した。これにより、株主有限責任制度の弊害として問題とすべきなのは、会社の自己資本の多寡ではなく、会社事業の実施に関する株主のインセンティブのゆがみであるということが明らかになった。
著者
橋爪 隆
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度は、本件研究の最終年度であり、倒産犯罪の保護法益、「破産手続開始決定の確定」の理論的な意義など、倒産犯罪の基礎理論的な研究(平成15年度に着手)、新破産法のもとにおける破産犯罪規定の解釈論的検討(平成16年度に着手)を引き続き実施するとともに、破産犯罪全般に関する総合的な研究作業に従事した。特に詐欺破産罪(新破産法265条)の行為類型(財産の隠匿、仮装譲渡・債務負担、価格減損行為、不利益処分など)について、その意義と限界を検討した。また、研究活動に際しては、破産犯罪にとどまらず、金融犯罪、執行妨害事案、高金利処罰、マネーロンダリングなど、経済犯罪一般に関心を広げ、経済刑法全体の文脈の中で破産犯罪を分析するように心がけた。一方、「債権回収において、いかなる場合に、また、いかなる範囲で刑事法が介入すべきなのか」という問題意識から、刑法の違法阻却の理論的研究、とりわけ自救行為(自力救済)の正当化根拠とその限界に関しても検討を加えた。その結果、現在の通説のように自救行為の成立要件をきわめて厳格に解する必要はなく、むしろ、正当防衛との連続性という観点から分析を加えるべきではないかと考えるに至った。この点についてはさらに検討を加えたうえで、近日中に成果を公表する予定である。本年度はこのように多角的な観点から研究活動を行った結果、複眼的な視点を獲得できたように思われ、それ自体はきわめて有益であった。もっとも、それらのアプローチが破産犯罪の分析に十分に収斂しているとは言い難く、今後、さらに継続的に研究を続ける必要がある。
著者
西川 義晃
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度の実績は以下の通りである。本年度は研究期間の最終年度に当たる。1.従前と同様に、明治23年商法制定以降、昭和25年商法改正前(以下、「旧商法下」とする)における会社法について、これを大規模公開企業法制と位置付ける観点から研究を進めた。まず、株式会社の設立規制および発行市場法制に関して、資料収集及びその分析を進め、成果を発表した。旧商法下においては募集設立が原則と考えられており、設立と同時に発行市場の形成が想定されていた。一方、設立時には、発起人による払込金の取込詐欺や払込の仮装などの違法行為が問題となっていた。そのため旧商法は厳格な設立規制を構築すると同時に、学説は公募に応募する公衆の保護を強く主張していた。一方、平成17年制定の新会社法は設立規制を緩和したところ、ここでは設立にまつわる弊害対策という観点が乏しいように思われ、設立規制は再検討が求められるように思われる。2.旧商法下の発行市場における相場操縦の研究を進め、その過程で現代の相場操縦規制に関し、相場操縦にかかわる民事責任について判例研究を執筆し公表した。3.新たに大規模公開企業の取締役の責任に関して、旧商法下における取締役の私財提供を研究し、成果が間もなく公表される(本年4月15日)。日興コーディアルグループにおける3億円の私財提供など、近時、私財提供は話題に上ることが多い。旧商法下において私財提供は、主に昭和2年金融恐慌の際に行われており、これと昭和13年商法改正による損害賠償請求権の査定制度との関連について考察した。査定制度は訴訟で確定すべきものを、裁判所の後見的判断により迅速に明確化するものであり、民事訴訟による責任追及と私財提供の中間的な位置づけにあったと言えるように思われる。4.昨年度、金融商品取引法の沿革について文章化したが(上村達男(編著)『金融商品取引法』中央経済社)、発行が遅延している。
著者
松香 敏彦
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究ではカテゴリー学習において、学習者の個人の目的が獲得される概念・知識に影響を与えること、また、ある概念は単一に表象されているのではなく、複数の表象をもちうるということが、行動実験によって明らかにした。これらの状況に応じた知識を獲得する能力、複数の表象を持つ認知メカニズムが、人間の適応性を要素であることを計算機シミュレーションによって示した。
著者
田沼 幸子
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究調査は、キューバ国内外の主に30代のキューバ人男女のインタビュー映像を通じて、グローバルな世界システムと革命、労働と生きることの意義とがどのように絡み合っているのかを普遍的な問題として提示することを目的とする。個人的なインタビュー調査を通じて、世界システムが各人の生を強く規程していると同時に、その制約を越えようとした各人の決断が大きく異なる現在をもたらしたことも示された。本研究を通じて、現実を見据えたうえで可能な理想を実現するために行動することの意義をより多くのオーディエンスに示すことができるようになった。
著者
川ノ上 帆
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

代数幾何学において重要であるが長年未解決である正標数の特異点解消の問題に向け、本研究者の提唱したIFPというプログラムを発展させる形で研究を進めた。IFPの枠組みで特異点解消の為の不変量を定義し、爆発を経ない状態ではこの不変量が理想的な形で機能することを示した。また爆発に際して不変量が適切に振舞う為の要件を解析することで、狭義変換を用いるより良い不変量の可能性を見出し関連する部分的結果を得た。
著者
伊藤 範明
出版者
朝日大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

低出力超音波パルス(LIPUS)刺激が,ラット破骨細胞の活性に与える機序の1つとして,細胞骨格に対する影響が考えられる.細胞骨格の重合を阻害してからLIPUS刺激を与えた.その結果、細胞骨格の再重合に対して,LIPUS照射群は非照射群よりも早い段階から再重合を促進していた.これは,LIPUSの刺激が細胞形態の変化に関与していることを示しており,メカニカルストレスとの関連が示唆された.しかし,LIPUS照射が細胞骨格の再重合のどの部分に作用しているかは検討が必要である.
著者
御法川 学
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度(〜平成17年3月31日)は以下の項目を実施した。(1)リアルサイズ要素モデルの設計リアクティブ構造の超小型配列を実現するため、各種の微細加工法(微細放電加工、マイクロブラスト加工、マイクロ光造形)を用いることを検討した。ラージサイズの1次モデルの試験結果においては、共鳴構造の諸寸法が共鳴周波数と減音量に与える影響についての知見を得た。(2)微細加工によるリアクティブ素子の試作マイクロブラスト加工、マイクロ光造形、微細放電加工などの微細加工を用いてマイクロリアクティブ素子を試作した。まずそれぞれの加工法において、加工可能な溝・孔形状のサイズや加工精度について調べた。本研究では、マイクロブラスト加工によって物体表面に微細なリアクティブ構造を製作した。(3)音響試験試作したリアクティブ素子の性能を評価するための音響試験を行った。本研究では、微細構造が空力騒音に与える影響を風洞実験によって調べた。その結果、予備実験においては表面性状の変更による減音効果を確認できたが、製作した微細構造では顕著な減音効果が得られなかった。(4)研究成果の発表本年度は未実施であるが、次年度以降に発表予定とする。
著者
西村 安代
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

園芸地帯の地下水は、施肥量や頻度、栽培作物の影響を受けており、肥料特性も水質に反映されていた。肥料流亡試験では、堆肥からも肥料成分が多量に流亡していた。養液栽培では、かけ流し式でなくてもEC値を基準とした循環式の簡便な方法で同等以上の生育と収量が得られ、養液土耕では、従来の元肥施与栽培よりも大幅に肥料を削減でき、カニガラ等の資材も肥料として十分な効果が得られた。生理障害に関しては肥料の過不足よりもそのバランスが重要であることが明らかとなった。これら結果を活かすことで、肥料施与量や肥料流亡を削減でき、環境保全型農業に寄与できると考えられた。
著者
金原 いれいね
出版者
釧路公立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

発話と、手を使って図像的に概念を表すことができる身振りの関連性について、発話処理の過程で、二つのモジュールが独立しているのか、相互にモニタリングを介して結びついているのか調べた。手を板に固定して身振りの産出を制限する条件と、自由に身振りが使用できる条件のもとで、説明課題に参加してもらうことによって、話し手の流暢性、擬音語・擬態語の頻度、声の質など、発話の側面に変化が生じるかどうか明らかにした。
著者
野田 由美意
出版者
成城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

昨年度の調査結果をまとめた論文「1919-1920年代前半における読書を通じてのパウル・クレーとアジア・オリエントの関係」(『美學美術史論集千足伸行教授退任記念』19輯、2011年、219-233頁)で、クレーのアジア・オリエント関連文献の蒐集期には、1909年~第1次世界大戦期に第1次ピーク、1919~24年に第2次ピークがあることを取り上げ、その読書体験の分析を行った。本年度では、この第2次ピークにクレーがアジア・オリエントに関する作品をやはり多く制作していることに注目し、関連作品の精査を行った。昨年度から調査を行っていた作品《中国風の絵》(1923年)が、本年度の調査過程で《中国風の絵II》(1923年)ともとは1つの作品であり、クレーが制作のある時点で縦方向に2つに切断したという可能性が非常に高いことが発見された。そこで本年度は、ベルンのパウル・クレー・センターと宮城県美術館でこれらの作品についての情報収集と、作品調査を中心に行った。また、ヴァイマール・バウハウスにおけるアジア・オリエントの関心や当時のドイツと中国やインドとの政治的関係を明らかにするために、ベルリンのバウハウス・アーカイヴやヴァイマールのテューリンゲン州立中央文書館等で資料調査を行った。その調査結果を、美術史学会例会(於東京藝術大学)で「パウル・クレー作《中国風の絵》(1923)と《中国風の絵II》(1923)の制作背景について」として発表した。本発表では両作品やインドに関する作品を中心に、クレーがヴァイマール・バウハウスの当時の環境にあって、クレーがアジア・オリエントの芸術や社会に積極的に接近し、その関心が作品の源泉となり得たこと、そしてその関心は、画材や制作過程についての取り組みにまでも及んだということを明らかにした。これにより、クレーとアジア・オリエントへの関心とその作品制作への反映に関して従来の研究で取り上げられなかった局面が新たに実証され、クレー研究に新たな地平を開いたと考える。
著者
松友 知香子
出版者
札幌大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、以下の3項目についての研究を行った。まず1920年、30年代ドイツにおける芸術表象としての<天使>と近代都市の関係性の考察である。パウル・クレーとエルンスト・バルラハの両作品における<天使>の造形は、美麗なキリスト教の天使像から逸脱し、近代的な造形へと還元される一方で、<都市>という生活世界で苦悩する人間の内面を映す媒体として天使像が選ばれたことを確認した。次にフィリップ・オットー・ルンゲの版画作品『一日の諸時間(Die Zeiten)』を取り上げ、<天使>と<子ども>の関係性について考察を行った。この作品は<時>の循環を、連作という形式で実現し、各作品は中央部分とそれを取り囲む枠の二重構成となっているが、その中央部分に<天使>が唯一登場する「夜」に着目し、ルンゲの意図する「最後の審判」としての『夜』の意義づけと、<天使>と<子ども>の造形的特徴と身振りの分析から、両者の関係性を解釈しようと試みた。この十全な解釈には、本作品に先行する『アモール神の凱旋(Der Triumph des Amor)』における<アモール神(クピド)>と人間の諸段階(幼少期、青年期、壮年期、老年期)を表象する<子ども>の考察が不可欠であり、そしてバロック・ロココ的な愛の神クピドではなく、ギリシア神話に由来する原初神エロスとしての解釈が成立するかということが次の課題になることを確認した。最後に現代社会における<天使>表象を考察した。当初の計画では、現代日本のサブカルチャーにおけるキッチュな<天使>や人造人間としての<天使>を主な対象とする予定であったが、その領域が広範囲にわたることが判明したため、ドイツ文化圏における天使像に限定し、先行する研究との連続性から、ヴェンダースの1987年の映画『天使の詩(Der Himmel uber Berlin)』を対象とした。この作品には、キリスト教の天使や図像から派生した様々な天使を集約した<天使ダミエル>と<天使カシエル>が登場する。有限の時間を生きる<人間>の運命に<天使>が共鳴するというストーリー展開であり、そこには、かつての<天使>に対する人間の憧憬の反転が見られる。これを近代の「倒錯」と見るか、それとも<天使>の本来の姿と見るかについては、結論は保留としたい。
著者
前田 亜紀子 山崎 和彦
出版者
長野県短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

野外活動用被服類の温熱的快適性について検討するため、3種実験を行った。実験(1)では、野外活動用被服類の各種環境条件下における観察から、フィールドにおける評価方法を検討した。実験(2)では、野外活動における衣服の濡れについて、人工降雨および自然下降雨について比較し定量化した。その上で、徐々に衣服が濡れる場合の生理・心理的影響を捉えた。実験(3)では、寒冷下での野外活動を想定し、被服類内部に発生する結露現象をモデル実験で捉えた。さらに零下15℃における着用試験を実施し、生理・心理的影響について検討した。
著者
護山 真也
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ダルマキールティの『プラマーナ・ヴァールッティカ』第三章後半ならびにラトナキールティの『多様不二照明論』の解読研究に基づき、外界対象、形象、自己認識という三要素を整合的に理解する方策、ならびに形象真実論と形象虚偽論との対立に絡む概念知の働きを解明した。また、W・セラーズによって提起された「所与の神話」とも重なる論点に関連して、解脱論と結びつく合理性を考える仏教認識論の体系では、形象は経験的知識の基礎づけの役割を担うわけではないことが明らかにされた。
著者
橋田 光代
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,抽象化した音楽表情のコントローラに基づき,集約したパラメータ制御によって,簡易に実時間で生き生きとした音楽表情を作りだすインタフェースを開発することを課題とした.具体的には,フレーズ表現とアテンションの移動に着目した複数旋律音楽の表情付けモデル(Pop-E)をベースとした,音楽構造解析支援機能の整備と,スライダによるパラメータセット操作により実時間で演奏を生成するシステムの実装を行う.本年度は,以下の項目についての研究・調査を実施した.1.音楽構造解析支援機能の整備外部ファイルに記述された演奏制御パラメータと,MusicXML形式で記述した音楽構造情報(グループ構造,フレージングの頂点,アテンションパート)を入力とし,オフラインで動作するプロトタイプシステムに対し,グループ構造の解析候補機能と演奏制御パラメータのインタラクティブ制御機能,フレーズとその頂点音の編集機能の実装を行った.2.Pop-Eインタラクティブシステムの実装に向けての調査実装済みのプロトタイプシステムを,操作パラメータの記録機能,実時間演奏レンダリング機能を有するリアルタイム動作版に拡張するために,音楽情報科学研究会,エンターテイメントコンピューティング(EC),インタラクション,ACII2007,NIME2007,の各学会に参加し,演奏表現に関するインタラクティブシステムの類似研究の調査と,MIDIコントローラ,テルミン,Wiiコントローラなどのジェスチャ・センサデバイスに関する情報収集と意見交換を実施した.また,本システムの応用・実利用先の検討として,音楽教育支援に関する予備調査として,小〜中学生を対象としたケーススタディの実施,音楽教育学会への参加・情報収集を行った.
著者
赤星 軌征
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

硫黄を含むメチオニンをシステインに代謝する経路の2酵素Cystathionine β-synthase (CBS)とcystathionine γ-lyase (CSE)の欠損は,前者は重篤な病態だが,後者は顕著な症状はない。マウスでは両酵素は肝臓や腎近位尿細管に強く発現するが,本件は不明点の多い腎での生理的役割を探索した。CBS欠損マウスでは毒性の高いメチオニンの尿中排泄の効率が低いのに対し,CSE欠損マウスではCBSによる代謝物の排泄効率が高く,両者の病態差に関わると考えられた。また一見正常なCSE欠損マウスでも妊娠高血圧腎症様の病態があった。両酵素は血管弛緩因子の硫化水素を産生するが,腎内の硫化水素は両酵素の発現部位に高濃度に存在しており,病態への関与が考えられた。
著者
遠藤 泰弘
出版者
松山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

従来必ずしも本格的な研究対象とはされてこなかった、第二帝政期ドイツの穏健的自由主義思想を、積極的な政治秩序構想の1つとして評価できることを示した。具体的には、ドイツ団体思想の大家オットー・ギールケ(1841-1921)と、その弟子でありヴァイマル共和国憲法の起草者であったフーゴ・プロイス(1860-1925)の国家論を、同時代の支配学説との対比において理解し、「不徹底」と評価され続けてきたギールケ国家論は、まさに「不徹底」であるがゆえの絶妙のバランスを保っていたのであり、この点をむしろ政治構想としての強みとして積極的に評価しうることを明らかにした。
著者
松村 寿枝
出版者
奈良工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,音声分析を用いた疲労検出システムの開発を目的にシステムの構築を行った.まずVDT作業後の音声データを収集し,音声分析を行い,基本周波数,パワー,継続時間長を求めた.結果,疲労時には約55.6%のデータで,基本周波数の低下,平均パワーの低下,継続時間長の増加がみられた.次に上記の特徴量を用いた疲労検出システムを構築した.その後10名の被験者で使いやすさの評価を行い,その評価を参考にシステムの改良を行った.結果,本システムは使いやすさが向上した.