著者
尾谷 昌則
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、近年の日本語における文法変化について類推ネットワークモデルの観点から分析するため、昭和中期から後期にかけて出版された小説(主に文庫本、約700冊)をスキャンし、テキスト化して簡易コーパスを作成した。主に書き言葉であったため、口語の変化を研究するに十分なデータが得られたわけではなかったが、国会会議録検索システムなども併用しながら、接続助詞から接続詞化した「なので」や、「V+ません」から「V+ナイデス」への変化を中心に、様々な事例を研究した。
著者
保田 隆明
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

わが国におけるエクイティファイナンスの現状を実正分析を通じて行った。第三者割当増資、公募増資に関してそれぞれ案件の発表時の株式市場の反応を分析し、市場から評価される案件の系類を明らかにした。また、第三者割当増資、公募増資実施後の中長期の収益分析、株価パフォーマンス分析をあわせて実施し、事後的にも評価されるエクイティファイナンスのタイプを明らかにした。分析結果を要約すると、資金使途が借入金の返済ではない案件、特に第三者割当増資の場合は増資の引き受けをする株主と発行体の関係性、シナジーの有無が重要であることが分かった。
著者
田中 源吾
出版者
群馬県立自然史博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

カンブリア紀の地層は日本に露出しておらず、海外調査に重点をおいて研究を行った。スウェーデン南部のカンブリア紀の地層が露出する地域を調査し、そこから眼の細部まで3次元的に保存された、三葉虫をはじめとした微小(1mm未満)な節足動物化石を発見した。電子顕微鏡を用いた調査の結果、複眼やノープリウス眼様の眼、1つの単眼様の眼など、様々な眼をもった節足動物が古生代の初めのカンブリア紀にはすでに地球上に現れていたことが初めて明らかになった。
著者
山内 慎子 MENG Xin
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究では、中国において農村出身の労働者が都市へ移住することによりその子供たちの学力や健康にどのような影響が生じるかを分析した。都市へ移住する安価な労働力は中国の急速な経済成長を支えてきたが、その裏で農村に残った子供は親と離れることから生じる問題を抱え、学力低下や健康状態の悪化が懸念されていた。我々の独自のパネルデータを基にした実証分析を行い、親の出稼ぎ期間が長いほど子供の身長・体重や学業成績が低まる傾向があることを示した。またこうした家庭では、子供が家で勉強時間がとれていなかったり同じ学年を複数回履修していることも見て取れた。これらの結果は数々の学会で報告され国際的に広く発信された。
著者
伊藤 敏彦
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は音声インターフェイスにおいて、対話のリズムが、ユーザの快適性や安全性にどれほどの影響を与えるか明らかにし、これらの要素を音声インターフェイスに導入するための新たな枠組みを提案することである。そこで、これらに関する対話リズムを生成するためのモデル化のさらなる改良と、音声対話システムへの実装、システム処理速度向上などを行った。結果、これまでの音声対話システムに比べ、人間らしさ、安心感などの評価を上げることができたが、制作システムの処理速度、タイミング認識精度、音声認識・言語理解精度などの不完全さにより、人間と同等の評価まで上げることはできなかった。
著者
渋谷 真樹
出版者
奈良教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

2007年8月のスイス調査では、日本語学校(教室)2箇所にて、継承語としての日本語教育を参観した。また、国際児7人、母親6人、教師5人に対して、日本語を中心とした日本文化への意識について、聞き取りをした。2008年2月のスイス調査では、日本語学校(教室)2箇所もて、継承語としての日本語教育を参観した。また、国際児7人、母親・父親4人、教師2人に対して、日本語を中心とした日本文化への意識について、聞き取りをした。また、日糸国際児が主催するコミュニティについて調査した。これらの調査から、1 国際結婚をしてスイスで子育てをしている日本人女性の中には、自分の子どもが日本語を習得することを希望する人々が少なからず存在する。その希望は時代によって異なり、ここ20年で日本語教育熱が増加・一般化している。2 スイスの日糸国際児が日本語学習の機会が得かられるか否かは、居住地域(日本人が多く住む都会の方が得られやすい)や、親が子育てに割ける時間(共働きの場合は得にくい)、家族の日本語学習への姿勢(非日本人の親やその家族が協力的な場合は得られやすい)などに影響される。3 スイスの都市部には、継承語としての日本語教育の場が複数存在し、国際児を中心とした子どもの実態に合わせた教育が行われている。最長のものでは、20年以上の歴史をもつ。4 聞き取り調査を行った国際児は、子ども期に日糸であことをからかわれる等した者もいたが、おおかた自分と日本とのつながりに対して肯定的であった。子ども期に日本語学校・教室で学んだ者は、当時は日本語学習を面倒または負担に感じていたと語る者が多かったが、現時点では、日本語能力獲得できたことを高く評価していた。一方、日本語を習得しなかった国際児は、習得した方がよかった、これから習得したい、と語る者が多く、現に成人して学習する者も複数いた。
著者
掛谷 英紀
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究プロジェクトにおいては、立体視における眼の疲労や違和感の主原因とされる輻輳調節矛盾を解消する方法として、多視点方式とエッジのボリューム方式を組み合わせた立体ディスプレイと、シリンダーレンズを用いた方式の2方式について研究を行うことを計画した。前者については、昨年度、35視点の色情報提示用多視点ディスプレイと8枚のモノクロ液晶からなるエッジ情報提示用ボリュームディスプレイを組み合わせた17インチ相当の実機を製作した。しかし、この方式では、モノクロ液晶パネルの増加に従い画質劣化が見られ、現状のディスプレイ材料を使うと、それ以上の枚数増加は難しいことが分かった。そこで、今年度は、色情報・エッジ情報を分離せず、ボリュームディスプレイそのものを多視点化する方法として、レンズピッチの粗いインテグラルイメジング(粗インテグラルイメジング)の表示パネルを多層化する手法を提案し、それを実装した。この実装には透過性のフルカラー多層パネルが必要であり、その電子的実現は現時点では難しいため、透明フィルムへの印刷による静止画方式の実装となっている。実機製作の結果、極めて高画質の立体像が実現されることが確認された。多層式電子ディスプレイが実現されれば、本研究で提案した光学系は、次世代の立体表示方式の極めて有力なオプションになると期待される。一方、後者のシリンダーレンズを用いた輻輳調節矛盾解消法にっいては、高周波パターンの傾き、コントラスト、両眼視差提示の有無など、種々の条件にてレフラクトメータを用いた実験を行い、生理データの蓄積を行った。ただ、これまでの実験結果には個人差も多くあり、今後さらなる実験・解析を要する状況にある。
著者
大村 吉幸
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

人の手指運動の巧みさの仕組みの解明のために、本研究では、手になじむ触覚センサグローブの開発を行った。独自の小型圧力センサをフレキシブル基板に埋め込む技術を開発し、手になじむ触覚グローブを構成した。また、手指の運動を計測するためのモーションキャプチャ装置を独自に開発し、組み合わせ、日常物体を操作するときの、手指の接触と運動の同時計測を行い、解析を行った。以上の成果により人の手指運動の巧みさを調べる基盤技術の進歩に寄与した。
著者
中道 治久
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

御嶽山では2007年3月下旬に小噴火がおこった.小噴火に至るまでの山頂直下の地震活動を調べ,山頂直下地震は深さ0.5-2.0 kmで発生していたことが分かった.また,御嶽山にて発生した超長周期地震をモーメントテンソル・インバージョン解析した.その結果,超長周期地震の震源は山頂直下の海抜上600 mに決まり,そのメカニズムは傾斜した開口クラックであった.そして,マグマ貫入により地下水が急激に熱せられたことによって,超長周期地震が発生したと考察した.さらに,2007年3月の小噴火前後のS波偏向異方性の時空間変化を調べたが,マグマの貫入に伴う応力場変化は検出出来なかった.
著者
今 孝悦
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、河口域において、外洋及び河川から運ばれる流入資源が、その場の生物群集にどの程度寄与しているのかを検討した。その結果、河口域の生物群集は海洋由来と河川由来の双方から流入する餌資源に依存し、両者の資源量が豊富な河口域には多様な生物群集が形成されていた。河口域に形成される生物群集には有用種が多数含まれ、従って、それらの生物資源の持続的利用には、海洋と河川の両者の繋がりが重要であることが示唆された。
著者
簔原 俊洋
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

初年度の主たる研究実績は、海外における資料調査・収集であった。必要な資料が膨大であることにくわえ、その所在地が分散しているため、まず研究の中心を成す通信諜報(SIGINT)関係の文書を渉猟することにした。その結果、まずメリーランド州の国立公文書館(National Archives II)とヴァージニア州の国家安全保障局資料館(National Security Agency Library)に二カ所にて所蔵されている資料を収集することができた。国立公文書館では、国務省(RG59)、及び国家安全保障局(RG457)の資料を中心に調査を行ったが、その結果、アメリカの通信諜報の歴史や対日諜報の実態について多くを明らかにすることができた。他方、国家安全保障局の資料館では、部分的に秘密指定が解除されているTarget Intelligence Committee (TICOM)の資料、及び解読作業に携わった主要関係者のオーラル・ヒストリー(William Friedman, Frank Rowlett, Laurance Safford)のコレクションを調査し、必要な部分を入手することができた。なお、こうした調査の研究成果は学術論文としてまとめて公表する段階には到達していないが、一般の関心が高いため、2005年1月に、二回に渡って『産経新聞』にて新たに明らかとなった米国の対日通信諜報の実態に関する記事を掲載した。くわえて、この夏には、ある歴史雑誌にも記事が掲載される予定となっている。秋からは、米国に次いで通信諜報関係の資料が豊富であるイギリスにおける資料収集にシフトし、英国立公文書館(旧Public Records Office、現National Archives)にて「対日暗号情報」(通称、BJシリーズ)の調査を行った。しかし、より肝心なブレッチリー・パーク(Bletchley Park)にある国立暗号資料センター(National Codes Centre)での調査はまだ手付かずの状況であり、来年度に持ち越されることになる。なお、2月と3月には、集中して研究報告の機会に恵まれ、リーズ、ケンブリッジ、エジンバラ、アバディーン、ノッティングハムの各大学にて研究の途中経過について公表した。
著者
足立 崇
出版者
大阪産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

書院志や地方志に見られる詩や文をとおして、嶽麓書院と背後の嶽麓山との関係について考察した。嶽麓山に登る文人たちは、飛来石において聖なる衡山を拝するとともにその風景によって開放されていた。また禹碑の前に立っては、いにしえの聖帝に想いをはせていた。文人たちは嶽麓山において、空間的、時間的に遠くの聖なるものを自らの近くに感じていたといえる。嶽麓山はそのように聖なるものを分有する山として、嶽麓書院の背後に意味を与えていたことを明らかにした。
著者
鈴木 郁郎
出版者
東京工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脳組織モデルのin vitro再構成技術として、PDMSマイクロチャンバにより細胞体位置を制御し、コラーゲン繊維配向技術により神経突起の方向を制御した3次元培養技術を開発した。構築した3次元脳組織モデルは、生体組織と同等の細胞密度および活動電位の伝播スピードを有し、顕著な薬剤応答を示すことがわかった。また、カーボンナノチューブ微小平面多電極アレイを開発し、マウス線条体脳スライスよりドーパミンのリアルタイム検出に成功した。開発した脳組織モデルの3次元培養技術および神経伝達のリアルタイム計測技術は、創薬スクリーニングにおける評価系としての応用が期待できる。
著者
大木 直子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

調査1年目として主に、選挙区定数ごとの女性の政治参加の実態を調査し、定数の増減と女性の立候補、当選の状況を考察した。また、調査2年目として主に、女性候補者リクルートメントに関する聞き取り調査を実施した。それらの調査の結果、①定数が大きければ大きいほど、女性の当選率は上昇傾向にあること、②選挙区定数が5以上の場合、全候補者に占める女性割合はほとんど変化がないこと、③政令指定都市と東京23区ではその他の自治体と比べて全候補者に占める女性割合が高いものの、当選率はより低いこと、④都道府県議選への立候補には所属政党の有無や選挙区内の候補者選考過程におけるジェンダー・バイアスが影響することを確認した。
著者
神保 太樹
出版者
星薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、我が国では認知症の治療効果をはじめとして、匂いの持つ機能性(嗅ぐことによって心身に与えられる影響)に注目が集まっています。しかし、特に脳に対する機能性についてメディア等で広く知られている状態にも関わらず、匂いが脳のどのような部位に作用するかや、個々人の体質によって効果に差があるのかははっきりと分かっていません。そこで、脳機能イメージング技術を用いて匂いが脳のどのような場所に影響を与えるかを可視化しました。さらに匂いによく触れる機会がある人について、匂いが脳に与える影響が異なることも観察しました。この結果を活かし、匂いによる機能性がより有益かつ効果的に利用される為の一助となれば幸いです。
著者
松井 龍之介 佃 和弥
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

熱硬化型のポリジメチルシロキサンをマトリクスとし、ネマチック液晶E7を分散することで5ミクロン径の液晶マイクロドロップレットを作製し、レーザー光照射によるフォトニックナノジェットの生成と外部電界による液晶分子の再配向に基づく動的制御を試みた。自作のレーザー走査型共焦点顕微光学系によりフォトニックナノジェットの観測に成功した。電界印加によるフォトニックナノジェットの動的制御も確認した。金属ナノ粒子を分散させた液晶によるメタマテリアルにおいて見られる特異な表面波についての理論的な解析についても併せて進めた。
著者
大庭 真人
出版者
東京工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「棒読み現象」を指標とし、構音障害のない意味痴呆患者に対して、検証項目となることを確認した。専門用語の略語の説明文を学生とそれらを日常的に用いる言語聴覚士とにそれぞれ読み上げてもらい分析を行った。当初想定された基本周波数の単純化は観察されなかった反面、休止の挿入や特定文節の話速低下などに特徴が観られた。こうした読み上げは円滑な読み上げからの逸脱であり掘り下げ検査への適応可能性はあるが、失語症患者の呈する障害により有用性を検討する必要がある。
著者
高丸 圭一
出版者
宇都宮共和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,無アクセント地域である北関東,特に栃木県を対象として,自由会話音声を収集し,ピッチパタンの基礎分析を行った上で,現在のアクセントとイントネーションの様態について分析を行った。無アクセント方言の特徴的なイントネーションである句末・文末における尻上がり調の出現位置の傾向は標準語と大きな違いがなく,尻上がり調の出現頻度は標準語の上昇調・昇降調の出現位置と比べて顕著に多いとはいえないことを指摘した。文末のピッチ上昇の度合いを変化させた加工音声による聴取実験により,無アクセント方言の尻上がり調は標準語の上昇調と比べて,上昇の度合いが急峻であることが明らかになった。また,単語アクセントと若年層が用いる同意要求表現「じゃね?」先行部のアクセントについての調査を行った。単語アクセントは若年層の約90%が標準語化している一方,「じゃね?」の先行部は80%以上が平板化しており,当該地域での近年のアクセントの変容が明らかになった。
著者
平安 恒幸
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、免疫レセプターと様々な病原体との相互作用を網羅的に調べた。その結果、活性化レセプターLILRA2が病原微生物によって破壊された抗体を認識し病原微生物に対して生体防御を行っていることが明らかとなった。この結果から、病原微生物は宿主の免疫から逃れるために様々な免疫逃避機構を進化させてきた一方で、宿主側は病原微生物による免疫逃避機構を検出し、生体防御に働くように進化して病原微生物に対抗してきたことが考えられる。
著者
池田 昌之
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

国内外の深海層や陸成層の地質調査と化学分析、および数値計算を基に、中生代の天文学的周期が気候変化を介して全球の大陸風化や炭素循環に影響していたことを明らかにしました。天文学的周期の影響が増幅した原因として、当時存在した超大陸パンゲアで発生した大規模な大気循環「メガ・モンスーン」が寄与した可能性を指摘しました。この結果は、温暖な中生代における地球システムの応答を解明する上で重要な成果であると言えます。