著者
佐久間 淳
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.348-364, 2014-04-02 (Released:2014-04-02)
参考文献数
83

近年の技術的進歩によって,ゲノムシーケンシングコストが急速に低下した.このことは大規模なゲノム疫学研究の発展をもたらし,遺伝子の個人差といえる一塩基多形(SNP)と生活習慣病を含む多様な疾患の関係が明らかになりつつある. またこれらの成果によって, 個人ゲノムに基づく疾患リスク予測も可能になりつつある. 個人ゲノムは予防医療を中心とした様々な個別化医療への応用の基礎となる情報であるが, 「究極の個人情報」とも呼ばれ,その扱いには慎重を要する. このため, ゲノム疫学や個別化医療においてゲノム情報を安全に活用するためのプライバシー保護技術の構築が望まれている.本稿ではゲノムデータの共有や公開に伴う多様なリスクと脅威について概観を示す. また, そのプライバシー上のリスクを減ずる主要なプライバシー保護技術として, 秘密計算(セキュアマルチパーティー計算)と差分プライバシーを紹介し,そのゲノム疫学と個別化医療への適用例について解説する.
著者
片山 正昭
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1_35-1_47, 2008-07-01 (Released:2011-05-01)
参考文献数
49
被引用文献数
2

高周波信号を電力線に重畳することで通信を行う電力線通信には,多種多様な用途や方式がある.本稿では,電力線通信の研究を振り返る.特に最も一般的な,商用電源の低圧配電線や屋内配線を用いる電力線通信を中心に電力線通信での信号チャネルの特異性について述べ,そのような環境での通信方式の幾つかを紹介する.更に低圧商用電源以外の電力線を用いるシステムの幾つかを紹介し,電力線通信が実用面における可能性だけでなく,学術的,技術的にも興味深いものであることを解説する.
著者
山田 昭彦
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.4_9-4_17, 2010-04-01 (Released:2010-11-01)
参考文献数
25

中嶋章は1930年代に独自にブール代数に相当する理論を構築し,スイッチング理論の研究を行ってリレー回路設計に適用した.1935年にド・モルガンの法則を含むリレー回路構成理論を発表し,1936年には榛澤正男と共著で“+”と“×”の記号を用いてスイッチング回路を論理式で表し,この変換及び簡単化を含むスイッチング理論を発表した.Claude E. Shannon が同様の論文を発表したのは1938年である.中嶋の生誕100年にあたる2008年にフィンランドのTampere University of Technology より中嶋の全英文論文を収録した覆刻本が出版された.
著者
奥村 学
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.285-293, 2013-04-01 (Released:2013-04-01)
参考文献数
38

Yahoo!知恵袋などのcQA サイト,食べログなどの口コミ(レビュー) サイト,ブログ,Twitter に代表されるマイクロブログなど,今やCGM (Consumer Generated Media) あるいはソーシャルメディアと称されるメディアは,Web上に多種多様に存在する.本稿では,数あるソーシャルメディアの中から,cQA サイト,口コミサイト,マイクロブログを例に,これらのソーシャルメディアを対象とした分析技術について解説する.
著者
Graham NEUBIG Masato MIMURA Shinsuke MORI Tatsuya KAWAHARA
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
IEICE Transactions on Information and Systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.E95.D, no.2, pp.614-625, 2012-02-01 (Released:2012-02-01)
参考文献数
40
被引用文献数
6 13 6

We propose a novel scheme to learn a language model (LM) for automatic speech recognition (ASR) directly from continuous speech. In the proposed method, we first generate phoneme lattices using an acoustic model with no linguistic constraints, then perform training over these phoneme lattices, simultaneously learning both lexical units and an LM. As a statistical framework for this learning problem, we use non-parametric Bayesian statistics, which make it possible to balance the learned model's complexity (such as the size of the learned vocabulary) and expressive power, and provide a principled learning algorithm through the use of Gibbs sampling. Implementation is performed using weighted finite state transducers (WFSTs), which allow for the simple handling of lattice input. Experimental results on natural, adult-directed speech demonstrate that LMs built using only continuous speech are able to significantly reduce ASR phoneme error rates. The proposed technique of joint Bayesian learning of lexical units and an LM over lattices is shown to significantly contribute to this improvement.
著者
若林 一敏
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.37-50, 2012-07-01 (Released:2012-07-01)
参考文献数
21
被引用文献数
3

抄録 CやC++言語等のプログラム記述から,ASICやFPGAを設計するためのRTL記述を合成する「高位合成」技術の概要を述べる.まず,LSIの設計工程とその自動化の歴史と,LSIの大規模化による設計自動化の必然性について説明する.次に,高位合成技術の原理を工程ごとに解説する.高位合成は設計効率化以外に高性能化,低電力化,高信頼性化,再利用性の向上など様々な効果がある.なぜ,そのような効果が得られるかを,技術面から解説する.また,高位合成のターゲットアーキテクチャであるFSM(Finite State Machine)とデータパスからなるFSMDアーキテクチャ処理効率をCPUと比較して議論する.高位合成は基本原理が確立されプロトタイプシステムが出てから実用化まで長い時間がかかった.非常に広範な最適化技術の実装が必要だからである.これらの中から代表的な幾つかの技術を議論する.また,高位合成技術はアルゴリズム系のデータ処理回路だけでなく,制御系回路にも有効であることを示す.次に,ハードウェア向けのC記述の基本の考え方を紹介し,最後に,近年適用が広まっているFPGA向けの高位合成技術やそれを利用した新しい応用分野を紹介する.
著者
鎌倉 友男 酒井 新一
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.3_37-3_43, 2008-01-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

例えば,交通バリアフリー関連での音による注意喚起や的確な歩行誘導に,また展示会場における各ブースごとの個別案内に適用でき,その周囲の静音化が達成できる超指向性パラメトリックスピーカの開発に取り組んだ.このスピーカは超音波の非線形現象を積極的に応用するところにアイデアがあるが,これを実現するには,物理をはじめとして,音場解析を目的とした数学,ひずみの少ない可聴音を得るための最適な超音波変調方式や電子回路技術など,多方面からの検討が必要である.音環境の改善や整備を目的としたパラメトリックスピーカの開発過程の一端を紹介したい.
著者
水木 敬明
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.179-187, 2016-01-01 (Released:2016-01-01)
参考文献数
23

カードベース暗号とは,物理的なカード組を利用して,秘密計算等を実現するものである.1989年に5枚のカードで論理積を秘密計算できることが示されて以来,数多くのカードベースプロトコルが考案されている.カードベースプロトコルは,コンピュータやネットワークを必要とせず手軽に実行することができるとともに,その正当性や安全性は高校生でも容易に理解できる.本稿では,カードベース暗号の歴史を概観するとともに,最近の研究成果を紹介する.
著者
島津 明
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.320-328, 2012-04-01 (Released:2012-04-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

我々の社会は非常に多数の相互に関連した法令により規定されている.社会というシステムを考えたとき,法令がこのシステムの仕様書の役割を果たしていることを意味するが,法令の持つシステム的側面は従来十分な研究対象になっていない.今後本格化する電子社会においては,法令は一層重要な役割を持ち,安心な社会の実現には,法令の持つシステム的側面を捉える方法論が期待される.「法令工学」は,法令に情報科学的手法,ソフトウェア工学的手法を適用し,完全で矛盾のない法令の制定,法令が規定する社会基盤情報システムの開発などを計算機で支援するための方法論を研究する.本稿は,法令工学の目的やアプローチを紹介し,法令設計の支援,法令の文書化,法令の論理的検証,法令構造指向アーキテクチャなどの課題について示し,課題の解決に重要な役割を担う技術の一つとして,法令文書の言語解析について紹介する.
著者
大賀 寿郎
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.114-127, 2011-10-01 (Released:2011-10-01)
参考文献数
21

1945年,敗戦による大混乱からの復興を目指して立ち上がった当時の逓信省の電話機エンジニアの命題は,物理特性と人の心理特性とを定量的に把握し,カットアンドトライを排して納得できる物理量を根拠とするような設計を行うことだった.復興の機軸となるべく1949年に量産開始となった4号電話機は,伝送周波数帯域と明瞭度との関係の把握,正確な音響測定手法の確立など周辺技術の蓄積を推進しながら実用化され,定量的な設計を徹底した電話機として当時の最先端だった.その後,我が国が高度成長期に入った1964年から量産された600形電話機では,実用化にあたって聴覚心理グループが電話機の目標とすべき音響特性を示し,電話機設計サイドはこれを踏まえて電話機設計を行った.こうした過程を踏んで設計された電話機は世界に例が少ない.ここではオーディオ技術に注目し,我が国の標準電話機の実用化の概観の前編としてこうした研究実用化の経過を述べる.
著者
越田 俊介 陶山 健仁
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.24-36, 2015-07-01 (Released:2015-07-01)
参考文献数
60
被引用文献数
4 3

ディジタルフィルタは,言うまでもなく信号処理の基礎を成す重要な技術である.それゆえに,高い性能を有する「良い」ディジタルフィルタを得るための手法は古くから数多く提案されており,現在もなお幅広い視点から研究が進められている.しかしながらその研究成果は,今日のアプリケーションにおいて必ずしも十分に普及してはいないようにも思われる.その理由として,ディジタルフィルタの研究テーマの多様化・複雑化に伴い,「『良い』ディジタルフィルタとは何か」及び「『良い』ディジタルフィルタを得るために何が必要なのか」についての理解が曖昧になっている可能性が考えられる.そこで本稿では,まずこの問題について,設計・実現・実装それぞれの観点から明確に述べる.そして,「良い」ディジタルフィルタを得るための最新の研究動向として,2014 年ソサイエティ大会にて実施されたシンポジウムでの発表内容を中心に紹介する.更に今後の課題として,「良い」ディジタルフィルタを広く普及させるために考えるべきことについて議論する.
著者
藤井 竜也 藤井 哲郎 小野 定康 白川 千洋 白井 大介
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.80-89, 2011-07-01 (Released:2011-07-01)
参考文献数
31

筆者らは,高品質な画質を要求される分野での映像コンテンツの流通を目的として超高精細画像システムの研究開発と,その動画像アプリケーションとして4K ディジタルシネマの開発を進めてきた.本稿では, その4K ディジタルシネマのれい明期から検討を行ってきた劇場向けライブストリーミングの実現技術と, そのディジタルシネマ用プロジェクタとシネマ配信用の高速光ファイバネットワークによってコスト的にもそのビジネス性可能性を高めた新たな映像配信アプリケーションである劇場向けライブ配信(ODS サービス)について説明する.