さまざまな正常組織と腫瘍組織におけるHLA class I関連分子の発現を検索し、ほとんどの癌種で約3割に発現低下があることを見出した。乳癌と前立腺癌では約8割にHLA発現消失または発現低下が認められた。乳癌と前立腺癌におけるHLA発現低下の分子機序を解析した結果、主にB2-microglobulin遺伝子のピストン脱アセチル化が原因であることが判明した。Geneticな変化や遺伝子メチル化の関与は低かった。ヒストン脱アセチル化機序による乳癌細胞の免疫逃避の解析を行い、HLA class I分子以外に、NK細胞標的分子、Immunodominantな癌抗原分子、Death受容体分子なども発現低下していることを見出した。ヒストン脱アセチル化阻害剤を作用させるとこれら分子の発現が回復した。ヒストン脱アセチル化阻害剤自体はT細胞機能に影響を及ぼさないことを証明し、癌免疫逃避を抑制する新たな免疫療法を提唱した。
インターネットの応用としてコンテンツ配信が脚光を浴びてきている。そのためのプラットホームとして、コンテンツ配信網(Content Distribution Networks)の重要性が増している。コンテンツ配信網の要素技術の中にリクエスト誘導機構とコンテンツ配布機構がある。本研究では、CDNのリクエスト誘導機構として、サーバ選択機構、コンテンツ配布機構の基盤技術として、高信頼性XCASTプロトコルの研究を行った。サーバ選択機構としては、本研究ではTENBIN (Tenbin is Expreimental Nameserver for Balanced InterNet)を開発した。本システムは、サーバ選択における選択方針の利用に対して、高い柔軟性を持つ。すなわち、様々なサービス毎に異なる選択方針を、ポリシーモジュールという形で付加(プラグイン)することで、サービス(あるいはコンテンツ)毎に異なる選択方針に対する要求に応えることが可能である。本研究では、選択方針として特に経路情報を利用したものに注力し研究を行った。これは、経路情報を用いることで広域分散的に構築されたコンテンツ配信網内でのサーバ選択が効率的に行えると考えたからである。本システムを、LIVE! UNIVERSEプロジェクトが実施した、日食・流星群などの天文現象中継システム、ならびにRing Serverプロジェクトが運用する国内最大級のファイルアーカイブシステムにおけるサーバ選択機構として適用を行い、評価実験を行った。その結果、広域分散配置され、またシステム内にも複雑な選択ポリシーが存在する場合に、適切にサーバ選択を実現できることが確認された。本研究成果は、電子情報通信学会論文誌への掲載が決定している。コンテンツ配布機構の基盤としては、高信頼性XCASTプロトコルの設計を行い、評価を行った。上述のRing Serverプロジェクトが運用する、大規模広域分散型ファイルアーカイブシステムをモデルとして、シミュレーション実験を行った。この結果、従来方式より効率が良いコンテンツ配布が実現可能なことが確認できた。本研究成果は、情報処理学会論文誌43巻11号pp.3530-3539へ掲載されている。