著者
藤原 武男
出版者
独立行政法人国立成育医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、日本において養育者に乳児の泣きに関する正しい知識と適切な対応に関する教材を用いて介入することにより、虐待予防に必要な知識と行動の変容があるかどうかを、ランダム化比較試験により検証した。その結果、介入群は、泣きの知識および突発的な揺さぶりを防ぐと考えられる行動を有意に多くとっていた。日本においても、この教材により乳児の虐待を予防できることが示唆された。
著者
梅田 塁
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、ジナフトテトラデヒドロ[10]アヌレンの近接アセチレンの高い反応性を利用するという、新規なアプローチでゼトレン誘導体の合成とその物性について明らかにすることを目的に研究を行った。まず、ゼトレン前駆体なるジナフトテトラデヒドロ[10]アヌレンの合成法を開発し、その詳細な物性を解明することに成功した。また、ジナフトテトラデヒドロ[10]アヌレンとヨウ素の反応により、7,14-ジヨードゼトレンに導いた後、種々のエチニル置換を有する安定なゼトレン誘導体の合成に成功し、これまで未解明であったゼトレン誘導体の基礎的な物性を明らかにした。
著者
青木 千帆子
出版者
静岡県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

国内の電子書籍のアクセシビリティに関する状況は、2015年に販売され売り上げ上位を占める電子書籍の9割近くが、アクセシブルなフォーマットで販売されている。また、対応するアクセシビリティ機能を購入前に判断することができる。一方、電子書籍ビューアーは、課題が残されている。このため、出版関係者と議論し、ビューアーの対応が求められる最優先項目9点を導出した。電子書籍のアクセシビリティについては、著作権法と障害者差別解消法が頻繁に参照される。著作権法を参照する場合、アクセシビリティを支えるビジネスモデルの確立に向けた語りではなく、福祉的取り組みとしての語りが採用され、旧来の状況を再構築している。
著者
添田 雄二
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,北海道における小氷期の実態とそれに伴う自然災害の特徴を地質学的・考古学的手法によって明らかにし、それが自然界や人間社会に与えた影響についてまとめた。小氷期の北海道は寒冷化の影響によって、顕著な海退が起きていた。特に17~19世紀は、低地でも地下深部まで凍結していた。度重なる大雪や低温は、自然界の資源を減少させ、狩猟採集に大きく依存したアイヌ民族に深刻な影響を与えた。
著者
山肩 洋子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

一般の調理者の多くは,新しい料理に挑戦する際,料理本などのレシピテキストを読むのが一般的であるが,テキストを読みながら包丁や火を扱うのは危険なため,レシピテキストに基づき調理法を音声で教示するシステムの構築を目指した.これを実現するには,レシピテキストをただ音声で読み上げればいいわけではなく,レシピテキストにおいて「1を2に混ぜてください」というように手順番号で示されている中間食材に対して,「先ほど切った玉葱」や「玉葱と人参の混ざったもの」というように,どの中間食材を指しているか調理者が容易に判別できる呼称を与えなければならない.そこで本研究では,調理者が中間食材をどのようなものと認識しているかを理解し,また調理者との間で共通の名前空間を確立することで,中間食材の呼称を決定する機構の研究を行った.この研究の成果により,中間食材は『直前の加工名』『構成材料名』『料理名』のほか,『器』『位置』『よく使われる中間物名(生地・タネ・出汁等)』などが組合さった呼び方がなされ,よってキッチンの状況をリアルタイムに認識することで呼称の自由度が向上することが示された.また,本研究で提案したモデルに従い言語解釈することにより,調理中に現れたすべての食材のうち93%の食材について正しく同定できたことを示した。さらに,料理コミュニケーション支援ソフトウェアIwacamの開発に参加し,Iwacamに音声対話システムとこれまで開発してきた食材認識技術を組み込んだ.これにより,カメラやマイクにより調理を観測し、その情報を逐次解析したり,音声対話により認識誤りを補正することで、各時刻に調理台上にどのような食材が存在するか、どのような加工を加えられているか、それは過去のどの物体と同一のものかを判別するシステムを実装した.
著者
山肩 洋子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、調理者が調理をしながらその調理法を説明した音声から、レシピテキストを自動生成する手法の研究を行った。レシピテキストにおいては、手順番号①の手順で生じた中間食材を、「①に②を混ぜます」というように手順番号で照応するのが一般的である。しかし音声でそのような中間食材を表現するときは、『さっき切った野菜』というように、適当な呼称を用いることが多い。そこで、調理観測映像から得た情報と調理者との対話から得た情報により、食材の調理状況を認識することで、調理者が食材を音声で表現した際に用いた呼称を照応表現に自動変換する手法を開発し、学会発表を行った。
著者
大野 聡子
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

マクロファージ特異的にIL-6系シグナルを亢進したmSOCS3-KOでは、アンジオテンシンIIによる大動脈の中膜損傷が解離に進展した。解離前の大動脈において、mSOCS3-KOでは野生型より細胞増殖・炎症応答関連遺伝子の発現が亢進していた。マクロファージ分化解析から炎症性M1比率の増加がmSOCS3-KOの解離の一因と考えられた。ヒト解離組織では、外膜や外側中膜でマクロファージのIL-6系シグナルと細胞増殖シグナルの亢進が見られた。以上より、マクロファージIL-6系シグナルの過剰活性が解離進展を起こすことが示された。今後は、マクロファージ分化制御に着目して解離病態のメカニズム解明を進める。
著者
朴澤 泰男
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、現代日本における大学生の中途退学の社会経済的な背景と、政府や大学による退学の抑制政策(奨学金、教育条件の向上など)の効果を明らかにするとともに、退学が個人に及ぼす社会経済的な帰結を分析した。その結果、家計所得の増加、大卒者の高卒者に対する相対賃金の上昇、奨学金受給率の上昇、大学の選抜性の上昇、教員・学生比率の低下が中退率の低下に結びつくことや、大学中退者の年収は、高卒者と同等の水準である反面、年収の散らばりも大きいことなどが明らかになった。
著者
上羽 陽子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、ものづくりの「作りの手個人の創意工夫」や「伝統的技術の戦略的継承法」に実践的にアプローチし、その製作と流通の歴史を掘り起こすことによって、「伝統的」とされてきた手工芸品の社会・文化的意義をめぐる従来の視点を大きく変えることを目的とした。成果としては、南アジアの染織技術の特質について、インド西部やネパールなどの事例から明らかにした。
著者
江 向華
出版者
就実大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、多角化戦略を中心とした成長戦略の視点から、中国巨大製造企業の成長メカニズムの特殊性を現地企業へのインタビュー調査および資料調査を通じて究明してきたものである。これまでの企業成長戦略研究では、先進経済国と新興経済国(中国を含めて)を分けて議論されることが多かった。しかし、中国では創業当初から巨大規模で設置された社会主義大企業の存在があるため、中国における大企業が必ずしも成長過程を経ていないことに注目して、先進経済国、中国以外の新興経済国と中国を分けて分析した。
著者
粟田 さち子
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

学生の系統解剖のご献体に対して、解剖固定液で希釈した経口造影剤を橈骨動脈より注入して造影CTを行った。この方法により、多くのご献体で頭部から下肢まで血管内が造影できた。また、臓器内も造影される事が確認できたが、細い血管内の血栓が原因なのか均一に造影される例はかなり少なかった。均一に造影する方法は確立出来なかった。司法解剖を行うご遺体では、造影剤を入れたことで体内の液体量が変化してしまう場合に、解剖時の所見が本来と異なってしまうため、CTのみで体内の液体量を正確に把握する必要があった。しかし液体の照合の検討が出来ず司法解剖のご遺体に対しては造影できなかった。
著者
大西 領
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

定常等方性乱流場を直接数値計算により計算し、その中を運動する微小慣性粒子の運動および成長をラグラジアン法によって追跡する数値計算法(Lagrangian Cloud Simulator, LCS)を開発した。LCSのプログラムコードは並列計算向けに最適化されており、共有メモリ型と分散メモリ型のハイブリッド並列計算を効率的に実行できる。このLCSを用いて、粒子ストークス数、過飽和度、レイノルズ数を変化させた時の粒子径分布の時間変化データを得た。これにより、乱流混合が微小慣性液滴の蒸発過程に及ぼす影響を初めて定量的に明らかにした。
著者
砂上 史子
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

幼稚園での観察とそこで得た事例の詳細な分析から,幼児の人間関係における同型的行為の役割について検討した。その結果として(1)保育実践現場における観察と記録のあり方,(2)幼稚園における仲間関係の発達と身体を通してのかかわり,(3)幼稚園の葛藤場面における子どもが他者と同じ発話をすることの機能を明らかにした。
著者
天田 城介
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

研究成果として、第一に、戦後日本社会における老いの現代史を描くことができたことである。これによって戦後日本社会における高齢化をめぐる歴史的ダイナミズムを示すことができた。第二に、そうした知見を具体的な成果として発表した。平成20年度から平成23年度の4年間において、単著『〈老い衰えゆくこと〉の社会学〔増補改訂版〕』、『老い衰えゆくことの発見』の2冊を刊行し、編著として、『社会学のつばさ』、『老いを治める』、『差異の繋争点』の3冊を刊行した。その他にも、共著・分担執筆の論文は40本、学術論文40本以上、書評・シンポジウム記録・その他が50本以上にもなり、この4年間で圧倒的な成果をおさめた。
著者
中道 圭人
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

反事実的思考とは「実際の事柄とは別の可能性を考える思考」である。本研究では反事実的思考の発達を検討するため,主に4つの実験を行った。実験1では,幼児の反事実的思考とふり遊びの関連を示した。実験2・3では,異なる構造(因果的連鎖)を持つ課題を用いて実験を行った。その結果,課題構造にかかわらず,心理領域での反事実的思考は5歳までに可能になるが,物理領域での反事実的思考は5歳でさえ困難なことを示した。実験4では,幼児の物理領域での困難さが,物理的な出来事の変容可能性の低さに起因する可能性を示した。これらの結果は,幼児期の反事実的思考の発達が一律に進むのではなく,領域によって異なる可能性を示唆した。
著者
椋木 香子 西田 幸代 鈴木 由美子 田岡 由美子 森川 敦子 工藤 道子 野崎 秀正 松野 仁英 松野 蓮香 松木 朋子
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、乳幼児期の道徳性の発達に即した幼児教育・保育のカリキュラムや指導方法のプログラムを保育現場と協働で開発することを目的としている。そのために研究期間において、乳幼児の道徳的認知発達に関わる諸要素を明らかにするとともに、海外の保育実践と比較して、我が国の社会的・文化的背景に即した道徳性育成について示唆を得ることを目的とした。1歳から5歳までの積み木遊びにおける遊びの発達と他者関係認識について調査した結果、幼児の道徳性は認識能力や身体能力の発達と関連があることが示唆された。また海外の実践事例との比較から、カリキュラムについての考え方の違いが指導方法に影響していることが示唆された。
著者
河合 克宏
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

IRBITノックアウトマウスにおいて見られる種々の行動異常の発症機構を解明するため、モノアミン産生および細胞内pH制御へのIRBITの寄与に関して検討を行った。その結果、モノアミン産生の鍵となるTyrosine hydroxylaseのリン酸化をCaMKIIαの活性を介してIRBITが制御している事がわかった。また、神経細胞およびグリア細胞においてIRBIT欠失が細胞内pH制御の機能異常を引き起こす事も明らかにした。
著者
松尾 弘徳
出版者
鹿児島国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、申請者がこれまでに行ってきた日本語史の研究成果を援用しつつ、「新方言」と呼ばれるものを対象として、九州地域の方言に生じている文法変化の一端を明らかにした。方言が文法変化を生じる際には一定の方向性が見られる。そこで、「方言調査からの実証研究」と「文法変化に関する理論的研究」とを結びつけ、とりたて詞を中心とした九州地方における新方言の文法研究に取り組み、言語変化の方向性に関する考察を行った。日本語文法史研究と方言文法研究の接点を見出せたのではないかと考えている。
著者
エスポジート ジャンルカ
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

母子間の結びつきは、ほ乳類の子どもにとって最も早くかつ重大な社会的関係である。今回のプロジェクトで、乳幼児が母親に運ばれる時に示す輸送反応を明らかにできた。6か月以下の乳幼児は、母親に運ばれている時に即座に大人しくなり、泣きやみ、心拍数の低下が顕著であった。マウスの子でも同様である。マウスの子に薬理学的、遺伝学的な阻害してTR反応が失われると母親が子供を救出するのを阻害する。これはTR反応がいかに機能的に重要かを指し示す。この研究によって初めて、TR反応は中枢、身体運動、心機能の総合的な調節を含み、これらはほ乳類の母子間相互関係において保存されていることが示された。
著者
清田 岳臣
出版者
札幌国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

上肢運動時の姿勢筋活動パターン及び下腿筋厚の発達的変化について検討した。被験者は、4-12歳の子ども総計176名からなる。被験者は、視覚刺激に反応して、上肢運動を行った。局所筋と姿勢筋から筋電図を記録し、姿勢筋活動開始潜時を算出した。腓腹筋・ヒラメ筋厚は、超音波スキャナーで計測した。検討の結果から、以下の知見を得た。(1)上肢運動時の姿勢制御において、体幹制御の発達が、大腿・下腿筋制御のそれに先行するが、児童期後半であっても、大腿・下腿筋制御は、まだ発達過程にある。(2)腓腹筋・ヒラメ筋の筋厚は、年齢に伴って増大し、特に、7-8歳群以降で腓腹筋の顕著な発達が認められる。