著者
松井 藤五郎
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,強化学習において利益率の複利効果を最大化するために複利型強化学習という新しい強化学習の枠組みを開発した.複利型強化学習を国債銘柄選択,国債取引,株式取引,n本腕バンディット,ブラックジャックなどに応用し,複利型強化学習がファイナンスやギャンブルのドメインに有効であることを確認した.また,複利型強化学習で導入された投資比率パラメーターをオンライン勾配法によって最適化する手法を開発した.
著者
阪間 稔
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の研究目的は,中性子不足アクチノイド核種領域の特異な壊変形式である電子捕獲遅延核分裂(ECDF ; Electron Capture Delayed Fission)と,その微弱なα壊変を詳細に調べることである.この研究から得られる実験データは,地球上にこれまでウランより重い元素が存在しない理由を明らかにするだけでなく,超アクチノイド元素の原子核質量値を実験的に与え,不安定核種領域における原子核の安定性に関する新しい知見を与えてくれる.本年度は,当該研究題目の最終年度にあたる.本研究の初年度(平成17年度)から引き続き,これまでECDFと微弱なα線を高効率かつ,同時計数測定するための特殊な測定装置システムの開発に継続的に着手してきた.これまでの研究概要として,初年度では,本研究の特性上,大型加速器施設(日本原子力研究開発機構タンデム加速器や,理化学研究所AVFサイクロトロンなど)を使用するので,個々の実験期間で各々の施設における固有のデータ収集系システムを使用するしかなかった.しかしながら,当該研究費により,我々独自のスタンドアロン形式によるデータ収集系システム(マルチイベント解析モジュールの岩通計測A3100システム)を整備することができ,各実験でのオンラインデータ間の整合性を一元化し,迅速かつ正確に解析することができるようになった.本年度(平成18年度)では,ECDF測定装置システムに組み込む予定であったECDF現象に伴う特性X線及びγ線を検出するための高純度ゲルマニウム半導体検出器を整備した.そこで,上記のデータ収集系システムとの動作試験を繰り返し行い,十分にオンライン実験に対応できることを確認した.今回,研究計画の予定であったECDF現象に伴う核分裂片や,その現象後の微弱なα線検出のためのSi表面障壁型半導体検出器の整備で,若干の不備が生じ,この点について計画通りに進めることができなかった.今後も引き続き,この問題点について改良・改善していく予定である.本研究と密接に関連して継続的に行っている共同研究である日本原子力研究開発機構の浅井氏らとのオンライン実験(^<259>Noのα-γ核分光実験)に参加した.この実験により,微弱なα線測定方法について議論を交わし,^<259>Noの基底状態の中性子軌道配位を決定することができた.
著者
竹内 聖悟
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

将棋や囲碁などのゲームではゲーム後にプレイヤ同士で「感想戦」と呼ばれるゲーム内容の検討を行い、実力向上に役立てる。ゲームAIにおいては、このような「感想戦」が行われることはない。本研究では人間が行う「感想戦」に着目し、複数のゲームAIによるゲームの検討とそれによる棋力向上を目的とした。本研究の主な成果の一つとして、あるゲームAIに他のゲームAIが助言を与える手法を提案し、それによる棋力向上を示したことが挙げられる。
著者
小西 克巳
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

厳密解の許容誤差を考慮した制御系設計のためのBMI問題の厳密解法の研究を行った。厳密解の許容誤差と制御対象のモデル誤差の関係を導くために、平成15年度は具体例として2自由度PID制御系設計問題を扱った。一般的なBMI問題を解くには、その問題から派生するBMI最大固有値最小化問題を繰り返して解く必要がある。BMI問題の解を固定し、BMI最大固有値最小化問題を解いたとき、得られた解が0以下であれば、元のBMI問題に解が存在することがわかる。ことのき、BMI最大固有値最小化問題の最適解が0以下出なく、ある値ε(<0)以下であるようにとけば、BMI問題の許容誤差をある程度大きくしても良い解が得られることがわかった。また、このようにして得られた解の精度はBMI問題のラグランジュ緩和問題を導くことである程度見積もれることもわかった。しかし、一般的な厳密解の許容誤差と制御対象のモデル誤差の関係を導くには至らなかった。これは今後の課題である。本研究では多くのBMI問題を解く必要があったため、本研究に付随する研究として並列分枝限定法の研究を行い、並列分枝限定法を実装した。これにより複数のPCを用いて並列にBMI問題が解けるようになった。8台のPCで解いた場合、1台のPCで解くよりも5倍程度の速さで解ける。この並列分枝限定法の実装により、BMI問題の厳密解法の研究効率の向上が期待される。
著者
浅野 泰昌 大久保 一康 衣斐 美和子 栗田 正明 本田 誠 中村 美恵 管 麻未 幾田 美恵子 松村 歩実 川田 陵
出版者
くらしき作陽大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

人形劇と幼児は,「無生物に対する生命感の付与と感受」という本質的要素を共有しているために親和性が高く,人形劇は幼児の情操教育に有効であると考えられる。これに基づき,人形劇専門家ならびに保育者を志望する学生と協働し,人形劇表現の特質をふまえた児童文化財を制作し,地域公演を通した幼児の情操教育を展開した。学生集団による部活動の形態を採用し,組織運営や制作・練習・上演の計画と実施など,「実体験を通した学び」や「教えることによる学び」によって自己学習力のある創造的集団の形成を試み,保育者養成に取り組んだ。参加学生は,児童文化財の制作と上演の知識と技術や,その基礎となる思考力・判断力・行動力・コミュニケーション力を培い,総合的な実践力を高めたと考えられる。
著者
千葉 慶
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、石坂洋次郎原作の映画作品を主な対象として、戦後日本映画において「民主主義」がどのように表現されたのか。そして、時代的変化に応じて、その表現がいかに変化していったのかを考察した。本研究では、石坂洋次郎映画における「民主主義」表現の原則を明らかにした。それは、第一に自己決定権の拡張であり、第二にその結果必然的に生じる他者との軋轢を解消する手段として暴力ではなく対話の精神で応じることである。時代的変化によって後者はだんだん曖昧化してゆくものの、前者が維持されていたことが明らかとなった。
著者
小田 久美子
出版者
ノートルダム清心女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、輪郭線を利用した活動の開発を目指し、臨床応用するための検証を行った。まず幼稚園教諭と研究者との連携により造形プログラムを計画立案・実施し、次にデータ整理と分析を行った。結果、鑑賞活動と表現活動が自然に融合することにより子どもの絵画表現への内発性に刺激を与え、その活性化を促す傾向が見られると判断された。現在まで特に教育的な価値が与えられていなかったが普及率は高く、子どもに好まれる塗り絵遊びに着目し、輪郭線を取り入れた教育実践を検討することは、幼児教育・美術教育において未開拓の領域であると言える。したがって教育現場にとって、新しい指導援助の方法として大きな意味を持ち得ると考えられる。
著者
永田 暢子
出版者
埼玉医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、急性白血病患者の抱く希望の内容、希望に作用する要因および希望を支える看護師の関わり方を明らかにすることである。初発の急性白血病患者に対して半構成的質問紙を用いた面接調査を行った。急性白血病患者にとって重要な希望は病気の治癒であった。患者は不安を抱えつつも治療を重ねることで自分なりの対処方法を獲得し、治癒へ向かっていることを実感していた。看護師は、患者が安楽に治療を受けられるよう環境調整を行う必要がある。
著者
山肩 洋子
出版者
独立行政法人情報通信研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

一般の調理者が自作の料理のレシピを作成し,WEBを通じて公開する例が急増している。料理法は言葉だけで説明するのは難しいので,一般の調理者にもテレビの料理番組のような教示コンテンツを作れるよう,調理中にエージェントが調理者と対話することで音声解説を加えたり,映像編集を行うシステムの実現をめざした。本年度は主に調理映像とレシピとの対応付けに注目し,(i)調理開始から終了までの一連の調理映像をレシピと対応付ける仕組みと,(ii)調理者の手の動きから食材の変遷を獲得する仕組みについて研究を行った。まず(i)については,調理の過程をフローグラフで表現する方法を利用し,映像認識結果とレシピをグラフレベルで対応付けることで,映像認識にある程度誤りが発生しても最適なマッチングを選ぶことで正しく対応付けることができることを示した。次に(ii)については,(i)において食材の変遷を認識することが重要であることが示されたことから,調理台を上方から撮影した映像より各食材を追跡することを考えた。食材は見た目が多様で,加工を受けて変化し,かつ混ぜられることでその個数も変わるため,視覚的特徴のみによる追跡は困難である。しかし食材の変化にはかならず調理者が介在することから,調理者の手の動きを抽出することで変化した食材を特定し,食材の追跡を行う仕組みを提案した。以上のような情報システムによる調理活動支援の試みは,日々の食事管理により病気を未然に防ぐことの必要性が叫ばれている昨今では,より重要なものとなっている。そこで京都大学教授の美濃導彦を中心に,電子情報通信学会の第三種研究会として「料理メディア研究会」を発足し,申請者もその幹事補佐として,調理支援に限らず健康医学や食育などの幅広い観点から人間の食を支援する情報システムのありかたを議論する活動を行ったことも本研究の成果の一つである。
著者
酒井 智宏
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「文脈から独立した言語的意味」という概念が自然言語の意味論から除去されるべきであることを示した。トートロジー (「猫は猫だ」) 分析で用いられる「等質化」概念 (「どの猫も似たり寄ったりだ」) に見られる理論的混乱は、語 (「猫」) の意味の共有という想定を放棄すれば解消される。矛盾文 (「ねずみを捕らない猫は猫ではない」) に見られる規範性解釈 (「ねずみを捕らない猫は猫と呼ばれるべきではない」) は、複数の異なる言語システムの対立から生じる。
著者
上山 一
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、GCC諸国におけるイスラム銀行の費用構造について、同地域の銀行部門に共通して見られる特徴との関連において実証的に分析することを目的とする。分析結果から、通常の銀行よりも経営規模の小さかったイスラム銀行は、経営資源の拡大を通じて、イスラム金融による資金運用業務に積極的に取り組んできた。しかし、GCC諸国のイスラム銀行部門では、費用面で、規模の経済性や範囲の経済性を観察できなかった。これら背景については、イスラム銀行の経営規模が小さく、規模の経済を享受できる段階に達していないこと、そしてGCC諸国の金融制度がイスラム銀行による業務多角化の取組に対して負の影響を与えた可能性が挙げられる。
著者
西川 完途
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中国大陸のサンショウウオ科およびイモリ科の種多様性の評価と系統進化を探るため、中華人民共和国の四川省、浙江省、河南省、福建省、広西チワン族自治区において野外調査を行い、得られた標本や組織サンプルから形態と分子に基づく系統分類学的な解析を行った。その結果、中国における両科の分類には多くの問題があり、複数の同物異名と新種が発見された。また、多くの生物地理学的な知見が新たに得られた。
著者
佐々木 恵
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,精神健康に関して専門的援助を受ける際の促進要因・阻害要因を特定し,その関連要因を明らかとすることを目的とした。一般大学生ならびに精神健康の専門家を対象とした調査から,促進要因・阻害要因それぞれについて17項目を抽出した。また,これらと基本属性,精神症状,ストレス・コーピング特性との関連を検討したところ,精神症状が強い学生は弱い学生と比較して,専門的援助への抵抗が強くなること,個人のストレス・コーピング特性がその抵抗感に影響を及ぼすことなどが示された。今後はこれらの知見をもとに,精神障害の予防・早期介入のための情報発信・啓発を行っていくことが必要と考えられる。
著者
安藤 悦子
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

<結果>上記研究テーマに基づき、半構成的インタビューガイドを用いてインタビューを実施した。対象者は16家族20名(男性8名・女性12名)。患者死亡からの経過年数は8ヶ月〜9年。インタビュー時間は35分〜125分であった。(1)ターミナル期にあるがん患者の家族が認知する看護師のケアリングは、【患者が人として大事にされる】【患者の身体的苦痛が和らぐ】【家族も気にかけてもらえる】【自由度を広げる療養環境】【物腰が柔らかい】などで、それらは【ちょっとしたことでも頼みやすい】【任せられる安心】を生み、【やらなければならない負担の軽減】【患者は幸せだった】という家族の満足感につながっていた。(2)逆にケアリングとならなかった看護師の関わりは、【患者の苦痛が軽視される】【心のない事務的な対応】【頼んでも拒まれる】などがあり、これらに対しては【仕方がない】【お世話になっているから我慢する】とあきらめていた。(3)直接的な看護師の関わりはなく、看護師不在でケアリングがないは、【医師との対立:治療方針・治療の場の決定】【医師への不信:説明不足】【抱えているものを分かち合えない存在】【自分たちでどうにかする】などがあり、最後まで看護師に役割を期待していなかった。特に【医師との対立・医師への不信】は患者の死後も、【後悔・怒り・わだかまり】を残した。<考察>家族にとっては第一義的に患者に対する看護師の関わりが家族へのケアリングとなっていた。これは家族が患者を自身の分身のように感じ、患者の苦痛や患者への応対の一つ一つを自分の痛みとして敏感に反応しているものと考えられる。逆に言えば、看護師の患者に対する関わりが、家族にとっては患者の死後も【患者は幸せだった】と家族の悲しみを和らげる糧となりうることが確認された。また、家族は看護師が考えている以上に、医療者に対して我慢やあきらめを強いられる立場にあり、これらが患者の思いを代弁したくてもできないストレスとなりうることを厳しく自覚することが求められる。看護師不在でケアリングがない【医師との対立・医師への不信】に対し、患者/家族-医師関係の調整において、看護師が患者/家族にとって資源となりうることを看護師側からアピールし、期待される存在として認知されることの重要性が示唆された。
著者
長田 洋輔
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

骨格筋の修復や再生は骨格筋幹細胞である筋衛星細胞によって行われる.本研究ではマウス筋衛星細胞由来の細胞株C2C12の培養によって生じるリザーブ細胞を休眠状態の筋衛星細胞のモデルとして使用し,リザーブ細胞形成に関与する因子を探索した.アダプタータンパク質Grb2,Sos1,Rasがリザーブ細胞形成に必要であること,Grb2の強制発現はリザーブ細胞形成を促進し,恒常活性型Sos1およびRasの強制発現はリザーブ細胞形成を抑制することを明らかにした.これらの結果はGrb2-Sos1-Rasはリザーブ細胞形成に必須であるが,過剰なシグナルはリザーブ細胞形成に対して抑制的に働くことを示唆している.
著者
高木 邦子
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

新卒者のリアリティ・ショック軽減や離職防止のために、就職先となる福祉現場と福祉職養成機関がそれぞれ取り得る方策を提案した。結果、福祉現場にはソーシャル・サポートの提供が、教育機関には、社会的スキル教育、職業への動機づけ促進が求められることが示唆された。さらに現場と教育機関が連携し、福祉職志望者や内定者に対する現場経験の促進・提供が必要であることが示唆された。
著者
村井 宏栄
出版者
椙山女学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、中世という日本語書記法の多様性が最も拡大化した時期において、漢字片仮名交じり文の書記法を調査し、小字仮名の用法とその他文字分節方法との関わりの解明を目指したものである。本研究においては特に親鸞関係資料に注目し、『三帖和讃』においては「大字仮名+小字仮名」の表記種連続において小字仮名「ニ」への偏りが見られること、また『西方指南抄』の同仮名連続においては、同字反復が語頭に偏るのに対して重点(踊り字、「ヽ」)が非語頭に集中するという明確な分布を示し、仮名遣いの問題とともに言語分節の標示という点から統一的な説明を示した。
著者
小宮 正安
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、数あるヨーロッパの都市の中でなぜウィーンのみに「音楽都市」というイメージが具わり現代に至っているのかというテーマについて、観光事業を切り口として文化史的にアプローチした。とりわけ研究の最終年度にあたる今年度は、包括として次の4点を明らかにした。・ ハプスブルク帝国は、統一ドイツの覇権を巡ってプロイセンと熾烈な競争を展開し、その際「ドイツ芸術の護り手」として自らの優位を広く知らしめるため、ドイツ美学の中でもとりわけ重んじられていた音楽に着目し、首都ウィーンを「音楽都市」としてアピールした。・ この流れがオーストリア共和国にも受け継がれた。共和国は、国のアイデンティティを確保し、観光立国として繁栄させるために、「音楽都市ウィーン」のイメージを広め、数多くの観光客を誘致することを必須の課題とした。・ 特に第二次世界大戦以降、共和国が自治権を取り戻し、中立国として再出発するに及び、「音楽」による平和的文化交流の場として「音楽都市ウィーン」のイメージがクローズアップされるようになった。さらに1960年代以降における観光産業の隆盛により、「音楽都市ウィーン」のイメージはさらに強固なものとなった。・ ただしマス・トゥーリズムヘの迎合一辺倒ではなく、利便性に富んだ資料館や図書館を作ったり、音楽をテーマにした企画展を開催したりと、専門家や音楽愛好家のニーズにも応える幅広い政策が、官民の協力によっておこなわれている。これは我が国の文化事業にとっても、重要な示唆となる状況に他ならない。
著者
駒田 致和
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

哺乳動物の大脳皮質の形成においては、適切な時期に適切な数の細胞が増殖・分化することが重要である。近年、終脳背側においてはradial glial cell(RGC)のほかに、intermediate progenitor cell(IPC)が存在していることが報告されている。我々は終脳背側のHedgehogシグナルが神経幹細胞の増殖や生存、分化を制御していることを報告し、さらに本研究では、特にRGCのIPCや神経細胞への分化、さらにはIPCから神経細胞への分化を調節していることを示した。その作用は胎生16. 5日においてより顕著であり、細胞周期を調節することによってRGCからIPC、さらには神経細胞への分化を制御している可能性がある。ヒトの大脳皮質では2、3層が高度に発達している。IPCは主にこの領域の神経細胞を産生することから、本研究は高次脳機能の形成や精神疾患の発症のメカニズムの解明に寄与することができる。