著者
佐藤 俊治
出版者
東北福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ヒトの視覚情報処理過程を説明する数理モデルは、視覚の柔軟性や汎化性を考慮すると、画像工学的にも有効である必要がある。そこで、物体検出を行なっているV4野細胞の動作原理として、動的輪郭法を採用し、物体検出を行なう視覚モデルを提案した。また、動的輪郭法が抱える問題を、認知心理学研究で得られた視覚特性(凸性)を導入することで解決した。神経生理学的実験により、視覚的注意の影響はV4細胞の活動度に影響を及ぼすことがわかっている。そこで、提案した物体検出モデルに視覚的注意の効果を導入した、統合的な視覚モデルの提案を行なった。統合的視覚モデルの妥当性を評価するために、図地反転現象に関する視覚心理実験を行なった。この心理実験結果と、モデルの動作特性が一致することを数値シミュレーションにより見出した。さらに、提案モデルの理論的な動作解析から、注意の範囲が知覚に影響を及ぼすことを予測した。この予測の妥当性を評価するために現在、新しい心理実験を行なっている。提案モデルは基本的に、反応拡散方程式に基づいて動作するが、結果を得るまでに長い時間を要するという問題点があった。そこでこの問題を解決するために、多解像度理論であるスケールスペース理論を用いて、スケールで一般化された微分演算子を統合的視覚モデルに導入した。数値シミュレーションにより上記問題点が解決され、さらに、V4野における長距離水平結合の計算論的解釈が可能となった。より高次の視覚情報処理であるパターン認識に関しても研究を進め、大きな位置ずれや変形に対しても頑健に動作する視覚モデルを提案した。また、ICA(独立成分解析)とPCA(主成分分析)を複数回組み合わせたパターン学習方法を提案し、同時に、汎用性の高いパターン認識のための神経回路網モデルの提案を行なった。
著者
望月 俊男
出版者
専修大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

教育実習生が,児童・生徒の多様な態度や考えを踏まえた授業シミュレーションを行えるようにすることを目的に,協調的な参加型授業シミュレーション支援システムを開発した.授業シミュレーションを人形劇で行い,AR マーカー等を活用してその過程を記録した後,記録された人形劇を Web サイトにログインして再生し,相互コメントすることで,授業展開の省察・改善を協同で検討することが可能な学習環境である.このシステムの予備的評価を行った結果,通常のマイクロティーチングでは生じない,多様な子どもの役割演技を引き出すことができることが分かった。
著者
劉 暁輝
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

リガンド未知の「オーファン核内受容体」に対して、トレーサーとする標準化学物質がないため受容体結合試験ができず、困難な研究課題となっている。本研究では、複数のヒト核内受容体について、表面プラズモン共鳴法(SPR)を利用した分子間相互作用解析装置Biacore T100を用いて低分子量化学物質と核内受容体の結合試験系を確立し、強く結合する化学物質を見出した。そして、放射標識体を用いた受容体結合試験系の構築にも成功し、これまでに全く知られていない化合物が受容体と非常に強く結合することが判明した。
著者
大野 朋子
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

地域固有の植物景観を形成する要因の一つとして、人間とタケ類との関わりと植物としてのタケ類がどのように伝播し、拡散しているのかを東南アジアにおける少数民族にみられるタケ類の利用をモデルとして調査した。リス族、ラフ族、モン族、アカ族は10種程度のタケ類を利用に合わせて使っている。4つの民族は共通して竹製の笙を使うが、材料のタケの種類は、ラフ族、リス族、アカ族では共通して自生種を使い、モン族では自生ではない温帯性のタケ類を栽培し、使用する。モン族は、文化的背景のもと笙を葬儀に使う特別なものとして扱うためにその材料となるタケを伴って居住地を移動し、資源供給の確保のために栽培することが明らかになった。
著者
井上 久美子
出版者
西南学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、幼児及び児童の身体感覚への意識性と共感性の関連を検討することであった。その結果、幼児においては、身体の感じに気づき、身体の状態の変化を正確に表現できることと共感的応答との関連が窺えた。児童においては、小学4年生及び6年生において、身体のありのままの感覚を感じられることが、共感的関心や視点取得といった共感性と関連する可能性が示された。したがって、幼児期から児童期にかけての時期においても、豊かな身体感覚への気づきを促すことが重要であることが示唆された。
著者
上田 学
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、日本映画の特性を理解するために、データベース等のデジタルヒューマニティーズの研究方法を取り入れながら、日本の都市における、無声映画期の映画館の興行形態を明らかにしようとした基礎研究である。本研究を通じて、映画草創期における東京と京都の映画の興行形態に差異が生じていたことや、それが歌舞伎や新派劇等の演劇との関係性の違いに因っていたことが明らかになった。これらの研究成果を、単行本の刊行や国際学会の口頭発表等によって、学術的に発信した。
著者
加納 誠二
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では尾根部の地震時応答を明らかにするため,模型を用いた振動台実験と被害のあった尾根部での常時微動測定を行った.振動台実験の結果,最も揺れが大きくなる周波数(1次ピーク)では稜線にほぼ平行な応答となっていた.また揺れの大きい範囲は尾根稜線の変曲点付近から尾根付け根までの長さの約2/3程度まで,高さ方向には尾根稜線から尾根高さの3〜4割程度であることがわかった.しかし高周波領域では,尾根の応答は稜線に直交するように加振しているにもかかわらず,稜線上にもほとんど揺れない点が現れるなど複雑な応答となることがわかった.常時微動測定の結果,健全な地点の卓越周期は宅地の標高や石積み擁壁の高さによる違いがみられず,ほぼ一定の値となった.地震による被害が見られた宅地では,卓越周期が長周期側の値となっており,宅地が緩んだために長周期側の値となった可能性が示されたが,一部では被害の見られない宅地でも卓越周期が長周期側の値となり,宅地内部が緩んでいる可能性があることが分かった.また長周期側の値となった地点の分布は,振動台実験で1次ピークとなった時の揺れの大きい範囲とほぼ一致し,実験に用いた物性値や相似則などから推定される尾根の卓越周期は,常時微動測定により求まった卓越周期と一致した.現場付近の花崗岩のせん断波速度などを用いた4質点系解析の結果,尾根上部では加速度が約1.8〜2.0倍に増幅されていた可能性があることが分かった.常時微動計を用いたアレー観測の結果,卓越周期時には尾根下部の振幅に比べ,上部では5倍程度の振幅となっていたことがわかった.以上から,地震時に尾根が共振したために尾根上部の揺れが大きくなり,尾根上部に被害が集中した可能性があることが分かった.また本研究から常時微動測定により宅地の緩みを評価できる可能性があることがわかった.
著者
山本 和生 マジェティック サラ
出版者
一般財団法人ファインセラミックスセンター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

磁性ナノ粒子自己組織化膜に形成される集団的に各粒子の磁化が揃う「超強磁性現象」の特徴を,電子線ホログラフィーとローレンツ顕微鏡法を用いて解明することが目的である.ホログラフィー観察の結果,超強磁性の磁区構造はミクロンオーダーであり,温度変化により磁壁が移動することがわかった.また,超強磁性-超常磁性転移の観察にも成功した.動的ローレンツ顕微鏡法により,100-300nmの領域で磁化が強く揃っており,その領域の磁化ベクトルが高速に回転していることが明らかになった.
著者
廣野 俊輔
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,自立生活センターのアドヴォカシー機能を実証的に明らかにすることを目的としたものである。とりわけ,各自立生活センターがそれ以前の障害者運動のアドヴォカシーに関する活動をどのように継承させていったかに注目しつつ研究を行った。その成果は3つに分類できる。第1にアメリカの自立生活運動を日本の障害者がどのように受容し、具現化していったのかという点に関する研究成果である。第2に、自立生活センターを発足する前の活動が自立生活センターとどのようなつながりをもっているかに関する研究成果である。第3に自立生活センターの周辺の障害者運動に関する研究成果である。
著者
金井 昌信
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では,住民の主体的な防災活動が促進されない理由として,住民の防災対応に関する行政依存意識に着目した.そして,その行政依存意識の形成には,マスメディアによる災害報道が影響しているという仮定のもと,2つの視点で分析を行った.一つは,災害報道の内容と住民の行政依存意識の関係を明らかにし,もう一つは,どのような災害報道が住民の行政依存意識の低減に寄与するのかを検証した.
著者
佐々木 新介
出版者
関西福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,静脈穿刺時の上肢温罨法の効果について検討した.静脈穿刺時の静脈怒張を評価する場合,駆血の影響を考慮する必要がある.そこで,適切な駆血条件を設定し温熱刺激による血管怒張を評価した.まず,実験室内で健常人を対象に5分間の簡便な上肢温罨法を考案し,有意な血管拡張が得られることを確認した.次に,血液透析患者23名に対してクロスオーバーデザインの臨床介入試験を実施した.その結果,シャント穿刺時に温罨法を実施した場合,1回での穿刺成功率は100%であったが,非温罨法時の穿刺成功率は91%であった.以上より,上肢温罨法による血管拡張効果を認め,看護援助としても有用である可能性が示唆された.
著者
坂上 文彦
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,ライトフィールドディスプレイの作成方法について検討し,その作成方法および校正方法について確立した.この方法では,観測者を模したカメラによりライトフィールドディスプレイを撮影することで,幾何的な情報を取得することなくどのようなライトフィールドが提示されるかをモデル化することに成功した.また,このようなモデルを用いることで,低視力者が裸眼でディスプレイを観測した場合に,任意の鮮明な画像を観測させることに成功した.さらに,画像を観測させるだけで視力を計測可能となる方法を提案した.また,通常のディスプレイを用いて視力仮想矯正を実現する方法についても提案した.
著者
小屋 菜穂子
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

テニスにおける調整力トレーニングのあり方を論じていくために、一昨年度から引き続き、今年度も国内外の選手が見につけている動き(技術)を発育発達段階に沿って、実際の試合をもとに分析してきた。分析ソフトの作成は、今後の使用目的を考慮すると、ベース自体からの練り直しが必要になり、引き続き継続している。日本選手は、ジュニア時代は上位にランキングされていても、シニアになるとその順位を維持できない。特に、男子の場合、トップ100位に入ることが非常に難しい。女子の場合は、トップ50位前後には入っており、今年は再び、国別団体戦であるフェド杯で、ワールドグループ1に入った。これは、世界ベスト8に相当する。しかし、個人のランキングを見ると、トップの杉山選手でも20位代である。体格差や筋力など、原因はいろいろと叫ばれているが、実際に見て情報を得る必要があった。そのために今年度は、世界のジュニア選手のレベルを把握するために、海外大会を視察した。世界のトップシニア選手の試合は、テレビ放送があるが、ジュニア選手の試合はあまりない。大会として選んだのは、世界4大大会のひとつであるUSオープンである。ここでは、日本選手vs外国選手、シード選手vsノーシード選手など、技術やプレースタイルをレベル別に把握できる試合が集中している。また、ジュニアとトップが同一会場で試合を行うことから、発育発達に沿った技術レベルの向上も見ることができた。有効な情報は数多くあったが、特に、ボールスピードのコントロールは、ジュニアとシニアの差が歴然であった。これを状況によって使い分けることが、トップになるための一必要条件である示唆を得た。昨年度からの、gradingの調査は上記の裏づけにもなると考えられる。今年度はさらにデータを増やすため、12歳から大学生まで、測定を行った。昨年度の結果に追加して、有用な示唆が得られると考えている。
著者
時澤 健
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、比較的安価な温度ロガーを用いて、日常生活の支障とならない末梢(手首)の皮膚温を測定することで、児童の生活リズムの評価を試みた。1日の変動は、就床前後にすみやかに上昇し、就寝中に高く、起床後すみやかに低下した。温度ロガーによる起床・就床時刻の算出結果と、行動ロガーによる算出結果に高い相関がみられた。児童を対象とした簡便で安価な生活リズム評価システムを構築できる可能性を示した。
著者
照屋 俊明
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

沖縄県備瀬海岸のサンゴ礁池で観測されるエダコモンサンゴとリュウキュウスガモの混合群落の形成に関与する化合物を探索するため、リュウキュウスガモ抽出物がエダコモンサンゴ幼生に対してどのような影響を与えるのか検討した。また、コントロール実験として、コユビミドリイシの隠蔽種Acropora sp. 1幼生を用いた。その結果、リュウキュウスガモ抽出物からエダコモンサンゴ幼生に対して毒性を示すカフェ酸を単離した。また、カフェ酸は0.0018 mg/ml~0.18 mg/mlの濃度ではエダコモンサンゴ幼生に対して影響を示さないが、Acropora sp. 1幼生の形態を変化させることが明らかとなった。
著者
芝 奈穂
出版者
愛知学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、リージェンツ・パークの成立過程を調査し、19世紀英国都市公園の発展を考察した。その結果、本公園は、計画初期段階では、王室による不動産経営という側面が強く、19世紀後半においても、敷地内に設置された動物園や植物園の存在から明らかなように、富裕層への娯楽提供という側面が顕著であったことが判明した。19世紀を通して、完全に「公園」と呼ぶには限定的と言わざる得ない複合的な空間であったことが明らかとなった。
著者
上條 隆志
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は三宅島2000年噴火後の森林生態系の種構成、多様性、機能に関する回復メカニズムを明らかにすることを目的とした。本年度については、以下の調査・解析を行った。1.2000年から2004年に設置した島内34箇所の固定調査区(100m^2から625m^2)において、植生調査と毎木調査をい、既存データと共に解析を行った。2.地上部の刈り取り調査を15地点行った。また、オオバヤシャブシについては個体別に刈り取りを行った。得られた試料の乾燥重量を測定し、バイオマス推定を行った。3.固定調査区6か所において土壌調査を行い火山灰ならびに埋没土壌を採取した。4.固定調査区2か所においてリタートラップを設置し、その回収を行った。5.固定調査区2か所においてシードトラップを設置し、その回収を行った。以上の調査解析結果から、噴火後5年間の植生変化パターンを明らかにすることができた。(1)火山ガスの影響が少なく、火山灰の堆積が厚い地域においては、樹木は胴吹きし、草本層ではハチジョウススキなどが増加した。(2)火山ガスの影響が強く、火山灰の堆積が薄い地域においては、樹木はむしろ衰退し、回復は草本層でのみみられ、森林から草源への退行遷移を示した。また、シードトラップの結果から、ハチジョウススキは裸地においても、周辺から多くの種子が供給されていることが分かった。噴火後に裸地化した地点同士で比較すると、火山ガスの影響の少ない地域の地上部バイオマスが噴火後5年で400g/m^2前後にまで回復したのに対して、火山ガスの影響の強い地域の地上部バイオマスは1.8g/m^2から95g/m^2程度であり、2004年から2005年の増加量も少なかった。リターフォールについては、年間のデータを得ることはできなかったが、継続調査することによって純一次生産量を推定する予定である。
著者
小笠原 理
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

昨今の測定技術の向上に伴い、生物学の分野などではデータドリブンな研究手法が注目されている。一方でコンピュータの高速化などに伴い、統計解析・データ解析手法は高度化し有用な解析手法が多数開発されている。これら2つの技術革新の融合はこれからの生物学研究に大きな影響を与えることが期待されるが、一方、大量データの測定・解析を行う実験研究者のような統計学の非専門家が先端的な解析手法にアクセスし正しく駆使することは容易ではない。この状況を改善する目的で、私は遺伝解析手法のデータベース(R Graphical Manual)を2006年より公開してきた。関数の実行結果の画像を使って関数の機能を一望できるという特徴を持っており、2008年の時点で月10~50万page view,月8千~1万unique IPほどのアクセス数を持っており、世界中の研究者から利用され一定の評価を得ていた。しかしデータ更新に大きな計算量が必要であるにもかかわらず、サーバ環境やソフトウェアが十分整備されていなかった。本研究において、このデータベースのサーバ環境、ソフトウェア環境を整えたことにより、2011年5月の時点で月20 万page view,月5万unique IPとなり、unique IPが顕著に増加した。月間unique IPはDDBJが1万7千、京都大学のKEGGが20万であるから、アクセス数については当初予想よりも大幅に増加し国内の著名なデータベースと比肩するサイトに成長した。各種の統計学辞典や教科書およびR Graphical Manualの関数マニュアルなどをもとに分類軸を作成した。この分類軸にR Graphical Manual中の関数をマッピングする必要があるが、そのためにR Graphical Manualの全文書に対してNamed Entity Recognition(NER)を行い、統計学の専門用語を抽出し、それをもとにマッピングを行った。この目的でNERの精度を上げるために新しい方法を開発した。
著者
佐々 尚美
出版者
武庫川女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

提案されている室内温熱環境の快適範囲は、平均的な人や全体の約8割の人を対象とした範囲であり、残りの2割には高齢者や寒がり等の温熱的弱者が含まれると考えられ、この様な特性に応じた室内温熱環境を検討する必要性がある。そこで、本研究では暑がり・寒がりの好む室内温熱環境調節について検討する事を目的に、夏期と冬期に暑がり・寒がりである女子大学生を対象に人工気候室実験を実施した。実験は、夏服着用及び相対湿度50%は一定とした。夏期は気温を暑がりは29〜30℃、寒がりは28〜31℃の4条件とし、入室30分後に気流を自由に調節する「気流調節実験」と、気温32℃に設定の人工気候室に入室直後より気温と気流を60分間自由に調節する「自由環境調節実験」を実施した。冬期は入室時は気温15℃、不感気流とし、被験者位置にて30分後に黒球温度22±1℃となる距離に設置したストーブ、ファンヒーター、パネルヒーターのいずれかを30分間使用する「暖房器具実験」を実施した。測定項目は、気温や黒球温度等の室内温熱環境を、Hardy&DuBoisの12点等の皮膚温や舌下温等の生理的反応を、温冷感や快適感等の主観的反応とした。皮膚温と環境は30秒間隔、舌下温と主観申告は10分間隔にて測定した。被験者は夏期は9名、冬期は寒がり4名とした。その結果、「気流調節実験」では気温28、29℃では暑がりの方が約0.1m/s強い気流に調節し、「環境調節実験」では入室直後は暑がりの方が気温を下げ、寒がりの方が強い気流に調節し、60分後は暑がりの方が0.7℃気温は高くより強い気流に調節し、SET*で約1℃低くなり、暑がり寒がり別に好む環境調節は異なっていた。「暖房器具実験」では使用30分後の全身温冷感はいずれもほぼ同じであったが、末梢部皮膚温や快適感はストーブが最も高く、長時間使用や帰宅直後に最も使いたい暖房器具として評価された。
著者
高山 龍太郎
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

富山県射水郡小杉町の「小杉町子どもの権利に関する条例」に伴い開設された「小杉町子どもの権利支援センター」(愛称:ほっとスマイル)を中心に調査を行った。この施設は、小杉町とNPO法人が公設民営の形態で共同して運営し、子どもの権利侵害に対する相談・救済活動と共に、不登校生徒児童の居場所づくりを行っている。このほっとスマイルの活動に加わって参与観察を行う一方で、ほっとスマイルに通う子どもたち、スタッフ、ボランティアへ聞き取り調査を行い、地域社会で不登校の居場所づくりに参加する当事者の視点から、その活動の意味を探った。ほっとスマイルでは、子どもの権利救済という観点から、不登校の子どもに対して「安心してほっとできる空間」の提供が目指されている。それにもとづいた活動の結果、ほっとスマイルの内部は、外とは異なる一種の保護的な空間であると、スタッフや子どもたちから認識されている。一方で、ほっとスマイルの内部と外部を結びつける必要性も、スタッフや子どもたちの間で、ある程度、共有されており、勉強を教えるなど外部につなげる活動も行われている。内部で完結した保護的な空間であることと、外部へ繋げる指導的な空間であることの両者は、不登校の居場所づくりで不可欠に思われるが、そのどちらが評価されるかは、ほっとスマイルに集う人びとの間でも、それぞれの置かれた立場や時期によって異なっていた。また、ほっとスマイルと同様に公設民営で運営されている他所の不登校の居場所で聞き取り調査を行い、小杉町の事例とどのように異なるのか考察を行った。