著者
丸山 健司 稲荷 優太郎 長谷 俊彦 神田 智之 加藤 秀章
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00099, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
22

橋梁の維持管理の観点から,橋梁用積層ゴム支承には長期の供用期間を確保するための高い耐久性が要求される.一方で,供用中のゴム支承の点検ではゴムのオゾン劣化に起因すると考えられる亀裂の発生事例が報告されている.この様な経年変化による損傷を受けたゴム支承の性能や残存耐力を把握することは,ゴム支承の維持管理において重要である.本研究では超高減衰ゴム支承(HDR-S)を対象として,有限要素解析(FEA)によるひずみ分布や,剥離面を有するモデルの解析結果を元にオゾン劣化による亀裂の進展範囲について検討した.さらにオゾン劣化による亀裂を模擬した供試体の破断特性を評価し,ゴム支承形状や亀裂深さと破断特性の関連性について考察した.
著者
今村 航平 田村 誠 横木 裕宗
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.23-00054, 2023 (Released:2023-10-20)
参考文献数
43

気候変動による海面上昇への適応策である住宅移転に関して,住宅地の新規建設が可能な土地を浸水域から地理的距離が近い順に選定するシミュレーションを実装し,日本の全浸水影響人口を移転させる場合の移転費用,土地利用の変化,移動距離をそれぞれ推計した.その結果,2050年,2070年の移転費用はSSP5-RCP8.5では117-118兆円,150-151兆円,SSP1-RCP2.6では100-101兆円,108-109兆円と推計された.これらの金額は既往研究で推計された移転費用の範囲の下限に近かった.移転先の土地利用については,人口減少に伴って生じる荒地の使用が経年増加し,代わりに農地や森林の使用が経年減少した.遠い未来ほど人口減少によって浸水域の近傍に荒地が増えるため,移動距離は短くなった.
著者
西山 孝樹 藤田 龍之 天野 光一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00280, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
30

本研究では,江戸幕府の公式記録である『徳川実紀』をすべて読み,「山川掟」の初出とされる1666(寛文6)年以前の治水をするために治山も同時に行わなければならないと言及した法制度に関する事項を抜き出した.その結果,既往研究で「山川掟」の初出とされてきた20年ほど前の1645(正保元)年には,同様の内容に言及した法制度が存在していることを明らかにした.さらに,1666(寛文6)年から1742(寛保2)年の「山川掟」に関する事項も抜き出した.それらを整理したところ,「山川掟」に関するものは6事項が掲載され,約20〜30年ごとに発布されていた.現在においても,「山川掟」のように,治山と治水を同時に考えていくべきであり,江戸時代の政策は現在を生きる我々も,参考にすべき点は大いにあることを示した.
著者
五味 馨 藤田 壮 越智 雄輝 小川 祐貴 大場 真 戸川 卓哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.II_249-II_260, 2020 (Released:2021-03-08)
参考文献数
40

2018年4月に閣議決定された第五次環境基本計画において「地域循環共生圏」が大きく打ちだされ,政府の施策・事業にもその理念が取り入れられつつある.これまでのシステム・アプローチを基礎とした持続可能な発展に関する研究はこれと共通する部分が多く,その実現に大いに貢献することが出来るものと考えられる.本研究では提案型論文として,地域循環共生圏の考え方を取り入れたシステム研究の推進に必要な基礎的・理論的な整理と課題の検討を行う.まず地域循環共生圏の定義を確認し,その中核的な要素を抽出した「原則」として目標・方法・条件を提案する.また,行政計画や既往研究における圏域概念を分類して地域循環共生圏を位置づける.さらにシステム的な研究において必要となる課題を挙げ,その初動的なアプローチとして地域循環共生圏構築の活動をその構成要素に分解して構造化する手法を開発し,分析の基本的枠組みとして提案する.
著者
林 倫子 篠原 知史 大坪 舞
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.21-36, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
64
被引用文献数
1 1

本研究では,大阪中之島公園の起源ともいえる山崎ノ鼻「公園地」に着目する.「この『公園地』は,豊國神社境内地造営と一体的に,大阪府によって計画・整備された門前の盛り場であった」という仮説を設定し,この仮説に関する3つの傍証,すなわち(1) 境内の隣接地に「公園地」が必要とされた理由,(2)両事業の主体・時期の重なり,(3) 開設直後の「公園地」施設とその利用実態,を示した.さらにこの「公園地」の制度上の位置づけや公園制度との関係についても考察した.「公園地」は公共の管理する盛り場であるという意味で最初期の公園と同じ場所であったが,近代土地制度上は道路施設の一部として位置づけられていたこと,西洋的公園観の広まりとともに「仮公園」との併存を経て,正式な公園に編入されたことを示した.
著者
波床 正敏 山本 久彰
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_669-I_676, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
9
被引用文献数
5

鉄道やバスに関する需給調整規制が廃止され,鉄道事業法も2000年に改正されることで鉄道事業への参入が簡素化されたが,同時に,鉄道事業を廃止する際には許可が必要であったものが,事前届出制になったため,比較的容易に事業撤退できるようになった.このような需給調整規制の廃止は,自由な競争の下,鉄道事業の活性化によってサービス水準の向上を狙ったものであったが,その一方で地方部における鉄道サービスの衰退が進行した.本研究はこのような法改正前後で鉄道事業からの撤退がどの程度変化したかを調査し,需給調整規制廃止の影響を分析した.その結果,大手私鉄や第三セクター鉄道などで鉄道の廃線が進行したことが明らかとなった.
著者
有冨 孝一 上坂 克巳 柴崎 亮介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.623-634, 2010 (Released:2010-12-20)
参考文献数
56

図面による土木構造物のモデル化は,寸法値により設計意図を適切に表現できる.しかし,図面上の座標値は,表現できる精度が用紙の大きさにより制約を受けるので,実寸大の座標値を正確に再現できない.また,平面直角座標系による座標値は地球の曲率による縮尺補正,標高差による投影補正が必要である.しかし,これらの補正では1万分の1の精度までしか補正できず,標高軸が現場の標高軸と異なる.  本研究は,土木構造物の3次元設計モデルを,地球を3次元多様体空間と仮定し,任意の地点で地表の水平面が重力方向の方向軸と鉛直な3次元直交座標系を使用でき,設計長と実測延長と比較検証して一致することを示した.
著者
引地 博之 青木 俊明 大渕 憲一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.101-110, 2009 (Released:2009-04-20)
参考文献数
40
被引用文献数
4 4

本研究では,地域に対する愛着の形成過程を検討するため,地域環境に対する評価が高い住民ほど,地域への愛着が強いという仮説を措定し,社会調査によりその妥当性を検証した.共分散構造分析などの分析の結果,以下の知見を得た.1)地域の物理的環境に対する評価が高い人ほど,地域に対する愛着が強い,2)地域の社会的環境に対する評価が高い人ほど,地域に対する愛着が強い,3)社会的環境に対する評価は,物理的環境に対する評価に比べて,より愛着を高めうる,4)地域環境に対するこれらの評価は,居住年数以上に愛着形成を促す,すなわち,地域への愛着は,単なる居住年数の長さ以上に,地域での経験の質によって強く規定されることが示唆された.
著者
田中 皓介 中野 剛志 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_353-I_361, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
11
被引用文献数
2 4

人文社会科学において,“物語”は,人間,あるいは人間の織り成す社会の動態を理解するにあたって重要な役割を役割を担うものと見なされてきている.それ故,人間や社会を対象として,公共的な観点からより望ましい方向に向けた影響を及ぼさんと志す“公共政策”においても,物語は重大な役割を担い得る.また公共政策の方針や実施においては,マスメディアが少なからぬ影響を及ぼしていることが十二分に考えられる.ついては本研究では,現在の日本において,政策が決定,採用されてきた背景を把握するにあたり,新聞の社説を対象とし,新聞各社に共有されている物語を定量的に分析することとする.
著者
高橋 良和 小嶋 進太郎 Mya San WAI
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.16-31, 2020 (Released:2020-01-20)
参考文献数
62
被引用文献数
1 1

本研究では,第二次世界大戦末期に朝鮮半島で建設された複斜材型トラス橋梁について,朝鮮総督府鉄道局の小田彌之亮技師による回顧や当時の雑誌等の記述を組み合わせることにより,その開発の経緯を整理した.戦争時に爆撃の対象となる重要構造物である橋梁について,昭和10年代に行われた耐弾性能を高めるための技術的検討を整理し,内的・外的不静定,吊構造などの異なる技術の組み合わせ(多様性)を推奨していたこと,また高次不静定橋梁の構造計算は,近似的解法による一次応力の算出だけではなく,曲げによる二次応力も算出し,その精度が極めて高いことを証明した.また,中国と北朝鮮間の国際橋梁である鴨緑江橋梁について,その設計,架設状況について整理するとともに,実際の被害を踏まえた耐弾性能について検証した.
著者
栢原 佑輔 林 倫子 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-12, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
42

1987(昭和62)年から実施された京都鴨川の戦後の鴨川改修計画においては,背後地との調和,河川空間からの眺望景観保全などが設計内で考慮されており,その景観設計に対する評価も高い.本研究ではこの鴨川改修計画に着目し,その改修計画における景観設計の内容の変遷を明らかにした.その成果として,1) 鴨川改修協議会において検討案(1)~(4)が提示されており,検討案(1)から検討案(2)にかけての基本設計の変化が景観設計の転換点であったこと,2) その際「鴨川らしい景観」の具体化が行われ,視覚面・空間面のなじみ,調和を考慮した景観設計へと変遷したこと,3) この設計変更には,協議会における議論や設計者の自由な発想が大きく寄与していたこと,が明らかとなった.
著者
大久保 一徳 大山 浩代 別府 万寿博 大野 友則 片山 雅英
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.53A, pp.1273-1283, 2007 (Released:2007-08-01)

This study is to find the local damage and failure of concrete plate due to the contact and close-in explosion by C4 explosive. First, to examine the blast effects by C4 explosive, basic explosion tests were done. Then, the relation between the maximum overpressure and distance from an explosive source is formulated. Next, to examine the local damage and failure of concrete plate due to the contact and close-in explosion by C4 explosive, the small scale explosion tests were carried out. In tests, the concrete plates (50cm x 50cm square) were employed. And, to know the material model and parameter to be used for the hydro code AUTODYN, some of test cases were numerically simulated.
著者
原 祐輔 赤松 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_611-I_620, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

本研究はNetwork GEVモデルを用いた確率的利用者均衡配分(SUE)モデルを提案する.Logit型SUEは重複経路の選択肢間相関によって,経路負荷が不自然となる問題が存在する.経路相関を扱う既存の経路選択モデルは経路列挙を必要とし,大規模ネットワークへの適用が困難であった.本研究は道路ネットワーク構造を直接的に用いて経路間の相関構造を表現するNetwork GEVモデルを提案し,終点別リンク交通量を用いたリンク・ノード表現によるNetwork GEV型SUEの等価最適化問題を定式化する.この表現はノードごとに分解した推移確率であるため,マルコフ連鎖配分やDialのアルゴリズムをNetwork GEVモデルに容易に拡張可能である.最後に,Logit型SUEとNetwork GEV型SUEを数値計算により比較し,IIA特性が緩和可能であることを示す.
著者
宇野木 早苗
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学講演会講演集 (ISSN:04194918)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-11, 1959-10-31 (Released:2010-08-04)
参考文献数
43
被引用文献数
4
著者
木瀬 晃周 有川 太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_385-I_390, 2020 (Released:2020-11-04)
参考文献数
19
被引用文献数
2

津波は土砂を含んだ場合,通常の海水に比べて密度が増し,波力が増大することで,建造物等に大きな影響を及ぼすと考えられている.宮城県気仙沼市に残っていた東日本大震災時の津波の水を調べたところ,含まれる土砂の中央粒径は6.74µmと多くはシルトに分類されるような細かいものであった.既往の土砂混じりの津波の波力や氾濫水密度,シルトを含む津波の波力を明らかにした研究はないため,本研究では土砂やシルトを含んだ津波に関して実験を行い,密度や水面角度,波力の大きさ等を比較,波圧係数による検討を行った.その結果,フルード数が同じであっても土砂が混じることで相対的に波圧が増大する可能性があることが示された.
著者
松本 浩子 内田 敬 楊川 優太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.I_491-I_500, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
6

視覚障碍者の街歩き支援として「ことばの地図」を用いた音声ARアプリの実用化研究を進めてきた.しかし,歩行時は危険との隣り合わせで,初めて訪れる街で安全に使用し,正しく情報を理解することは困難である.そこで屋内で,音声ARアプリと実都市の臨場感を再現した環境音を用いたバーチャル散歩システムによる予習環境を試行している.将来的には,バーチャル散歩システムを改善し,晴眼者がガイドマップや Google「ストリート・ビュー」などで享受している疑似旅行・外出体験と同様の経験機会を,視覚障碍者に対して聴覚情報として提供する「ことばの観光地マップ」の作成を目指す. 本論文では,まずことばの観光地マップについて概説する.次に,実験計画・内容を示し,実験結果をまとめ,今後の展開を示す.
著者
山田 貴博
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_277-I_284, 2016 (Released:2017-01-29)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

近年,数値シミュレーションの信頼性の確保のためのアプローチであるVerifiction and Validation(V & V)に注目が集まっている.数値計算手法の基本的特性の評価および数値解析コードの検証(verifiction)においては,Roache等によって提案された創成解の方法(Method of Manufactured Solutions)が流体力学の問題を中心に広く用いられている.一方,強形式に基づく従来の創成解の方法を固体力学の問題に適用する場合には,応力の空間微分を求めることが必要となることから,これまでは使われることが少なかった.この問題点に対して,筆者等は弱形式に基づくことで応力の空間微分を回避する手法を提案している.本研究は,この手法を超弾性体の大変形問題に対する創成解の方法に適用し,従来検討されることの少なかった大変形状態における有限要素法の近似特性の評価を行うものである.
著者
佐藤 岳史 中原 史晴 青木 智幸 岸田 潔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F1(トンネル工学) (ISSN:21856575)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.17-31, 2021 (Released:2021-02-20)
参考文献数
25
被引用文献数
2

トンネル掘削時に実施する変位計測は,切羽近傍地山の評価や予測,支保の選定とその妥当性を検証する際に有益な情報を提供する.事前の地質調査に限界のある大土被りトンネルにおいては,内空変位計測データが持つ特性を最大限有効活用することが望ましい.計測データの活用方法の一つに,掘削時の初期変位と最終変位の相関性を把握し,切羽開放後の初期段階で最終変位を予測することがある.本論文では,計測データと実際のトンネル支保の挙動分析を行い,初期変位計測の意義を明らかにするとともに,硬質層状の堆積岩地山での掘削を対象に,最終変位量を施工管理基準値とするための新たな提案を行った.この分析的アプローチを南アルプストンネルの施工に適用することで,その妥当性を実証した.
著者
小野澤 恵一 鯉渕 幸生 古米 弘明 片山 浩之 磯部 雅彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.891-895, 2005-10-07 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2

台場周辺には, お台場海浜公園を始め親水空間が多数存在するにも関わらず, 水質悪化により水との接触が制限されている. 特に雨天時合流式下水道越流水 (CSO) はその影響が大きいとされているが, 受水域における挙動はあきらかにされていない. そこで, 都市沿岸域における親水空間の利用と健康リスクに対して重要なCSOの挙動を解明するため, ポンプ所からの下水放流量や, 感潮域の流速時系列変動を加味した3次元流動モデルを開発し, 台場周辺海域での流動・CSOの挙動を再現した. CSOの影響が, 潮汐や, 降雨特性によって時空間的に大きく変化することを明らかにし, さらに, 合流改善クイックプランの効果を推算した.
著者
川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_123-I_142, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
123
被引用文献数
4

物語(narrative, story)の性質は,人文科学において古くから論じられてきたが,近年,社会学・政治学・社会心理学・経営学などの社会科学諸分野においても,人間のコミュニケーション能力や認知能力の本質を理解するための手がかりとして,物語の概念が注目を集めている.しかし,公共政策の策定及び遂行の場面で,物語の性質を実践的に利用する方法が十分に明らかにされているとは必ずしも言い難い.本研究では,とりわけ公共政策におけるコミュニケーションに応用しうる理論や発見に焦点を当てて,既往の物語研究の成果をレビューするとともに,物語が公共政策における実践活動をどのように改善し得るかについて考察し,今後行われるべき実証的研究の方向性を提案する.