著者
松下 光範
出版者
日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、ユーザが多量のデータから有益な情報を見出すために行う探索的な分析行為を支援する技術の実現を目的としている。このような分析行為の支援の枠組みとして、ユーザが自然言語でシステムに質問し、システムが可視化表現(統計グラフ)でユーザに応答するインタラクションモデルを提案している。本年度は、(1)昨年度に試作したシステムを用い、被験者実験を行ってユーザの自己内省行為がシステムの操作にどのように現れるかにっいての分析、(2)テキスト情報と数値情報を併用した探索支援システムのモデル化と実装、を行った。(1)では、5人の被験者を対象として、10年分の売上高データの分析結果から今後の販売指針を立案するタスクを課し、その様子を観察した。その結果、被験者らは、探索過程で生じた疑問や得られた知見を振り返る際の手掛かりとして、付箋機能を用いてテキスト形式で外在化した表現だけでなく、オブジェクトの位置やサイズ変更といった操作で生じた視覚情報を用いられている様子が観察された。この結果から、外在化表現と内的資源(記憶)とを適切に対応させる枠組みが、探索的データ分析支援にとって重要であることが示唆される。また(2)に関しては、動向情報を対象とし、それに対するユーザの関心(e.g.,最近数ヶ月のガソリン価格の変化、ここ数年の携帯電話加入者数の推移)に応じて時系列数値情報を統計グラフ(折線グラフ)として描画し、その上に関連する言語情報をその内容に応じたアイコンの形式で協調的に提示する方法を提案した。このアイコンは言語情報へのポインタの役割も兼ねる。これにより、ユーザは描画されたグラフ自体を自分の知りたい情報の概観(要約)として利用できるだけでなく、興味を持った箇所についてどのようなことが述べられているかを背景となっている文書群にアクセスすることで参照できるようになっている。
著者
高橋 優
出版者
福島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、従来啓蒙主義へのアンチテーゼとみなされていたドイツ・ロマン主義を啓蒙主義的諸学問との関係で捉え直し、ドイツ・ロマン主義が啓蒙主義的学問を踏まえ、それを乗り越えて行く運動であることを明らかにする試みである。当該研究では主に、ノヴァーリス『ハインリヒ・フォン・オフターディンゲン』、フリードリヒ・シュレーゲル『ルツィンデ』、クレメンス・ブレンターノ『ゴドヴィ』、およびハインリヒ・フォン・クライストの短編を分析し、ロマン主義的「新しい神話」運動の変遷の過程を啓蒙主義的感覚論、歴史哲学、自然科学の文脈から捉え直した。
著者
中江 研
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

生物学者エルンスト・ヘッケルが生物もその原初は鉱物的結晶と同源のものから枝分かれしたものだとするモニスム(一元論)を唱えたことにより、「有機的」という言葉は生物的形態もしくは生物とのアナロジーを超え、水晶などの鉱物の形態に対しても適用されるようになる。その一例が表現主義に分類され鉱物結晶に建築の原型をみるベンツェル=ハブリックの言説に伺える。ル・コルビュジェは「輝く都市」において生物を機械としてとらえた生物学の書物からの引用を掲載しており、一方CIAMにおいて基本となる建築観でそのル・コルビュジエと論争したフーゴー・ヘーリングはオルガンハフトな建築、すなわち器官のような建築をめざすことを主張する。ヘーリングは1920年代初めごろまでは生物の形態を模倣して建築形態をかたちづくることを試みている。しかし1920年代後半から30年代初めごろにかけては、形態の問題としてではなく、人間をひとつの生物として見、その生存するための条件を追及するという計画原論的、環境工学的なものに立脚して制作をおこなうようになる。このころには生理学、衛生学、また心理学の発展にともない、建築においてもそれらの適用がもくろまれようになっていた。これはマルティン・ヴァグナーの言説にも見られる。1931年、ヴァグナーにより『成長する家』設計競技が企画され、彼はそれを取りまとめて1933年に出版している。その中では「住の生物学」という言葉も用いているが、それはひとことで言うならば、それをつかう人間というひとつの生物を安んじ、十分な休息を与え、さらに活力を与える住形式を、科学的にとらえること、といえよう。このように20世紀の初期においては生物学、とくに形態学、生態学、生理学などの発展、展開が、建築の志向するものにつよく影響を与えていると見ることができる。
著者
川原井 晋平
出版者
麻布大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

アレルギー性皮膚炎(AD)を自然発症する犬を対象に、ADの皮膚病変における皮膚前駆細胞の役割について基礎的研究を行った。まず、アレルギー性皮膚炎を発症した犬の病変部皮膚におけるCD34陽性細胞の局在を明らかにした。これら陽性細胞の性状をinvitroで解析するために、犬の骨髄よりCD34陽性造血幹細胞の分離を行った。これらの成果は、アレルギー性炎症における皮膚前駆細胞の病態を解析するうえで有用である。
著者
七谷 圭
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

Synechocystis sp.PCC6803は、比較的環境変化の大きい環境に適応して生育することができる。申請者は、Synechocystisの塩耐性獲得機構に関する研究を進める過程で、塩ストレスによってバイオフィルム形成が誘導されることを見出した。この現象は、バイオフィルム形成によって外部環境から隔離することで菌自身を保護していると推察された。そこで、シアノバクテリアのバイオフィルム生合成の分子メカニズムと塩耐性獲得機構を解明することを目的とした。1.バイオフィルム構成成分の分析、生合成酵素の探索:Synechocystis sp.PCC6803の形成するバイオフィルムを構成する多糖の分析を行った。80%EtOH抽出、アミラーゼ分解、KOH抽出、72%硫酸によるセルロース分解を行った後、硫酸フェノール法により全糖量を定量した。塩ストレス下では、エタノール80%EtOH画分、アミラーゼ画分において糖量が増加した。トリフルオロ酢酸で加水分解した後、産物の中性糖組成分析を行った。その結果、80%EtOH画分、アミラーゼ画分においてグルコース(Glc)が増加し、Glcがバイフィルムが主要な構成成分である可能性が示唆された。2.バイオフィルム形成を誘導する浸透圧センサー(Hik)の同定:バイオフィルム形成は塩ストレスによって誘導されることから、ヒスチジンキナーゼのバイオフィルム形成への関与を推定した。Synechocystis sp.PCC6803は、47のヒスチジンキナーゼを有する。申請者は、ヒスチジンキナーゼ破壊株の塩ストレス下でのバイオフィルム形成能を解析し、塩ストレスを感知しバイオフィルム形成を誘導するヒスチジンキナーゼの同定を試みた。その結果、破壊によりバイオフィルム形成量が増加する株と減少する株が得られ、正と負のレギュレーターの存在が示唆された。
著者
亀山 幸司
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

重金属汚染農地において栽培される農作物の重金属濃度を低く抑えるため,土壌から農作物への重金属の移行性を抑制することが重要である.バイオチャーは,重金属吸着能を有することが知られており,そのための資材として有望である.しかし,バイオチャーの理化学性は,原料等により異なる.そこで,原料の異なるバイオチャーのカドミウム汚染土壌への混入が農作物のカドミウム吸収に及ぼす影響について検討した.その結果,バイオチャー(特に,鶏糞を原料とするもの)をカドミウム汚染土壌に混入した場合,土壌のpH・リン酸含有量の増加によりカドミウムが不溶化し,農作物のカドミウム吸収が抑制されることが明らかとなった.
著者
松木 佐和子 渡邊 陽子 大野 泰之
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

アンケート調査から、クスサンは北海道全域および北東北3県に広く分布していることが明らかになった。クスサン幼虫の摂食試験により、これまで食樹として知られている他の広葉樹よりもウダイカンバを与えたクスサンの生存率・成長率が高かった。また、ウダイカンバ成木の春葉では幼虫の生育は良好だったが、成木の夏葉や稚樹葉では不良であった。以上のことから、北海道で見られるようなウダイカンバ成木の純林はクスサン被害のリスクが高い森林だと言える。東北地方でも不成績造林地などに侵入したウダイカンバの蓄積や林齢は増しており、そのような場所では注意を要する。
著者
加藤 貴昭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の主題は、主に野球の打撃動作に注目し、競技者の知覚スキルについて実験的検討を行うとともに、熟達化についてdeliberate practiceに関する調査を行うことにより、熟練したスキルを支えるメカニズムを検証することである。具体的には、蔽技術を用いた視覚刺激に対する打者の知覚スキル、打撃動作における知覚-行為カップリング、スキルの熟練度と練習の微細構造の関係について検討を行った。
著者
山口 健一
出版者
福山市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究期間内において、対象事例である「東九条マダン」への継続的な参加観察を実施するとともに、調査対象者へのインタビューを実施した。また対象事例の思想的源泉をなす「在日朝鮮人の民衆文化運動」について文献収集を行った。さらに対象事例の実践的源流の一つである「ハンマダン」の調査と分析を行った。本研究の結果、次の成果を得た。ハンマダンがその民族文化の中心的な役割を担う東九条マダンは、在日朝鮮人の民衆文化運動の思想との連続性を有している。その実践は「存在の政治」と呼べるものであるとともに、東九条マダンの担い手の人間関係がそれを促進している。
著者
Son Suyoung 栃原 裕 Lee Joo-Young 村木 里志
出版者
独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

最近、災害現場などで防護服着用は不可欠であるが、防護服着用は着用者に動作性の低下をまねくことが知られている。各種防護服の異なるデザインや重量、着用者の運動能力、労働現場の環境温度を考慮する防護服着用時の動作性標準評価テストが必要と考えられ、防護服着用時の動作性を評価できる標準テスト方法の提案を着想することに至った。本研究では、様々な防護服着用による動作性を検討し、防護服着用時の動作性を評価できる基準値を含む標準評価テスト方法を提案することを目的とした。各種防護服着用時の動作性の検討を行うため、 個人装備着用時の関節可動域、作業及び運動能力、バランス能力などの測定を行った。
著者
鴻野 わか菜
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,20世紀ロシアにおける文学と文化(主に映画と美術)の相関性を例示し,分析することを目的として,ソ連地下芸術の一派であるモスクワ・コンセプチュアリズム美術(イリヤ・カバコフ),20世紀初頭のロシア象徴主義文学(アンドレイ・ベールイ),現代映画,現代詩について,文化史的な観点から分析を行った。研究成果の一部は,日本語とロシア語で,国内外の学術誌,書籍,研究会等で発表された。
著者
堀江 竜弥
出版者
仙台大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

平成28年度より継続してリハビリテーションプログラムと介入症例が確保できる施設について検討した。リハビリテーションプログラムに関しては、維持期における機能訓練が主体となり排尿動作につながるプログラムの構築に関する文献を検討したが見当らなかった。よって、新たにプログラム作成を検討しなければならないが、排尿習慣化訓練に加えて、骨盤底筋体操を組み入れたプログラム、なおかつ臥位および座位で実施可能なが有益であると考えている。これにより頻尿や過活動膀胱といった下部尿路症状の軽減につながるのではないかと考えた。しかし、脳卒中に高頻度で確認される切迫性尿失禁についての効果については不明確であるため、症状に応じた介入プログラムを検討する必要がある。これはプログラムすべてに組み入れるべきか、症状に応じ個別性を重視したものが有益なのかも含めて検討が必要と考えた。これまで、既存の排尿支援方法に関する文献収集を行い、プログラムに関しての情報収集を行っているが、欧米をはじめ諸外国で取り組まれてる実践例を踏まえ、有効な方法について検討している。介入症例の確保できる施設の検討であるが、交渉している医療機関からの明確な承認が得られていない現状にある。排尿支援の重要性を伝えながら少数例でも確保できるような交渉、および介護保険施設での介入が可能かどうか、引き続き検討していく予定である。
著者
折茂 慎一
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、制御ミリングプロセスにより炭素系材料(特にグラファイト)に対して高濃度の欠陥構造を導入し、水素を高効率で貯蔵・輸送するための新規な炭素系材料の設計指針を得ることを目的とする。これまで得られた研究成果(即ち、欠陥構造の導入過程では高密度の刃状転位が観察できるとともにσ^*結合の減衰などの電子構造変調も確認できたこと、この欠陥構造の発達に伴って水素貯蔵機能が増大してCH_<0.95>にも達すること、さらには「弱い化学吸着状態」も含めた少なくとも2種類の水素貯蔵サイトがあること、など)をもとにして、さらに詳細かつ実用性を視野に入れた研究も進めた。その結果、水素放出特性を調べるための昇温脱離質量数分析では、水素の放出反応が600K及び950Kから始まるふたつのピークをもって進行することが解明された。重要な知見は、この第1ピークがカーボンナノチューブに代表される毛細管(キャピラリー)を有した炭素系材料からの水素放出と同様の温度である、ということである。第2ピークは、試料の再結晶化に関係していることも見出された。すなわち、この第2ピークの温度以下では、試料中には水素貯蔵に適した欠陥構造が維持されていると考えられる。また、グラファイト以外の類似の物質系として六方晶窒化ホウ素(h-BN)を選定したところ、最大水素量はグラファイトの場合の約35%にとどまるなど、水素貯蔵機能が「局所」電子構造の相違に起因することなども新たに判明した。これら成果は、次世代水素貯蔵媒体としての新規な炭素系材料を開発するための設計指針として、国内外で注目されている。
著者
武田 将明
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

十八世紀イギリスの小説では作者が自らの姿を隠すことでリアリティを演出していた。しかし十九世紀には作者が作品の主権者として振舞うことが社会的に許容されるようになる。ところが二十世紀に入ると、主権者としての政治的な作者だけではなく、身体をもった自然的な作者もまた小説の前面に現れるようになる。本研究は、作者の身体の表象に注目して近代小説、とりわけ18世紀のイギリス小説の特徴を再検討することにより、イギリス近代小説史と小説の起源をめぐる研究に新たな局面を切り開くことを目指した。
著者
丸山 智
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

唾液腺多形性腺腫の間質表現は多彩であるが、乏血管性であることも特徴である。したがって間質をふくめて多形性腺腫組織は低酸素状態であるという仮説をたて、これを証明するために多形性腺腫由来細胞の増殖における低酸素依存性を試験管内で検討した。その結果、多形性腺腫由来細胞では、低酸素下でのHIF-1α蛋白質の高発現およびVHL遺伝子・蛋白質の低発現によりHIF-1αの分解抑制機構がはたらいており、低酸素状態で核移行したHIF-1αによりVEGFの高発現レベルを維持されることが示された。試験管内でえられた以上の結果は、ヌードマウス移植腫瘍組織・ヒト多形性腺腫組織手術材料の生体組織でも追認され、ヌードマウス背部皮下移植腫瘍内酸素分圧は周囲皮下組織に比して有意に低いことも確認された。以上の機序によって、低酸素環境で増殖さらには転移形質が誘導されている可能性が示唆された。
著者
洪 性俊
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,慢性化している都市高速道路渋滞の緩和対策として,交通状況に応じてJCT合流部の車線数を動的に変更する動的可変チャンネリゼーションを提案し,交通シミュレーションを利用したその効果の評価手法の提案,首都高速道路ネットワークを対象としたケーススタディ,ドライビングシミュレータを利用した実験によるその安全性の評価,動的可変チャンネリゼーションの実用化に向けた課題の整理を行った.
著者
嶋田 由紀
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、ドイツ統一以降のテレビ・映画のエイズ予防啓発広告におけるセクシュアリティを表象分析した結果、エイズ予防としての性交時のコンドームの装着の奨励というメッセージが旧東西ドイツ時代のタブーや性規範を乗り越える形で映像化され、発信されていることが明らかになった。エイズ表象は、単なる衛生政策としてではなく、社会の性規範とその変遷から生み出されるきわめて生政治的なものとして考察される必要性を浮き彫りにした。
著者
金澤 悠介
出版者
立教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、コモンズの管理のありかたとそれに影響を及ぼす要因を計量的な手法により明らかにすることをつうじて、既存のコモンズ研究を刷新するような知見を獲得することである。『昭和49年全国山林原野入会林野慣行調査資料』に記載されている入会林野の事例をデータベース化し、計量分析を行ったところ、以下のような知見が得られた。(I)当時の入会林野の管理形態は、集落直轄型・権利流通型・半私有化型・古典的利用型の4つの類型に分類できる。(II)コモンズの管理形態には、人口構成や産業構成の変化といった社会変動が大きな影響を与えていた。
著者
山口 晋
出版者
目白大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,①地方都市の若者文化,とりわけ音楽文化と地域社会との関係,②大都市周辺地域における若者の転出入行動を場所感覚の観点から探求した。①については,フリーの野外音楽フェスティバルでは,日本最大規模の「上田ジョイント」の盛衰について,「上田ジョイント」の制度化と,オーガナイザーの「サブカルチャーからの卒業」をキー概念に分析した。②については,埼玉県戸田市における,転出入者の行動を調査票調査から明らかにした。その際には,転出入行動が顕著であったのが若年層であり,転出入先が戸田市に隣接する市に多いことが明らかになった。
著者
吉松 梓 坂本 昭裕 渡邉 仁
出版者
駿河台大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、悩みを抱える思春期の青少年を対象に長期冒険キャンプを実践し、「身体」に着目してその意味を探ることを目的とした。研究1の質的分析の結果、「心と身体の関係性が変化する」プロセスとして「混沌とした心と身体」「心と身体のつながりや限界に気付く」「身体を入口として自分に向き合う」「自分の身体に自信を持つ」4段階が示された。また「心と身体の伴走者としてのスタッフ」「冒険プログラム特有の仲間関係を体験する」「原始的な自然の中でリアルな感情を抱く」など他者や環境との相互作用が影響していることが明らかになった。研究2の事例研究では、キャンプの体験が個性化の過程として意味があることが示唆された。