著者
碓井 みちこ
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では物語るメディアとしての写し絵の表現の特徴について考察した。まず、写し絵と西洋の幻燈との違いを明確化した。次いで、写し絵の種板を、それが車人形をいかに参照したかという観点から検討した。車人形は、仏教の法談・唱導が芸能化したされる説経節を地語りとする人形芝居である。さらに写し絵と浮世絵との密接な関わりについても検討した。本研究の成果は、論文や口頭発表だけでなく、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館における企画展でも公表された。
著者
福ヶ迫 善彦
出版者
流通経済大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2012年から2014年にかけて,大学院課程における体育教師養成プログラムの開発を行った。プログラムの目的は,教師の意図した学習成果を保証するための実践力と知識の獲得である。プログラムは3種類ある。1つ目のプログラムは,1年間を通じて,理論と実践を行う。2つ目は,映像コンテンツを活用して行う。3つ目は,反転授業である。すべてのプログラムは,実践的知識と実践的思考を育成することができた。1年間をかけて行うプログラムは,より実践力を育成することができた。半年間かけて行うプログラムは,知識の獲得に大きな影響を及ぼした。3年間の研究によって,対象と期間に応じた効果的なプログラムを示すことができた。
著者
鈴木 琢雄
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

新生児型Fc受容体(FcRn)との親和性の違いが、Fcドメイン含有医薬品の体内分布や分解に与える影響を明らかにすることを目的とし、FcRn親和性が異なる抗体やFcドメイン融合タンパク質のFRET型蛍光標識体をマウスに投与し、臓器の蛍光を測定した。その結果、FcRn親和性を大幅に低下させた場合、肝臓や肺への蓄積率に差が認められた。通常の抗体と比較してFcRn親和性が大幅に異なるFcドメイン含有医薬品(例えば薬物結合抗体等)を開発する場合には、体内分布が通常の抗体とは異なる可能性があることを考慮する必要があると考えられる。
著者
野原 理子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

1年間の追跡調査により、保育園の遅刻・欠席・早退の頻度およびその際の保護者の対応方法が明らかとなった。子どもの体調不良等による保育園の欠席日数は、入園から1年間が最も多く、2年目には半減し、3年目以降はほぼ10日以内であった。保育園への呼び出しの回数は年間数回程度であり、これも入園後1 年を経過すると減少していた。保育園への迎えや欠席の際の対応は母親・祖母・父親など家族が主であった。これら結果より、保育施設入所後1年間の柔軟な勤務体制の整備が必要であることがわかった。
著者
槇野 陽介
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

画像診断による死因究明制度の構築には、死後CTのみでは限界がある。本研究では車載式死後核磁気共鳴画像(MRI; magnetic resonance imaging)を用いて、法医解剖前遺体を撮影し、死後CT所見や解剖所見と比較し、死因究明に利用可能かどうかを検討した。結果、今回検討した全事例において、評価に耐える撮像が可能であり、今回我々が確立した方法が、死因究明に応用できると言えた。また、脳内微小出血病変など、明らかにMRIがCTよりも有用である所見が認められ、死後MRIの有用性も明らかにできた。一方で問題として、偽陽性所見などが認められ、今後さらなる検討が必要であると考えられた。
著者
門林 岳史
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、マーシャル・マクルーハン以来展開されてきた感性論的なメディア論の系譜を批判的に検討するとともに、それらを基礎として、今日のメディア環境に応えられる新たな感性論的メディア論を構築するべく、「ポストメディア」概念を提起することである。そのために本研究では、先行研究の理論的な読解を進めるとともに、メディア研究の国際的な学会やメディアアートをめぐる国際的な芸術祭などに参加し、研究交流と資料収集を進めてきた。また、東日本大震災以降のメディアの状況をめぐる議論に参加することで、「ポストメディア」概念をより具体的な状況に対する説明能力を持つ概念へと練りあげることができた。
著者
竹村 明久
出版者
大同大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

室内のにおい環境評価には嗅覚を用いることが多いが、感覚の個人差が大きいために、評価にあたって多人数パネル(被験者)が必要とされてきた。これを少人数パネルの複数回評価で代用するために、個人間の評価差と同一パネルが繰返し評価を行う際の評価の変動(個人内変動)との評価の取扱いの重み付けを決める基礎資料を提示した。また、パネルの精度向上のために評価訓練を実施した場合の、評価への影響についても検討し、訓練に用いた臭気への訓練効果は確認された一方で、異なる臭気評価には訓練効果が十分に発揮されない可能性を示した。
著者
小保方 晶子
出版者
白梅学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、中学生の非行行動のリスク要因を縦断的研究から明らかにすることを目的とし、2007度から3年間縦断調査を行っている中学生(研究開始時小5)約2000名を対象に引き続き2010年度から縦断調査をさらに3年間実施した。方法は質問紙調査である。中1で、問題行動が開始された子どもの予測要因として、小6時のゲームの使用時間の長さがあることが示唆された。また、中1でみられる問題行動は小6時の問題行動と相関があることが明らかになった。
著者
関口 雄祐
出版者
千葉商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

目的は,幼児における活動と睡眠が精神的安定にどのように影響を与えているのかを明らかにすることである.保育園児を対象に,午睡制限(通常2時間を,1時間に変更)が精神的行動的にどのような影響を与えるのか,CBCLを用いて評価した.その結果,年齢別では,3歳児クラスは午睡制限が問題行動の増加を引き起こし,4・5歳児クラスでは,問題行動の減少が見られた.また,5歳児クラスについては,周辺環境の異なる複数の保育施設で比較しても,共通して午睡制限は問題行動の減少を示した.これらの結果は,4・5歳児クラス(すなわち4~6歳児)では,QOLの観点から,午睡時間を減らした生活リズムを考えることが必要なことを示唆する.
著者
牧山 正男
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

茨城県霞ヶ浦周辺におけるレンコン収穫の際の濁水について,作業を行う農地や作業時間の調整などによって抑制できるのではないかとの仮説のもとで,各種の調査を行った。その結果,1)全国のレンコン収穫方法およびその変遷について整理した。また茨城県の水掘りの特異性について把握した。2)農作業の実態を踏まえて,作業を休憩している時間における節水や,洗浄水の扱いなどに一考の余地があることを提示した。
著者
吉岡 朋彦
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

金属基材からなる細胞親和性の高い薬剤溶出ステントの開発を目的とした。Niを含まないステンレス合金を用い、表面酸化物組成を熱処理によって制御することで、金属と薬物担持層のアンカー分子であるγ-aminopropyltriethoxysilane (APS)を多量かつ安定に固定化できることを明らかにした。APS固定化表面は、未処理表面より正常ヒト臍帯静脈内皮細胞の伸展性に優れていた。
著者
近藤 正聡
出版者
核融合科学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

核融合炉のブランケットシステムにおいて液体金属や溶融塩を自己冷却型トリチウム増殖材として用いる事が検討されている。本研究の目的は、これらの高温融体から発生する蒸気の基礎特性を理解し、それによる材料腐食の機構を明らかにすることである。そこで、金属蒸気中で腐食試験を実施する事が可能な装置を設計し開発した。この装置は、金属蒸気場の条件として重要な蒸気圧を測定する機能も有している。腐食試験において材料表面に付着したリチウム等の金属元素の微量分析の手法を開発した。
著者
森脇 睦子
出版者
独立行政法人国立病院機構本部(総合研究センター)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

26年度は以下を実施した。1)夜間・休日時間外に受診した患者における必要性の低い救急患者の同定手法の開発を実施する目的で次の分析を行った。分析対象は、国立病院機構143病院のうち一般病床を有する110病院で、当該病院の夜間・休日時間外受診した患者(初診料・再診料の時間外・休日・深夜加算を算定した患者)とした。分析には、国立病院機構総合研究センターにおける診療情報データバンクに収集されている平成25年度のレセプトデータを使用した。分析内容は、初診および再診患者の判定(定義の検討)を行った。続いて診療区分(注射、処置、手術、麻酔、病理、画像診断、その他)別に軽症患者の判定に関するアルゴリズムを作成し、患者数や診療報酬点数ベースでの記述統計を行った。2)カルテレビューによる必要性の低い救急患者の判定を実施する目的で次の調査を実施した。1)の分析対象(休日・時間外受診した患者)から対象施設2施設を選定し、各施設150件、合計300件を年齢階級別に無作為層化抽出しカルテレビューの対象とした。調査項目は、①主訴、②主訴発生時刻、③診察時刻、④軽症もしくは軽症外の判定、⑤判定の根拠、⑥早期受診の必要性の有無等とした。調査方法は、医師および薬剤師2名によりカルテレビューを実施し、軽症判定を行った。レビュー後、判定結果に相違がある場合は再度検討により一致させた。検討により判定が一致しない場合は、医師の判定結果を採用した。今後は、カルテレビューの結果を基にレセプトデータによる軽症患者の判定モデル作成する分析を実施する。
著者
川合 克久 三宅 克也 沢田 光一 西垣 新
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

光活性化Rac1(PA-Rac1)により顕微鏡下でマクロパイノサイトーシスを誘導する実験系を利用しマクロパイノサイトーシスの形態的特徴および分子基盤の解析を行った。その結果、PA-Rac1誘導性マクロパイノサイトーシスは、典型的なマクロパイノサイトーシスと異なりRab10が一過的に集積することを見出した。さらにRab10陽性のマクロパイノゾームは、チューブ構造を出芽した。Rab10陽性マクロパイノゾームおよびチューブ構造は、細胞外と行き来のある開いた構造であった。以上の結果から、PA-Rac1依存的マクロパイノサイトーシスは、従来型と異なる新規の取り込み経路であることが示唆された。
著者
原 美鈴
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は診療所に勤務する看護師のキャリア形成の実態およびキャリア支援ニーズを明らかにすることを目的として実施した。看護師13名に協力を得て半構成インタビュー調査を実施した結果、キャリアトラックの特徴として、全員病院での勤務経験を経て診療所で就業していること、診療所を就業先として選択する際は、看護職として働き続けるために、職業キャリアよりワークライフバランスが優先されていること、しかしながら看護師として医師や他職種と積極的に意思疎通を図り、役割を見出し果たす努力をする中で、病院とは違った看護実践能力を形成しようとしていることが明らかになった。
著者
上平 崇仁
出版者
専修大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,グローバル化する社会の人々のための重要なコミュニケーション手段として,言語の制約を超える視覚伝達に焦点をあてたデザイン学習ツールキットの開発を行った.10点のデザイン学習ツールの試作,開発,ワークショップを実施し,研究を通して,専門家が少ない環境でも道具によって人々の中に関心が生まれ.そこから学習を支援するきっかけをつくることはできることがわかった.また異なる言語/異文化間においては精度の高いコミュニケーション方法を学ぶよりも,異なる知見を持ち寄った協業を実践することが重要であるという結論に至り,生産的なコミュニケーションを生み出すツールのデザインを生み出すことに焦点を当てた.
著者
小嶋 美由紀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

現代中国語の三人称代名詞は、ある特定の構文(二重目的語構文及び使役構文の拡張構文)において非指示的な用法を持つ。この非指示的な三人称代名詞は命令文や条件節といった未実現の事態、つまり非現実ムードを表す文にのみ生起するという特徴を持つ。本研究は、形式と意味の結びつきである構文を文法の基本的単位とみなす構文理論(cf.Fillmore 1985、Goldberg 1995、Croft 2001など)に基づいて、i)三人称代名詞の非指示化現象の分析を試み、ii)三人称代名詞の非指示化とムード制約との相関関係を探り、iii)この相関関係が「授与」の意味を動機づけとする構文拡張によって生み出されたことを明らかにした。
著者
今野 弘章
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、日本語と英語の多様な構文を話し手の伝達意図という語用論的特徴に注目しながら観察し、統語論と語用論のインターフェイスについて考察した。特に、話者の伝達意図という語用論的性質と機能範疇という統語的性質の間にどのような対応関係が見られるのかを明らかにした。日英語には、話者の伝達意図を欠く非伝達的表現が機能範疇を同時に欠く場合、話者の伝達意図を含む伝達的表現が機能範疇を同時に含む場合が存在する。これらの事例は、伝達意図の有無と機能範疇の有無が類像的(iconic)に対応する場合があることを示している。
著者
荒川 裕志 谷本 道哉 比嘉 一雄
出版者
独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では徒手抵抗トレーニング(MRT)と一般的高負荷トレーニング(WRT)の動作特性・生理特性の比較を行った。動作特性を比較した結果、MRTではWRTよりも大きな筋活動および筋出力を対象の筋に課すことができ、特に伸張性収縮局面においてMRTとWRTの差が顕著となることが明らかになった。さらに、生理特性については、MRTはWRTよりも筋損傷を誘発し、WRTと同程度の血中乳酸上昇・内分泌応答を引き起こすことが明らかになった。以上から、MRTでは対象の筋に対してWRTと同等以上の力学的・生理学的刺激を与えることができ、得られる効果が従来のトレーニング方法よりも潜在的に大きいことが推察される。
著者
齋藤 究
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ヘリウム/キセノン混合ガスにおけるシンチレーション過程を研究してきた。その中で時間スペクトル、発光スペクトルを明らかにした。また、シンチレーション収量と同時にイオン化収量も測定し、物質中での放射線エネルギーの分配過程に関する知見を得た。以上の知見を元に、ヘリウム/キセノン混合ガスを検出器媒体とし、希ガス蛍光(シンチレーション)を利用した、高許容計数率・高時間分解能といった性能を持つパルス中性子2次元位置検出器の開発を行った。