著者
深尾 武史
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

熱水力学に現れる自由境界問題の研究に向けて, 流体の方程式に様々な制約条件を付加した問題の可解性の結果を得た. また, 変分不等式と発展方程式の関係性を明確にするため時間依存制約付きの抽象発展方程式に対する解の表現定理の結果を得た. 流速の大きさを温度に依存して制約する熱水力学に現れるモデルについて可解性の結果を得た.
著者
山本 正浩
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究提案では、遠隔的酸化還元反応によって環境中に発生する電流を積極的に利用する「環境電流生態系」が存在するという作業仮説を立て、その存在量とメカニズムを解明することを目的とした。本課題において、我々は熱水噴出孔で電流が発生することを、鉱物の電気特性、鉱物の触媒特性、熱水と海水の酸化還元電位、現場発電試験などを通して照明した。さらに、微生物がこの環境電流環境下で鉱物表面に付着することも明らかにした。現場での長期微生物培養試験は天候不良の影響により実現できなかったが、疑似環境下における電流利用微生物の集積培養については今後の進展に期待が持てる。
著者
豊田 光世
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、自然環境の保全や資源管理をめぐる倫理的課題を分析し、ボトムアップの保全・再生事業を支える理念と実践プロセスを考察した。地域環境のガバナンスを考えていくうえで、風景や環境の価値認識の差異、土地所有から生じる権利や義務の問題、資源管理を支援・規制するための社会制度、地域のソーシャルキャピタル、人びとの価値観や思いなどといった視点から課題を整理していく必要がある。本研究では、新潟県佐渡市で進めた地域環境整備に向けた対話と協働の実践を通して、これらの課題について分析し、ガバナンスの推進において「多層的コモンズの包括的認識」と「プロセスと成果のオーナーシップの獲得」が重要であることを示した。
著者
海野 多枝
出版者
東京外国語大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、本学(東京外国語大学)の学生が各専攻語の知識を生かして実践している地域の外国人に対するボランティア活動に焦点を当て、彼らの日本語支援及び交流活動の実態について、エスノグラフィーの手法を用いて明らかにし、今後の日本語支援・交流活動のあり方について考察することをねらいとする。本研究の成果は以下にまとめられる。1)基礎調査・文献調査まずはボランティアの日本語支援に関する先行研究を収集し、ボランティアの定義を整理し、問題となる「外国人児童生徒」の範囲についても確認した。また、先行研究で用いられている方法論を整理し、これらに文献リストを合わせてハンドブックを作成した。これをもとに、本研究で用いる質的研究の実施法について検討した。その上で、以下の3つの実態調査を実施した。2)まず、本学の多文化コミュニティ教育支援室の協力のもとに、地域に在住する成人外国人に対する日本語支援ニーズ調査を実施した。またこの成果をふまえて、本研究の研究代表者がコーディネーターとなり、日本語教室を一年間開講し、担当する教師・受講者への質問紙調査を実施した。また、このプロセスについて、地域在住の成人学習者に対する日本語支援の事例としてまとめた。3)次に、外国人児童生徒に対する日本語支援について、既にボランティアによる日本語支援に従事している本学学生からダイアリー・データを収集し、ボランティアに携わる学生の成長記録の事例としてまとめた。4)さらに、本学の外国人留学生に対する日本語支援ボランティアに携わる日本人学生に対し、ネットワーク構築を奨励し、日本人学生と留学生両者に対する質問紙・聞き取り調査を実施し、ネットワーク構築の事例としてまとめた。
著者
ディアゴル イスアリエル
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

地球温暖化対策として二酸化炭素を減らすために森林の持つ機能への期待が高まっている。本研究の成果は、フィールドで得られた木の画像と衛星画像を組み合わせ、ホログラフィックニューラルネットワークで学習することによって狭い範囲の2次元画像から森林全体の3次元のCADモデルを構築したことである。これによって、フィールドの計測時間が短縮され、現行の森林管理システムの計画を促進することができた。
著者
山岸 敬和
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

政治学の枠組みで医療制度の歴史的発展をオバマケアを含めて分析する試みは、多くは見られず、特に退役軍人医療サービスを分析枠組みに含むものは存在しない。本申請研究は歴史的制度論という分析的枠組みを用いながら日米の医療制度の発展を論じようとするものであり、このような手法で日米を比較しようとする研究は類を見ない。申請期間中、4冊の著書、5本の論文、4件の学会発表、国内外の講演による成果発表の機会を得、1960年代から現在のオバマ改革に至る日米の医療制度の政治的・社会的変化について考察を深め、今後我が国における医療保険制度の議論を進めるための助けとなるよう、著書、論文の形で還元することができた。
著者
高尾 将幸
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は長野オリンピック開催地である白馬村および近隣自治体の事例からスポーツ・メガイベントが地域社会にもたらした固有のインパクトを解明することであった。調査の結果、(1)オリンピック関連インフラ整備が地域住民の生活圏に変化をもたらしたこと、(2)道路網整備によって宿泊を伴わない日帰り観光客が増加している一方、外国人観光客および移住者の増加をもたらしたが、そこでも固有の課題が生み出されていること、(3)地域社会におけるネットワークによって地域活性化の独自の試みが継続していること、が明らかになった。
著者
柳瀬 亘
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

地球上には熱帯低気圧(台風やハリケーンの総称)、温帯低気圧、ハイブリッド低気圧(複数のメカニズムが影響)など、実に様々な低気圧が形成していることが衛星画像や天気図からもわかる。このような低気圧の多様性を理解するため、低気圧の気候学的な分布を解析した上で、低気圧の発達と環境場との関係を高解像度の数値モデルによる理想化実験で調べた。この結果、気候学的な低気圧の発達や性質は単純化した環境場でも説明できることが確認された。また、亜熱帯は熱帯低気圧の発達にとっても温帯低気圧の発達にとっても中途半端な環境場であること、海洋の西部はハイブリッド型の低気圧が発達しやすい環境であることなどが示された。
著者
楠 綾子
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、日米安保条約を基礎に日米が1950年代を通じてどのように、どのような安全保障関係を形成したのか、とくに在日米軍基地の運用をめぐる合意形成に焦点を当てた研究である。条約締結時に日本が自衛の能力と意思に乏しかったこともあって、日米間の安全保障関係の中心的機能は、共同防衛よりも基地の貸借と運用であった。その性格は1950年代を通じてほとんど変わらず、日米は基地の運用をめぐってさまざまな慣行や制度を作りあげていった。事前協議制度はそのひとつの例である。本研究は、日米両国が米軍基地の運用に日本が協力する仕組みを形成することを通じて、日米が「同盟」関係を形成したことを明らかにしている。
著者
高安 健将
出版者
成蹊大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、英国の議院内閣制が多数代表型構造を維持しつつも、政治不信という時代状況のなかで、レファレンダムの使用、新設の最高裁判所の定着、二院制の再検討という事態から、議会と政府がこれまでの自由な裁量を制約される制度配置が英国で少しずつ検討され、定着していることを明らかにした。
著者
中邨 真之
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

葉緑体では同義コドンの使用頻度と翻訳効率が必ずしも一致しない。また、葉緑体rps2 mRNAには翻訳効率の高いコドンが、rps16 mRNAには翻訳効率の低いコドンが多く含まれるように進化してきたと考えられる。このようなコドンの嗜好性がmRNAの翻訳効率にどのような影響を与えるのかについて、葉緑体in vitro翻訳系を用いて解析した。その結果、(1)rps16の5'非翻訳領域はほとんど翻訳活性を持たない、(2)rps16 mRNAのタンパク質コード領域はrps2よりも約3倍速く翻訳される、(3)この翻訳効率はコドン変換によりさらに高まることが明らかになった。
著者
加藤 陽子
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,学生生活への不適応を抑止する要因を「登校行動持続要因の解明」という新しい発想を用いて分析・検討し,不適応への予防的アプローチを探ることを目的とした。分析の結果,次のことが明らかとなった。(1)大学生の登校行動持続要因は,周囲との関係への配慮,自己の可能性への期待,社会,金銭に関する理由が多い,(2)積極的対消極的理由と情緒的対道具的理由の2軸がある,(3)大半の学生は登校行動持続要因を複数保有している,(4) 複数保有する登校行動持続要因のうち重要だと位置づける要因が1つでもある学生は,講義に出席しやすいものの,それは登校行動の促進や登校忌避感情の抑制には影響しない,(5)登校行動持続要因を多く保有することは,登校への意味づけを相乗的に強め,登校行動を持続させやすい。
著者
大河 雄一
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成18年度は,本研究課題の最終年度に当たる。本年度においては,本研究の目的である授業・講義等の発話内容を用いたeラーニング教材作成システムに用いるための音声認識モデルおよび音声認識手法の検討を行った。従来より,本研究が対象とするような大学での講義などの音声は,非常に変化が激しい自然発話音声の一つであるため認識が困難であることが,他の研究などから指摘されていた。そこで本研究では前年度に得られていた知見などをもとに自然発話音声の音声認識精度の向上を図った。本年度検討した講義音声認識の手法は,音声に含まれる音素の持続時間が通常の長さとは極端に異なるものを認識誤りの可能性が高いものと見なし,これを抑制するものである。このために,発話様式の似た学術講演を対象とした大規模な音声コーパスCSJを用いて,事前に持続時間の知識を獲得し,認識対象の音声を音素持続時間の観点でスコア化し,認識結果の候補のリスコアリングにより持続時間の誤りを抑制した。この方法により,従来,持続時間の知識を用いる時,検討されていなかった発話速度や文内の位置などの言語的特徴の影響をモデルに取り込み高精度に持続時間の予測を可能とした。本提案法により,最大で4.7%の音素認識誤り削減率が得られた。これは,従来法により持続時間を考慮した場合に2.1%の改善しか得られないのと比べ,有意な改善であった。また,この成果は情報処理学会論文誌に投稿し,採録された。
著者
青木 彩
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は2010年に埼玉県鳩山町でスタートした鳩山町研究の追跡調査とリンクして加齢黄斑変性(AMD)の有病率について調査を行った。その結果初期AMDが37.9%後期AMDが0.6%に認められることを発表している。又AMDの発症に関連する因子の検討として年齢、性別、全身既往歴、喫煙歴、研究開始時の炎症性血液マーカーとの関連を多変量解析を用いて検討し、又complement factor H (CFH)I62Vとage-related maculopathy susceptibility 2 (ARMS2)A69S遺伝子多型との関連をMantel haenzel法を用いて検討した。その結果CFHI62VとARMS2A69S遺伝子多型とAMDの発症とに有意な関連があることをこれまでに報告している(P=0.029、P=0.025)。又我々は自己式簡易食事歴質問票(BDHQ)を用いこの鳩山町研究コホートと東京大学付属病院黄斑外来に通院している滲出型AMD患者との栄養摂取量の比較を行った、その結果n3不飽和脂肪酸、アルファトコフェノール、亜鉛、ビタミンD、ビタミンC、ベータカロテンといった抗酸化物質の摂取と滲出型AMDの発症とに有意な関連があることを報告している。さらに我々は最近後期AMDとの関連が指摘されているコレステリルエステル転送タンパク(CTEP)遺伝子多型やHCLコレステロールといった脂質代謝と早期AMDとの関連を解析中であり、また上記の結果をふまえ他のコホート(群馬県 草津)でAMDの有病率および発症因子の解析を準備中である。
著者
長澤 多代
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2年間の調査で得たデータをもとに,記述的ケース・スタディと解釈的ケース・スタディを作成している。2009年度には,文献調査と訪問調査によって,ウエスタン・オンタリオ大学に関する基礎的な情報を得た。2010年度には,記述的ケース・スタディを学会で発表するとともに,追跡調査を実施した。現在,この記述的ケース・スタディをもとに,解釈的ケース・スタディを作成し,ここで得られたモデルを他大学のケース・スタディで得られたモデルと比較検討する準備をしている。
著者
白水 始
出版者
中京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、ジグソー法という学習者ごとに異なる資料・課題を分担して内容を交換・統合する学習法が、分担しない協調学習法に比べて学習を促すかを検討した。数学、算数および認知科学を対象に比較実験を行った結果、促進効果が認められ、そのメカニズムとして、各自が自らの資料を理解し説明する課題遂行に従事する一方で、他者の資料に客観的にコメントするモニター役を行う役割分担・交替により、意見の違いが生じ、深い理解が促されることが示唆された。
著者
両角 亜希子
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、アメリカの大学の中でも、とくに授業料依存型の財務構造をもつ大学における経営戦略の実態を明らかにし、日本の大学経営に対する具体的な示唆を導きだすことにある。アメリカの私立大学のなかでも、潤沢な基本財産をもつ大学に注目が集まりがちだが、アメリカにおいても数の上では大半を占める授業料依存型の私立大学である。こうしたタイプの大学の多くは研究機能より教育機能で個別化戦略を立てていることが多い。そこで、アメリカで近年盛んにおこなわれている学生の学習状況調査(とくにインディアナ大学が行っているNational Survey of Student Engagementを中心に検討)で高い評価を上げている大学を探し、その中から、授業料依存率の高い大学をいくつか抽出してその特徴を検討した。
著者
門脇 大
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究の主目的である「近世期怪異観の解明」に関して、特に18・19世紀を中心とした研究を行い、その成果を学会発表・論文・共著で公表した。18世紀中期以降に流行した心学の資料を中心とした研究と、中世・近世・近代を横断する化物の研究の2つの方向性を主軸として研究を行った。研究が進展するとともに、近世怪異小説そのものよりも、その周辺分野の研究を進める必要が生じたため、やや当初の計画を変更しつつ研究を進めた。また、公表するに至らなかったものの、近世怪談とその周辺分野に関する基礎研究を行った。その成果は次年度以降に順次公表する。
著者
武久 康高
出版者
比治山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、戦後台湾のサブカルチャーの分野において、「桃太郎」がどのように表現され、いかなる意味を担っていたのか調査したものである。結果、1960年前後には「桃太郎」が反共政策へと利用され、また、新たな物語を創造するための素材となっていたこと、1970年になると、「日本」との関連を示すために使われていることが分かった。一方、戦後日本で新たにつくられた「桃太郎」は、旧植民地の存在を忘却した上で成立していたことを指摘した。
著者
岡村 直利
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

新しい数値計算技術であるGPGPU技術が素粒子現象論、特にLHC実験に関係する研究に必要な生成散乱断面積を計算するシステムの高速化に応用可能か検証することをめざし、標準模型に含まれる全粒子を含んだ生成散乱断面積を、GPU上で計算するためのサブルーチン集HEGET(HELAS Evaluation with GPU Enhanced Technology)を作成した。HEGETをGPU上でモンテカルロ積分を行うプログラムと合わせて使うことで、従来のシステムと同精度のまま、プログラムの開始から終了までの時間を、多数のjetを含む場合を除いて、遅くても約10倍、最大で100倍程度の高速化を実現した。