著者
酒井 善則 鶴原 稔也
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.239-243, 2012-01-01 (Released:2012-01-01)
参考文献数
11

学会への論文投稿は研究者等の重要なミッションであるが,最近二重投稿問題や剽窃問題等の増大が懸念されている.特に,最近のICTやインターネットの発展によりこれらの問題が顕著になっており,学会としての対応も求められている.剽窃問題等が明らかになった場合,研究者個人だけでなくその所属する大学や企業等の組織に与える影響も大きく,更には科学技術全体に対する社会的評価をおとしめることとなる.本稿ではこれらの問題の現状の一部を紹介し,背景について解説するとともに,倫理に関する啓発活動が重要なことを述べる.
著者
高木 剛
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.17-27, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
49

最も有名な公開鍵暗号としてRSA暗号とだ円曲線暗号があり,SSL/TLSによる暗号通信や電子政府でのディジタル署名などで広く普及している.一方で,これらの暗号は量子計算機による多項式時間の解読法が知られているため,量子計算機に耐性のある数学問題を利用したポスト量子暗号(Post-Quantum Cryptography)の研究が注目を集めている.実際,2015年8月にアメリカ国家安全性保障局NSAはポスト量子暗号への移行を表明し,2016年2月には米国標準技術研究所NISTがポスト量子暗号の標準化計画を発表している.本稿では,ポスト量子暗号の歴史と標準化計画の概要を紹介し,代表的なポスト量子暗号となる多変数多項式暗号と格子暗号の構成方法と安全性の評価方法を解説する.
著者
田中 雄一
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.15-29, 2014-07-01 (Released:2014-07-01)
参考文献数
91
被引用文献数
2

定義域を時間軸上に持つ通常の信号に対しては,信号の有する周波数特性の解明が研究の中心である.例えばフーリエ変換は,周波数領域へと信号を射影した際の周波数成分,すなわち信号と周波数固有関数の内積として算出される.同様に,定義域をグラフの頂点上に持つグラフ信号に対しては,グラフ信号の有するグラフスペクトル特性の解明が研究の中心となる.グラフ信号に対するフーリエ変換は,グラフスペクトル領域へと信号を射影した際のグラフスペクトル成分,すなわちグラフ信号とグラフ固有関数の内積として算出される.本稿では,近年盛んに研究が進められているグラフ信号処理におけるフーリエ変換,フィルタリング,サンプリング,ウェーブレット変換等に焦点を当て,以下の点を中心にしてグラフ信号処理への研究参入を「おすゝめ」する. i) グラフ信号処理の基礎的事項,ii) 伝統的な信号処理との類似点・相違点,iii) 現在までの理論的発展,iv) グラフ信号処理の応用等.
著者
山根 信二
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.197-204, 2016-01-01 (Released:2016-01-01)
参考文献数
64
被引用文献数
1

混乱するハッカー及びハッキングの理解を整理するために,本稿ではこれまでのハッカーのパブリックイメージがどのように形成されたのかをたどり,それらを史的展開の中に位置付ける.ハッカーの極端なパブリックイメージは時代ごとの不安が投影されていると考えることができる.これらはマスメディアによって作られただけでなく,計算機科学者や学会も役割を果たしてきた.更にハッカーに注目することで,これまでのコンピューティングの歴史を見直す新たな試みについて論じる.最後に今後の人材育成戦略についても取り上げる.
著者
長谷川 幹雄
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.113-117, 2017-10-01 (Released:2017-10-01)
参考文献数
11

近年,イジングハミルトニアンのエネルギー最小化を利用した最適化問題の解法が検討されている(S. Utsunomiya et al., Optics Express 19, 2011).また,そのような手法を大規模に実装する技術の研究も進んでいる(T. Inagaki et al., Science, 234, 2016).本稿では,このようなハードウェアで実現する量子ニューラルネットワークを用いた組合せ最適化アルゴリズムを検討する.対象とする組合せ最適化問題の目的関数は,イジングスピンの相互結合に実装することとなる.相互作用によるエネルギー最小化を用いた最適化問題の解法は,Hopfield-Tank Neural Network を用いた従来研究において様々な組合せ最適化問題に適用されてきた.本稿では,Hopfield-Tank Neural Network を用いた巡回セールスマン問題の解法を,量子ニューラルネットワークで動作させる方法を説明する.シミュレーション結果を示しながら,提案手法の有効性を示す.
著者
大石 進一
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.2_9-2_19, 2008-10-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
25

筆者は1976 年の卒論より研究をスタートしました。すでに32 年間研究に携わってきたことになります。筆者が精度保証付き数値計算の研究に移ったのは1990年のことです。以来本分野で研究を続けてきました。精度保証付き数値計算の研究の研究に移ったのは筆者なりの必然性があります。1990年当時の精度保証付き数値計算の研究は実用的ではないと考えられていたような気がします。実際、数百次元の連立一次方程式の精度保証が精一杯の感じでありました。現在では特殊な構造を持つ方程式であれば一億次元の連立一次方程式でも精度保証できるようになり、精度保証付き数値計算は実用の段階に至っていると思っています。筆者の研究がこのようなブレークスルーに貢献できたと考えておりますが、本稿ではこのような精度保証付き数値計算の研究の発展と筆者の研究の個人史の交錯を描かせていただきました。

12 0 0 0 OA ミニチュア効果

著者
佐藤 隆夫 草野 勉
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.312-319, 2012-04-01 (Released:2012-04-01)
参考文献数
14

ミニチュア効果とは,街の風景,建物,車など,ある程度の大きさを持つものを撮影した写真で,被写体が,まるでおもちゃを撮影したかのように小さく感じられる不思議な効果である.この効果の要因として最大のものは,中心から周辺に向かって大きくなるぼけである.通常の視覚においてもそうしたぼけは存在するが,ミニチュア効果が生じる写真ではそうしたぼけが誇張されている.誇張されたぼけによって,撮影距離が実際よりも短く知覚され,その結果被写体が小さく感じられる.ここでは,ぼけが視覚に対して,特に,距離知覚に対して持つ効果を視覚心理学的な見地から検討し,ミニチュア効果の生成の原理を考察する.
著者
林 正人
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1_44-1_56, 2009-07-01 (Released:2011-07-01)
参考文献数
44

近年の電子情報通信に関するデバイス技術の進化にしたがって,物理層の奥深くまで踏み込んだ情報処理が可能になりつつある.このような事情から,究極の情報処理理論として量子情報理論が定式化され,様々なバックグラウンドを持った研究者の努力により急激に進展した.しかしながら,量子情報理論では,これまでブラックボックスとして扱っていた部分に踏み込んで情報処理理論を展開するので,基本的概念の理解のレベルでさえ様々な参入障壁がある.本稿では,これらの障壁を取り除くため,初学者が誤解しやすい点や概念に重点を絞って解説する.例えば,波動関数と密度行列の違い,物理量とPOVM,状態複製と状態準備の違いなどについて丁寧に触れる.同時に,量子情報理論の最近の研究動向を解説する.具体的には状態識別,量子通信路符号化,量子鍵配送などの最新に成果にも触れる.
著者
平原 達也 大谷 真 戸嶋 巌樹
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.4_68-4_85, 2009-04-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
109
被引用文献数
3 1

音源信号に頭部伝達関数が畳みこまれたバイノーラル信号によって立体音像空間を再現する場合に,頭部伝達関数やバイノーラル信号再生系の音響的な厳密さが重要視されている.しかし,受聴者の頭部運動に追従する動的バイノーラル信号を用いると,頭部伝達関数やバイノーラル信号再生系に要求される音響的厳密性を緩和できる.本解説では,複数箇所で多数回計測した実頭とダミーヘッドの頭部伝達関数を精査し,頭部伝達関数の音響計測の問題点,頭部形状の変形に伴う頭部伝達関数の変化,および,頭部伝達関数の比較尺度について論じる.また,様々なバイノーラル信号を用いた一連の音像定位実験の結果に基づいて,静的バイノーラル信号と動的バイノーラル信号が再現する立体音像空間の差異についても論じる.これらを通じて,頭部伝達関数の計測とバイノーラル信号の再生にかかわる諸問題について論考する.
著者
荒川 薫
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.2_21-2_25, 2007-10-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
12

乳幼児は様々な状況下で泣き声を発するが,泣き声の音響上の特徴及び,各状況下において泣き声の定量的性質がどのように違うかを明らかにする研究が,種々行われてきた.本解説では,これらについて紹介する.このような研究には,単に,泣き声の定量的性質や,各状況下での統計的性質の違いを明らかにするものから,その啼泣原因を推定するルールベースシステムを提案するものまでが存在する.また,月齢によってもその定量的性質に違いがあり,新生児のみ対象とした研究や,月齢2 か月~ 6 か月,あるいは月齢12 か月までの高月齢児を対象とした研究がなされている.定量的性質としては,その周波数分布に着目するものが多いが,他に,泣き声の持続時間やその間隔に着目して乳児の状態を分類しようとする方法も提案されている.
著者
鷲野 翔一
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.2_13-2_20, 2007-10-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
27
被引用文献数
4 3

日本のITSについて若干の歴史的概観をした後,第3開発分野である安全運転支援システムの普及が芳しくないことを示し,その原因の一つに安全運転支援システムのコンセプトに問題があることを示す. 従来のコンセプトはドライバの運転負荷を少なくする形式のコンセプトで,どちらかと言えば,自然科学者が作ったコンセプトであった.しかし,よく調べると,運転負荷が増える方が事故も少なくなり,燃費も良くなるというデータもあり,交通心理学者をはじめとする社会科学者がこの現象に注目している.交通事故は注意をすればなくなるという簡単なものではなく,統計的な現象としてとらえる方がよいという説明もなされつつある.こういった社会科学者の力とITSの技術者が結集して安全運転支援システムのコンセプトを早急に作り,システムの開発と今後普及を図るべきことを述べる.
著者
佐久間 淳
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.348-364, 2014-04-02 (Released:2014-04-02)
参考文献数
83

近年の技術的進歩によって,ゲノムシーケンシングコストが急速に低下した.このことは大規模なゲノム疫学研究の発展をもたらし,遺伝子の個人差といえる一塩基多形(SNP)と生活習慣病を含む多様な疾患の関係が明らかになりつつある. またこれらの成果によって, 個人ゲノムに基づく疾患リスク予測も可能になりつつある. 個人ゲノムは予防医療を中心とした様々な個別化医療への応用の基礎となる情報であるが, 「究極の個人情報」とも呼ばれ,その扱いには慎重を要する. このため, ゲノム疫学や個別化医療においてゲノム情報を安全に活用するためのプライバシー保護技術の構築が望まれている.本稿ではゲノムデータの共有や公開に伴う多様なリスクと脅威について概観を示す. また, そのプライバシー上のリスクを減ずる主要なプライバシー保護技術として, 秘密計算(セキュアマルチパーティー計算)と差分プライバシーを紹介し,そのゲノム疫学と個別化医療への適用例について解説する.
著者
片山 正昭
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1_35-1_47, 2008-07-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
49
被引用文献数
2

高周波信号を電力線に重畳することで通信を行う電力線通信には,多種多様な用途や方式がある.本稿では,電力線通信の研究を振り返る.特に最も一般的な,商用電源の低圧配電線や屋内配線を用いる電力線通信を中心に電力線通信での信号チャネルの特異性について述べ,そのような環境での通信方式の幾つかを紹介する.更に低圧商用電源以外の電力線を用いるシステムの幾つかを紹介し,電力線通信が実用面における可能性だけでなく,学術的,技術的にも興味深いものであることを解説する.
著者
奥村 学
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.285-293, 2013-04-01 (Released:2013-04-01)
参考文献数
38

Yahoo!知恵袋などのcQA サイト,食べログなどの口コミ(レビュー) サイト,ブログ,Twitter に代表されるマイクロブログなど,今やCGM (Consumer Generated Media) あるいはソーシャルメディアと称されるメディアは,Web上に多種多様に存在する.本稿では,数あるソーシャルメディアの中から,cQA サイト,口コミサイト,マイクロブログを例に,これらのソーシャルメディアを対象とした分析技術について解説する.