著者
金 愛蘭
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

20世紀後半の新聞記事を資料とした自作の大規模な通時的新聞コーパス(総文字数約1,700万字)を用いて、「抽象的な意味を表す外来語の基本語化」現象の実態およびその要因について記述した。具体的には、20世紀後半に基本語化した語を抽出するとともに、外来語を含む類義語体系の量的な変化を調査し、類型化を行なった。また、要因については、語彙論的な検討のほか、「テクスト構成機能」と呼ばれる諸機能についても検討を行なった。
著者
池本 淳一 陳 宝強 荘 嘉仁
出版者
松山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では戦前の中国における武術雑誌の内容分析を通じて、武術とチャイニーズネス(中国/中国人らしさ)の関係を考察した。具体的には、前期(1921~30)において武術が芸術と同等の「高級文化」、さらには近代的身体を育成する「中国発祥の近代体育」として再構築されていったこと、後期(1931~41)において武術が固有の文化的価値と社会的役割を持つ「中国の民族体育」として、さらには悠久の歴史と深遠な中国哲学を持つ、もっとも「中国らしい」国民文化として再構築されていった過程を明らかにした。
著者
加藤 大鶴 依田 平
出版者
東北文教大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では字音声調の史的研究に役立てることを目的とした「中世漢語声点資料による画像付きデータベース」(以下DB)を作成した。字音声調研究においては、声点の物理的な位置情報によって声調を認定する作業が必須であるが、この手続は研究者の主観的な観察に任されることが多かった。本DBでは声点付き漢字の画像、透明テキストによる文脈付き画像、韻書等の研究上必要な情報を検索結果として表示させることで、声調の認定を検証可能な形で提示することができた。
著者
針生 寛之
出版者
札幌医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

さまざまな正常組織と腫瘍組織におけるHLA class I関連分子の発現を検索し、ほとんどの癌種で約3割に発現低下があることを見出した。乳癌と前立腺癌では約8割にHLA発現消失または発現低下が認められた。乳癌と前立腺癌におけるHLA発現低下の分子機序を解析した結果、主にB2-microglobulin遺伝子のピストン脱アセチル化が原因であることが判明した。Geneticな変化や遺伝子メチル化の関与は低かった。ヒストン脱アセチル化機序による乳癌細胞の免疫逃避の解析を行い、HLA class I分子以外に、NK細胞標的分子、Immunodominantな癌抗原分子、Death受容体分子なども発現低下していることを見出した。ヒストン脱アセチル化阻害剤を作用させるとこれら分子の発現が回復した。ヒストン脱アセチル化阻害剤自体はT細胞機能に影響を及ぼさないことを証明し、癌免疫逃避を抑制する新たな免疫療法を提唱した。
著者
南浦 涼介
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、子どもたちが社会科の学習についての信念・信条といったビリーフが、どのように形成されているのか、その構造を把握することと、そのビリーフがどのように作られていくのか、その変容を明らかにすることを目的としている。本研究は主として3つの研究からなっている。1つは,評価法の作成2つめに,小中学校で行った,学習ビリーフの構造の事例研究3つめに,中学校で行った学習ビリーフの変容の事例研究である。
著者
藤井 さやか
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、地区計画の運用実態を把握し、その実効性と課題を明らかにすることを目的として、以下の調査・分析を行った。1.昨年度実施した地区計画を策定している全国自治体へのアンケート調査の追加分析を行い、今後の地区計画の活用意向に関して、地区計画を積極的に活用していきたい自治体が6割以上を占めていること、活用の対象としては住宅地が主体となることが明らかになった。2.地区計画策定のきっかけとしては、行政の主導に替わって住民からの要望が増えつつある。しかしながら、住民のまちづくりの発意を都市計画決定ができるだけのレベルに高めるには、法令で用意されている都市計画提案制度だけでは地区計画策定の支援制度としては不十分であることが分かった。合意形成の促進や合意確認のための諸手続き(登記簿の収集や確認)、都市計画決定に必要な図書作成等の事務手続き補助のための専門家派遣など、地区計画策定までの様々な段階に応じたきめ細かな支援が必要であることが明らかになった。3.住民発意のまちづくりでは、地域がもとめるまちづくりの質・レベルが、法定都市計画である地区計画で索敵できる内容に留まらないことがしばしば生じている。その場合、地区計画と関連諸制度(まちづくり協定や建築協定など)の連携が重要な鍵となる。地区計画の策定及び運用実績の多い横浜市では、地元との連携によって、より質の高い開発を規制誘導している地区もあり、このような制度連携が有効であるとの示唆を得た。
著者
尾関 宗孝
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

法医実務への応用を目的として、日内変動することが知られている生体時計遺伝子の発現量を測定することにより、死亡時刻が推定できるかどうか検討した。対象遺伝子としてArntl、Clock、Cry、Per2を選択し、6時間ごとに安楽死させたマウス諸臓器より得たmRNAについて、リアルタイムPCRを用いた定量を行った。いくつかの遺伝子は脳や腎臓において死亡時間に依存した異なる変動が認められ、本研究をヒトへ応用することにより有効な方法となりうるものと考えられた。
著者
堀越 桃子 高本 偉碩
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

2型糖尿病の主要な原因遺伝子の1つとして同定されているTCF7L2遺伝子のin vivoにおける糖代謝との関連に注目した検討をTcf7l2の機能を膵β細胞で低下させたモデル動物とヒトにおいて解析した。TCF7L2の機能低下型マウスでは野生型に比べて,糖負荷試験におけるインスリン分泌の低下と高血糖を示された。またヒトにおいては糖尿病リスクアリルをホモに持つヒトで、90分血糖値が有意に上昇、120分インスリン値が有意に低下しており、膵β細胞におけるTCF7L2の機能低下はインスリン分泌低下による耐糖能異常を惹起したことが示された。
著者
大石 美緒子
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

今回の研究では、まずcaerulein投与後の膵組織で炎症を分子レベルで確認した後、このモデルが急性膵炎の疼痛を再現しているか否かを検討した。その結果、内臓痛・関連痛ともにcaerulein群と対照群間で有意差を認め、本モデルを疼痛面をも再現する急性膵炎モデルとして確立した。この動物モデルを使用し、急性膵炎における疼痛発現機序の検討を行った。その結果、末梢知覚神経系におけるBKやTRPV1、ならびに中枢神経系におけるcox-2が本モデルにおける疼痛に関与する可能性が示唆され、急性膵炎における疼痛のメカニズムの一部を解明した。
著者
片山 悠樹
出版者
名古屋商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、日本における中退者の職業移行パターンを分析することである。分析にあたり、JSGGのデータセットを使用し、次の3つの仮設の妥当性を検証した。(1)「高学歴化」説、(2)「若年労働市場の弱体化」説、(3)「学校経由」説。分析結果によれば、中退者は、経済不況といった問題だけでなく、「学校経由」というシステムそのものが要因となって、無業になる可能性が高まることが明らかとなった。
著者
古川 裕佳
出版者
都留文科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本近代文学において、志賀直哉をはじめとする若い男性作家の作品に、家の女中と性的関係をもったことに苦悩する主人公像が描かれていることに注目し、罪意識と逸脱者意識の混交の果てに超越的な自己を見出そうとするような、共通した機構があることについて考察した。女中と関係してしまう「不良」のような、<家庭>イデオロギーからの逸脱者を描くことが、当時の文学にとって重要な課題であったことを明らかにし、家庭において家族と他人の中間的な存在であった「女中」の表象がどのように変容するのかを、当時の女中をめぐる言説および具体的な小説の表象に即して検討した。家庭にとっての異物であり、悪役とされる「妾」がお家騒動においてどのように機能したかを検討した。
著者
下川 俊彦
出版者
九州産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

インターネットの応用としてコンテンツ配信が脚光を浴びてきている。そのためのプラットホームとして、コンテンツ配信網(Content Distribution Networks)の重要性が増している。コンテンツ配信網の要素技術の中にリクエスト誘導機構とコンテンツ配布機構がある。本研究では、CDNのリクエスト誘導機構として、サーバ選択機構、コンテンツ配布機構の基盤技術として、高信頼性XCASTプロトコルの研究を行った。サーバ選択機構としては、本研究ではTENBIN (Tenbin is Expreimental Nameserver for Balanced InterNet)を開発した。本システムは、サーバ選択における選択方針の利用に対して、高い柔軟性を持つ。すなわち、様々なサービス毎に異なる選択方針を、ポリシーモジュールという形で付加(プラグイン)することで、サービス(あるいはコンテンツ)毎に異なる選択方針に対する要求に応えることが可能である。本研究では、選択方針として特に経路情報を利用したものに注力し研究を行った。これは、経路情報を用いることで広域分散的に構築されたコンテンツ配信網内でのサーバ選択が効率的に行えると考えたからである。本システムを、LIVE! UNIVERSEプロジェクトが実施した、日食・流星群などの天文現象中継システム、ならびにRing Serverプロジェクトが運用する国内最大級のファイルアーカイブシステムにおけるサーバ選択機構として適用を行い、評価実験を行った。その結果、広域分散配置され、またシステム内にも複雑な選択ポリシーが存在する場合に、適切にサーバ選択を実現できることが確認された。本研究成果は、電子情報通信学会論文誌への掲載が決定している。コンテンツ配布機構の基盤としては、高信頼性XCASTプロトコルの設計を行い、評価を行った。上述のRing Serverプロジェクトが運用する、大規模広域分散型ファイルアーカイブシステムをモデルとして、シミュレーション実験を行った。この結果、従来方式より効率が良いコンテンツ配布が実現可能なことが確認できた。本研究成果は、情報処理学会論文誌43巻11号pp.3530-3539へ掲載されている。
著者
藤岡 寛之
出版者
福岡工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、スプラインベースドアプローチにより、手書き文字の静的画像から文字筆順を復元し、その復元筆順情報から書字者の書字速度・加速度パターンなどのいわゆる動的書字スキルを抽出するための手法を確立する、ことが目的であった。特に、(A) 手書き文字の静的画像からの筆順復元法の枠組みの開発、(B) 骨格スプラインモデルの理論とアルゴリズムの開発、(C) 動的書字スキル抽出法の開発、といった3つの課題に取り組んだ。特に、課題(B)では、ペンタブレットなどのデジタル機器上での筆記時にしばしば起こる「筆滑り」までを考慮した全く新しい骨格モデリングの手法を開発した。
著者
細谷 洋子
出版者
四国大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

駆け引きのプロセスを楽しむカポエイラ教材の基礎的研究として、カポエイラの社会的位置づけ、カポエイラの基礎的な身体技術、練習内容の軸となるカポエイラの理念を明らかにした。その結果、カポエイラは「問いかけと応答」という行為の意味を重視することが特徴といえ、異文化間教育などにおける教材化の軸になる理念であると考察された。
著者
小林 英樹
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、サ変動詞の意味・用法を詳細に記述したものである。本研究では、次のような動詞クラスを分析した。・建てること(新築(する)、増築(する)、……)・除くこと(除去(する)、排除(する)、……)・火がつくこと(発火(する)、着火(する)、……)・直すこと(修理(する)、修復(する)、……)・連れて行くこと、ついて行くこと(引率(する)、随行(する)、……)・運ぶこと(運搬(する)、運送(する)、……)
著者
廣川 和花
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、疾病史資料に関する基礎的な情報の収集と、それを基礎として具体的な資料に即した疾病史資料のアーカイビングの方法論検討と実践を行った。本研究の成果報告として『大阪大学アーカイブズ所蔵 大阪皮膚病研究会関係文書目録』を刊行し、インターネットでも公開した。本研究成果の発信により、疾病史資料が新たな概念規定をともなって認識されることとなり、今後史料の発掘・目録化・公開の重要な指針となると期待される。
著者
吉川 孝
出版者
高知女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

この研究は、現象学に属するミュンヘン・ゲッティンゲン学派の実践哲学を明らかにし、現代哲学のなかで正当な評価を与えることにある。ミュンヘン・ゲッティンゲン学派の特徴としては、必ずしも理論哲学の問題に限定されず、倫理学や美学にも強い関心を向けたことがあげられる。実践哲学というテーマを軸にしてミュンヘン・ゲッティンゲン学派にアプローチすることは、現象学のなかにおける実践哲学の可能性を探ることになる。この研究においては、「感情」、「行為」、「意志」などのトピックを取り上げて、それらがミュンヘン・ゲッティンゲン学派のなかでどのように扱われていたのかに注目する。そのうえで、フッサールを中心とする現象学をつねに意識しながら、そのなかでの同学派の位置づけを明らかにする。
著者
松本 雅記
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

従来の質量分析計を用いたプロテオミクスではタンパク質発現量の広大なダイナミックレンジのため、複雑な試料中の微量タンパク質の検出は困難であった。本研究では、この問題を解決するために、質量分析計による特定タンパク質検出法であるMRM法とヒトcDNAライブラリーを元にした組換えタンパク質を利用してあらゆるヒトタンパク質の絶対定量を可能とする新規タンパク質定量解析プラットフォームの構築に成功した。本システムを用いて、従来検出が困難であった低発現タンパク質を含む多種類のタンパク質絶対量情報を取得することが可能であった。
著者
丸山 由紀子
出版者
東京外国語大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では教会スラヴ語的要素の一つである双数形に焦点を当てて分析を行った。その結果、15世紀にロシアで成立したオリジナル聖者伝において、双数形の使用が想定されうる文脈における双数形(教会スラヴ語的要素)と複数形の使い分けは、語彙・文法的要因だけでなく、作品における各エピソードをより効果的に伝えるという作者の意図によっても決定されることが判明した。すなわち、教会スラヴ語的要素の用法に関する研究では談話的要因を考慮する必要があることが明らかとなった。
著者
森島 邦博
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

原子核乾板は、高速中性子による反跳陽子を3次元飛跡として検出することにより、その飛来方向やエネルギーの測定が可能であるが、ガンマ線起因の電子飛跡がバックグラウンドとなる。本研究では、原子核乾板の受光素子である臭化銀結晶に電子トラップとして働くロジウムをドープして感度制御を行う事で、高いシグナルノイズ比で中性子起因の反跳陽子飛跡の解析が可能な原子核乾板の開発に成功した。本研究において開発した原子核乾板を用いた高速中性子検出技術は、神岡鉱山やイタリア・グランサッソ研究所などにおける地下の高速中性子フラックス測定に用いる事が可能である。