著者
松下 慶太
出版者
実践女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

調査結果から勉強カフェにおける社会人たちの学習を支援しているものは、学習者を中心としたつながりが大きく機能していることが示された。また、そのつながりは毎日顔を合わせて学習を推進していくような「強い紐帯」というよりも緩やかな「弱い紐帯」であると言える。また、こうしたネットワークの構築には勉強カフェのスタッフが大きな役割を占めていることが示された。
著者
廣森 直子
出版者
青森県立保健大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

現在、高い専門性が求められつつも、十分な労働条件や社会的地位が得られていない「専門職」も多く、そのような傾向は女性が多くの割合を占めている専門職でより顕著である。本研究では、司書と栄養士を事例として取り上げ、専門職として女性がいかにキャリア形成しているのか、あるいはできないでいるのか、またそれを支える専門性とは何かについて、専門職として働く女性と、資格を取得しながらも専門職として働いていない女性(潜在専門職)を対象にインタビュー調査を行い、実証的に明らかにした。
著者
前波 晴彦
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

中小企業は相対的に人材・資金・情報源等のリソースに乏しく,産学官連携への参入に対して障壁を感じていることが明らかになっている.こうした障壁を解消し,中小企業の産学官連携を促進するためには,適切な支援制度の活用と支援機能の運用が求められる.本研究では中小企業を主な対象とした産学官連携支援制度を事例とした.制度の利活用状況に地域間で差があることに注目し,これを産学官連携に関わる地域内の諸要素の影響によると仮定し検証した.その結果,地域内の研究リソースの蓄積だけではなく,外部資金受け入れ体制の整備やファンディング機関による直接的なサポートが有用であることを示した.
著者
福田 節也
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年、先進諸国では、世帯内におけるジェンダーの平等性が高いほど出生力が高いという傾向が見られつつある。日本では夫婦間の性別役割分業のあり方と出生はどのように関わっているのであろうか。当該年度における研究では、厚生労働省が実施している「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」のデータを用いて、夫婦の性別役割分業と第2子出生との関連についての分析を行い、研究所のワーキングペーパー(http://www.ipss.go.jp/publication/e/WP/IPSS_WPE28.pdf)として刊行した。分析の結果、日本では第1子出生時に妻が専業主婦であった世帯の方が、共働きであった世帯よりも第2子出生確率が高いことが明らかになった。しかし、専業主婦世帯、共働き世帯ともに、夫の育児参加と第2子出生との間には正の関連がみられた。また、妻がフルタイム就業である共働き世帯では、妻の家事頻度と第2子出生との間に強い負の関連が見出され、就業女性の「セカンド・シフト」が出生に対して負の影響をもつことが示唆された。一方で、夫による家事参加は出生に対して全く影響を与えていなかった。ただし、妻が自営業者・家族従業者である場合は、夫の家事参加と第2子出生に正の関連があった。この関連は、夫婦共に自営業である場合に特有のものとみられる。自営業における就業環境、例えば、職場と住居が近接しており、就業時間が柔軟であり、仕事内容における男女差が少ないといった条件が整えば、日本でもジェンダー役割の平等性と出生との間に正の関連が見出される可能性が示唆される。政策的な含意としては、女性の就業と出生との間にみられる負の関連をいかに取り除くかが、引き続き重要な政策課題である。また、長時間労働や長時間通勤といった男性の働き方を含めた改革が日本のジェンダーと出生力の両方を改善する鍵であることが示唆される。
著者
濱野 健
出版者
北九州市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本年度は研究計画の三年目に当たる。本年度も、昨年同様に、国内における研究協力団体への定期的な参与観察を実施した。実施先は、首都圏および北部九州である。調査回数は、平成29年4月から8月まで、延べ3回にわたる。その他にも、8月には中部地方にて、研究協力者への長時間への個別聞き取り調査などを実施した。また、研究協力者の依頼をうけて、本研究課題の成果に基づく情報提供を実施し、成果の還元に努めるなどした。また、本年度の具体的な研究成果として、本年度は国際学術誌にて査読付きの研究論文を英文にて出版した。内容については、本研究課題以前に実施していた研究内容、及び本研究での問題設定を、今後の検討課題も含めて考察した内容となっている。しかしながら、平成29年度については同年9月より米国にて在外研究のために一年間在籍することになったため、年度の後半については当初予定していた最終年度としての成果の公開にはいたらなかった。しかしながら、当初平成29年度までを予定していた研究計画を一年間延長することが認められたため、在外研究期間中に本研究に関わる文献資料や先行研究の収集を集中的に実施した。また、現地で開催される学術会議やカンファレンス(米国アジア学会年次大会等)などに出席し、本研究に関連する研究報告などの知見を得ることができた。また、所属先であるミシガン大学にて、関連する涼気の研究者などと交流をすることにより、本研究についての新しい視点や先行研究などの紹介を得ることができた。
著者
石田 賢示
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

「出入国管理及び難民認定法」の改正が施行された1990年以降、日本に居住する外国人の人口構造が量と質の両面で大きく変化してきた。日本では、これまで移民とネイティブ(すなわち日本国籍者)を直接比較できるようなデータの整備・公開が必ずしも十分ではなかった。そこで本研究では、ネイティブとの比較分析を通じ、日本社会における移民の地位達成過程構造の特質を解明することを目的として設定した。既存データの二次分析や独自に実施した社会調査データの分析結果から、第二世代移民の地位達成構造がネイティブと類似していることが明らかになった。ただし、同化した移民が機会と困難の双方に直面しうる点には注意すべきである。
著者
正田 悠
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

「音楽は感情の言語である」といわれるように,音楽には意図や感情を受け手に伝達するコミュニケーションとしての機能がある。本研究では,演奏者と鑑賞者が「共に会する」生演奏における,演奏者ならびに鑑賞者の時々刻々の反応を調べた。特筆すべき成果として,生演奏場面では,演奏者の不安が高い("あがり" を経験している)と,演奏に伴う身体運動が抑制されること,心拍数および心拍のゆらぎが大きくなること,生理的複雑性が低下することが示された。また,鑑賞者の微細な身体運動,鑑賞時の時々刻々の印象の変化,および心拍数は,録音された演奏をスピーカーで聴取するときよりも生演奏鑑賞中に抑制される傾向にあることが示された。
著者
河合 大介
出版者
岡山県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

最終年度となる本年度は、1.美学的課題を美術史研究の実践に照らし合わせて検討すること、2.赤瀬川原平の〈匿名性〉への関心をより発展的に考察するために、「千円札裁判」についての研究をすすめた。これまで作者の意図についての美学的・哲学的研究から、作品解釈において想定されている作者の意図を、一般的な好意における意図とは区別して、作品解釈の場面に固有な概念として考察する必要性が予測された。その予測に従って、特に美術史研究における意図への参照について検討し、美術史研究者を中心とする研究会で研究発表をおこなった。そこでの議論を通じて、美術史研究においては、作者の意図を示す資料も他の資料と同等にその正当性を検証されるのであり、とくに「意図」を特権的に扱うことはあまりないことがわかった。したがって、少なくとも歴史的な作品研究において、「意図」について論じることの妥当性や、それにかわる新たな体系の可能性について考察するという課題があきらかになった。また、赤瀬川原平の「模型千円札裁判」に関する研究では、前年度の東京文化財研究所での研究発表を発展させ、成城大学美学美術史学会において発表を行い、論文として公表した。そこでは、模型千円札についての赤瀬川の説明が時間とともに変化していくという点、また、赤瀬川にとって制作意図とは作品完成後に現れるという考えに至っている点を示した。ここには、意図と作品との因果関係に関する重要な洞察が認められる。これらの成果をもとに、次年度には研究会を開催して検討を深めた上で、最終的な成果を学会等に発表する予定である。
著者
角 恵理
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

コオロギのメスが、オスの歌に対して示す潜在的、前適応的な選好性の存在を明らかにすることを目的として、日本列島に分布するエンマコオロギ属3種のメスに対して音声プレイバック実験を行った。その結果、研究対象としているエンマコオロギ属3種のうち、エゾエンマコオロギのメスにおいて、近縁他種であるエンマコオロギやタイワンエンマコオロギのcourtship songに強くひきつけられるという反応が明らかになった。エゾエンマコオロギは、分子系統解析の結果、対象とする3種のうち最も分岐が古いと考えられる種である。したがって、派生的であると考えられるエンマコオロギ、タイワンエンマコオロギのcourtship songにひきつけられることは大変興味深い。エゾエンマコオロギとエンマコオロギは分布が重複しており、共存域での種間関係および聴覚システムの変化の動態を調べることにより、コオロギの歌の進化の考察に近づくことができると考えられる。courtship songはチャープ部分とトリル部分という2つの部分から構成される。エンマコオロギのcourtship songのチャープ部分には自種であるエンマコオロギのメスが、トリル部分にはエゾエンマコオロギのメスがひきつけられることが明らかになった。部分によってひきつけられ方が異なることは、これら2つの部分が独立に進化の選択圧を受けてきた可能性を示唆するものであろう。また、通常、自種の認識に重要とされるのはチャープ部分であり、付加的と考えられるトリル部分に他種であるエゾエンマコオロギがひきつけられることは、これらの種群でのメスの聴覚特性の進化および歌の進化を考える上で大変興味深い現象である。
著者
永松 謙一
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

脳外科手術における脳機能局在同定を、簡便に網羅的に行うためのスクリーニング方法として、脳表を赤外線カメラで撮影して脳の活動に伴う脳表温度変化をとらえるという、リモートセンシング技術を応用した新たな手法の実用化を試みた。本研究期間内には安定して脳活動部位を検出・同定することは出来なかったが、今後の研究への足がかりとなると思われた。
著者
渡辺 愛子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、戦後冷戦期、とくにイギリスの国際交流機関であるブリティッシュ・カウンシルが旧ソ連・東欧諸国に向けて展開した文化外交において、イギリスが自国をどのように表象することで効果的な外交戦略を達しえたのかを、歴史実証的かつ理論的に解明しようとするものである。今年度とくに集中的に資料収集した国は、チェコスロバキアである。同国は、戦前より共産主義の隆盛に対して比較的寛容であった一方で、第二次世界大戦中、ベネシュ亡命政権がロンドンに樹立されたこと、またミュンヘン会談後、イギリス国民の同国に対する同情心が高まったことから両国の関係に変化が生じ、戦争直後の1947年、東欧諸国で唯一、イギリスと文化協約を締結した。しかし、1948年2月のクーデター勃発によりソ導のチェコスロバキアへの圧力が増大した結果、50年の協約破棄にいたっている。夏の出張では、春にひきつづき、英国公文書館において、ブリティッシュ・カウンシルおよびイギリス外務省の資料収集を行った。さらに、これまでに収集したチェコスロバキア関連の文書をもとに、学術論文を完成し国際的な学術雑誌へ投稿することを目標に、ロンドン大学図書館において執筆作業を続けた。本論文では、ソ連による政治的・軍事的統制が強まるなかで、マスメディアによるイギリスへの虚偽報道、スパイ容疑で秘密警察に摘発されるカウンシル職員の動向などを考察し、同時に、イギリスが「文化」を通じてどのようにソ連的共産主義に対抗し、西側の影響力を浸透させようかと画策する事情を論じた。拙論は現在、冷戦史関係の学術雑誌に投稿中であるが、刊行済みの以下の論考でも、この問題に触れている。
著者
熊谷 正朗
出版者
東北学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

従来の球面モータに比べて出力が大きい、3自由度に角度制限なく回転する球面誘導モータを開発した。トルクは最大 5Nm、球面での推力換算で 40N を出力でき、かつ指令から力出力の安定まで 10ms 未満という応答性を持つなど、移動ロボットの車輪などに使用可能な性能を実現した。また、光学式マウスセンサによる球体の運動計測を併用して、角速度制御、角度制御を実現し、トルク出力と合わせて応答特性を測定し、性能を明示した。
著者
近藤 弘幸
出版者
東京学芸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本におけるシェイクスピア作品の翻案・翻訳受容について、フェミニズム理論を用い、またナショナリズムの観点から分析した。フェミニズム分析としては、日本で初めて女性としてシェイクスピア作品の全訳に取り組んでいる松岡和子の翻訳について、その功績と問題点を指摘した。ナショナリズムの観点からは、『オセロー』の翻案小説である宇田川文海『阪東武者』を、日本が「西洋化」することの不安を反映するテクストとして分析した。
著者
河瀬 彰宏 宇津木 嵩行 大利 さやか
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

日本民謡の地域的特徴を科学的に比較・分析するための基盤を構築した.はじめに各地域・各令制国での楽曲の種目の違いを把握するために,『日本民謡大観』(日本放送協会出版)に掲載されている全楽曲とその採録地域名・令制国名・位置情報(経度・緯度)をリスト化した.また,掲載楽曲を電子データ化し,各楽曲の旋律を構成する特徴を抽出するためのプログラムを開発した.楽曲のコンテンツ情報に基づき分類実験を実施し,抽出した特徴をデータベースに納めた.あわせて楽曲の位置情報に基づく特徴の可視化を実施した.得られた分析結果とリストは,研究者コミュニティで利用できるかたちに整備し公開した.
著者
海老原 秀喜
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

申請者は、リバースジェネティクス法(人工的にウイルスを作成する技術)等の分子生物学的技術と動物実験を駆使し、ヒトに重篤な出血熱を惹起するエボラウイルス(EBOV)のうち強毒ザイールEBOV (ZEBOV) と近縁のマールブルグウイルス(MARV)、出血熱を惹起しないレストンEBOV (REBOV)の3種類のウイルスタンパク質(GP, VP35, VP24)の病原性に関わる機能(主に免疫御能等)を比較し、EBOVタンパク質の病原性発現における役割に焦点を絞って研究を実施する。本年度(平成20年度)は、以下の研究を遂行した。(1) 新たなエボラ出血熱の動物モデルの確立 : ゴールデンハムスターを用いたエボラウイルス感染モデルを開発した。このモデルはヒトと同様の病態を示すことから、今課題の病原性の研究のみならずワクチン・治療法の開発にも有用なモデルになる事が期待される。(2) フィロウイルスの糖タンパク質を発現する組換え水泡性口内炎ウイルス(VSV)ライブラリーの構築 : 現存する5種類のエボラウイルス糖タンパク質及び5種類のマールブルグウイルス株の糖タンパク質を発現するVSVを作成した。このシステムを確立したことにより、フィロウイルスの糖タンパク質による免疫抑制能の研究をヒトの初代培養細胞系を用いて遂行可能となった。(3) 強毒型マールブルグウイルス・アンゴラ株のモルモットモデルの確立とリバースジェネティクス法の確立 : 2005年に致死率90%以上の流行を起こしたアンゴラ株のモルモットモデルを確立し、さらにリバースジェネティクス法の確立を実施中である。(4) さらにエボラウイルスのVP35及びVP24のインターフェロンシグナリング能の比較を行った。
著者
西尾 ゆかり
出版者
大阪医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2型糖尿病患者の主観的評価による睡眠と血糖コントロール(HbA1c)との関連を明らかにすることを目的に本研究を行った。その結果、(1)「睡眠の質」の評価が悪い、(2)「睡眠時間」が6時間未満である者はHbA1cが高くなることが明らかになった。また、女性で短時間睡眠の者のHbA1cはそうでない者より有意に高いことが明らかとなった。
著者
河内山 隆紀
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,複雑な手指運動学習課題における運動技能の両手間転移に関する神経機構の解明を目標としている。本年度は,主に昨年度構築した実験システムを用いて実験を行なった。被験者は,健常な男女40人であり,複雑な手指運動学習課題である健身球の回転運動課題を課した。両手間転移が評価できるように被験者を4群に分け,すなわち,右手から左手への転移を評価する群とその逆を評価する群に加え,それぞれに転移を生じない統制群を設けた。脳活動計測は,昨年来より共同研究を行っている生理学研究所の磁気共鳴画像装置(MRI)を用いた。MRIを撮像中に(1)ビデオ監視システムによる球の回転運動計測と(2)被験者の腕より導出した筋電図(EMG)計測を行ったが,解析の結果より被験者の行動は球の回転運動計測から評価することとした。その結果,行動学的には,学習に伴う,球の軌道分散が減少し,また回転角加速度の上昇が見られた。また脳活動計測データより,転移前では,運動学習に伴う,小脳、運動前野、補足運動野、体性感覚野、後上頭頂葉の活動減少が見られたが,転移後のデータにはそのような変化は確認されなかった。また,転移後の運動では,補足運動野と運動前野の活動が転移前に比較して上昇していることが確認された。以上の結果より,転移の成立は,転移前の補足運動野と運動前野で生じた運動学習がプライミング的な役割を持ち,それが転移後の当該領域の脳活動上昇を導き,さらには行動学上の促進効果の表出をもたらしたことが予想される。現在,行動学的データと脳活動計測データの相関分析などを継続中であり,それらの結果を踏まえた研究成果を今年度中に専門雑誌へ投稿予定である。
著者
大山 昌彦
出版者
東京工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、脱地域的な性格を持つサブカルチャーに対する関心の共有を媒介としたネットワークが、地域社会への参加の契機を産み出す様相を明らかにするものであった。従来の社会的紐帯が崩壊しながらも生活圏がある程度共通することから、そうしたネットワークが情緒的な関係性をもたらすだけでなく、生活上必要な社会関係資本を提供すること、またサブカルチャー集団は、地域に対する愛着を媒介として他者との交流を産み出し、地域内にさらに広範なネットワークを構築する可能性を持つことを指摘した。
著者
義平 真心
出版者
東京女学館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

寄せ場地域である山谷地域には簡易宿泊所が夊数存在し、生活保護受給者を含めた長期滞在者は健康の問題を抱える人も夊い。「簡易宿泊所の長期滞在者を対象とした健康・生活実態調査」(対象簡易宿泊所25軒、調査協力者164名)の対象者の大多数は生活保護受給者であり、他は年金受給者や労働者である。全体的に一般的信頼感や社会的スキルが低い傾向にある。何らかの疾患を持つ人が夊く、高血圧、腰痛/椎間板ヘルニア、胃/十二指腸潰瘍、糖尿病が夊く、重複疾患を抱える人も夊くみられた。それと関連して健康関連生活満足度も低い対象者が夊い。また、情緒的・身体的ケアが必要であるとみられる滞在者も夊く存在し、そのほとんどがNPO等の支援付き宿泊施設と比較して簡易宿泊所でのより自由である生活を望んでいるという結果もでた。簡易宿泊所が利用しやすい地域ケアシステムを構築し、福祉的ケアを伴った簡易宿泊所の運営を図ることが長期滞在者のより身体的・精神的な自立的な生活の継続のためにも効果的であると考えられる。
著者
又吉 宣
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

リゾフォスファチジン酸(LPA)は生体内で様々な働きを持つ生理活性脂質として近年注目を集めている。癌細胞に関してはLPA刺激が癌細胞の増殖や遊走といった悪性形質の発現に働くことが報告されている。その受容体はLPA1-6の6つのタイプがこれまでに知られているが、2003年に発見されたLPA4に関してその働きはよくわかっていない。今回、頭頸部扁平上皮癌細胞株を用いLPA刺激に関する増殖能、遊走能を調べる実験を行った。次に遺伝子導入によりLPA4を過剰発現させた頭頸部扁平上皮癌細胞株を用い同様の実験を行うことによってLPA4を介したシグナリングが癌細胞の悪性形質発現抑制につながる可能性を見い出した。