著者
高 裕也 二宮 順一 森 信人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_175-I_180, 2018 (Released:2019-03-30)
参考文献数
9
被引用文献数
2

現在気候実験3,000年(60年×50メンバ)および将来気候実験5,400年(60年×90メンバ)の大規模アンサンブル気候予測データ(d4PDF)を用いて,日本海沿岸における低頻度気象災害要因の一つである爆弾低気圧に対する気候変動の影響評価を実施した.現在気候および将来気候からの爆弾低気圧抽出結果から,発生個数にはほとんど将来変化はないが,最低中心気圧の強度は将来的に増加する傾向があることがわかった.また,日本沿岸域に被害を及ぼす可能性がある爆弾低気圧について解析した結果,全体に占める台風並みに発達する爆弾低気圧の割合が増加し,特に中心気圧の強度も増加する傾向を示した.
著者
寺田 惇郎 平田 輝満 清水 吾妻介 屋井 鉄雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_1205-I_1218, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
18

今後の空港計画において航空機騒音は依然重要な検討要素で,首都圏空港では今後の容量拡大を検討するうえで騒音負担のあり方を十分に議論することが必要不可欠となる.一方で従来から市街地上空を飛行しながら発着している福岡空港では滑走路増設による容量拡大計画が検討されている.本研究では,福岡空港周辺住民を対象に質問紙調査およびヘッドホン面接調査を並行して行い,航空機騒音への受容意識に関わる要因構造の把握を試みた.質問紙調査では,航空機騒音への受容意識には騒音の直接的影響だけでなく,空港アクセス利便性重視意識等も影響を及ぼしていることを明らかにした.ヘッドホン面接調査では,これまで十分に考察されてきたとは言い難い個人ごとの屋内騒音レベルや騒音への敏感さが騒音への不快感に与える影響について考察した.
著者
田島 芳満 川崎 浩司 浅野 雄司 Noel M. ORTIGAS
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_1431-I_1435, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1

This paper aims to overview the hydrodynamic characteristics of storm surges and waves induced by Typhoon Haiyan around Leyte and Samar, Philippines, especially based on the results of the post disaster joint survey of PICE and JSCE. A number of local residents remained along the coast when inundation started and, based on intensive interviews of those local residents, the survey team obtained information of not only the heights of inundation and run-up, but also other hydrodynamic features such as timings and durations of inundations, flow directions and the level of surface water fluctuations. Comparisons of these findings of the disaster survey and numerical analysis clearly indicated that the wind-induced stormy waves had significant impact on inundations especially along the east coast of Leyte and Eastern Samar.
著者
Bahareh KAMRANZAD Nobuhito MORI
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_1351-I_1355, 2018 (Released:2018-11-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

High quality wave data in data-scarce regions are required in order to provide a reliable source for wave climate assessment. In this study, numerical modeling was utilized in order to generate the wave characteristics in the Indian Ocean (IO) region using super-high-resolution wind field MRI-AGCM3.2S as forcing. The model was evaluated in comparison to the satellite data and the validated model was performed to simulate historical and future projections of the wave in the study area (25 years for each period). Comparison of mean annuals of the wave indicated a slight decrease of significant wave height (SWH) in the Northern Indian Ocean (NIO) and middle parts of the Southern Indian Ocean (SIO) while there is a considerable increase near the southern ocean adjacent to Antarctica. The change of mean wave period (Tm01) will be less in the future, however, there will be a considerable increase in the south of India. The results of this study indicate the different patterns of change for wind and wave parameters in different regions of the IO.
著者
近藤 康行 権田 豊
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-12, 2012 (Released:2012-02-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1

本研究は,欧米で用いられている,河川水の電気抵抗の変化から魚の通過数を計測する手法(魚カウンター)を用い,日本の魚道を利用する魚類を計測することを目的としている.魚カウンターのセンサー部を,水理条件等の魚道の設計指針を満足するように,日本の魚道の形状に合わせて後付で構築し,産卵期に魚道を遡上するシロサケ(サケ)の数を計測した.センサー部をビデオカメラにより計19時間撮影した画像から計数したサケの遡上数と魚カウンターによる計測結果を比較したところ,魚カウンターによるサケの計測精度は96%であり,十分な精度で遡上数を計測できることが示された.魚カウンターの精度を低下させる可能性のある要因,センサー部の後付での構築方法及び調査コストについて整理,考察した.
著者
山田 雅行 伊藤 佳洋 長尾 毅 野津 厚 長坂 陽介 大岩根 尚
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_691-I_699, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1

比較的小さな盆地構造(カルデラ)を有する薩摩硫黄島において,臨時地震観測によってサイト増幅特性の算定を行い,一方で,常時微動観測(単点H/Vおよびアレイ観測)を行い,地盤モデルの推定を行った.硫黄島港および薩摩硫黄島飛行場において算定したサイト増幅特性と,常時微動に基づく地盤モデルに対して一次元重複反射を用いて算定した伝達関数の比較を行った.港湾および飛行場の伝達関数は,0.2~0.3Hz付近にピークは見られるものの,それほど明瞭なピークは見られず,サイト増幅特性には盆地構造による3次元的な効果や,地震波の入射方向の効果が含まれているものと考えられる.また,港湾と飛行場のサイト増幅特性の0.2~0.3Hz付近の共通の特徴から,両地点は深い構造を共有していると推察され,実際のカルデラ構造が従来の解釈より複雑である可能性が示唆された.
著者
原子力土木委員会 津波評価部会
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.168-177, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
28
被引用文献数
2

原子力発電所の津波に対する安全性評価に係る検討として,津波水位の確率論的評価法について検討を行い,ロジックツリーに基づく評価体系の枠組みを立案し,東北日本太平洋側を対象に試計算を行った.また,津波のソリトン分裂が発生すると津波の波高が増幅し,その後の砕波により波力や流速が増大する場合があることから,非線形分散波理論に基づき,津波の分散性と砕波を考慮した数値計算モデルを提案し,現地計算へ適用することにより実用性の確認を行った.また,津波により防波堤および陸上構造物に作用する波力評価手法について検討した.本報告では,これらの検討成果を紹介する.
著者
平岡 透 碇 正敬 幸 弘美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.93-98, 2010 (Released:2010-03-19)
参考文献数
16

本ノートでは,流域内の降雨量から河川の水位観測所の流量を貯留関数法で推定し,推定した流量と水位観測所で計測した実績水位から水位観測所の水位予測を精度良く行う方法を提案する.まず提案法のアルゴリズムを説明し,次に実データを用いた実験を通して提案法の有効性を検証し,最後に本ノートのまとめと今後の展望について示す.
著者
奥村 与志弘 後藤 浩之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_750-I_757, 2013 (Released:2013-06-19)
参考文献数
27

プレート境界で設定するすべりに対して分岐断層で設定するすべりがどの程度であるべきかについての知見はこれまで十分に得られていない.本研究では,プレート境界で発生した破壊が浅部に向かって伝搬する場合に,プレート境界に破壊が伝搬する場合と分岐断層に破壊が伝搬する場合とで,どのように違うのか力学的に考察した.また,発生する津波の特徴の観点から両シナリオの違いを整理した.
著者
稲谷 昌之 後藤 浩之 盛川 仁 小倉 祐美子 徳江 聡 Xin-rui ZHANG 岩崎 政浩 荒木 正之 澤田 純男 ZERVA Aspasia
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_758-I_766, 2013 (Released:2013-06-19)
参考文献数
7
被引用文献数
1

2011年東北地方太平洋沖地震では内陸部の宮城県大崎市古川地区において地震動による構造物被害が多く発生した.古川地区の中でも一部地域に被害が集中していることから,その原因の一つとして地盤震動特性の違いが考えられる.そこで,本研究では古川地区に展開されている超高密度地震観測のデータを利用して地盤震動特性の違いを検討した,古川地区内の地盤が各点毎に構造の異なる一次元水平成層構造であると仮定して地盤モデルを推定したところ,被害が集中した地域において表層地盤が厚くなる傾向が見られた.ただし,推定した地盤モデルを用いて時刻歴観測波形の再現を試みたところ,一部の観測点には再現出来ない特徴的なフェーズが認められた.このことは,表層の地盤構造を一次元水平成層構造でモデル化するという従来の枠組みでは,古川地区の地震動を説明する上で本質的に不十分であることを示唆している.
著者
平山 修久 河田 惠昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.112-119, 2007 (Released:2007-05-18)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3 2

平常時の一般廃棄物排出量からみた災害廃棄物発生量である災害廃棄物量相対値を用いて,東海地震,東南海・南海地震,首都直下地震に係る災害廃棄物に対する我が国の災害対応力を明らかにした.また,行政の災害対応力を考慮した災害廃棄物処理期間推定モデルを構築した. 災害廃棄物の広域連携シミュレーションモデルを構築し,首都直下地震における災害廃棄物処理に関する数値シミュレーションを行った.その結果,サテライト方式あるいはバックヤード方式での全国連携による災害廃棄物処理に必要な処理期間は,それぞれ1.95年,1.80年と推定された.また,広域災害時における災害廃棄物対策では,都道府県間を越えた広域的な連携が重要となることを示しえた.
著者
高野 剛志 森田 紘圭 戸川 卓哉 福本 雅之 三室 碧人 加藤 博和 林 良嗣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_125-I_135, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
25
被引用文献数
3 3

本研究では,大規模災害に対応した減災・防災計画を被災者の生存・生活環境の観点から検討するために,発災から復興までの間にインフラ・施設の利用可能性や住宅・周辺地区の状況によって徐々に変化する被災者の「生活の質(Quality of Life: QOL)」水準を小地区単位で評価可能なモデルシステムを構築した.岩手・宮城県を対象に東日本大震災の状況を評価した結果,事前の道路ネットワーク強化が被災直後のQOL低下抑制に大きな役割を果たす一方で,津波によるインフラ・施設破壊が津波到達地区外のQOLの回復を阻害する状況が明らかになった.これにより,道路網のリダンダンシー確保と各種生活施設の防災性向上を複合して実施する必要性が明らかになった.
著者
綾野 克紀 藤井 隆史 岡崎 佳菜子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.23-00042, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
17

コンクリートの凍結融解抵抗性は,淡水中に比べ塩水中では著しく低下する.コンクリートは,凍結と融解の繰返しによって劣化が進むが,塩水中においては,凍結だけでも破壊に至る.本論文は,このような低温下におけるコンクリートの破壊に,コンクリート中の水酸化カルシウムが与える影響を調べた.また,高炉スラグ細骨材や高炉スラグ微粉末を用いることで塩水中でのコンクリートの劣化を抑えられることが,コンクリート中の水酸化カルシウムの溶解が少ないことに関係していることを明らかとした.
著者
鳩山 紀一郎 渡邉 靖之 佐野 可寸志 松田 曜子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.I_621-I_630, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

わが国では政府開発援助(ODA)等を通じたインフラ整備技術の一層の海外展開が期待されている.一方で,海外展開の推進は建設企業にとって厳しい場合もあることも指摘されており,政府にも建設企業のニーズや見通しに合った的確な支援が求められる.本研究では,わが国の建設企業の海外進出状況を整理した上で,インタビュー調査およびアンケート調査を通じてインフラ建設事業の海外展開に対する建設企業の意識と政府機関等の見解を把握し,今後の政府支援のあり方を検討する.結果として,苦労して海外展開している企業も見られ,企業が負担の少ない形で海外進出できる環境づくりには,各企業が持つ強みを組み合わせて海外事業を受注できる仕組みを確立することが有効である可能性などが示唆された.
著者
伊地知 恭右 羽鳥 剛史 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.40-45, 2010 (Released:2010-02-19)
参考文献数
22

これまでの先行研究において,オルテガの論ずる人々の「大衆性」が,土木計画における環境問題や公共事業合意形成問題に対して否定的な影響を及ぼし得ることが指摘されている.この結果を受けて,本研究では,個人の大衆性を低減するための方途を探ることを目的とし,人々とのコミュニケーションを通じた態度変容施策の一つとして,「読書」の効果について検討した.そして,内村鑑三著『代表的日本人』(1908)に着目し,本書を通読することによって,人々の大衆性が低減するという仮定を措定し,アンケート調査を通じて本仮説を実証的に検証した.その結果,本研究の仮説が支持され,『代表的日本人』を通読することによって,人々の大衆性が低減し得る可能性が示された.
著者
染谷 望 望月 紀保 大谷 俊介 曽根 幸宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00036, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
16

電気防食状態にあるコンクリート中の鋼材の腐食速度を管理指標とするためには,電気防食状態の腐食速度評価手法の確立が必要である.筆者らは電気防食状態にある湿潤環境におけるコンクリート中の鋼材の腐食速度評価手法として,RAP法(Reciprocating Anode Polarization Curve Measurement Method)を提案しているが,大気環境でのRAP法の評価精度は未検討であった.本研究ではモルタル試験体を用いた室内試験より,RAP法の大気環境における評価精度を検討した.RAP法は,自然腐食状態および電気防食状態ともに,既往研究で用いられるターフェル外挿法と比較して精度が向上することを確認した.
著者
三村 泰広 山岡 俊一 富永 哲史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.22-00334, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
7

近年,地方都市では財政上の課題を背景に道路整備や維持管理における住民の当事者意識の重要性が叫ばれている.当事者意識の醸成を図るに当たり,まずは道路に対する価値意識の理解が不可欠である.本研究は,特に住民に身近な生活道路に対する価値意識を把握しようとするものである.東海3県に居住する調査会社のモニター(n=1,039)を対象に,生活道路に求める価値を調査した.結果,地方都市に住む住民は,生活道路の価値として,安全・安心であること,高齢者や子供,障害者といった交通弱者の使いやすさ,通りやすさを重視していることを示した.また,これらの価値に対する意識の高さが,当該道路の維持管理における当事者意識の高さと相関するとはいえず,むしろ,行政主導で維持管理すべきとする意向の高さと相関していることを示した.
著者
斎藤 嘉人 宮川 璃空 村井 匠 小畑 悠 板倉 健太 佐藤 翼
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.215-222, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
24

大豆の種子選別は時間と労力を要す作業であり,一農家が利用できる安価で簡便な選別機が求められている.本研究では,カラー画像および紫外励起蛍光画像の2種類の画像の入力による大豆の欠陥判別を目的とした.大豆種子のカラー画像と励起波長365 nmの蛍光画像をそれぞれ撮影し,目視にて正常粒・しわ粒・裂皮粒・病虫害粒の4カテゴリにラベル付けを行った.カラー画像,蛍光画像,カラー・蛍光画像同時入力の3パターンの入力によりResNet-50でモデルを構築した結果,テスト精度はそれぞれ91.7%,88.2%,88.3%であった.また,カラー・蛍光画像同時入力モデルでは正常粒の適合率が最も高く,判断根拠を可視化した結果,病斑のない健全箇所が重視されていた.以上より,従来のカラー画像に蛍光画像を組み合わせた判別手法が有効である可能性が示唆された.
著者
赤塚 真依子 飯村 浩太郎 高山 百合子 源 利文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.17, pp.23-17158, 2023 (Released:2023-11-01)
参考文献数
11

環境DNAを活用した水生生物モニタリングは経時的な生物情報の収集手段として期待されている.他方,海域では流れの変化が大きく,環境DNA量は採水地点や時刻により変わるため,流れの影響を把握してサンプリングすることが重要である.本研究では固着生物であるアマモを対象に,藻場における環境DNAの時空間分布特性の把握を試みた.海域調査では環境DNAの岸沖方向の分布と藻場内の時間変化を捉えることができ,これにより藻場の環境DNAは藻場分布に依存して藻場より数100m広い範囲に分布が形成され,流れによりその分布形状が変化することが示唆された.また環境DNAを物質濃度に模擬した移流拡散計算により時空間分布を定性的に再現し,流れの条件を変えたケーススタディによって最適な採水範囲を選定する方法について提案した.
著者
宮園 誠二 滝山 路人 花岡 拓身 宮平 秀明 赤松 良久 中尾 遼平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.221-226, 2023 (Released:2023-10-31)
参考文献数
17

国内外で在来魚類の減少が多数報告されており,水系全体の河川環境健全度を推定し,流域における魚類の保全を効率的に行うための河川保護区間の優先順位付けを行う必要がある.そのためには,広域の河川環境健全度を効率的かつ定量的に評価可能なモニタリング手法の開発が求められる.本研究では,環境改変が顕著である一級水系江の川の土師ダム下流を対象とし,環境DNA定量メタバーコーディングを用いて推定した魚類環境DNA濃度を基に,河川環境健全度(様々な生態的特性をもつ魚類が生息可能である河川環境の多様度)の指標となる生物的指数を算出し対象区間の河川環境健全度評価を行うことを目的とした.結果として,人為的な改変が相対的に少ない下流区間は,上流区間よりも多くの項目について生物的指数が高く,河川環境健全度が相対的に高いことが示された.また,上流区間においても,相対的に河川環境健全度が高い地点があることが明らかとなり,保護・修復すべき河川区間の優先順位付けが可能であることが示された.これらの結果から,環境DNA定量メタバーコーディングを用いて同一日,多地点観測により効率的な河川環境健全度評価が可能になることが明らかとなった.