著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、さまざまな企業の組織学習のタイプや水準を明らかにするとともに、その成立を可能にしている要因を探った。その結果、雇用形態や職務の違いよりも、そうした違いを乗り越えて、組織メンバーに一種の自己効力感や当事者意識を持つことを許されたと感じさせるような仕組みづくりに成功するときに、各組織が期待するような組織学習が成立すること、その状態が広いほど高次な組織学習が可能になる傾向が見いだせた。
著者
安藤 史江
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

完成年度である本年度は、昨年度までに得られたデータを分析し、組織学習活動や当該組織における従業員各々のキャリア開発に対してモチベーションを高める環境要因、組織要因、個人要因を掘り下げる作業を行った。とくに、上司との関係、組織内地図の有無、企業の従業員育成制度のあり方、自己に対する自信などが、注目されるべき要素として浮かび上がってきた。その結果の一部は、本年度(2006年度)の夏(8月)に開催された三菱国際カンファレンスにおいて、英語で報告をし、参加者の方々から、貴重なご意見をいただくことができた。また、そのご意見をもとに考察を重ね、2006年10月には、東京大学大学院経済学研究科におけるワークショップ、2007年1月には、専修大学を会場としたシステムダイナミクス学会日本支部研究会で発表を行った。また、著作物としては、本研究内容に基づいた明治安田生活研究所への寄稿、南山大学経営学部の紀要への投稿なども行った。このような機会を得て、また、分析手法などについてその分野の専門家に教えを乞う機会も得ることができたことにより、さまざまなご意見・ご助言を得ることができた。しかしながら、まだ分析結果に納得がいかない点も残っているため、今現在でも改善作業中である。来年度の前半の完成を目指しているが、そのためには、来年度の初期にでも追加的なインタビューを行う必要性を、現在のところ改めて強く認識している。一方で、昨年度得られたデータは、比較的年齢の高いもの(若い人々も含まれているが、主対象は、40代の従業員)であったため、別の企業群が対象ではあるが、20代の従業員に対して追加的な調査も実施した。その結果、やはり上司との関係や組織内地図、育成の仕組みが、彼らの学習活動や行動、モチベーションなどの心理面などに大きな影響を及ぼしている可能性が確認された。この成果については、調査協力および事務局となっていただいた社団法人のもとで報告書を作成するとともに、やはり2007年1月に報告会を実施している。ただし、昨年度来のデータを論文にする作業を優先しており、今年度得られたこのデータについては、まだ論文執筆作業に着手していない。こちらもあわせて、来年度の課題としたい。
著者
大関 真之
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

最適化問題に関連するスピングラス模型の解析を通じて、Jarzynski等式や揺らぎの定理からなる非平衡関係式による最適化問題の解法を検討・提案した.【平成24年度成果】Masayuki Ohzeki, Phys. Rev. E 86, 061110 (2012), 【平成25年度成果】Akihisa Ichiki and Masayuki Ohzeki, Phys. Rev. E 88, 020101(R) (2013), 【平成26年度成果】Masayuki Ohzeki and Akihisa Ichiki, Phys. Rev. E 92, 012105 (2015)
著者
鈴木 彰
出版者
神奈川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.伝本調査および関連資料収集作業和鋼博物館・刀剣博物館・東京大学史料編纂所を中心に、各機関に所蔵されている文献・写真帳等を調査し、刀剣伝書および伝書の生成と展開に関する書物群の伝本調査を推進した。書誌カードとして成果を累積し、それらをパソコンに入力した。また、デジタルカメラでの撮影や複写によって原本の写真版を手元に集め、伝本分類作業をおこなった。前年度までの調査に加えて、新たな中世にさかのぼる内容を持つ伝本を複数見出し得た。2.本研究のまとめ本研究のまとめして、「中世刀剣伝書伝本一覧(稿)」を作成し、公表した(鈴木彰『平家物語の展開と中世社会』<汲古書院2006>に掲載)。また、本研究で収集した関連資料とあわせて、将来的に「室町期刀剣文化関連資料集」(仮称)を公表するべく、整理を続けた。本年度の成果を盛り込み、初発的な完成を期したい。また、軍記物語との関連という観点からの論文「源家重代の太刀と曾我兄弟・源頼朝--『曾我物語』のなかの「鬚切」「友切」--」をまとめた(『軍記物語の展望台』(和泉書院・2006刊行予定。校正中)に掲載予定)。3.研究成果の公表2にも記したような著書と論文を公刊・執筆した。また、本研究の過程で得た知見を盛り込んだ研究発表もおこなった(軍記・語り物研究会大会 2005.8 於名古屋大学)。その内容についても、同会の機関誌「軍記と語り物」42号(校正中)に掲載予定である。
著者
亀井 靖子
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

郊外戸建住宅地の先行事例である、マー・ヴィスタ―・トラクトと高幡鹿島台ガーデン54の現状を調査分析し、(1)住宅地コンセプトを明快に表す全戸共通要素、(2)居住者の住宅地と住環境に対する意識と関心の高さが良好な住宅地の維持形成に影響することが明らかになった。その中で、戸建住宅でも、団地景観に影響を与える部分については共用部分とみなし維持管理していくことが大切であり、その線引きが次の課題であることが明らかになった。
著者
黒木 千尋
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

目的は、水素ガスの脳保護作用とフリーラジカルの関係を検証し、水素ガス投与が脳のエネルギー代謝にどのように影響するかを明らかにすることである。エダラボンは臨床で良く用いられているラジカル捕捉剤である。同一実験系で水素ガス(4%~50%)とエダラボン(10~5000μM)のEC_<50>を算出した。水素ガスはラジカル捕捉能が見られずEC_<50>の算出は不可能であった。一方、エダラボンのEC_<50>は705μMであった。平成21年度の結果と合わせ「水素ガスがラジカル捕捉能を持ち、それにより神経細胞保護作用を及ぼす」という説は支持できない。ラットの脳スライスを凍結破砕し抽出を行い、^1H-NMRおよび^<31>P-NMRを行った。虚血再灌流モデルを用いて、虚血再灌流負荷前後の代謝物の測定を行った。4%および8%水素投与群とコントロール群の比較(Tukey多重比較)をした。N-アセチルアスパラギン酸の負荷後/負荷前比は、それぞれ77.1%, 61.4%, 69.3%であり、8%水素投与群は4%水素投与群より有意に回復が悪かった(補正p=0.O11)。γ-アミノ酪酸や「クレアチンとホスホクレアチン(PCr)」も、8%水素投与群は4%水素投与群より有意に回復が悪かった(補正p=0.022, 0.035)。その他、^1H-NMRでコントロール群と有意差のある群は見られなかった。^<31>P-NMRによる、PCr測定では8%水素投与群と4%水素投与群に有意差は見られなかった。β-ATPは、それぞれ53.8%, 60.6%, 54.1%であった(有意差なし)。平成21年度の結果と比較して、抽出物の実験でもβ-ATPの様に同様の傾向は見られている。水素ガスは神経保護効果を及ぼす程のラジカル捕捉能があるとは言えないが、4%では神経保護作用があり、8%を超えると神経細胞に障害を与える可能性を考えなくてはならなくなった。
著者
横山 啓太
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は前年度から継続して研究しているKolodziejczyk博士(ワルシャワ大学)、Wong博士(シンガポール国立大学)らとの共同で算術における証明のサイズ・長さと公理系の関係についての分析を幅広く進めた。特に組み合わせ命題がどのような条件で証明を短縮できるかについて細かく調べ、ラムゼイの定理の場合について証明の長さを短縮する例・しない例についての具体的な結果を得るとともに一般の場合についての予想を得た。この研究中で、指標関数と呼ばれる1970年代に提案された算術の超準モデルの分析手法を現代的に整備し直し、多くの新しい研究に適用できる形に手法を一般化した。また、国内の4人の研究者との共同で算術における論理公理の分離問題をクリプキモデルと超準モデルの手法を組み合わせて一般的に解く手法の構築を進めた。さらに完備距離空間上の最適化問題に関するEkelendの定理やCaristiの不動点定理の逆数学的強さの分析等の研究を進展させ、Ekelandの定理がいわゆる可述的と呼ばれるレベルの公理系を超える強い公理と同値になること等の結果を得た。いずれについても、現在主要な成果について論文にまとめる作業を進めており、投稿に向けて準備中である。また前年度大きく発展した諸種の組み合わせ論の強さの逆数学手法による分析成果をまとめ、特にラムゼイの定理に関する証明論的強さを確定させた主要な2本の論文が受理されるとともにそれらを計算機科学分野の定理に応用した論文についても受理された。関連論文の執筆も引き続き進めている。
著者
小原 江里香
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本課題では、中国重慶市の経済発展モデルといわれる「重慶モデル」のメカニズムを明らかにするために、公表されている統計データを用いた統計分析と重慶市における聞き取り調査を行った。ここから、①重慶経済の成長パターンが、粗放的成長パターンから集約的成長パターンに変化しつつあること、②重慶市内の都市農村格差は縮小の傾向にあること、③戸籍制度改革、住宅改革などによって、農村から都市への移住が進んでいること、④にもかかわらず、都市に移住した人々の就業支援などが不足傾向にある点などの諸点が見いだされた。
著者
長谷部 一気
出版者
香川高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

超対称な高次元の非可換幾何の数理を確立し、それをトポロジカルな物理系に応用する研究を行った。平成23年度は、非可換幾何の高次元、超対称の数理的構築を球、双曲多様体について行った。その数理的研究と並行して、超対称な量子スピン系、非エルミート量子力学への応用した研究を行い、端状態、隠れた秩序といったトポロジー的構造を明らかにした。平成24年度は、超対称な量子スピン系の研究を更に深化させ、量子エンタングルメントといった最近の提案された概念の実現について研究を行った。平成25年度は、非可換幾何をトポロジカル絶縁体(特にAクラス、AIIIクラス)に適応し、その物理を解析した。
著者
高橋 英之
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

対人応答性(他者に対する社会的態度の構築能力)が弱い自閉症などの発達障害者の療育手法として,単純で振る舞いを予測しやすいロボットとの交流を通じて対人応答性を引き出す試みがある.しかし対人応答性を定量的に評価する指標がこれまで殆ど無かったため,ロボットによる療育効果の客観的評価が難しかった.申請者は対人ゲームをプレイ中の独自の行動指標(エントロピー)と脳計測(fMRI)から,対人応答性を定量的に評価する客観的指標を開発した.
著者
石崎 保明
出版者
名古屋産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、これまで扱われることの少なかった特に近代英語期以降の口語的資料における句動詞の使用の実態に焦点を当て、その文献学的・時代的背景を考慮しながら詳細に調査し、それらを認知言語学において標準的に採用されている用法基盤モデルの観点から説明することにより、歴史言語学における言語変化理論に対して貢献を図ることである。本研究最終年度となる今年度は、電子コーパス等に収められている口語体で書かれた初期および後期近代英語を中心に調査を進めながら、個々の事例に対して用法基盤モデルの観点から考察した。具体的には、英語表現のイディオム化には、少なくとも、語彙化に由来するものと文法化に由来するもの2種類があり、ともに用法基盤モデルの観点から自然な説明が可能であることを示すことができた。初期近代英語期から後期近代英語期にかけてのoutを含む句動詞の歴史的発達の傾向については、第50回名古屋大学英文学会のシンポジウムで公表し、outを含む句動詞における動詞と副詞の結合の仕方やその結合度のより詳細な歴史的発達については、3年に一度開催される英語の語彙の歴史的発達を射程においた国際会議(The Third International New Approachesin English Historical Lexis Symposium、於ヘルシンキ大学)で口頭発表した。特に後者については、同じく後期近代英語期に発達したoutを含む句動詞であっても、その発達の種類が個別事例により異なり、例えば'to start'を意味するset outは、一見したところ語彙化由来のイディオム化の事例にみえるものの、実際には文法化に導かれたイディオム化の事例であることを論証した。また、用法基盤モデルに基づく英語の歴史的発達に対する分析の妥当性については、語彙の歴史的意味変化を扱った研究書を書評した中でも触れた(2編の書評論文の内1編は、2012年6月に刊行予定である)。
著者
齋藤 智寛
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

後世の禅宗諸派で祖師と仰がれた六祖慧能の言行録『六祖壇経』と、その関連資料についての考察をおこなった。特に『壇経』に収録される詩歌に着目することで、本書の成立問題と、本書の「心」や「本性」に関する考え方を検討した。その結果、『壇経』の散文部分と詩歌の部分とがしばしば不整合であり編集の痕跡を残すこと、「鏡の臺」や「心地」などの比喩表現が同時代の禅僧とはややちがった『壇経』独自の心性論を反映していることが明らかになった。
著者
井上 まどか
出版者
清泉女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ソ連崩壊後のロシア連邦において、宗教文化教育を公教育に導入するという試みが実現化した。ロシアの宗教文化教育を分析する本研究は、ソ連崩壊後のロシアにおいて「伝統宗教」とされる諸宗教が、いまなお、人々を結束させる機能を求められていること、つまり、統治と深く関わりがあることを明らかにした。また、今日のロシアにおいて、「ロシア人論」と宗教をめぐる言説とが深く結びついていることを明らかにした。
著者
山田 太造
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では日本史学研究における研究過程支援のため,史料目録・テキスト等から史学的知識を抽出し,知識間・知識-史料間・史料間などの関係を明確にしながら,内在する史学的知識・暗黙知を外在化する研究を行うため,特に(1)史学的知識の抽出・蓄積,(2)史学的知識間,史料学的知識-史料間,史料間の関連性の検出,(3)知識表現・関連表現とそれらを用いた検索手法の確立を目指した.
著者
吉澤 寛之
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、犯罪や非行、攻撃行動などの反社会的行動に至る行動決定過程を意図性の観点から分類し、各過程による説明力の差異を明らかにした。さらに、行動決定過程と常習反社会性との関連を、再犯者と非再犯者や一般少年との比較分析や、サイコパシーとの関連分析により明らかにした。続いて、再犯性の予測や矯正プログラムの改善への貢献を視野に入れ、行動決定過程についての査定バッテリーを開発した。
著者
福士 航
出版者
北見工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、英国王政復古期の作家アフラ・ベインの演劇・散文作品に見られる<他者>表象を、ジェンダー・党派政治イデオロギーの側面のみならず、人種・階級・振る舞いのコードなどの側面からも分析し、その結果、演劇的表象が<他者>のステレオタイプへの固定化に向かうことを明らかにする一方で、散文における<他者>表象は複層化することを確認した。
著者
吉武 隆一
出版者
国士舘大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ギリシア古代都市メッセネの古代劇場とアスクレピオス神域のコリント式オーダーを中心に、ヘレニズム建築の設計法と施工法の一端を明らかにしたものである。ギリシア建築のコリント式オーダーは、古典期まで建物内部のオーダーとして使われることが多かったが、ヘレニズム期になって建物外部のオーダーとして用いられるようになった。メッセネのアスクレピオス神域で使われたコリント式オーダーは、サモトラケのプロピロンと並び建物のファサードとして使われた重要な例であり、様式的にはペロポネソス半島の伝統の影響を受けていることが分かった。また、メッセネの古代劇場はヘレニズム期とローマ時代の両方の遺構が確認できる好例の建物である。これまでの調査で、ヘレニズム期には可動式の木製スケーネがあり、ローマ時代になって二層あるいは三層のオーダーからなるスケーネに改築されたことが分かった。
著者
廣澤 成美
出版者
埼玉医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究ではフェニトロチオンが内分泌臓器に及ぼす影響を調査するために雄若齢ラットを用いて曝露実験を行った。その結果、フェニトロチオン30mg/kg/day投与群の副腎と脳下垂体重量の増加がみられた。またフェニトロチオン投与群ではテストステロン及びACTHの血中濃度が高くなることが示された。脳下垂体と副腎におけるプロテオーム解析を遂行し、コントロール群と比較し投与群において発現量が増減した蛋白を同定することができた。
著者
高柳 友紀
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

下垂体後葉ホルモンのオキシトシンとその受容体は、社会行動と親和行動に重要であることが示されている。オキシトシン受容体遺伝子欠損マウスには母性行動低下が認められた。一方で幼若期のオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、母親から隔離したときの超音波発声がほとんど認められなかった。これらの結果は母仔親和行動において、母仔共にオキシトシン受容体が重要な因子であることを示している。また一方で、仔の成長後の行動は幼若期に母親から受けた愛着行動に強く影響をうけることが知られている。そこで、本研究では(1)母仔愛着行動においてオキシトシン系が活性化される脳部位の同定を行うこと、(2)幼若期のオキシトシン系活性化が仔の将来の行動を形成するという仮説を検証することを目的とした。母性行動誘発時にオキシトシン系が機能する脳部位を明らかにする目的で、神経活動マーカーであるc-Fosの免疫組織化学による解析を行った。仔に曝露して母性行動誘発刺激を与えたオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、外側中隔野、内側視索前野における神経活動が野生型に比べて顕著に少なく、これが母性行動低下に影響していることが示唆された。また、母仔分離をして仔が母への求愛行動を示す時にオキシトシン系が機能する脳部位を同定する目的で、オキシトシンとc-Fosの二重免疫染色による解析を行った。母と同腹仔から隔離した生後七日目のC57BL/6Jマウスにおいて、視索上核で神経活動マーカー陽性のオキシトシン産生ニューロンが多い傾向が認められ、室傍核のオキシトシン産生ニューロンにその傾向は見られなかった。また、C57BL/6J仔マウスに対して出生日から生後5日目までオキシトシン受容体アンタゴニストを連続投与し、成熟後の行動を解析した。Vehicle投与群と比較して情動行動には差が見られなかったが、社会行動において差が認められた。
著者
河野 龍也
出版者
実践女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

佐藤春夫は近年、「アジア文学」研究の立場から注目を集めているが、基礎研究の不足から全体像のつかみにくい作家となっている。国際研究の場における情報共有のために、一次資料を整理することが急務である。そこで本研究では、未調査のままであった春夫の書簡やノートの翻刻を行うとともに、春夫のアジア紀行に関する詳註を作成することで、彼のアジア理解と、文学者としてのアイデンティティ形成の淵源について考察した。