著者
岡本 昌 真田 純子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-12, 2016 (Released:2016-01-20)
参考文献数
8
被引用文献数
4

本研究は,広域的な連携をベースに保全のあり方を考える基礎研究として,以下の2点を目的とした.1)徳島県全域を対象に,棚田・段畑の石積みの保存状態の現状と技術継承の実態を明らかにすること.2)石積みの技術を明確にし,技術の違いや汎用性を明らかにすること.その結果,高齢化や過疎化による労力不足や後継者不足で,棚田や段畑の石積みの維持・保全ができていない地域が多いこと,石積みの基本は共通しており,石の特性の違いを知り,山石で積む技術を習得すれば,県内全域で積むことが可能であることが明らかとなった.
著者
野口 孝俊 浦本 康二 鈴木 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.20-29, 2014 (Released:2014-08-20)
参考文献数
27

第二海堡は,軍事要塞として明治32年に人工島が竣工し,建設後100年が経過している.その間,第二海堡は1923年の関東大震災によって被害を受け,長年の風浪等により劣化・損傷・崩壊が進行している.現在,護岸の保全を行い,その一部は当時の護岸を復旧させることを検討している.本稿は,工学的立場から,国内で初めての海上人工島築造に対する海堡建設計画,建設技術,設計技術など明治期土木構造物の建設技術をとりまとめ,現代技術への展開について考察を行った.
著者
池田 一 吉田 真也 安養寺 信夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_105-I_110, 2015 (Released:2016-01-31)
参考文献数
14

火山噴火に対する危機管理の意思決定を行うにあたり,最も困難な側面のひとつは火山観測データの解釈である.火山観測データに応じて,火山噴火の危険性を定量的に評価することが可能となれば,火山噴火時の危機管理の意思決定を支援する重要な情報となる. 本研究では,火山噴火の危険性について,火山観測データを噴火確率として定量的に評価した.具体的には,御嶽山の2014年危機を対象として,火山観測データのうち火山性地震と火山性微動の発生回数のデータを用いて,ベイズ推定により,時々刻々と変化する噴火確率を推定し,火山噴火の危険性を定量的に評価できることを示した.
著者
小川 圭一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.288-303, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
41
被引用文献数
2

本研究では,出発地・目的地間の自転車の車道横断回数を考慮して,自転車の通行方向を左側のみの一方向通行とする整備や規制をおこなった場合と,双方向通行とする整備をおこなった場合との,出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の比較をおこなう.具体的には,格子状の道路ネットワークをもつ京都市中心部と,非格子状の道路ネットワークをもつ京都市郊外の洛西ニュータウン付近とを対象として,出発地・目的地間の交通事故遭遇確率の算定をおこない,格子状,非格子状といった道路ネットワーク形状に関する特性と,自転車の通行位置と通行方向による交通事故遭遇確率との関係について比較をおこなう.
著者
谷口 綾子 川村 竜之介 赤澤 邦夫 岡本 ゆきえ 桐山 弘有助 佐藤 桃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_309-I_316, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
13

本研究では,運動着(ジャージ・スウェット)の日常的な着用が大学内の景観と授業態度に与える影響を定量的に明らかにするため,運動着での登校が学内の景観イメージにネガティブな影響を及ぼす,運動着での登校と授業態度との間にネガティブな関係が存在する,との二つの仮説を措定し,筑波大学の学生を対象としたアンケート調査により検証した.その結果,運動着での登校は大学内の景観イメージに「似合わない」とネガティブな影響を及ぼすこと,運動着で登校している学生は遅刻や居眠りをする度合いが高いなど授業態度との間にネガティブな関係が存在することが明らかとなった.また,公共交通で通学する学生の方が,そうで無い人と比べ運動着登校経験が少ないこと,運動着登校経験がある人の方が運動着登校にポジティブな意見を持つことが示された.
著者
金子 真 二瓶 泰雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_1591-I_1596, 2012 (Released:2013-03-26)
参考文献数
10
被引用文献数
2

Tidal urban rivers have severe environmental problems like massive fish death which was mainly caused by formation of hypoxic water mass. However there was little information on DO environments in large tidal rivers. To investigate DO environments in tidal rivers and its relation to floodings which are closely related to CSO(Combined sewer overflow) impacts, we conducted field measurements on water-quality environments in the Sumidagawa and Kandagawa Rivers, Japan. The result indicates that massive fish death in tidal reach of small urban rivers appeared frequently just after flooding events in summer seasons. The measured results reveal that DO on Sep. 9, 2010 were lower than 2 mg/ L in overall region of Sumidagawa River due to the flooding event. These facts indicate that inflows of CSO due to flooding events have an important influence on reduction of DO concentration in the Sumidagawa River.
著者
林 倫子 藤原 剛 出村 嘉史 川崎 雅史 樋口 忠彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.187-197, 2009 (Released:2009-06-19)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

現在の京都御苑周辺に歴史上設けられた数多くの園池へは,禁裏御用水が供給されていた.本研究では,広域的な導配水システムとしての禁裏御用水に着目し,その流路構造や付帯施設を歴史的資料を用いて明らかにした.その結果,禁裏御用水の4つの施設面の特徴とマネジメントルールを抽出し,禁裏御用水が水の安定供給に加えて上流の田畑と下流の園池での水の共用にも配慮していたことを示した.更に,各園池への導水経路を検証し,水の引き込み方の特徴として,相国寺開山塔庭園の特殊性と御溝水の自由度の高さを指摘した.
著者
宗景 志浩 Xuan Tuan LE 夏川 優樹 岩崎 望
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1096-1100, 2002-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1

内湾養殖域の沈降懸濁物と底泥及びヴェトナムのエビ養殖池の海水に含まれる抗生物質濃度を分析した. 人工餌料が使われるようになって沈降懸濁物は減少傾向にあるが, 抗生物質は多量に含まれ, 分解しにくいアンピシリンは底泥中に高濃度で残留していた. エビ養殖池の海水中に含まれるサルファ系抗生物質の濃度レベルは0.05-2.3ppmで極めて高かった. 10~200μMのオキシテトラサイクリン (OTC) 含有培地中でプランクトン (A. klebsii及びS. costatum) を培養した結果, いずれの場合もOTC濃度が高い程吸収されやすくかつ細胞中に蓄積されやすいことがわかった. また, OTCは初期段階でこれらプランクトンの増殖を促進した.
著者
木瀬 晃周 有川 太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_385-I_390, 2020
被引用文献数
2

<p> 津波は土砂を含んだ場合,通常の海水に比べて密度が増し,波力が増大することで,建造物等に大きな影響を及ぼすと考えられている.宮城県気仙沼市に残っていた東日本大震災時の津波の水を調べたところ,含まれる土砂の中央粒径は6.74µmと多くはシルトに分類されるような細かいものであった.既往の土砂混じりの津波の波力や氾濫水密度,シルトを含む津波の波力を明らかにした研究はないため,本研究では土砂やシルトを含んだ津波に関して実験を行い,密度や水面角度,波力の大きさ等を比較,波圧係数による検討を行った.その結果,フルード数が同じであっても土砂が混じることで相対的に波圧が増大する可能性があることが示された.</p>
著者
Idham Riyando MOE Shuichi KURE Nurul Fajar JANURIYADI Mohammad FARID Keiko UDO So KAZAMA Shunichi KOSHIMURA
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_283-I_289, 2016 (Released:2017-02-20)
参考文献数
13
被引用文献数
4 8

Floods are considered to be one of the major natural disasters in Indonesia. Jakarta in Indonesia has experienced many floods in the past, such as those in 1996, 2002, 2007 and 2013. In this paper, land subsidence problems contributing to flooding in Jakarta were described and historical and future land subsidence situations in Jakarta were reconstructed and projected using a simple linear extrapolation method. Also, those land subsidence impacts were analyzed by using a flood inundation model. As a result of analysis, it was found that the land subsidence in Jakarta contributed by 17.6% to increase of the total flood inundation volume from 1983 to 2013. Also, it was estimated that the land subsidence situations for the future period of 2050 would increase the flood inundation volume by 10.3% compared to those of 2013. However, impacts from land use/cover changes on the flood inundation were found to be much greater than those from land subsidence in Jakarta. It should be noted that the land subsidence affects flooding from the coast when high waves and surges occur but those effects were not considered in this paper.
著者
本間 友香里 近藤 隆二郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.II_329-II_339, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
25

本研究は,ベルギーゲント市のNPO団体EVA(Ethical Vegetarian Alternative)の活動における特徴や強みを明らかにしたものである.EVAは動物福祉や環境問題のために,ベジタリアニズムを広めることを活動の目的としており,その中でDonderdag Veggiedag(ドンダ-ダーク・フェヒーダーク)という名の週一ベジタリアン運動を展開している.EVAの活動にはフランダース州政府から助成金が出されており,また2009年からドンダ-ダーク・フェヒーダークがゲント市のオフィシャルキャンペーンとなる等,行政との協働関係が構築できている.長い肉食の歴史を持つ国で,ベジタリアニズムを広めるEVAの活動が成功している要因を明らかにするために,EVAの活動における特徴や強みについて検討を行った. その結果,EVAは人々に対し,よりポジティブな印象を与える活動や積極的な情報発信,参加型イベントを開催する等,市民が参加し易い活動を心掛けていることが明らかになった.また質の高い内部マネジメントが行われていたり,政治家との繋がりを作り,それを行政との協働関係構築に発展させる等,行政側と市民側の両方にバランスの取れた活動が行われている.これらのことより,EVAの活動は「明るく」,また戦略に基づいた「冷静」なものといえ,活動を成功へと導いていると結論づけられる.
著者
宇野 宏司 高田 知紀 辻本 剛三 柿木 哲哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_677-I_682, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
12
被引用文献数
2

国生み伝説で知られる淡路島の海岸から1km圏内には多くの神社が鎮座している.本島沿岸は2012年に公表された内閣府による南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)で兵庫県下最大の津波被害が出ると予想されており,避難場所の確保が重要な課題のひとつになっている.本研究では,本島沿岸1km圏内に鎮座する神社の空間配置の諸情報(緯度経度・標高)と内閣府による津波被害の想定結果を用いて,将来の南海トラフ地震時における淡路島沿岸域の神社の津波被災リスクについて検証した.その結果,多くの神社が直接の津波被害を免れ,長い歴史をもつ神社の現在の空間分布は過去の大規模災害によって淘汰された結果を示しているという仮説を裏付ける結果が得られた.また,祭神による津波被災リスクの違いがあることも明らかにされた.
著者
田中 皓介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_241-I_248, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
31

日本という国土に生きていく以上,大雨や地震,雪害などあらゆる自然災害への対応が必須である.そのような自然災害発生直後には,例えば多くの自衛隊や警察,消防が動員され救助や復旧にあたっていることは広く国民の知るところである.一方で,地元の建設業者もまた大きく貢献しているものの,地元建設業をはじめとした土木業界の活躍は,人々の認知が十分になされていない.このように,土木建設業あるいは公共事業を軽視する状況が続けば,今後の日本では十分な災害対応が困難となることが懸念される.そこで本研究では,国民世論の形成に寄与する新聞報道を対象に,災害発生後の救助や捜索,復旧活動に着目し,その報道状況を明らかにする.そして,内容の分析,考察に基づきその改善に向けた知見の提供を目的とする.
著者
新城 竜一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_3-I_11, 2014 (Released:2015-02-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3

琉球列島の地質学的特徴について概観し,特に中琉球に位置する沖縄島をとりあげ,その地質と成り立ちについて解説した.琉球弧はプレートの沈み込み帯に位置し,その西側には若い背弧海盆(沖縄トラフ)が発達している.そこではマグマ活動と海底熱水活動が活発である.島弧は2つの構造線で分断され,北・中・南琉球の3つのセグメントに分けられる.沖縄島北部の地質は,ペルム紀から始新世にかけての古い地層群からなり,主に付加体堆積物で構成されている.これらは西から東へ帯状に配列しており,最も東側の名護帯と嘉陽帯は西南日本の四万十帯に対比される.沖縄島の南部には後期中新世から第四紀の若い地層(島尻層群と琉球石灰岩)が分布している.島尻層群を構成する泥が堆積した海から,琉球石灰岩のもととなったサンゴ礁の海へ,海洋環境が大きく変化したことが推定され,沖縄トラフの形成と密接に関連した海域と島弧の地殻変動(島尻変動)が生じたらしい.その後,琉球石灰岩を切るブロック状の断層運動(うるま変動)によって島嶼化がすすんだ.
著者
北川 夏樹 鈴木 春菜 中井 周作 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_697-67_I_703, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
20

本研究では人の社会的な生活に欠かせない活動の一つである「移動」に着目し,移動中に感じる気分や体感と,生活に対する個人の主観的な評価である「主観的幸福感」との関係について検証することを目的とした.また,移動時の風景等の属性と幸福感についても相互の関係を検証し,幸福感という観点からの「良い移動」について検討した.結果,移動時の肯定的な感情や感覚を下位尺度とする「移動時の幸福感」尺度と,生活における種々の主観的幸福感との間に正の相関関係がみられた.これは,移動が目的地へ達するための単なる手段ではなく,人の生活の質を向上させうる重要な活動の一つであることを示唆している.さらに,移動先での目的によって移動が幸福感に及ぼす影響が異なることや,移動時の風景が幸福感に有意に影響している可能性が示唆された.
著者
森田 泰智 森地 茂 伊東 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_595-I_611, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
24
被引用文献数
2

近年,東京の都心駅周辺で急速に都市開発が進展し,これにより,駅施設の処理能力を上回る旅客のホーム上での滞留が発生するなど,鉄道駅で激しい混雑が見られるようになった.しかし,上記の駅周辺での都市開発の進展は,駅施設に急激な負荷をかけることとなるが,駅施設が交通量の増加にどこまで耐えられるのかについて,曖昧で把握されていない.そこで本研究では,都心駅周辺の急速な都市開発による鉄道駅の激しい混雑への対応に向けて,駅構内の混雑の実態調査を行い,ピーク時における駅施設(本研究では,駅構内で最も混雑する場合が多いホームの昇降施設等に着目)で刻々と変化する旅客の捌け方を秒単位で計測し,駅昇降施設が許容できる交通量(本研究では,最大捌け人数と定義)を検討した.
著者
佐藤 太裕 谷垣 俊行 佐藤 諭佳 島 弘幸 井上 昭夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_25-I_34, 2016 (Released:2017-01-29)
参考文献数
26
被引用文献数
1 5

自然界に生息するタケは中空円筒であり,かつ節と組織構造を有する植物である.これは適者生存の厳しい環境下でできるだけ強く,高く生育するためにタケ自身が進化の過程で獲得してきた形態であり,力学的に極めて高い合理性を有すると考えられる.本研究は,タケの生態を構造力学的に紐解き,節配置の高さ方向分布と維管束の横断面内分布の不均一性が織り成す力学的優位性を実証するものである.この研究により,曲げを受けるタケの節配置による断面偏平抑制効果を剛性に関する異方性を考慮した無次元パラメータにより記述し,タケが外力により生じる曲げモーメント分布に合わせて断面偏平を効率的に抑制していること,また横断面内維管束分布は曲げ剛性を高めるように効果的に配置されていることが初めて理論的に示された.
著者
本村 真澄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.339-358, 2011 (Released:2011-08-19)
参考文献数
40

本稿では,帝政ロシア,ソビエト連邦,ロシア連邦における石油・天然ガスパイプラインの建設の歴史を概観し,その政治的な影響に関しても検討する.石油パイプラインでは東欧向けの「友好」パイプラインのように政治的な支配圏維持を目的としたものもあるが,1970年代のロシアから西欧向けの天然ガスパイプラインは,「緊張緩和」を前提としたもので,ソビエト連邦の崩壊を挟んで40年近く,安定的にガスを供給しており,政治的な「武器」としてではなく,むしろ地域の「安定装置」として機能してきた.今日,ロシアの石油パイプラインは太平洋に達しようとしており,天然ガスパイプラインも極東地域での配備が進んでいる.日本にとってこれはエネルギー安全保障上有利となる動きであり,これへの関与の姿勢が問われている.
著者
市井 健吾 室町 泰徳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_1251-I_1258, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
10

道徳観を問われる社会問題は都市・交通分野をはじめとした土木計画分野を含め,私たちの身近で多く発生している.この問題解決に向け,非協力行動をとる人に対して協力行動をとるよう行動変容を促す必要があり,そのために「道徳意識」を変化させる必要がある.本研究は,特定の状況下におかれた人間の脳機能を計測するための装置としてfMRIを使用し,道徳意識を問われるような状況におかれた人間の脳機能を計測した.道徳意識を神経科学的な側面から分析した結果,協力行動と非協力行動を取る人では賦活部位に相違があることが示された.