著者
北野 雅子
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、予後の良くない外傷性嗅覚障害がどのタイミングまでに治療を開始すれば嗅覚の改善が期待できるのかを明らかにする目的で施行した。外傷性嗅覚モデルマウスを作製して、嗅神経切断後1、2、4、6週間後にステロイド治療を施行した。その結果、炎症抑制による外傷性嗅覚障害治療は受傷後1週間までは有効だが2週間以上経過すると無効であると考えられた。
著者
渡邉 大輔
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、戦後の日本映画における児童の映画観客の映画受容の実態・動向を多角的に明らかにしたものである。さらに本研究では、そのために当時の観客や視聴者調査にまつわる言説群も参照した。1950年代から60年代にかけての児童映画観客の実態は、主に二つの劇場外の映像受容の文脈と密接に結びついていることが明らかとなった。第一に1920年代から活発化した「映画教室運動」や「学校映画会」と呼ばれる学校施設での映画上映、そして第二に国産のラジオドラマやテレビアニメーションといった新たな放送メディアとの関わりである。とりわけ本研究では、1960年代に国産テレビアニメが児童映画観客に与えた影響を分析した。
著者
原田 竜三
出版者
北里大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、救命救急センターに搬送され、治療の甲斐無く、亡くなられた患者の家族への看護について、看護師がどのような援助をしていく必要があるのかを探求する目的で行った。国内、国外の文献を幅広くレビューし、どのような実態があるのかを調査した。その結果、欧米における研究では、突然死患者の家族に対する死別後の遺族に対するケアや研究がされ、救命救急センターでの看護援助が遺族の悲嘆に影響を及ぼすことが明らかにされていた。家族が救命救急センターに入室した時点から家族との関わりを持ち、蘇生場面に立ち会い、死亡確認がされ、救命救急センターから退室するまでの一連の流れの中での具体は的な方法が示されていた。患者に行われている治療の情報を提供する。蘇生に立ち会わせる。家族に寄り添い、家族の抱く感情を受け止め、悲嘆の感情を表出させる。また、患者の身体をきれいにし、清潔なリネンで覆い患者の身体に触れてもらうことも悲嘆の援助となっている。さらには、死別後のケアや地域のサポートグループの紹介などが含まれていた。突然死の死別後の遺裂ケアの必要性を探求するため、突然死別後の遺族の悲嘆について、死別後から1年を経過した2名の遺族から身体の不調はなく、故人のいない生活に慣れてきていることが語られた。また、四十九日までの間は、身体的な不調があったこと、故人のいない生活に混乱をきたしたことも語られた。周囲からのサポートが悲嘆プロセスを促進していることが考えられ、研究対者が少ないことから、さらに救命救急センターにおいて研究依頼を試みたが、倫理的な問題から協力が得られなかった。我が国の救命救急センターにおいては、近年、精神科医の協力を得て、死別後の家族のケアが行われ始めているとの報告が見られている。救命救急センターにおいて、家族は突然の状況により医師の説明を十分に理解することができないことから、行われた治療に対する説明を聞く機会を作る必要があると考える。また、救命救急センターにおける看護師が、突然死を体験する家族における援助において、時間的な制約や信頼関係の確立などから難しいという認識を持っているとの報告がある。そのことから、今後、救命救急センターの看護師が家族に関わるための知識やスキルをどのように獲得していけばよいのかについて検討していく必要がある。
著者
神崎 映光
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題では、無線センサネットワークにおいて、人が持ち歩くスマートフォンなど、環境内を自由に移動するモバイル端末をデータ収集用端末(モバイルシンク)として利用する場合に、センサデータの収集を高信頼かつ低負荷で実現するためのデータ転送機構について研究を推進した。具体的には、モバイルシンクへのデータ転送を効率的に行うための通信制御手法、およびセンサデータの特性を利用した通信量削減手法をそれぞれ考案した。本研究の成果は国内外の論文誌や学会において積極的に公表し、国際的に著名な国際会議や国際論文誌、さらには書籍のチャプターとして掲載されるなど、国際的に高く評価された。
著者
齋藤 夏雄
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度はこれまで行ってきた標数2および3の体上における3次元Calabi-Yau多様体の研究をさらに進め、その構造を完全に解明することを目指した。我々の構成したCalabi-Yau多様体は,標数0への非リフト性や一般ファイバーが特異であるようなファイブレーションが存在することなど,正標数特有の病的な性質を有することが前年度までの研究ですでに明らかになっている。ただし基礎体の標数が2であるとき,2つの準楕円曲面のファイバー積上に生じる複雑な特異点の計算が残されていた。本年度はこれを準楕円曲面のタイプごとに徹底的に調べ,それぞれの場合について特異点の状況を完全に確定させた。この結果,この3年間の研究の中心テーマであったCalabi-Yati多様体の構造が明らかになったので,廣門正行氏・伊藤浩行氏との共著論文として2編にまとめ発表した。一方,上に記した特異点の計算を行う中で,有理二重点の変形空間におけるeauisingularな空間が次元を持っていることも明らかになった。これは標数0の体上では起こり得ないことが証明されており,正標数特有の現象であるといえる。低標数においては有理二重点はもはやディンキン図形から方程式が一意に決定されず,いくつかのタイプに分裂することが知られているが,我々は各タイプに対して局所的な計算を行い,変形空間におけるeiuisingularな空間の次元とその空間を与える式を決定することに成功した。これについては,現在論文を準備中である.なお研究にあたっては,国内外の研究者との議論および情報収集を行うことを目的として,研究集会やセミナーに積極的に参加した。2007年9月には慶應義塾大学で行われた研究集会で研究成果を発表した他,群馬県の玉原で行われたセミナーや城崎シンポジウム,さらに高知大学で行われた研究集会にも参加し,研究者と活発な議論を行った.
著者
澤田 充
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では戦前の銀行のデータを用いて、銀行間ネットワークの構造を明らかにし、それがどのようなインプリケーションを持つかについて実証的な観点から検証を行なった。実証分析の結果、戦前期の約半分の銀行が役員兼任を通じて他の銀行とのネットワークを構築しており、銀行間ネットワーク持つ銀行は持たない銀行と比べ、生存確率が高いことが明らかになった。また、銀行間ネットワークの質をネットワーク先の銀行の平均的なパフォーマンスで定義し、銀行間ネットワークの構造としてネットワーク統計量を用いて分析を行なった結果、ネットワークの質は銀行の生存確率に有意な影響を与えているのに対し、ネットワークの構造については銀行の生存確率に強い影響を与えていないことが実証的に確認された。さらに、昭和金融恐慌期のデータを用い、銀行間ネットワークを通じて預金の引き出しが伝播するかについて分析を行なった結果、預金の伝染効果について強い確証は得られなかった。
著者
木暮 照正
出版者
福島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

人間が外界を理解する上で,視覚情報を一時的に保持し,後々の判断に利用できることは,日常生活を恙無く過ごすためにも重要な基本的認知能力の一つである.本研究の目的は,この視覚短期記憶機構の加齢変容を解明することである.平成16年度(最終年度)の到達点は,前年度までの研究成果を踏まえて,1)20歳台から高齢期に至るまでの各年齢層を対象とし,物体性及び空間性の視覚短期記憶機構の加齢変容について実験心理学的に検討すること,及び2)加齢シミュレーション研究も併用し,機構の解明にアプローチすることの2点である.(加齢シミュレーション研究とは,健常若年者を実験対象とし,課題難易度を調節して仮想的に高齢群と同等のレベルまで認知成績を低下させ,背景にある認知メカニズムを精査する手法である.)まず1)に関して,物体性視覚短期記憶については,記銘する特徴によって加齢変容が異なる傾向が見られた.色特徴のみを短期保持する場合に加齢変容(成績低下)が著しく,線分の方位のみを短期保持する場合には加齢変容は認められなかった.一方,空間性視覚短期記憶(物体間の空間関係情報の短期保持)については,顕著な加齢変容は認められなかった.2)に関しては,若年者群を対象に物体性短期記憶における空間成分の手がかりを操作する実験を実施した.物体の特徴(色や方位)を短期保持する場合に,事前にどの位置に刺激が出てくるのか,あるいは,どの位置に刺激が出ていたのかを指示することで記憶成績が変化するかどうかを検証した.その結果,空間位置の事前予告では成績は向上せず,事後の指示ではむしろ成績を低下させるものの,事前予告は事後指示の負の効果を相殺することが分かった.以上の知見を総合的に考察すると,視覚短期記憶における空間成分(刺激の布置や刺激間の空間的関係性など)が短期保持の成績を左右する重要な要因であることが示唆されたといえる.
著者
副島 弘文
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では炎症において中心的役割を果たすT細胞に注目し、虚血性心疾患患者における活性化について調べた。活性化されたT helper cellとしてTh1 cellとTh2 cellがある。Th1 cellが産生するinterferon-gammaとTh2 cellが産生するinterleukin-4といった細胞内サイトカインを染色することでT helper cellがTh1 cellまたはTh2 cellのいずれへ活性化しているのかがわかる。虚血性心疾患患者から採血を行い、そのhelper T cell内のinterferon-gammaとinterleukin-4を染色した。interferon-gammaとinterleukin-4の細胞内発現の程度を不安定狭心症患者、冠攣縮性狭心症患者、安定狭心症患者および健常者で比較した。その結果、不安定狭心症と冠攣縮性狭心症の患者のT細胞では健常者に比べinterleukin-4の産生亢進はなくinterferon-gammaの産生亢進が認められ、これらの患者ではT細胞のTh1 cellへの活性化が生じていることが分かった(Circulation 2003)。また、血清中のTh1系の蛋白質としてCD 40 ligandおよびinterleukin-18について調べた結果、不安定狭心症や冠攣縮性狭心症患者では血中蛋白質もTh1系の蛋白質が健常人に比べ多くなる傾向が認められた。また、膠原病患者ではリュウマチ性関節炎のようにTh1に活性化されているものとsystemic lupus erythematosusのようにTh2に活性化されているものとがあり注目して同様の検討をしてみた。その結果、膠原病患者で虚血性心疾患を有するものと有さないものとで比べてみると、虚血性心疾患を有する患者ではTh1へ活性化されやすく、虚血性心疾患のうちでは冠攣縮性狭心症患者が多いことが分かった(Circulation Journal 2004 in press)。さらに、経皮的冠動脈インターベンションにより患者のhelper T cellはTh1 cellへ活性化してしまうこと、事前にstatinを投与することでその活性化を抑制できることも分かった(American Joural of Cardiology 2004 in press)。
著者
小田倉 泉
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、子どもの権利尊重に基づく教育実践を遂行するための、研修プログラムを作成することである。ここで言う子どもの権利尊重とは、J.コルチャックによる「子どもの人間としての権利」である。本研究ではコルチャックの思想に基づく実践として高い評価が報告されたイスラエルのアヴィハイル・スクールにおいて、その実践を調査し、今日の子どもの権利尊重実践のための研修プログラムを作成した。権利尊重実践のためのポイントは、子どもの権利を具体化するための子どもとの「対話」である。従って、研修プログラムは教師間の価値観の共有と対話力の向上に主眼を置いた3段階となった。
著者
佐藤 貴保
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

11~13世紀に、中国西北部のユーラシア大陸の東西を結ぶ交易路を支配していた西夏王国が実施していた交通制度、特に西夏の公的な使者が所持していた身分証(符牌)の制度について、西夏時代の遺跡から出土した西夏語の文献を用いて研究を行なった。本研究によって、西夏の身分証の制度のいくつかが、前近代の中央ユーラシア諸国家の制度と共通している点があること、またいくつかの制度には西夏独自のものもあることが明らかになった。
著者
塚崎 光
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ネギとタマネギのゲノムシンテニーを利用した比較マッピングを行うために、タマネギにおいて11連鎖群からなる連鎖地図を構築した。地図上のマーカーの座乗染色体推定を通して、10連鎖群を8染色体に対応付け、染色体レベルではネギ連鎖群との矛盾は認められなかった。QTL解析により、葉身折径および抽苔株率に関するQTLは、対応するネギ連鎖群においても検出されていることから、両種に共通のQTLの存在が示唆された。また、球および葯の着色に関しては、Chr. 7上に主要なQTLが存在し、同領域に存在するアントシアニン合成に関与するDFRが原因遺伝子である可能性が強く示唆された。
著者
栄徳 勝光
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

国内外で10例報告されているインジウム肺のマウスモデルを研究室単位で実施可能な気管内投与法によって確立し、急性症状である肺胞蛋白症の再現に成功した。RNA-Seqによる網羅的な遺伝子発現解析により、慢性期の変化である間質性変化を示すマーカー遺伝子の発現も確認された。インジウム肺における遺伝子発現プロパティを明らかにしたことで、今後の治療法の開発の指針を示す重要な手がかりを得ることができたといえる。また、気管内投与法によるインジウム肺マウスモデルの確立により、今後のインジウム肺の研究の促進が期待できる。
著者
石川 保幸
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

活動依存的シナプス可塑性は広く学習と記憶の細胞学的基盤として受け入れられている。なかでもシナプスの連合性は活動依存性のシナプス可塑性においてシナプスの印付けと新規に合成される神経可塑性関連タンパク質との相互作用によって説明することが出来る。可塑性関連のセリン・プロテアーゼ(neuropsin)がシナプス入力依存的に長期増強(LTP)特異的にシナプスタグ形成に関係すると報告した。Neuropsinはインテグリンβ1およびCaMKIIシグナルによってシナプスの連合性に寄与する事が明らかとなった。シナプスの印付けの役割は、複雑な神経ネットワークの制御および情報処理に役立っていると考えられている。すなわち、このメカニズムが破綻した場合、様々な神経疾患を引き起こすことが考えられる。この発見は今後、シナプス連合の異常とされる PTSD の発症機構の解明などに役立つと考えられる。
著者
黒須 哲也
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

BCL6遺伝子の異常発現をもたらす染色体転座や発現調節領域の点突然変異は、悪性リンパ腫の遺伝子異常の中でも最も高頻度に認められ、悪性リンパ腫の発症や進展に重要な意義を有すると考えられている。悪性リンパ腫におけるBCL6遺伝子発現異常の意義を明らかにするため、リンパ腫細胞株にBCL6を誘導的に過剰発現する系を構築し検討を行った。BCL6の過剰発現は、血清除去や抗癌剤処理等の各種ストレスによる活性酸素種(ROS)産生の抑制と、ミトコンドリア膜電位(ΔΨ_m)低下の抑制とを介してアポトーシスを抑制する事を見いだした。この研究をさらに進める過程において、p38がVP16等の抗癌剤刺激により活性化され,G2/M期の進行に重要な役割を果たすCdc2の機能を抑制することで、G2期での細胞周期停止を誘導しアポトーシスを抑制する役割を悪性リンパ腫細胞において果たしていることを新たに見いだし発表した。p38は種々の腫瘍細胞において抗癌剤処理時に活性化され、細胞周期停止やアポトーシスの誘導制御に関与することが報告されており、予後や化学療法における反応性を予測できる可能性がある。またp38阻害剤およびウイルスベクター等を用いたp38を分子標的とした治療応用の可能性が示唆され今後さらに検討を行いたい。BCL6遺伝子に関しては、胚中心由来B細胞リンパ腫においてアセチル化されることにより不活化されることが認められ、悪性リンパ腫において脱アセチル化酵素阻害剤の使用が抗癌剤の感受性を高め治療効果の向上に応用可能であることが推察されている。
著者
奥貫 陽子
出版者
東京医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

Vogt-小柳-原田病において、末梢血リンパ球(PBMC)をコンカナバリンA刺激下で培養した際のIL-17産生量が多い患者は、発症時年齢が高く、視力回復に時間を要し、またステロイド薬総投与量が多いことが有意差を持って示された。このためPBMCのIL-17産生が多い患者の予後は低い患者と比較して予後が悪いことが推測され、PBMCのIL-17産生はVogt-小柳-原田病の治療効果を予測するマーカーとなる可能性が見いだされた。
著者
李 豪潤
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究17-19世紀の日中韓の儒学思想の展開を中心に、東アジア知識人の対外観および交流史を明らかにした研究である。殊に17-19世紀の日本・中国・韓国の知識人・民衆の交流および、書籍の移動に伴う知の連鎖・知のネットワークを通じて東アジア思想空間を総合的に研究するきわめて重要な位置を占めている。そして、本研究で試みた17-19世紀の中国の思想展開と朝鮮王朝・徳川思想の比較研究は、近代以降のそれぞれの歴史展開の分岐をより明確に理解する上でも重要な課題であろう。
著者
澤田 治
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、自然言語におけるスケール性の意味・機能上の役割について、意味論と語用論のインターフェースの観点から考察した。具体的には、程度副詞、比較表現、モーダル指示詞、指小シフト等のスケール現象に焦点を当て、真理条件的なスケール的意味と非真理条件的なスケール的意味(慣習的推意)の関係について考察した。本研究により、(i)スケール性は、狭義の意味論レベルのみならず、ポライトネス、発話モード、会話の優先性、感情表出等が関わった意味伝達(語用論)の次元においても重要な役割を果たしており、(ii) 意味論レベルのスケール構造と語用論レベルのスケール構造の間には平行性があるということが明らかになった。
著者
金澤 周作
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

18 世紀、19 世紀のイギリスで隆盛を極めたチャリティ活動は、20世紀初頭の「国家福祉」萌芽期においてもなお、困窮者救済に根本的な重要性を持ち続けた。本研究では、第一次世界大戦期に行われた「戦争チャリティ」の実態を実態的かつ言説的に分析することで、国家の積極的介入がこれまでになく強く求められていた戦時下にあってさえ、チャリティの伝統が強固に力を発揮し続けていたさまを明らかにすることができた。
著者
安福 悠
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ディオファントス幾何とは多変数多項式の整数解や有理数解について研究する分野で,ボエタ予想はその中での最重要予想の一つである.本研究では,ボエタ予想を射影空間のブローアップ上で新たに証明することに成功した.また,一つの写像を固定し,その多重合成により一つの点がどのように動かされていくか記録したものを軌道と言うが,軌道上の整数点があまりないこと,及び軌道と部分多様体の共通部分には,アーベル多様体の時と異なり規則性が皆無であることを証明した.
著者
井岡 邦仁
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ガンマ線バースト(以後GRB)はブラックホールの形成と関係する宇宙最大の爆発現象である。本研究では宇宙一明るいGRBがどのように光っているのか、という基本的な問いを理論的に考察した。その結果、(1)GRBが90%以上という異常に高い効率で光っていることが分かった。(2)高効率を実現するモデル(衝撃波加速効率の時間変化モデルや電子陽電子モデル)をいくつか提唱し、(3)高エネルギーガンマ線や宇宙線による検証法を提案した。(4)新たに発見された暗いGRBに対しても理論モデル(中性子星からのジェットモデル)を立て、高エネルギーニュートリノ、宇宙線の量を評価した。(5)衝撃波による粒子加速効率を測定する新しい方法(偏光を用いた方法)を提案した。