著者
中里 まき子
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

まず、ジャンヌ・ダルク処刑裁判を題材とする20世紀の文学作品(ジャン・アヌイ『ひばり』(1953)、ベルトルト・ブレヒト『ルーアンのジャンヌ・ダルク処刑裁判1431年』(1954)、ティエリー・モールニエ『ジャンヌと判事たち』(1949)等)を体系的に取り上げ、「ジャンヌ・ダルク処刑裁判記録」をはじめとする歴史資料との比較を試みることにより、各作家の創作の独自性を浮かび上がらせた。続いて、ジョルジュ・ベルナノスがエッセー『戻り異端で聖女のジャンヌ』(1929)において寡黙なジャンヌ・ダルクを提示したことに着目し、言語をめぐる同作家の問題意識との関連性を考察した。
著者
植田 晃次
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

まず、朝鮮語教育の最大の隘路のひとつである文字教育に焦点を当て、『朝鮮語実物教材(1)』を作成した。授業において、大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国のさまざまな「実物」資料に書かれた朝鮮語の語句を実見して読むことは、いわゆる「なまの」朝鮮語に触れる機会となり、学習者の学習モチベーションを維持・向上させる有力な手段となる。しかしながら、これらを「実物」によって示すことは、資料の収集・管理、あるいは教室のクラスサイズなどの諸々の要因のために、困難を伴うことが多い。本教材は、これら「実物」資料をデジタルカメラで撮影し、教室での利用を意図して集成したものである。これを直接あるいは実物投影機などを用いて利用することにより、簡便かつ容易に「実物」資料を提示することが可能となる。資料の収集にあたっては、上記のように南北朝鮮のものを中心としつつ、中国・日本をはじめとする諸国のものをも対象としたことによって、本課題の視点のひとつである「総合的朝鮮観」の涵養にも裨益するものである。つぎに、『日本で学ぶ朝鮮語』を作成した。従来の教材では、表記法・発音に関する事項と文法事項を平行して習得していく必要があるものが一般的であり、とりわけ学習時間数の限られている高等学校の課程においては、両者とも不十分な習得に終わることが少なくない。それを考慮し、基本的な文字・発音の学習の後、前者に関しては可能な限りいったん保留し、できるだけ少ない文字・発音に関する知識の活用により、基本的な文法事項の習得を優先したものである。また、外国語教育のイデオロギー的側面に関する論文「「ことばの魔術」の落とし穴」(山下仁・植田晃次編『「共生」の時代に(仮)』三元社、2005年夏刊行予定)も本研究の一部を成す。
著者
小松 孝徳
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,「単一モダリティでシンプルに構成され,コミュニケーションにおける主たるプロトコルに干渉することなくエージェントの内部状態を直感的にかつ正確にユーザに伝達できる表現」を ASE と定義した.その必要十分条件は「シンプル」「補完的」という設計的要件および「直感的」「正確」という機能的要件の二種類に分けられる.そこで,ユーザに情報を発信するロボットに「シンプル」「補完的」という二つの設計的要件を満たした人工音を実装し,その人工音に関する事前知識を持たないユーザによりその意図が「直感的」「正確」に解釈されていたのか,つまり機能的要件が満たされていたのかを実験的に検証した.具体的には,実装した人工音がエージェントの内部状態をユーザに直感的かつ正確に伝達できることを検証し,この人工音が ASE の必要十分条件を満たす一つの実例であることを示した.
著者
松井 克之
出版者
滋賀医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

健康な生後1か月の乳児50人を対象として血液検査とUGT1A1遺伝解析を行った。血清総ビリルビン値(TB)は母乳哺育で上昇していたが、完全母乳でない場合は母乳摂取割合による差は認めなかった。TBの平均±SDは完全母乳では8.71±3.77 mg/dL、完全母乳でない場合は4.31±2.58 mg/dLであり、完全母乳であるか否かがTBに影響を与えることが判明した。UGT1A1遺伝子の遺伝子解析も含めた解析を行った結果、完全母乳とp.G71Rのヘテロでは、それぞれでそうでない場合の約2倍にTBが上昇することがわかった。また胆道系肝機能にも大きく影響を受けることが明らかとなった。
著者
山本 正幸 長 篤志
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

視覚障害者が単独歩行するためには,白杖または盲導犬の助けが必要である.盲導犬は実働数が少ないため,簡易に利用できる白杖による歩行が現状では主となっている.しかし,白杖を用いた歩行には十分な訓練が必要であり,また,安全性の問題もある.そこで,本研究では,盲導犬のように視覚障害者を安全に誘導できる自律移動型歩行補助システムの開発を目指した.その結果として,ユーザとシステムの相対速度を検出する機構の提案とシステム速度を調節することで使用者に危険の有無を呈示する手法の提案を行った.
著者
河崎 豊
出版者
大谷大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究において研究代表者は以下の研究を行なった:①ジャイナ教における最古の断食死マニュアルのひとつであるシヴァーリア作『バガヴァティー・アーラーダナー』(1-2世紀)全編にわたる学術的な翻訳を世界に先駆けて作成した。②本文献の全詩節に亘り、他のジャイナ教文献との間の平行表現一覧を作成した。③本文献が説く不妄語、不淫、不偸盗の概念について他のジャイナ教文献との比較研究を行なった ④批判的校訂本の作成のためにヨーロッパおよびインドでの現存写本の状況を調査した。
著者
井端 啓二
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

小脳の顆粒細胞は軸索である上行線維を伸ばし、分子層でその軸索が分岐して平行線維となる。上行線維と平行線維はプルキンエ細胞とシナプス結合を形成しているが、シナプスの活性、シナプス形成に関わる分子の動態を明らかにする事は、顆粒細胞とプルキンエ細胞の小脳神経回路における役割を理解するために重要である。そこで、本研究では、神経伝達物質放出の様子を効率良くイメージングするための、発光型シナプス小胞融合モニタータンパク質の開発を行い、小脳顆粒細胞で発現させ、プレシナプスの活性をイメージングした。その結果、プレシナプス活性を測定するための発光型モニタータンパク質が機能する事が判明した。
著者
後藤 佑介 谷口 秀夫 義久 智樹 江原 康生 大平 健司
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近年のインターネットの普及にともない,音声や映像といった動画データを IP ネットワーク上で配信する放送型配信の研究が盛んに行われている.放送型配信では,使用できる帯域幅や許容されるコンテンツ間の待ち時間を考慮してコンテンツの配信をスケジューリングすることで,待ち時間をさらに短縮できる.本研究では,分割放送型ストリーミング配信において,データ再生中の待ち時間を短縮するスケジューリング手法を提案する.提案手法では,コンテンツを連続的に変化するデータと変化しないデータに分け,コンテンツ間で発生する待ち時間に上限を設定してコンテンツを効率的にスケジューリングすることで待ち時間を短縮する.
著者
宮崎 裕助
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、当該研究者がこれまで独自に練り上げてきたテレコミュニケーション概念の視点から、その民主主義論の討議倫理的な可能性を解明し、デリダの民主主義概念の系譜学の意義を提示することができた。
著者
森 万純
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

術後4日以内の急性期患者に対する身体抑制の実施に至る看護師の判断要因を明らかにした。その結果、チューブ類に触れるあるいは触れないに関わらず、ベッド上でそわそわと寝たり起きたりを繰り返すなどの動作がみられる場合や、過去に術後せん妄を発症したり、何らかのルート類を自己抜去したことがあることや転倒・転落の既往が身体抑制の実施の判断の鍵となっていた。また、いつもより多重業務を行わなければいけないという医療者側の人的環境も抑制実施の判断要因の一つであることが明らかとなった。看護師が少しでもジレンマを感じることなくケアできるように、身体抑制実施の判断基準の構築および環境面の整備の必要性が示唆された。
著者
落合 秋人
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究代表者は近年、イネの種子から歯周病菌の増殖阻害に関与する2種類のタンパク質成分OsHsp70N (Hsp70ホモログ)とAmyI-1 (α-アミラーゼ)を見出した。本研究課題では、ヒト病原菌に対するこれらのタンパク質の増殖阻害活性の効果範囲(スペクトル)を明らかにした。また、X線結晶構造解析によりそれぞれのタンパク質の立体構造を決定した。得られた構造生物学的知見と分子間相互作用解析などにより、AmyI-1はグラム陰性菌細胞壁外膜を構成するリポ多糖(LPS)と相互作用することを明らかにするとともに、AmyI-1と可溶性デンプンの分解物が協奏的に作用して歯周病菌の増殖を阻害する可能性を示した。
著者
齋藤 暖生
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

自然に対する心理的なつながりを強める体験として、林野における採取活動を捉え、それが、森林地域の住民によって排除されている事例および受容されている事例を多数比較調査することによって、排除が成立する要件を分析した。多くの場合、資源への一般のアクセスを排除した時の便益がそのコストに見合う場合に排除が持続的に成立しうると説明できる。一般による資源採取を認めるためには、資源が持続可能となる利用圧のレベルを明らかにし、行動規範を確立することが課題となる。
著者
野口 麻穂子
出版者
国立研究開発法人森林総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

斜面崩壊が冷温帯林の更新初期過程に果たす役割を明らかにするため、2013年8月の大雨に由来する斜面崩壊跡地と、隣接する未攪乱の林床で実生の動態を調べた。2014年に定着した実生は、複数の林冠構成種において斜面崩壊跡地に多く、斜面崩壊による地表攪乱が定着を促進していることが示された。小型の種子を持つスギとウダイカンバの実生は、斜面崩壊跡地でのみ認められたが、落下種子量が少なく、実生の生存率も低かったことにより、優占には至らなかった。また、斜面崩壊跡地内では、攪乱タイプ(発生域、流走域、堆積域)の違いが、土壌の水分条件を介して実生の成長と植生回復のプロセスに影響を及ぼしていることが示唆された。
著者
波多 賢二 西村 理行
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

軟骨細胞分化に必須の転写因子 Sox9 は、様々な転写共役因子と転写複合体を構築することにより軟骨細胞分化を誘導する。本研究では軟骨細胞分化過程における Sox9 転写ネットワーク因子の同定とその機能的役割の解明を行った結果、転写因子 Arid5b はヒストン脱メチル化酵素Phf2 と結合し、Phf2 を Col2a1 遺伝子プロモーター上に誘導することにより H3K9Me2 の脱メチル化を促進することが明らかとなった。本研究により Sox9 と Arid5b の協調作用によるエピジェネティックな軟骨細胞分化調節機構が明らかとなった。
著者
林 秀弥
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、米国における放送・通信分野に関する企業結合規制及び反トラスト法に基づく企業結合規制の内容と両者の競合関係、これまでに多数行われてきた大型合併案件に関する競争当局と規制当局の判断等に着目し、競争当局による競争の実質的減殺要件や問題解消措置、規制当局による公共の利益や視聴者・利用者保護の観点からの問題解消措置など二元規制の要件や運用上の課題を明らかにすることにより、放送と通信の融合・連携が進展していく渦中にある我が国の放送・通信分野の企業結合規制の新たな枠組みのモデルや在り方について検討を行った。
著者
マニエー レミー
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ナレッジ・マネジメントは先行優位性を生み出す源泉としてだけでなく、競争性の初期原動力としても認識されている。しかし、それぞれの組織は、その経験、人、設立環境によって一様ではないので、それぞれの組織はカスタマイズされた解決策を求めている。従って、KMに影響を与える先行要因を的確に指し示しすことができれば、それは企業の生産性を向上することに役立ち、国際情勢の熾烈な競争の中で生き残れるだろう。
著者
簑原 俊洋
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究によって政治外交史の分野からは検証が限定的であった戦前日本の暗号解読情報がいかにして政策決定に反映されたかについて一つの光を当てることがた可能となった。これにより、戦前の日米関係が再構成され、新たな視点で太平洋戦争への道を考察することができた。これを踏まえ、アウトプットとしてはプレゼンテーションによる研究成果公表に専念した結果、内外において数多くの報告機会を得ることがでた。その都度、有意義なコメントをフィードバックしてもらったため、今後の課題として残る単著の出版においてこれらを活かしたいと考えている。この他には、編著として英語論文を一つ、そして邦語論文を一つ公表することができた。
著者
石野 陽子
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

少産を施策で誘導し少子化社会となった中国と、様々な子育て支援施策にもかかわらず少子化が深刻な日本において、両国の青年達・若い既婚者達は、結婚や子育て、家族、そしてそれを取り巻く制度などをどのように考え、家族をめぐる諸問題へどのように取り組んでいるのであろうか。これらの事柄を、両国でのインタビュー及び質問紙調査によって探った。その結果、中国の青年は、日本の青年よりも家族を大切にし、自分の生活の豊かさや家族の繁栄のために自分はどう将来を歩むべきかを中心に考えていた。したがって、進学や就職、結婚の如何は、自分自身や家族の将来を左右するのであり、慎重かつ積極的に考えていることが示された。
著者
原 祐一
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、小学校における体育科の評価について様々な角度から実証的データを収集し、生きた評価の在り方について提言することである。小学校教員に対するインタビュー調査、教員・児童に対する質問紙調査から新たに開発された評価方法を検証するためにモデル実施を行った。その結果、小学校教員が指導と評価を一体化させ、児童に共感的理解をしながら評価することが可能になる、デジタル・ティーチング・ポートフォリオの開発に至った。
著者
内田 純一
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

観光地に存在する様々なアクターの諸力を総合するために、DMOやDMCと呼ばれる組織が、地域競争力を向上させるための活動を行っている。これらの組織はマーケティングやマネジメントのノウハウを持っているが、地域が提供するサービス品質を管理したりサービス・レベルを向上させようとするような視点は持っていなかった。本研究は、観光地においてサービス・イノベーションの創出を目指すには、製造業的なミクロ視点のイノベーション論だけではなく、地域イノベーション論的なマクロ視点を導入することが必要とし、実証研究を重ねることによって「地域サービス・プロフィットチェーン」の枠組みの有効性を提唱している点に意義がある。