著者
西村 一樹
出版者
広島工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

覚醒中の舌下温の日内変動特性を客観的かつ定量的に評価する方法を考案し,若年者500名(平均年齢20歳)および中高齢者40名(平均年齢59歳)を対象に舌下温の日内変動特性と生活習慣および健康関連尺度指標との関連性を明らかにした.以下の知見を得た.①舌下温の日内変動特性は,生活習慣の乱れによって,位相が後退すること.②舌下温の日内変動特性と健康関連尺度の精神的要素と関連性が観察されたこと.③朝食摂取および午前の軽運動の実施が,舌下温の日内変動特性の形成・修復に寄与する可能性があること.以上のことは,基本的な生活習慣がサーカディアンリズムの獲得に寄与し,精神的健康度を高めることを示唆する.
著者
肥前 洋一
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

市町村合併の是非を問う住民投票の多くで、その成立要件として、投票率が予め定められた水準(多くの場合50%)を超えなければならないというルールが設けられた。本研究の目的は、この成立要件が有権者の投票行動に与える影響を理論と実験により明らかにすることである。今年度は、前年度の理論研究の成果を「Imposing a Lower Bound on Voter Turnout」と題して9月の日本経済学会秋季大会にて報告した。さらに、理論研究に基づいて実験研究を行い、その成果を論文Yoichi Hizen,"A Referendum Experiment with a Validity Condition on Voter Turnout,"mimeoにまとめた。ディスカッションペーパーにしたのち、学術誌に投稿する予定である。また、平成20年5月の日本選挙学会研究会・方法論部会II「実験と調査の間」にて「投票の成立要件が投票行動に与える影響-実験室実験による検証-」と題して報告することが決まっている。実験研究では、1セッション13人からなる住民投票実験を6セッション実施した。「投票前に見込まれる賛成派と反対派の人数比」と「最低投票率の水準」に応じて、どちらの派の有権者がどのくらい棄権するかを観察した。得られた結果は、各有権者は、多数派であることが見込まれる派に振り分けられた場合には最低投票率の水準にかかわらず投票する一方、少数派であることが見込まれる派に振り分けられた場合には、最低投票率が低ければ投票するが高いと棄権するというものであった。すなわち、最低投票率を高くしすぎると戦略的棄権が生じて不成立になりうることが確認された。
著者
青木 研作
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

信仰学校(faith school)に対する国の政策、設置に関する地方行政の対応、信仰学校の実態等を研究することにより次の3点を明らかにした。第一に、イギリス社会において信仰学校は教育の私事性を拡大する存在として認識されていること。第二に、しかしながら、信仰学校の設置が認められている背景には、教育効果やニーズや社会的一体性(social cohesion)などの複数要因を総合的に判断して公教育制度をよりよいものにしようとする教育行政機関の考えが反映されていること。第三に、今後の信仰学校の課題としては、各宗教団体の利害を超えた教育供給主体としての責任、すなわち教育の公共性への関与が積極的に求められていること。これらを通じて、イギリスにおける教育の公共性議論がどのように展開されているのかの一端を明らかにできた。
著者
堀部 智久
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)関連タンパク質の一つであるPDI P5(P5)の活性阻害剤の低分子化合物スクリーニングを行い、これまでに得られた候補化合物の関連および類似骨格を有する低分子化合物のP5の還元酵素活性への影響を調べた。また、候補化合物の癌細胞におよぼす影響さらには、既存の抗癌剤との併用効果の検討を行った。
著者
丹菊 逸治
出版者
東京外国語大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

百年〜数十年前にかけてピウスツキ、高橋盛孝らによって採録されたニヴフ語口承文学筆録資料、近年の音声資料の解読・分析をニヴフ語話者の協力を得ておこなった。その結果、各伝承が個人の生活史と密接な関連を持つことが判明した。話者が属する血縁集団、個人的な事件、最近の伝承では近代化との関わりがジャンルに応じた形で反映されている。話者自身もそれを前提とし、自分にふさわしいと意識する内容を取捨選択して語っている。
著者
永田 弾
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

冠動脈炎モデルマウスにおいてマイクロアレイ解析からサイトカイン、ケモカイン関連遺伝子が高発現していることがわかり、抗IL-6受容体抗体と抗CCL2抗体を投与した。結果としてこの物質だけでは炎症を抑制できないことがわかり、いろいろな物質の関与があることが示唆された。また、モデルマウスにおいて心機能は炎症によって低下する傾向がみられたがエコー輝度と冠動脈炎の程度との相関を見出すことはできなかった。検討数を増やすとともに手法も含め更なる検討が必要と考えられた。
著者
亀田 真吾
出版者
立教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

水星は固有磁場を持つが大気は希薄であり,磁気圏と固体表面が直接相互作用しているという点で他の惑星と異なる磁気圏を持つ.ナトリウム大気はその相互作用によって生成されると考えられ地上観測が続けられてきたが,磁気圏観測が行われておらず大気生成過程は謎のままであった.本研究においてメッセンジャー探査機によりCMEが到達したと考えられる時期に,大気密度がほとんど変動していなかったという結果が得られた.このことから,太陽風衝突による大気放出量は先行研究で予想された量よりも少ないと考えられる.
著者
前川 貴史
出版者
北星学園大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

制約に基づく言語理論であるHead-drivenPhraseStructureGrammar(以下HPSG)の枠組みで、英語の節および名詞句の左端要素の語順に関する諸問題を扱った。英語の左端要素をめぐる諸現象が示すいろいろな特殊性が、HPSGの枠組みでは一般性を損なうことなく説明できるということが明らかとなった。
著者
熊本 卓哉
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

昨年度に引き続き,各種グアニジン誘導体より,窒素上にアリル置換基を有するアジリジンを合成し,熱的,および光条件による環化付加反応を検討した.しかしながら,いずれの場合も目的の環化体を得ることができなかった.一方,四酸化オスミウムを用いるジヒドロキシル化については,アリル置換基上でのみ酸化が進行した所望のジヒドロキシル体を与えた.今後,ここで生じたジオール部位に対して更なる変換を行い,C3単位ををアジリジンに組み込んだヘテロ環合成へと変換する予定である.また,アジリジン環に対する反応性を調査する上で,有機銅試薬による開環反応,有機ホウ素試薬によるシグマトロピー型反応などの検討を行ったが,所望の環化付加体を得ることはできなかった.その検討の過程において,塩化インジウムを用いた場合にtransアジリジンからcisアジリジンへの異性化反応が効率よく進行することを見出した.この異性化はこれまでに例がなく,特にcisアジリジンを部分骨格に有するマイトマイシンCなどの天然物合成への展開が期待される有用な反応であり,これらの事項についてHeterocycles誌に投稿した.一方,アジリジンを一旦フェニルゼレン試薬で開環してβ-ゼレノアミンとした後,アリルスズ試薬を用いたラジカル型炭素-炭素結合反応によりアリル基の導入に成功した.今後このアリル基を足がかりとした環化反応に展開していく予定である.
著者
河村 剛光
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、打席においてボールを見るというトレーニング方法が打撃能力や動体視力に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした。被験者を、時速100kmのストレートを見る群、打撃する群、時速115kmのストレートを見る群、打撃する群、時速100kmのカーブを見る群、打撃する群の6つに分けた。それぞれ、トレーニングを約週3回4週間実施した。その結果、全体として打撃能力は向上する傾向にはあったが、比較的、打撃練習を行う群は打撃能力に対して、見るトレーニングでは視覚機能に対して効果が得られる傾向にあったと思われた。
著者
関口 敦 佐藤 千穂 竹内 光
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、長期的予後の改善が著しい乳がん患者において、がん治療に合併する認知機能障害が注目されている。本研究では、閉経後乳がん患者の術前後および術後半年時点での脳形態変化、および認知機能を評価した。術直後で視床の体積減少および、注意機能の低下が認められ、麻酔薬の量との有意な相関が認められた。また、術後半年時点では、手術のみで治療が完了した群ではこれら変化は回復したが、術後内分泌療法を受けた群では回復していなかった。認知リハビリテーション介入研究は、ゲームソフトを利用したパイロット研究を健常群に対して実施したが、注意機能に対して有意な介入効果は認められず、患者群への介入は実施しなかった。
著者
山田 由香里
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

鉄川与助の大工道具の復原を通して、教会建築がどのように実現したのか検討した。次の4点が判明した。①鉄川与助の時代の技術に通じる人は今やごく限られた人である。②復原鉋の削り形状を青砂ヶ浦天主堂(1910)と頭ヶ島天主堂(1919)で対照させた。聖体拝領台手摺り、階段手摺、窓枠などに合致した。③鉋のひとつはフランス・サンテチエンヌのMANUFACTURE FRANCAISE社製(期間は1902~1910)で、日本でもカタログを通じて購入可能であった。④③の溝鉋はド・ロ神父がもたらした可能性が高い。これは、パリ外国宣教会の宣教師の各地での活躍をカタログ通販が下支えした可能性を示唆する。
著者
内川 昌則
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、転写制御因子 SOX2 とそのパートナー因子の協調的作用による感覚器原基の特異化機構について研究した。鼻、眼、耳などの感覚器原基は頭部外胚葉に由来し、Sox2が常に発現される。この発現は時期・領域特異的な制御領域(エンハンサー)により制御される。今回解析した NOP1 エンハンサーは、嗅上皮・内耳プラコード特異的に活性を示す。その活性に必須な配列の一つは、SOX2/9と Sall4 により協調的に制御されることを明らかにした。さらにドミナントネガティブフォーム SOX2 は、内耳プラコードで NOP1 エンハンサー活性を阻害したことから、嗅上皮・内耳プラコード特異的な NOP1 エンハンサーの活性にはSOX と Sall4 の協調的な作用が重要であることが示された。
著者
鈴木 誠
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

建設的干渉現象を援用した同時送信型フラッディング技術を基礎として,様々なトラフィックを効率的に同一技術で収容可能とする無線センサネットワーク技術を開発した.また,開発した通信機構を利用して,橋梁モニタリングおよび農場モニタリングに適用し,消費電力,スループットなどの観点から,十分な性能を実現できることを確認した.要求の異なる2つのアプリケーションを同一技術で高効率に実現できることから,従来の無線センサネットワークで必須であった,アプリケーションごとの作り込み作業が不要となり,開発容易化が可能であることを示した.
著者
杉本 周作
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

観測資料(Argoフロートによる水温・塩分観測資料,人工衛星観測海面水温資料・海面高度計資料,大気再解析資料等)解析を行うことで,黒潮再循環域の海洋構造(水温・塩分)の時間変動特性を調べた.その結果,水温の決定には,黒潮蛇行期に現れる四国沖の再循環流(高気圧性循環流)による熱輸送が重要な役割を果たすことがわかった.そして,形成された水温偏差が,直上大気場への熱放出源になることを指摘した.また,再循環域の塩分は,暖候期の降水量を反映しており,この降水量は再循環域上を通過する温帯低気圧によると結論づけた.
著者
崎山 治男
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、現代の新自由主義化とグローバル化が労働場面や私的場面での関係性を変容させる力学に関して、心理主義化に注目した理論的かつ実証的な研究を行った。具体的には、労働の感情労働化が進む中で公私における感情マネジメント能力を得ることへと人々が煽られる中で、「生の感情労働化」と社会への包摂ー排除が進むことを、感情社会学と現代社会学、社会哲学における統治論・権力論とを接合させる中で示した。それを裏付けるために、1990年代から現代に至るジェンダー、階層を異にする雑誌や自己啓発書におけるビジネススキル書、恋愛作法書などを分析し、「生の感情労働化」が階層差をも生み出すメカニズムを示した。
著者
山本 健太
出版者
九州国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,現代演劇,とりわけ小劇場演劇に着目して,その流通,消費の空間分布から当該文化産業の大都市集積の構造と大都市の文化創造機能について明らかにしたものである.小劇場演劇が東京において発展し,また多くの劇団が東京で活動している要因の一つとして,観劇者による公演前後の文化施設のハシゴ行動が明らかになった.下北沢地域が,近接地域を含む文化活動の集積や相互作用によって,サブカルチャーを中心とした都市型文化産業の核心地域となっていた.
著者
川道 穂津美
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

血管攣縮はRhoキナーゼによるカルシウム非依存性の異常収縮であるが、最終ステップとなる収縮蛋白による異常収縮現象は未だ確定されていない。本研究では、全て質量分析によって検証された高純度の収縮蛋白の滑り運動をリアルタイム・ナノ解析するシステムの構築に成功し、それを用いて、カルシウム非存在下で、Rhoキナーゼによって制御軽鎖がリン酸化された平滑筋ミオシンとアクチンの滑り運動をリアルタイム可視化することに成功した。しかも、その運動速度は正常収縮の最高値に匹敵する著明なものであった。
著者
小澤 京子
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ルドゥの都市・建築計画、特に『建築論』収録のテクストと図版を、「性の管理」、「労働と共同体」、「教育・訓育」の観点から分析した。同時代の重要な比較参照項として、 ブレやルクーの建築構想、『百科全書』の関連項目、サド、レティフ、フーリエらの生政治的建築構想、その他18世紀後半のフランスで発行された文献の調査・分析も併せて遂行し、ルドゥの時代における「性的身体を対象とする生権力」のあり方について見取り図を構築した。この研究の成果を集成した博士論文「ユートピア都市の書法:クロード=ニコラ・ルドゥの建築思想」は、審査通過後に単著として刊行予定である。
著者
村上 緑
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

視物質ロドプシンのバソ中間体とその光異性体イソロドプシンの結晶構造を求め、光反応サイクルの初期過程の様子を明らかにし、シグナリングに必須な構造変化を明らかにした。暗順応状態とイソロドプシンの構造を比較すると、レチナールは膜面に平行にポリエン鎖平面を向けており、レチナールと膜貫通へリックス3との立体障害がイソロドプシンを安定に保持することが明らかとなった。一方、暗順応状態からバソ中間体への遷移によってポリエン鎖平面は膜の法線方向へと回転しポリエン鎖は細胞質側へと大きく移動した。この時、レチナールは大きく捻じれ、近傍残基の側鎖に相補的な動きが惹起され、吸収した光エネルギーはレチナールおよび近傍残基の歪みとして蓄えらえることが明らかとなった。