著者
所 浩代
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、雇用における障害差別の是正を実効的に行うための仕組みを考察した。雇用における障害差別については、障害差別を禁止する法律を立法し、差別の是正と予防を行うことが一般的である。もっとも、障害差別の規制方法は、国によって異なる。米と英は、障害に特化した差別禁止法を制定し、裁判所により司法救済を個人が求めることができるようになっているが、それとは別に行政機関が差別の苦情を受け付け、紛争の内容を吟味し、解決に向けたアドバイスを行う。本研究では、このような行政による支援の有効性を検証した。また、障害者の雇用機会の拡大という政策目標に、差別禁止法がどの程度貢献しているのかについても検討した。
著者
松島 格也
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

不確実な状況における交通サービス消費行動をモデル化し,意思決定の自由度とコミットメントの価値を理論的に導出した.料金支払いのタイミングの違いに着目して,事前料金システムと事後料金システムの導入が家計厚生に及ぼす影響を分析し,事後割引料金システムの方が社会的厚生の観点から望ましい結果をもたらすことを示した.さらに,航空サービスの早割チケットのような通時的差別化料金システムの経済便益評価を実施した.
著者
嶋田 奈緒子
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

EGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるイレッサ(ZD1839)は肺癌における分子標的治療薬として使用されているが、その副作用として急性肺障害・間質性肺炎の発症があり、この急性肺障害の発症機序の解明や危険因子を同定することは我々呼吸器・臨床医にとって急務である。我々は昨年までに、AKR/J系マウスにイレッサを投与しneutrophilの集積が肺胞壁のcapillary内に起きていることを確認した。Macrophageの集積はneutrophilに比べて顕著ではなかった。また老化促進マウス(senescence-accelerated mouse, SAM)にもイレッサを投与しその肺組織に及ぼす影響も検討した。SAMの元々のストレインはAKR/Jマウスであるにもかかわらず、SAMPlはイレッサ投与によってもAKR/Jマウスと比較してneutrophilの集積はみられなかった。今年度はマウス・ストレイン間のイレッサ感受性の違いを検討する為に、AKR/Jマウス、C57BL6マウス、NZWマウスにイレッサを投与して検討した。当初はマウス・ストレイン間でイレッサ感受性に違いのあることを予想していたが、今のところ3ストレイン間で炎症性細胞の浸潤などに大きな違いは認められていない。また肺組織での発現解析においても現在のところ、大きな違いは同定できていない。しかしまだマウスの実験匹数やイレッサの条件検討などが充分ではなく、今後はさらに検討を重ねる予定である。これら疾患モデルにおける遺伝子発現プロファイルの違いやgenetic variationを検討することは、今後イレッサ急性肺障害の危険因子・予測因子の解明の糸口につながる可能性があると思われる。
著者
金 誠
出版者
札幌大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は植民地朝鮮における朝鮮人知識人層ならびにスポーツ選手らのスポーツ活動が総力戦体制期の対日協力行為に如何に結びついていったかについて明らかにするものであった。本研究ではとりわけ植民地朝鮮において英雄となったマラソン選手の孫基禎に着目し、民族の英雄となった孫基禎の対日協力行為を当該期の朝鮮人知識人の近代的志向性と複雑に絡まり合うなかで生起してきた行為であったと結論づけ、植民地下の朝鮮半島におけるスポーツと対日協力の問題について考察を行った。
著者
和田 匡史
出版者
国士舘大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

スポーツ選手における身体加温がサーカディアンリズムに与える影響を調べ、疲労回復に貢献するかどうかを調べた。被検者に生活習慣記録機(ライフコーダ GS、スズケン社製)を入浴時以外常に装着させ 1 週間記録し、睡眠-覚醒リズムの分析を行った。スポーツ選手の全身浴による入浴(温水温度:42℃、10 分間)はシャワーによる入浴(温水温度:42℃)よりも、睡眠時間の改善、睡眠潜時の短縮と睡眠効率を向上させる結果が得られた。これは全身浴による身体加温によって体内のストレスタンパク質が高められ、睡眠による疲労回復を向上させた可能性が考えられた
著者
小木曽 加奈
出版者
長野県短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では発芽玄米酒粕を食品加工へ利用することによって3つの付加価値を見いだすことができた。1つは製パン時に発芽玄米酒粕を10%添加した場合、膨らみが大きく、柔らかさが持続し、良い焼き色になるという物性の利点である。2つ目はパンの「コク味」と「塩味」が強くなる傾向を見出した。この呈味は主に発芽玄米酒粕中の有機酸によるものであった。有機酸を計算化学的に検討した結果、その「コク味」が妥当である可能性を示唆した。3つ目、パンの香気性はイソアミルアルコールなどの量が増えたことによりその増強がなされていた。以上のことから発芽玄米酒粕の高付加価値化がなされた。
著者
青柳 かおる
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現代のムスリムによるイスラームの生命倫理、特に中絶や初期胚に関する議論を分析し、近代以前の伝統的な古典の死生観と比較することにより、古典思想の現代的意義を解明した。
著者
加藤 滋子 脇 嘉代 中村 禎子 長田 早苗 藤田 英雄 李 花映 小林 春香
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2型糖尿病患者を対象に、基準となる料理画像を見て、料理単位で栄養素等摂取量を推定するマニュアル(主食料理)を開発した。基準量や料理リストなどいくつかの修正が必要であるが、有用性ならびに有効性が示唆されたさらに、スマートフォンアプリ(DialBetics)で撮影した料理画像を用いて、管理栄養士によるアプリの栄養素等摂取量の推定の有効性についても検討した。アプリを用いた料理名およびエネルギー・栄養素等摂取量の推定は料理グループとして有効であることが示唆された。
著者
西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,玄海灘からの海風進入に伴って気温,水蒸気,風向風速の変化と局地雷雲発生との関係を明らかにすることを目的に3年間観測を行ってきた.即ち,水蒸気の観測網を充実させることで,局地雷雲の発生を捉えようという試みを行ってきた.しかし,水蒸気量の変化と雷雲の発生を関連づけることが一部可能であったが,多くが不明瞭であった.このことは,観測期間中に,夏型の典型的な雷雲発生が不活性な気象状態が多かったことにも起因する.よって,統計的に明瞭な結果を導くために,科研研究期間終了後も観測は継続する予定である.今後は,水蒸気観測ネットワークとその他の気象情報を組み合わせた情報に基づいて,雷雲発生との関連性を抽出する.以上不明瞭な観測結果であったが,次に述べる数値実験及び解析を通じて,この研究における課題を認識することができた.最初に,局地気象モデルを用いて地表面状態の違いを考慮した鉛直安定度の時空間推移を計算した.その結果,海風の鉛直循環が水蒸気と熱を再配分し,鉛直安定度に強く影響していた.また,夏季の気象場をパターン認識アルゴリズムを利用して分類した結果,夏季の雷雲発生パターンと関連性する気象場が大まかに認識できた.以上から,大規模な気象場から得られる特徴,局地循環の特徴,地形の影響,時々刻々変化する日射と斜面との関連性をパターン化して,水蒸気ネットワークから得られる情報(気温と水蒸気量によって推定される鉛直安定度の推移)を組み合わせることによって,局地雷雲の発生と捉えることが有効であると考えられる.
著者
佐藤 正晃
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、研究代表者が過去に確立した蛍光カルシウムセンサータンパク質発現トランスジェニックマウスや深部脳イメージングなどの技術を用いて、マウスが二光子レーザー顕微鏡周囲に作り出されたバーチャルリアリティ環境下で空間行動を行うときの海馬CA1野の神経回路活動をイメージングした。得られた各細胞の活動の時系列データについて、活動のタイミングとその時点の動物の仮想的な位置を解析したところ、全細胞のうち一部分の細胞集団が場所特異的な活動を示すことが明らかとなった。またイメージング画像中での各細胞の位置から、このような場所細胞群の海馬神経回路内の解剖学的配置を明らかにした。
著者
佐々木 史織
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,Web上に日々公開される国際問題に関するドキュメントデータから意味的なメタデータと時間的・空間的情報を自動的に抽出し,高度な知識発見を可能とする情報分析システムを設計,実現した.利用者は,本システムに各自の関心・視点に基づくキーワードを入力するだけで,専門的な文書内容の時系列的変化や地域別差異,問題領域別・情報源別の分析結果を多角的・定量的に獲得し,視覚的に把握することが可能となった.
著者
石黒 大岳
出版者
独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

クウェートとバーレーンを対象に、議会における野党勢力の政府に対する説明責任要求と、それに対する政府の対応を中心に、議事録や各種報告書、報道等のテキスト分析と関係者への聞き取り調査を行い、成果として、権威主義体制下であっても、議会での野党勢力の要求を通じて、汚職対策政策を中心に、政府の対応としてガバナンス向上への取り組みを引き出しうることが確認された。しかしながら、政府の対応の程度については、議会の権限、政府の政策にどの程度拒否権を行使しうるか、制度的な制約に加え、政治の司法化によって、司法の独立性にも左右さつつある点について留意する必要があり、引き続き、今後の課題としたい。
著者
福岡 久邦
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

メニエール病は回転性めまいと難聴・耳鳴・耳閉感の症状が同時に重なる症状を繰り返す内耳疾患であり、 内リンパ水腫が原因であることが示唆されているが、その発症メカニズムに関しては良く分かっていないのが現状である。 本研究では、 低音障害感音難聴を呈するメニエール病の原因となる遺伝子多型を同定するために、信州大学が中心となって行っている「難治性内耳疾患の遺伝子バンク構築研究」と連携し、すでにインフォームドコンセントを取得のうえ、採血にて得られたメニエール病患者約200例のDNAサンプルを使用して遺伝子相関解析を行った。その結果、1次解析では19SNPsのうち5SNPsで有意差が認められた。1次解析で有意差の認められたSNPsに関して症例を追加して2次解析を行ったところ、メニエール病患者群とコントロール群との間に有意差は認められなかった。
著者
遊佐 敏彦
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

空き家の所有者、空き家利用者、および地域住民の間には、中山間地域特有の関係性がみられる。予めトラブルを避けつつ、段階的に信頼関係を築くために、適切なプロセスデザインが重要とされる。その際には、過去の集落再編成において、課題とそれを解決した成果が参考になる。今後は、それらをもとに、地域外の移住希望者に対し、段階的に使える空き家を提供し、移住を促すことが、持続的な空き家の整備と集落再編に繋がる。
著者
加藤 健一
出版者
松江工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

システム自身の状態に依存してそのシステムのタイムラグ,すなわちむだ時間が変動する状態依存むだ時間系に焦点を当て,その安定性解析法・制御系設計法を構築することを目的に検討を行った.状態依存むだ時間系の一つである伝播信号の跳ね返りを利用して自己の位置制御を行う一種の自己位置制御系を対象にとり,その状態推定が,離散時間の非線形状態方程式としての近似とオブザーバの拡張設計によって精密に行えることをシミュレーションによって確認した.
著者
塩野 義人
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

未利用な微生物資源の一つに位置付けられる盤菌類(チャワンタケ類)に含まれる生理活性物質を探索した。ツバキ花腐菌核病を誘発する病原菌の完全世代であるツバキキンカクチャワンタケより、植物生長阻害活性物質としてアガリチック酸のモノメチルエステル体を明らかにした。ブナの殻斗に小さな子嚢盤を形成するシロヒナノチャワンタケより、抗菌活性物質としてノルコーレンソイック酸を明らかにした。
著者
木船 弘康
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

タグボートの低環境負荷化を目的として、ハイブリッドタグボートのシステムについて検討を行った。ハイブリッドシステムと従来方式とを比較して燃料消費傾向がどのように変化するかを推定する必要がある。そこで実機データに基づくデータベースを背景として、タグボートの燃料消費モデルを構築した。これにより様々なシステムのタグボートにおける燃料消費傾向をシミュレーションすることができるようになった。このシミュレーションを運用することで、ハイブリッドシステムの最適化を検討するための基礎資料を作成することができる。
著者
亀田 幸枝
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

目的;妊婦の出産に対する自己効力感を高める介入方略を考えるために,モデリングによる形成に焦点をあて,出産に対する自己効力感の形成プロセスを明らかにする。方法;総合病院で妊婦健診をうけ,経膣分娩を予定していた妊娠後期の妊婦9名(初産婦7名,経産婦2名)に振り返りによる半構成的インタビューを行った。面接内容は逐語録にし,質的帰納的に分析した。結果;モデリングの資源には,ピア・グループ,過去の出産体験の中の自己,助産師や医師などの専門家,パートナーがあった。妊婦の出産に対する自己効力感の形成には,【自己の身体能力への信頼】と【安心できる出産環境づくり】という2つのプロセスが見出された。【自己の身体能力への信頼】のプロセスは,モデリングとなる情報に対して「モデリング情報と自己との距離感の判断」を行い,「自分なりの対処方法の具体化と蓄積」を繰り返すという連続的なプロセスがあった。そこに影響していたのは"妊娠週数","妊娠経過の正常性","胎児の発育状態","生活パターン","専明家や周囲からの支持的関わり"があった。一方,【安心できる出産環境づくり】のプロセスでは,妊婦はモデリングの資源である助産師や医師などの専門家およびパートナーとの間で,「接近」と「自分への関心と承認の確認」という体験を繰り返し,「傍にいてくれる存在」と「緊急時の対応システム」を確認していた。そこに影響していたのは,"プロフェッショナルな雰囲気"や多忙でも笑顔で答えてくれるという"近寄りやすさ","妊娠・出産だけでない会話"があった。加えて,このような形成プロセスは,妊婦が出産に求める「母児の安全性」や「満足感」の優先性と強さに影響されることが示唆された。結論;本研究の結果は,出産に対する自己効力感への介入を考える際のアセスメント視点になると考える。しかしながら,総合病院に通院している妊婦と限定された対象からの結果であり一般化まではできない。今後,助産院で出産する女性など対象事例を積み重ねていくことと,量的に関連性を検証していく課題が残された。
著者
渋谷 賢
出版者
杏林大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

標的(ターゲット)に向けて腕を伸ばす到達運動が空間的注意に及ぼす影響を調べた.到達運動中に標的が左右に不意に移動した場合,素早い修正運動が引き起こされたが,この潜時は腕と対側半空間に標的が移動した方が同側半空間よりも早く,最終的な到達位置も正確であった.この非対称性は,運動空間と視覚空間を乖離させたバーチャル環境下でも観察されたが,特に腕の動きが視覚空間に見えていることが重要であった.さらに,実際の到達運動のみならず,他者が到達運動を行っている映像を観察する際にも,空間的注意が実際の到達運動と同様に変化することを発見した.
著者
太田 佳宏
出版者
神奈川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

連鎖縮合重合とそれに続くフォーカルポイントの修飾によって合成した分子量と分子量分布の制御されたハイパーブランチポリアミド (HBPA) を持つ高分子モノマーのラジカル重合を検討した。本研究期間を通じて、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル) (V-70) を用いて重合温度を 30℃でHBPAを持つ高分子モノマーのラジカル重合を行うと、高分子量で分子量分布の狭いグラフトポリマーが生成することを明らかにした。