著者
笹岡 直人
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

補聴器などに導入可能な突発性騒音抑圧システムの研究開発を実施した。現在、補聴器に用いられている騒音抑圧システムは騒音の特性が変動しないもしくは緩やかに変動することを前提としているため、衝撃音などの突発性騒音の抑圧は困難であった。そこで本研究では、音声と突発性騒音の特性差のある高次統計量を基にする適応フィルタにより音声成分のみの推定を可能とした。また、適応フィルタのみでは騒音の鳴り始めを抑圧することは困難であるため、高次統計量を用いた騒音検出及び抑圧についても検討を行い、その有効性を確認した。
著者
中村 真樹
出版者
長崎純心大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、自閉スペクトラム症(研究開始時は広汎性発達障害、以下ASD)の児童と成人を対象とし、自己理解に関する調査研究及び心理劇の実践を通して、情動機能と自己の発達について検討した。その結果、ASDの情動機能と自己の発達について、(1)臨床実践及び質問紙調査等の多様なアプローチの有効性(2)定型発達との比較検討によるASDにおける自己理解の特性(3)生涯発達的観点による支援の重要性(4)心理劇による支援の有効性が示された。
著者
馬場谷 成
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

1型糖尿病は難治性疾患であり、早期発見・早期治療のための方策が必須である.本研究では、1型糖尿病予知(早期発見)システムの構築を目的とし、1型糖尿病診断前より検出されるインスリン抗体の、より高感度な検出法を確立し報告した.また同様に、1型糖尿病において検出されるIA-2抗体の、より高感度な検出法の開発を継続中である.これらと、DNA遺伝情報を組み合わせることで、より適切な早期発見のための方策を検討した.
著者
金 鉉哲
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度の研究は韓国の近代劇の先駆者である洪海星と築地小劇場の影響関係を中心に行った。洪海星(1894-1957)は韓国最初の演出家であり、韓国近代演劇の先覚者として非常に重要な人物である。特に洪海星は1924年-1929年の間、直接築地小劇場の俳優としても活躍した。そのために洪海星の演劇理論と演出作品に築地小劇場の影響が非常に大きかった。本年度の研究では、洪海星が本格的に韓国近代劇運動を始めた1930年一1935年を中心に、築地小劇場との関係を三つのポイントに基づいて明らかにした。第一は「実際公演と築地小劇場の関係」である。洪海星は韓国の近代劇運動の基盤を築きあげるために築地小劇場の演目をそのまま継承して公演した。洪海星の演出は当時の演劇人たちから肯定的な評価を受けたが、築地小劇場の反復に過ぎないという否定的な評価も少なくなかった。殊に第一回築地小劇場の公演でも話題になった表現主義劇である『海戦』の演出は洪海星の演出方式に関する賛否両論の論争の争点になった。第二は「築地小劇場と洪海星の演出方式」である。洪海星が築地小劇場の演目の中で最も高い評価を得た作品は『検察官』である。しかし、当時の演劇評を詳しく調べれば高い評価の根拠には築地小劇場の方式をそのまま生かした演出方式があげられる。即ち、洪海星の演出方式はただ築地小劇場の演出方式を紹介する程度で満足していたことである。第三は「劇芸術研究会の評価」である。洪海星の演劇活動中にいまだに解けない謎は突然劇芸術研究会を離れて大衆劇の劇団として有名な東洋劇場へ移動したのである。今までは経済的な問題が一番重要な原因として提起されているが、経済的な問題一つだけでは説明されない部分が多い。しかし、洪海星が参加した近代劇運動団体である劇芸術研究会における彼の位置を考えたら非常に簡単に釈明される。劇芸術研究会で洪海星は独創的な演出力を持っている演出家という評価とは程遠かった。単に、築地小劇場の体験を韓国に紹介する役割に過ぎなかった。結局、自由な演劇運動ができない劇芸術研究会を離れて東洋劇場へ移ったのである。
著者
福士 由紀
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、1950年代から70年代における中国における日本住血吸虫症対策に関する歴史資料の分析およびインタビュー調査などを通して、現代中国における農村医療・衛生事業の歴史的展開を実証的に把握することを目的とするものである。本研究では、(1)中国農村医療制度の歴史的展開と雲南省におけるその実態の把握,(2)中国農村医療システムの同時代における国際的評価の変遷、(3)雲南省における日本住血吸虫症対策の実態について検討した。
著者
山本 宏昭
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

NANTEN2 望遠鏡を用いて複数の超新星残骸全体に対して^12CO(J=1-0, 2-1)、^13CO(J=1-0)輝線のスキャン観測を実施し、付随する分子雲の全貌を明らかにした。また、水素原子雲のデータも活用することにより、全星間陽子の分布を明らかにし、ガンマ線との比較を通して、ガンマ線放射の陽子起源説を指示する結果を得た。さらに宇宙線陽子のエネルギーが超新星残骸のエネルギーの 0.1-1%程度であることを明らかにした。
著者
泰岡 顕治
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

17年度,18年度に引き続き液晶の粗子化分子動力学シミュレーションおよび原始レベルでの分子動力学シミュレーションを行った.粗子化分子動力学シミュレーションについては,平板間に挟まれた液晶の振る舞い,拡散係数などについてシステムサイズ依存性について大規模計算を行った.また,粗子化シミュレーションとの対応を見るために,昨年度からの続きで原始レベルでの分子動力学シミュレーションを行った.特に今年度は,5CBを用いて,当方相と液晶相の間の相転移現象について計算を行った.既存の研究では,分子数が少なく,また長時間シミュレーションが行われていなかったため,粗子化シミュレーションとの比較も難しかった.本研究では,分子動力学専用計算機MDGPAPE-3を用い,500分子程度の系において, 0. lMPaにおける様々な温度で,約100nsほどのシミュレーションを行い,相転移現象を計算した.計算に汎用機を用いた場合には数十年かかることが予想されるが,本研究ではMDGRAPE-3を用いることで1年弱で計算を行うことができた.分子モデルとしてOPLS-UAモデルを用いたが,計算系を大きくし,計算時間を長く取ったことで,周期境界条件の影響が少なくなり,相転移の際のヒステリシスが小さくなったことで,転移点をより正確に見積もることが可能となった.転移点は実験結果より3%ほど小さくなった.また粗子化シミュレーションで得られた値とほぼ一致した.
著者
里村 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は蓄積されたデータを用いて、消費者行動論から小売業者が値引きを実施するタイミングと値引き幅を決定するための手法を開発するものである。本年度は平成14・15年度の研究成果の報告と研究の深耕を進めた。研究成果の報告ではカテゴリー内需要のモデル化研究、消費者異質性に着目した商圏エリア分類方法に関する研究成果の報告がなされた。研究の深耕では、値引き最適化の理論的研究と実証分析が進められた。ここではメーカーのブランド利潤最大化のための卸売り価格決定、小売業のカテゴリー利益最大化のための小売価格決定、消費者個人の効用最大化のためのブランド選択、という3つの経済主体による意思決定問題についての理論的枠組みと数理モデルの構築を行った。さらに集計されたPOSデータを用いてモデル・パラメータを推定するための手法の開発を行い、実際の小売店の集計されたPOSデータを用いた分析が行われた。提案されて手法は小売業者の値引きを含む価格決定問題であり、小売業者だけでなくメーカーの行動も考慮している点に特徴がある。本研究は、消費者行動論的な個別消費者の行動に関する研究と、オペレーションズ・マネジメント的な最適化手法の両者を結びつけたものである。本研究では小売業者が蓄積した商品別販売データ、顧客購買データ等を利用した値引き最適化を行うために必要ないくつかの手法を開発し、小売業の収益性改善のための意思決定方法も示した。本研究での成果をいくつかの研究会で産学界からの参加者と議論した結果、本研究で示された理論および手法に対する関心も高く、データをもとにした価格決定手法と利益配分決定方法については今後とも産業界での必要性が高いとの認識で一致した。
著者
譽田 正宏
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、画像から形状の特徴を抽出する技術及びその特徴を用いた認識技術の確立を目指して実施された。例として、原子オーダで平坦化されたシリコン表面を原子間力顕微鏡で測定した画像から原子ステップとテラスを形状認識し分離するアルゴリズムについて検討した。"方向"・"大きさ"などの特徴に注目し、候補間で相関をとることが認識するには有効であることが分かった。その結果、測定された画像から原子ステップとテラスを形状認識するため基本技術が確立した。
著者
増田 聡
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

聴覚文化論・メディア論・都市論の理論的基盤を踏まえて、都市空間における音文化とデジタル・メディア空間における場所イメージの交錯の様態を把握する理論構築を目指した。特に、メディア空間に媒介された音楽消費の現状、文化的生産物の所有と剽窃をめぐる問題系、録音メディアにおける音楽作品の存在論、災害地と大衆音楽文化の関係などのトピックについて検討が行われた。
著者
高坂 友和
出版者
京都府立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は複数のDNA型を組み合わせて得られる情報を合わせたDNA型鑑定(個人識別法)を確立することである。本研究ではヨーロッパ、アジア、アフリカの集団から採取された尿資料から抽出されたDNAを用いてmtDNA型、JCV DNA型、男性資料のみY染色体DNAハプログループ(Y-HG)の解析を行った。本研究によりY-HG、mtDNA、JCV DNA型の組み合わせ解析を行うことで出身地域や民族集団の推定が可能であることが示された。本研究の成果は法医遺伝学分野の国際学術集会[DNA IN FORENSICS 2012]の場において報告された。
著者
小堀 聡
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、日本の省エネルギー・低公害的な技術革新がどのように進展したのかを社会経済史的観点から解明することである。そのために、(1)省エネルギー・低公害化に関する産業技術史、(2)低公害化に関する地方自治体史・住民運動史の2つについて、実証研究を行なった。(1)については、①資源調査会の活動、②熱管理技術から公害防止技術への移転などについて明らかにした。(2)については横浜市および北九州市の公害防止政策と住民運動について明らかにした。
著者
梶原 行夫
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々は、「速い音速測定」と呼ぶ新たな実験手法が、液体中の「ゆらぎ」=エントロピーの直接観測として利用できること、また、水の液体-液体相転移現象の理解を深めるために非常に有効であること、を近年提言し、この手法による独自の液体研究を行っている。本研究では①水-アルコール系、②水と類似の熱力学異常が観測されているテルル系、を主な対象として、この手法の有効性を立証すると共に、それぞれの系のゆらぎの状態を議論した。
著者
田中 秀幸
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

モデルの集合を与えるような多入力多出力システムの同定のための基礎として,新たな実現理論を提案した.また,これまでにある実現理論(確率実現等)を進め,フィードバックもとでのシステム同定(閉ループ同定)や非線形システムの同定のためのアルゴリズムを導出した.
著者
横田 雅紀
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

現地での測定が極めて困難な超強風条件における海面抵抗係数について,暴風域外で観測された波浪観測データから逆推定可能なデータ同化システムに現地データを適用し,海面抵抗係数を風速の関数として推定した結果,風速30m/s以下の風速範囲については,複数の擾乱事例について,任意に設定した複数の初期値からほぼ同様の推定結果を得ることができ,従来,利用されているMitsuyasu・Hondaの式が概ね妥当であることが確認できた.さらに,強風が発生していない観測地点であっても,強風域で発生し伝播してきたうねりが観測されていれば,データ同化により強風速範囲の海面抵抗係数が推定可能であることを明らかにした.
著者
出牛 真
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

全球化学輸送モデルのシミュレーションと航空機・ゾンデ観測を組み合わせて、アジアモンスーン循環がインド上空における物質輸送過程に与える影響を、その年々変動とともに明らかにした。また、等温位面の質量重み付き帯状平均を用いた解析をおこない、大気中の一酸化炭素のグローバルな輸送収支を平均子午面輸送・渦輸送・積雲鉛直輸送のそれぞれからの寄与を分離して評価した。北半球亜熱帯域の上部対流圏から下部成層圏においては夏季アジアモンスーン循環によって高気圧性循環が形成されるが、その領域では平均子午面輸送による一酸化炭素の収束が卓越している事がわかった。
著者
川平 友規
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

複素力学系理論とは,複素数全体の集合(もしくはそれを拡張した空間)にある種の運動法則を与えた系を考え,その時間発展を解析する理論である.本研究では,系の運動法則が複素パラメーターに依存するとき,系が不安定に変化するようなパラメーターの集合について研究した.この集合は力学系自身のカオス部分とある種の相関性があり,互いに性質を制限し合っている.これらの間の橋渡し役として「ザルクマンの補題」を用いて,おもに2次多項式族について種々の結果を得た.
著者
渡部 美穂
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンの制御機構におけるGABA興奮性入力の役割を明らかにするために、独自に作成したGnRHニューロンへのGABA作用を興奮性から抑制性に操作できる遺伝子改変マウスを用いて調べた。このマウスでは性周期が乱れ発情期が続き、妊娠が認められず、卵巣には多数の小さな卵胞がみられたことから、生殖機能にはGABA興奮性入力が重要な役割を持つことが明らかになった。
著者
小林 睦
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,豪雨時の土構造物の変形・崩壊挙動を調べるために,盛土斜面および多数アンカー式補強土壁を対象にした遠心力場散水シミュレーションを実施した.その結果,飽和領域が表層部から拡大していく盛土斜面では,土の内部摩擦角よりも法面勾配が大きい場合は,見掛けの粘着力が消失して不安定化して崩壊に至ることが分った.また,補強土構造物においては,適切に排水機能を維持することの重要性と,豪雨時の不安定化の進展の様子を捉えることができた.
著者
栗田 光樹夫
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究によって、南アフリカ天文台サザーランド観測所に、近赤外線広域サーベイ用の観測基地を設置した。2009年7月におよそ1カ月間南アにて銀河中心方向の5平方度にわたるUIR輝線サーベイ観測を行った。検出された顕著なUIR輝線(未同定赤外線輝線)を放射する天体や広がった構造はこれまでの近赤外線の撮像観測等によって知られている星形成領域と星団と一致した。しかし、新たにM42のような大質量星形成領域に相当するようなUIR放射天体は銀河中心方向の5平方度からは確認できなかった。また検出されたいずれの天体も中心の1平方度に存在し、周辺の4平方度からは検出されなかった。