著者
久保 尊洋 瀬在 泉 佐藤 洋輔 生田目 光 原井 宏明 沢宮 容子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.173-182, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
27

本研究の目的は、動機づけ面接の中核的スキルはスマートフォン使用についてのチェンジトークを引き出すかどうかを明らかにすることであった。実験参加者50名に対し、スマートフォン使用の問題を標的行動にし、OARSと呼ばれる動機づけ面接の中核的スキルを用いるOARS条件と、標的行動に関する思考、感情、そのほかの行動について共感的に聞く非OARS条件を設定し、1回の面接で交互に条件を変えて介入を行うABABデザインで実験を行った。実験参加者の発言の頻度に対するチェンジトークの頻度の百分率(以下、チェンジトーク(%)とする)を条件ごとに算出し比較した。結果、OARS条件のほうが有意にチェンジトーク(%)が高かった。同条件では、問題改善の重要度が高いとチェンジトーク(%)も高いことがわかった。動機づけ面接の中核的スキルは、スマートフォン使用についてのチェンジトークを引き出すスキルであることが示唆された。
著者
村井 佳比子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.23-32, 2014-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本稿の目的は、選択教示の有効性を実証的に検討するため、異なった教示に対する強化履歴が行動変動性に及ぼす効果の差を比較することであった。対象者は大学生53名であった。GHQ(General Health Questionnaire)得点の高低によって低群と高群に分け、それぞれを他者教示群、自己教示群、選択教示群、対照群にランダムに分けた。対照群以外には各教示に従う反応を強化し、その後、変動的な反応を強化した。その結果、GHQ低群ではどの教示群にも対照群との間に差はなかったが、GHQ高群の他者教示群と自己教示群では差が認められた。精神健康上の問題の少ない人は教示の影響で変動性が低下することはなく、一方、精神健康上の問題が多い人は教示の影響で変動性が低下する可能性があることがわかった。しかし、選択教示であれば変動性は低下しなかった。臨床場面で選択教示を使用することの有効性が示唆された。
著者
岡島 義 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.43-54, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本稿の目的は、社会不安障害(SAD)の維持要因である安全確保行動の役割と安全確保行動を治療ターゲットにすることの重要1生について概観し、SADの安全確保行動に対する治療技法を確立するための展望を行うことであった。本稿において、安全確保行動は、(1)認知理論の枠組みから否定的な信念の維持要因としての役割が強いこと、(2)機能的側面から適切な対処行動と区別する必要があること、(3)安全確保行動を治療ターゲットとした場合、従来のエクスポージャーよりも治療効果が高いことが述べられた。また、今後の課題と展望として、(1)安全確保行動に関する心理教育が重要であること、(2)SAD患者に安全確保行動を止めさせるとともに、他者から適切な評価を受けるためのスキルを身につけさせる必要があること、(3)安全確保行動に関する治療効果研究の実践が必要であること、が議論された。
著者
式部 義信 井澤 信三
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.271-282, 2009-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究では、断続的な不登校状態を呈したアスペルガー障害児の登校行動を促進・維持するための支援の効果について検討した。アセスメントの結果、断続的な不登校に陥った要因として学校場面に対する3つの負荷(「友達関係」「苦手な漢字」「学校行事」)が考えられた。そこで、支援は3つのステップ(「ステップ1:嫌悪的事態の除去・軽減」「ステップ2:3つの負荷に対する本人のスキルの向上」「ステップ3:登校行動の維持のために保護者を支援者にすること」)による段階的なアプローチを行った。支援内容としては、(1)保護者への行動論的カウンセリング、(2)対象児とその兄への社会的スキル訓練、が中心であった。その結果、登校行動を促進・維持することができた。また、本人の特性を理解し、家庭や学校との連携、さらに保護者が主体的な支援者として機能することが、登校行動を促進・維持する要因として重要であると考えられた。
著者
尾形 明子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.25-32, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、母親の養育態度に及ぼす子どもの病弱傾向に関する認知の影響について検討することであった。研究の結果、病弱傾向の認知と養育態度の関係については、子どもを病弱だと認知しているほど「責任回避的かかわり」が多く、病弱傾向の認知と「受容的子ども中心的なかかわり」や「統制的かかわり」には相関は認められなかった。さらに、母親の養育態度は、「受容タイプ」「統制願望タイプ」「無関心タイプ」の3つのタイプに分類可能であった。そのうち、「統制願望タイプ」の母親は、他の養育態度パターンの母親よりも、子どもを病弱だと認知している程度が有意に高かった。したがって、子どもの病弱傾向を高く認知している母親は、子どもの活動を過度に制限する一方で、子どもの言いなりになっているという養育パターンの可能性がある。
著者
倉重 乾 田中 恒彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.71-81, 2021-05-31 (Released:2021-11-17)
参考文献数
22

遠隔心理支援における一つの方法として、コンピュータ課題を用いて対象者の注意バイアスを修正するABMがある。ABMのオンライン実施は治療の均質性や実施の簡便さなど多くの利点をもっている。しかし、オンラインのABMについての包括的な分析は行われておらず、その治療効果は明らかとなっていない。本研究ではメタ分析の手法を用いてオンラインで実施されたABM研究を包括的に分析し、オンラインABMの全体的な有効性について評価した。オンラインでABMを実施した10報の文献を分析した結果、オンラインABMの群間効果量はg=−0.010で統計的に有意ではなかったものの、群内効果量はg=0.489と安定した治療効果を示した。治療効果に影響を与える要因として診断の有無、ABM手法、対象疾患を考慮したが、これらの要因は治療効果と関連していなかった。
著者
小林 和彦 園山 繁樹 戸村 成男 柳 久子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.93-105, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究においては、行動分析学の枠組みとその基本的な技法を応用したベッドから車椅子へのトランスファー介助の方法を、老人保健施設に勤務する経験の浅い介護スタッフに指導し、指導効果の検証を行った。対象は、施設介護職員として勤務する女性2名で、両介護者が介助するのは脳梗塞左片麻痺で痴呆を有する78歳の女性であった。指導は机上での講義形式による行動分析の枠組み、およびそれに基づく対象者へのかかわり方に関する基本的な説明を行った後、実際場面において実践的な指導を行い、適切介助回数および身体接触時間を評価した。その結果、両介護者とも実践指導後において大幅な適切介助の増加および身体接触時間の減少が認められた。しかしながら、講義形式による説明のみではほとんど指導効果が得られなかったことから、実際場面における実践的な指導の重要性が示唆された。
著者
大塚 明子 形岡 美穂子 村中 泰子 川村 有美子 鈴木 伸一 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-24, 2002-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究では,内科・心療内科標榜の施設Aと、神経科・心療内科標榜の施設Bで、過去5年半に認知行動療法(CBT)に基づくカウンセリングに導入された121例のデータに基づき、心療内科および神経科プライマリーケアでのCBTの適用の実際を報告した。診断では、不安障害と適応障害が両施設とも多い一方で、一般身体疾患に影響を与えている心理的要因と身体表現性障害は施設Aで、摂食障害は施設Bで多いという特徴がみられた。治療法では、両施設で共通して気分障害には段階的タスク割り当て・認知行動論的カウンセリング、不安障害にはエクスポージャー・自律訓練法、身体表現性障害・睡眠障害・一般身体疾患に影響を与えている心理的要因には自律訓練法、適応障害には認知行動論的カウンセリングが多く適用されていた。そして一般身体疾患に影響を与えている心理的要因、適応障害、不安障害は症状が改善して終結となる割合が高かったことから、CBTは心療内科および神経科プライマリーケアでも十分に活用可能であると考えられた。
著者
木下 奈緒子 大月 友 酒井 美枝 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.225-236, 2012-09-30 (Released:2019-04-06)
参考文献数
11

本研究の目的は、木下ら(2012)の実験手続きに新たな刺激を加え、複数の範例を用いた分化強化の手続きが、刺激の物理的特徴にもとづく刺激機能の変換に対する文脈制御の般化に与える影響を再検討することであった。9名の大学生を対象として、4つのメンバー(線形、円形、三角形、四角形といった異なる物理的特徴を有する図形で構成される)からなる3種類の刺激クラスを形成した。そして、複数の範例を用いて、特定の物理的特徴をもつ刺激のもとで、刺激機能の変換にもとづく反応を分化強化した。その結果、分析対象となった7名の実験参加者に、刺激の物理的特徴にもとづく刺激機能の変換に対する文脈制御が示された。その後、新奇刺激を用いて新たな3種類の等価クラスを形成した。その結果、4名に文脈制御の般化が示され、先行研究と同様に、複数の範例を用いた訓練によって、刺激の物理的特徴にもとづく文脈制御の般化が示されることが確認された。
著者
大塚 明子 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.83-96, 2001-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、幼少時、吹雪の中で突風の向かい風のために息ができなくなるという外湯的体験に関連した予期不安からパニック発作を繰り返す「パニック障害の既往歴のない広場恐怖」に対して、薬物療法と認知行動療法の併用で軽快した症例を報告し、認知行動療法の介入効果について検討した。具体的に用いられた技法は、心理教育、腹式呼吸、自律訓練法、系統的脱感作法、エクスポージャー、認知再構成法であった。本症例の治療経過からは、(1)心理教育やリラクセーション法によって、緊張・過敏さの低減、対処法の獲得、さらなる治療への動機づけがなされた後、(2)系統的脱感作法、エクスポージャーによって外傷的体験に関わる記憶が正常化され、(3)さらに認知再構成法により予期不安が改善されたことによって、広場恐怖全般の軽快に至ったものと考えられた。以上より、本症例のように広場恐怖の維持要因の中核である予期不安の背景に幼児期の外傷的体験が存在する場合には、その影響を緩和するための介入が必要であることが示唆された。
著者
丹治 敬之 野呂 文行 有路 佳子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.239-250, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、ひらがな拗音の読みに困難を示す2事例を対象に、拗音読みの習得状況に応じて指導法を選択し、その指導効果を検討した。参加児は、拗音表記を清音表記として誤読する事例、読み音が類似する拗音間で誤読する事例の2名であった。前者の事例には、拗音表記の読み方略を促す指導法を実施し、後者の事例には、各拗音の正確な読みを促す指導法を実施した。その結果、両事例ともに拗音文字の読み、拗音を含む文字単語の読みの成績が改善された。本研究より、拗音を清音表記として誤読する事例では、清音表記と拗音表記の弁別を求める指導が有効であり、読み音が類似した拗音間で誤読する事例では、拗音部分が語頭にある単語の語頭音を抽出させて読む指導が有効である可能性が示唆された。今後は、各指導法が他事例でも有効かどうかに関する外的妥当性の検討、および指導効果がもたらされるための諸条件の検討が求められる。
著者
宮崎 哲治
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.89-101, 2022-01-31 (Released:2022-04-01)
参考文献数
31

統合失調症患者に併存する強迫症状の有病率は高い。そして、強迫症状を併存する統合失調症患者の場合、重い抑うつ症状、多くの自殺企図、重い社会機能不全、低いクオリティ・オブ・ライフ、長い入院期間を呈する。それゆえ、統合失調症患者に併存する強迫症状の治療は重要である。今回、30歳代前半の女性統合失調症患者に併存するolanzapine誘発性強迫症に対して曝露反応妨害法(ERP)を用いた行動療法を施行した症例を経験した。背景に損害回避がある強迫症状については行動療法により改善を認め、行動療法だけでは改善しないと思われた背景にしっくりこない感覚や不完全さがある強迫症状についてはolanzapineを漸減中止しつつ行動療法を施行することにより改善を認め、強迫症状は寛解に至った。この症例について若干の考察を加え報告する。統合失調症患者に併存する強迫症状に対してERPを施行する際の注意点についても記した。
著者
磯部 美良 江村 理奈 越中 康治
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.187-204, 2008-05-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、仲間外れ、無視といった関係性攻撃を示す幼児を対象とした社会的スキル訓練プログラムを開発し、その有効性を検討することであった。プログラムは全10セッションであり、(1)仲間入りスキルの習得や仲間協力児とのかかわりを通して排他的な仲間関係を解消すること、(2)関係性攻撃を適切な規律性スキルに置き換えること、の2点から構成された。訓練対象者は、関係性攻撃が顕著であるとして保育者から報告のあった年中女児1名であった。プログラムの効果は、訓練後と3か月後の保育者評定と行動観察によって検討された。その結果、対象児の関係性攻撃は低減し、多様な仲間とのかかわりが増加していた。また、ターゲットスキルも増加していた。この効果は3か月後のフォローアップ査定の時点でも安定して維持されていた。最後に、関係性攻撃を頻繁に示す幼児に対する社会的スキル訓練の有効性や意義について考察した。
著者
宗澤 岳史 伊藤 義徳 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.123-132, 2007-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
4

入眠困難にかかわる認知的要因のひとつとして、入眠時認知活動(pre-sleep cognitive activity:PCA)は重要な役割をもつとされる。本研究は、PCAの程度を測定する指標として、入眠時認知活動尺度(the Pre-Sleep Cognitive Activity Scale:PCAS)の作成と信頼性、妥当性の検討をおこなったものである。PCASは、因子1:ネガティブな考え事・感情、因子2:眠れないことへの不安、因子3:眠れないことがもたらす影響への心配、の3因子で構成されており高い信頼性が認められた。また、他尺度との相関を検討することにより妥当性の確認をおこなった。本研究結果は、PCASの信頼性と妥当性を示すものとして十分なものであった。本研究で作成されたPCASは、今後の入眠困難の認知的側面の研究に、その有用性が期待できる。
著者
大月 友 青山 恵加 伊波 みな美 清水 亜子 中野 千尋 宮村 忠伸 杉山 雅彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.131-142, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究では、アスペルガー障害をもつ不登校中学生に対して、社会的相互作用の改善を目指した社会的スキル訓練(SST)が実施された。対象生徒の社会的相互作用に対して行動分析を行った結果、反応型としての社会的スキルをもっているものの、周囲の刺激を弁別刺激として適切に反応できていないために相互作用として機能していない、と分析された。そこで、他者の刺激に適切に反応することにより、社会的相互作用の改善が可能となると仮説をたて、そのようなスキルを形成することを目的としたSSTを実施した。 SST実施に当たっては、対象生徒が興味をもつような訓練場面(推理ゲーム)を設定し、その中でのやりとりを通して訓練が行われた。その結果、訓練場面における標的行動の生起率が増え、自由場面における社会的相互作用にも改善が確認された。これらの結果から、アセスメントおよび介入の妥当性が考察された。
著者
小関 俊祐 小関 真実 中村 元美 大谷 哲弘 国里 愛彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.29-39, 2018-01-31 (Released:2018-06-18)
参考文献数
21
被引用文献数
3

本研究は、児童の行動抑制および行動賦活の傾向を把握する自己記入式尺度のBehavioral Inhibition System and Behavioral Activation System Scale(児童用BIS/BAS尺度)日本語版を作成し、信頼性と妥当性の検討を行うことを目的とした。本研究では、小学3年生から6年生1,624名を対象に調査を行った。確認的因子分析の結果、児童用BIS/BAS尺度は原版と同様の4因子構造を示した。信頼性において、児童用BIS/BAS尺度はBAS-刺激追求のα係数は低かったが、全体としては十分な内的整合性と再検査信頼性を示した。また、BISは、抑うつと正の相関を示し、外向性および情緒安定性と負の相関を示した。BASは、攻撃行動および外向性と正の相関を示し、抑うつおよび情緒安定性と負の相関を示した。以上より、児童用BIS/BAS尺度の構成概念妥当性が確認された。
著者
上村 碧 大月 友 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.387-398, 2016-09-30 (Released:2019-04-27)
参考文献数
19

本研究の目的は、セルフコントロールのメカニズムを関係反応の観点から捉え直し、実験的に検討することであった。具体的には、随伴性の特定と時間の派生的関係反応の関連、および、セルフコントロールと時間や比較の刺激機能の変換の関連を検討した。33名の小学生を対象に、関係課題によって時間や比較の関係反応の能力を測定した。また、逆転課題およびWISC-IIIの絵画配列によって、随伴性の特定を測定し、遅延価値割引質問紙やS-M社会生活技能検査へ回答を求めることによって、セルフコントロールを測定した。その結果、時間の派生的関係反応が成立した者は、不成立の者に比べ絵画配列の粗点において有意に高い得点が示された。一方で、時間や比較の刺激機能の変換とセルフコントロールの間には関連性が示されなかった。本研究の結果から、セルフコントロールを関係反応の観点から理解することの有用性と限界点、および今後の展望について検討した。