著者
菊池 謙汰 円山 琢也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00243, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
12

熊本県の球磨村や人吉市等に甚大な浸水被害を与えた令和2年7月豪雨は,コロナ禍という状況下のため従来と異なった避難や支援活動となった.本研究では,基地局データであるモバイル空間統計と,GPSデータであるポイント型流動人口データを用いて,当該災害時の避難および支援の実態把握を試みた.モバイル空間統計による分析から,災害直後から平常時と異なった滞留人口の推移がみられ,また浸水地区で夜間の滞留人口が大幅に減少していることが確認できた.一方で,ポイント型流動人口データを用いた分析では,ボランティア活動者を抽出する手法の構築を行うとともに,ボランティアセンターにおける滞在時間の算出を行った.
著者
貝戸 清之 松本 圭史 鎌田 敏郎 北野 陽一郎 山中 明彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00111, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
36

下水道管渠は埋設構造物であるために,管理対象全域において悉皆調査を行うことが困難である.一方で,調査が実施できなくとも,管渠の劣化に影響を及ぼす属性情報であれば全域で利用可能であることが多い.本研究では,部分的に獲得された調査データを用いて調査実施管渠に対する劣化予測を行ったうえで,回帰クリギングを用いて管渠の劣化異質性と属性情報の空間的関係性を表す空間マッピングモデルにより,調査未実施管渠も含めた全管渠の劣化を予測する方法論を提案する.さらに,劣化予測結果をもとに作成した健全度分布に対して,デュアルカーネル密度推定を用いて老朽管渠の空間的集積傾向を視覚化し,改築更新区域を抽出する.最後に,提案手法を大阪市の下水道コンクリート管渠に対する調査データに適用して,その有用性を検証する.
著者
青野 史規 五艘 隆志 西田 功児 加藤 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00080, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
19

近年,社会資本整備を取り巻く状況は大きく変化しており,社会貢献を活動理念とする建設コンサルタントは活動領域の拡大および多様性を求められている.本研究は,脱炭素社会実現に向けた再生可能エネルギー開発に際し,国内地熱開発プロセスにおいて,遅延・阻害要因の一つである初期段階の地域受容に着目し,その課題解決に資する手法として,建設マネジメント分野で確立されているプロジェクトマネジメント手法を合意形成プロセスに適用し,検証考察を行った.具体的には,複数年に渡るプロジェクトを実践した検証結果から,PMBOKに基づくプロジェクト・ステークホルダー・マネジメントと引照させた活動方針を立案し,合意形成活動の8段階3系統の体系的実施手法を提示した.今後,地熱分野で汎用性ある体系的な活動手法を提案するものである.
著者
畑 実 佐藤 誠 宮澤 伸吾
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00123, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
26

本研究は,フライアッシュ,高炉スラグ微粉末及びアルカリ刺激剤として水酸化カルシウム等を使用した結合材(IBPM)を,蒸気養生により製造される様々なプレキャストコンクリート(PCa)製品に適用することを目的としたものである.IBPMコンクリートの圧縮強度に及ぼすフライアッシュの品質変動の影響,水結合材比と圧縮強度の関係について明らかにするとともに,収縮特性,塩化物イオン拡散係数,硫酸抵抗性,耐摩耗性,凍結融解抵抗性について実験により検討した.さらに,ボックスカルバート,セグメント,ヒューム管,マンホールの実物大供試体の製造において,通常の振動締固め及び遠心力締固めによる締固めが可能であること,これらのPCa製品が十分な耐荷力を有していることを示した.
著者
貝戸 清之 小林 潔司 神谷 恵三 新 雄成
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00130, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
33

我が国の高速道路舗装では,経年に伴う構造耐荷力の低下による損傷部位の深層化が確認されている.実務においては,表層材料が密粒度から高機能へと推移したことを受けて,損傷状態に応じた層別修繕が実施されているが,構造耐荷力がどの程度回復したかは定量的な評価がなされておらず,層別修繕の効果と構造耐荷力との関係性が明らかになっていない.本研究では,舗装構造の耐荷力の推移を,1) 経年によって低下する劣化過程と,2) 修繕時に向上する回復過程との複合過程としてモデル化する.これにより,構造耐荷力の劣化予測に加え,修繕時の回復を推移確率として定量的に評価することが可能となる.さらに,高速道路舗装を対象とした適用事例を通して,提案したモデルの有用性について考察する.
著者
山本 武志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00054, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
19

燃料炭の品質変動に伴う多様な物理・化学特性を示すフライアッシュに対してAPI法を適用できるよう反応時間と反応温度の最適化検討を行った.フライアッシュ:セメント:水を質量比1:1:40で混合した懸濁液に対して80℃下で18時間~48時間反応させた場合にポゾラン反応は収束しない状態ではあるが,80℃-28時間の反応条件で得られるAPI値が材齢28日ならびに91日における活性度指に対して良好な相関を示した.反応性の異なる3種類のフライアッシュを用い,繰返し数3として5機関によるクロスチェック試験を行った.各機関における繰返し数3における繰返し性と5機関の間での評価値の再現性が良好であったことから,API法は誤差要因が比較的少ない手法であることを明らかにした.
著者
浅野 和香奈 岩城 一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
インフラメンテナンス実践研究論文集 (ISSN:2436777X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.60-69, 2022 (Released:2022-03-14)
参考文献数
8

著者らは,2012年から福島県平田村で村民と学生による協働の道づくり,2013年には小学生による橋の名付け親プロジェクトを実施した.この2つのプロジェクトを進める中で,将来的に市民が地域の橋を守る仕組みを構築したいと考えた.2015年度から試行を繰返し,住民でも橋の点検ができる簡易橋梁点検チェックシートでの点検,橋の汚れを見える化した橋マップを確認し,清掃活動につなげる「橋のセルフメンテナンスモデル」を構築し,平田村をはじめ各地に展開した.その結果,セルフメンテナンスの参加者が増えたため,著者らが立ち会わなくても自発的かつ安全に活動を行えるよう「10の活動に際する規約」を作成した.規約の内容や趣旨を理解できるか,予見できる危険に見落としが無いかなどを調査するために,アンケート調査を実施し,内容の改善を図った.
著者
須﨑 純一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.211-226, 2014 (Released:2014-10-20)
参考文献数
21

本論文では,車両や建物の影といった局所的な日照変化にも頑健で,昼夜間を問わず適用可能な交通流からの四輪車の位置と軌跡の自動抽出手法を提案する.提案手法は時間差分画像を一定時間内で累積した累積時間差分画像と呼ぶ画像を作成し,閾値以上の輝度値の変化回数を計数して影領域の大半を除去する.この際に車両の一部が欠損するが,累積時間差分画像を更に重ね合わせて車両領域の欠損を補い車両軌跡を決定する.この影を含まない軌跡領域とある時刻における影を含む車両領域との積を取ることで,影なしの車両領域を決定する.最後に上方から見下ろす鳥瞰画像に変換し,車両領域の位置の差分を計算することで車両速度を推定する.歩道橋で撮影した交通流画像に提案手法を適用した結果,昼夜間を問わず高精度かつ安定的に機能することが判明した.
著者
山下 正貫 島崎 武雄 野倉 淳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.83-91, 1983-06-24 (Released:2010-06-15)
参考文献数
8

高知県夜須町にある手結港は、江戸時代初頭、承応1年 (1652) から明暦1年 (1655) に土佐藩の家老、野中兼山によって建設された掘込港湾である。経世家、野中兼山は、土佐藩の経済的基盤を整備し、殖産興業を進めるべく、土佐地域の総合的な開発事業に取り組み、物部川の山田堰、仁淀川の八田堰、鎌田堰等を設置して水路を開削し、新田開発を行なったり、その拠点として後免、土佐山田、野市、新川等の新都市を建設した。また、運河開削と一体となった津呂港、室津港等の築港事業も手掛け、陸路と連関した海上交通路の整備を進めてきた。手結港は、その一環として整備されたもので、その技術的意義、大規模性が高く評価され、しかも、特筆すべきこととして保存が良好であることが指摘される。江戸時代初頭の土木構造物が、ほぼ創建当初の状態で保存されていることは、全国でも稀有のことである。小論では、江戸時代の建設の経緯、明治・大正・昭和期における港勢の変化と改修の経緯に関する調査結果を報告するとともに、現状の問題点、地域住民の意識と要望、今後の保存・利用・整備の方向について論及するものである。
著者
滝澤 恭平 中村 晋一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.D1-0108, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
38

都市の水辺を再生するためには,地域の主体の継続的な協働の取り組みが必要とされる.東京都杉並区善福寺公園内「みんなの夢水路」事業における水辺再生実現までのプロセスと協働の実態を明らかにすることを研究目的とする.水路実現までのプロセスとして,1)川体験,川しらべを通した長期的な地域主体醸成,2)橋渡しの場の形成を契機とした多主体によるビジョン創出,3)事業化を契機とした計画検討,4)水辺を共同管理する権利の承認を通した運営主体確立の4つ段階の過程を明らかにした.協働の分析枠組みとして「橋渡し」概念による分析を行い,市民側と学校側に橋渡しの場が存在したことで,市民活動としての水辺再生の動きと,小学校の継続的な川学習が連携・協働し,地域の集合的な行為としての水辺再生が実現したことを明らかにした.
著者
安藤 慎悟 Golubchenko STANISLAVA 谷口 守
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00157, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
11

近年我が国の地域活性化施策として注目される「関係人口」の中でも,訪問型関係人口は人口減少の進む地方部にて担い手としての役割が期待される.本研究では,そうした全国に存在する訪問型関係人口を11の人物像に分類し,人物像別に実施する活動や関わりのきっかけ,活動場所の実態を定量的に把握することで担い手としての適性を探った.分析の結果,1)民間従事者の中でもテレワークを行い居住地周辺で地域活動を行うような人物像が,最も地域との結びつきが強い活動を多く行っていること,2)そうした人物像は,親族や友人のつながりのみならず,非訪問型の関わりやつながりをサポートする窓口からの紹介などが契機となり訪問する割合が他に比べて高いと共に,3)地方部の農山漁村や農林地において活動が多くなされていることが明らかとなった.
著者
杉村 佳寿 篠田 岳思 T. N. MATHIAS 阿野 貴史 重富 康文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00075, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
73

現在日本においてはカーボンニュートラルポートの実現が目指されているが,港湾における気候変動対策については実証的な先行研究が少なく,実践との間のギャップにより意思決定者を十分にサポートできていない.本稿では,荷役機械の電動化やハイブリッド化,リーファーエリアへのルーフシェードの設置を行い日本の港湾環境政策を先導する博多港を事例に,コンテナターミナルにおける気候変動対策の効果を実証的に検証した.また,経済性分析と日本の港湾ガバナンスの特徴を踏まえた対策のフィージビリティについて検討した.対策の効果については確認されたものの,経済性の面からターミナルオペレーター等が主導的に講じるのは難しく,港湾ガバナンスの面からも補助金等を含めた政府のイニシアチブが重要であることが明らかとなった.
著者
柳原 崇男 高橋 治暉 伊勢 昇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00066, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
20

近年,我が国の総人口は減少傾向にある一方,65歳以上の高齢者人口は増加傾向にある.交通行動と健康に関する既往研究では,公共交通を利用すると歩行量が多く,健康への貢献があるとしている.しかし,実際に地域公共交通を対象として,医療費抑制効果を算出した例はほとんどない.本研究では,公共交通利用における歩行量データから医療費抑制効果検討した.本研究では,国土交通省のガイドラインの方法を用いて乗り合いタクシー利用による医療費抑制効果の算出を試みた.1日の歩行データから,乗り合いタクシー利用のみの効果を算出することは困難であり,公共交通利用による歩行増加量から算出した医療費抑制費から利用割合を乗じ算出したところ,乗り合いタクシー利用により約6,101円/年/人の医療費抑制効果があることがわかった.
著者
平田 輝満 永沼 宏太 渡邊 大樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00062, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
7

2019年の台風19号は首都圏においても過去最大級の強風が予報されていたことから,羽田空港や成田空港から全国の空港へ大規模な避難が実施され,その避難場所確保のための調整に一部困難が生じた.保有航空機材の増加と自然災害の激甚化・頻発化を想定すると,従来の航空機避難スキームでは適時の対応が困難で,新たな事前の避難調整スキーム検討と訓練の必要性が高まっていると考えられる.本研究では,2019年の台風19号の際の実際の航空機避難の状況について,ウェブ公開データおよび航空局等へのヒアリング調査から実態の分析を行い,航空機避難や臨時駐機に関わる制約や課題について明らかにした.それらを踏まえ,空港の臨時駐機方法を危機管理レベル別に検討し,複数の自然災害シナリオを対象に避難航空機需要と受け入れ容量についてシミュレーション分析を行い,我が国における大規模自然災害時の航空機避難の実行可能性と課題について考察を行った.
著者
中島 恵太 河田 侑弥 氏原 岳人 堀 裕典
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00053, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
9

近年,都市計画の分野では空き家の増加が問題となっているが,心的要因により行動変容を促す「心理的方略」に基づく施策は十分ではない.そこで本研究では,戸建住宅所有者の自宅の将来に対する関心・行動を高める要因を把握し,それを踏まえた心理的方略に基づく施策を検討した.本研究の主な成果を次に示す.1)自宅の将来に対して関心が高まるきっかけと行動を起こすきっかけは「(戸建住宅所有者の)息子・娘のライフイベント」と「住宅取得」である傾向にあった.また,「息子・娘のライフイベント」では,行動を起こす人と比較して関心に留まる人が多い傾向にあった.2)分析結果に基づき,住宅取得や(息子・娘の)婚姻届提出のタイミングにおける情報提供の手法などを検討した.
著者
高平 伸暁 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00041, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
60

持続可能なインフラ開発のためには,中小企業を含めたあらゆる企業が安定的に経営できる環境が不可欠である.しかし我が国では長年,企業間下請関係における収奪問題が中小企業経営の大きな障害となっている事が指摘されておりその解決が問われてきた.本研究では,これまで行われる事が無かった定量分析で用いられる下請定義を拡張した分析と,例外的扱いとされる事が多かった建設業を対象に含めた分析を行った.その結果,企業間取引にて収奪問題が起きやすい可能性があり,また,製造業では1980年頃,サービス業では1990年頃から収奪問題が悪化している事が間接的に示唆された.さらに建設業では少なくとも1992年以降から長期的に収奪問題が悪化しており,とりわけ下請が元請の景気変動の緩衝材としての役割を果たしている可能性が示された.
著者
塩田 彩夏 森地 茂 稲村 肇 日比野 直彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00033, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
21

アジア諸外国において都市鉄道整備が活発化している.政府の財源不足からPPP事業による整備が採用され,沿線開発事業による内部補助を志向してきたが,その多くは経営破綻し政府が対応を迫られてきた.本研究の目的は,正確な土地利用データがない発展途上国でも都市開発の進展を把握できる方法を確立し,それを用いて鉄道整備と沿線開発の関連性を分析し,アジアの鉄道建設意思決定者にその知見を提供することである.バンコクを対象地域として,衛星写真による開発の詳細な変遷とNDVIの時系列変化を比較し,NDVIが広域開発に関する評価手法として適当なことを確認した.この手法を用いて,バンコクでは中心から20~30km四方で特に開発が活発化していること,MRTパープルライン沿線の開発が顕著なことが明らかになった.
著者
稲村 肇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00028, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
19

本研究は東日本大震災による津波被災世帯の居住地移動(2007年-2020年)を電話帳に基づく追跡で明らかにした.主たる結論は以下の通り.1)対象とした岩手県・宮城県の被災10市町から両県の主要9都市への転出人口シェアは57%を超えている.2)分析対象はNTT電話帳登録者,被災10都市98,991世帯及び主要都市320,678世帯である.電話登録率は2012年で世帯数比61.5%,2019年は46.9%である.現住所が判明したのは74.7%,74,000世帯,うち転居者は39.2%,38,800世帯であった.転居者の35.7%,13,986世帯の住所が明らかとなった.これの旧居住者に対する比率は14.0%である.3)同姓同名による複数マッチングは3,800世帯の約半分1,831世帯となっている.本研究で対象とした登録者と新旧居住地の住所はデータベースとして保管されている.
著者
須﨑 純一 楠瀬 智也 木村 優介 宇野 伸宏 藤原 優 久田 裕史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00022, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
22
被引用文献数
1

高速道路の維持管理業務において,道路や橋脚の劣化に対する補修だけでなく,災害発生時の事前・事後対策も重要な業務である.頻発する土砂災害への備えとして,本論文では人工衛星に搭載された合成開口レーダ(synthetic aperture radar: SAR)で取得された時系列画像を用いて,重点的に監視すべき箇所を絞り込む手法を提案する.時系列SAR解析の手法を用いて,強い散乱を示す地点の累積地盤変動量を推定し,その後高速道路沿いの一定範囲の平均累積地盤変動量を算出するものである.本研究での推定結果は,実際に土砂災害が発生した箇所において前年時の豪雨後から変動が始まっている様子を示している.よって提案手法は高速道路管理者の維持管理業務に取り入れられる可能性を有する実用的な手法と言える.
著者
山田 順之 小池 淳司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00021, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
14

我が国の国土政策は,国土の均衡ある発展を目指して進められてきたが,地方の人口減少と並行する形で都市への人口集中が続いており,地方における担い手不足や経済の停滞などが大きな課題となっている.一方,EUは我が国と比較して地方の人口減少を緩和させている.この要因の一つとして,中山間地域の主要産業である農業に対する政策の差異が考えられる.EUでは農業政策においても国土政策的な視点から地域の隔たりなく,営農に加え教育や医療へのアクセスなども確保する政策,つまり全国民が満たすべき基本的権利を尊重した政策を講じ地域間格差是正や地方への人口定着を図っている.本研究では既往研究からEUの農業政策を分析し,我が国との比較を通して,国土政策の推進に有益となる施策や枠組みを新たな視点で検討・提案した.