- 著者
-
山肩 洋子
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2008
一般の調理者の多くは,新しい料理に挑戦する際,料理本などのレシピテキストを読むのが一般的であるが,テキストを読みながら包丁や火を扱うのは危険なため,レシピテキストに基づき調理法を音声で教示するシステムの構築を目指した.これを実現するには,レシピテキストをただ音声で読み上げればいいわけではなく,レシピテキストにおいて「1を2に混ぜてください」というように手順番号で示されている中間食材に対して,「先ほど切った玉葱」や「玉葱と人参の混ざったもの」というように,どの中間食材を指しているか調理者が容易に判別できる呼称を与えなければならない.そこで本研究では,調理者が中間食材をどのようなものと認識しているかを理解し,また調理者との間で共通の名前空間を確立することで,中間食材の呼称を決定する機構の研究を行った.この研究の成果により,中間食材は『直前の加工名』『構成材料名』『料理名』のほか,『器』『位置』『よく使われる中間物名(生地・タネ・出汁等)』などが組合さった呼び方がなされ,よってキッチンの状況をリアルタイムに認識することで呼称の自由度が向上することが示された.また,本研究で提案したモデルに従い言語解釈することにより,調理中に現れたすべての食材のうち93%の食材について正しく同定できたことを示した。さらに,料理コミュニケーション支援ソフトウェアIwacamの開発に参加し,Iwacamに音声対話システムとこれまで開発してきた食材認識技術を組み込んだ.これにより,カメラやマイクにより調理を観測し、その情報を逐次解析したり,音声対話により認識誤りを補正することで、各時刻に調理台上にどのような食材が存在するか、どのような加工を加えられているか、それは過去のどの物体と同一のものかを判別するシステムを実装した.