著者
石塚 裕子 新田 保次
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_283-67_I_290, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

本研究では,視覚障がい者は移動を伴う観光行動へのニーズの表明率が低いという既往研究の結果を踏まえて,自身の五感を使って地区の魅力を体得するような楽しい散策経験は,散策意図の向上に寄与すると仮説を設定した.散策の支援策の一つとして観光ガイドに着目し,観光ガイドを伴った散策経験により,当該地の魅力の認知ならびに当該地を散策しようという散策意図の向上に寄与する可能性を検証し,観光ガイドを伴った散策の効果について考察を行うことを研究目的とした.その結果,観光ガイドを伴った散策の経験は,地区の印象や推薦意図の向上を促すことが確認され,視覚障がい者が当該地の魅力を認知することに寄与することが確認された.しかし,散策意図の向上を図ることは難しいことが明らかになった.
著者
岩崎 峯夫 永井 紀彦 清水 勝義 安立 重昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1416-1420, 2006-10-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4

検潮井戸がローパスフィルターとして機能するため, 周期数分から数十分程度の津波に対しては, その周波数応答特性を把握しないと津波高を過小評価することがある. しかし, 周波数応答特性を算定する実務的手法は, 確立されていない. また, 検潮井戸の導水管は, 土砂の堆積等によって目詰まりが進むため, 定期的な清掃を行い, 副標観測によって清掃の効果を検証をする. しかし, 副標観測は, 長時間を必要とする問題がある. このため, 検潮井戸を線形2次のローパスフィルターと仮定し, 模型実験でその線形性を確認し, ステップ応答測定により, 短時間で検潮井戸の周波数応答特性を計測するシステムを開発した.
著者
中村 謙吾 肴倉 宏史 川辺 能成 駒井 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.39-48, 2015 (Released:2015-02-20)
参考文献数
24

製鋼スラグの利用用途で,腐植物質との混合による磯焼け回復技術が注目されているが,製鋼スラグから溶出する重金属等の環境影響を検討する必要がある.本研究では純水による検討に加えて,海域利用を想定し,実海水を用いて振とう試験および浸漬式のシリアルバッチ試験を実施した.さらに,海域利用において要求される環境安全品質の考え方に基づき,海域利用への適合性について考察を行った.試験結果より,Cd,Pb,Cr,Bは,試験条件を変えた場合に,溶出濃度が港湾用途溶出量基準を超過することは確認されず,製鋼スラグ及び腐植物質の相互作用により,重金属類の溶出濃度は減少傾向を示した.また,本研究で想定した海域利用の環境安全品質を設定し,本試験結果を適用した結果,重金属類による海域汚染の原因となる可能性は低いことが示唆された.
著者
稲村 成昭 蛯江 美孝 山崎 宏史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.III_399-III_405, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
12

小型浄化槽からの温室効果ガスであるN2Oの1人当たりの排出量は,下水道に比べて,おおよそ5倍と著しく高い.そこで,浄化槽の特徴である流量変動に着目し,浄化槽における流入汚水量の時間変動を緩和する流量調整機能の有無によるN2O排出量の比較を行った.その結果,流量調整機能がある場合は,機能がない場合に比べて,N2O排出量は1/6以下に低減され,下水道とほぼ同じレベルになることが分かった.その要因として,流量調整機能がある場合,二次処理への汚水の一次的な流入汚濁負荷の集中が緩和されることにより,機能がない場合に比べて二次処理におけるORPの低下を最小限に抑えられるためと考えられた.なお,本研究を通じて,浄化槽においては,N2O排出量を制御する指標として,DOよりORPの方が適していると考えられた.
著者
赤松 隆 佐藤 慎太郎 Nguyen Xuan Long
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.605-620, 2006 (Released:2006-12-20)
参考文献数
23
被引用文献数
26 27

混雑料金制は,理論的には,交通渋滞問題に対する優れた方策である.しかし,その制度の有効な実施に不可欠な(1)利用者情報(需要関数)の正確な推定や(2)渋滞メカニズム(ボトルネック混雑)を考慮した動的料金の設定は,実際には非常に難しい.そこで本稿では,混雑料金制度に代わるTDM施策として,“ボトルネック通行権取引制度”を提案する.そして,この制度の導入により,確実に渋滞が解消するのみならず,通行権取引市場で適切な通行権価格体系が実現し,社会的に最適な状態となることを示す.さらに,その証明を通じて,提案した通行権の設定・取引問題と住宅立地均衡問題の数理的同型性を明らかにする.
著者
柿島 隼徒 蛯江 美孝 村野 昭人 山崎 宏史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.III_391-III_398, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

本研究では,戸建て住宅に設置されている浄化槽3基を対象に,浄化槽から排出される温室効果ガスCH4,N2O排出量を1年以上にわたり調査し,季節影響を踏まえた排出特性の解析を行った.その結果,CH4は,約90%が嫌気処理部から排出されており,N2Oは,約80%が好気処理部から排出されている事が確認された.CH4排出量は嫌気処理部に流入するDO量が低くなる際に増大する傾向となった.これは嫌気処理部底部の嫌気化が進むことでCH4生成量が増大するためであると考えられた.一方,N2O排出量は水温上昇期において,槽内のBODとNH4-Nが同時に高くなる際に増大する傾向となった.これは,浄化槽内に貯留する汚泥が可溶化しBODとNH4-Nが溶出することにより,好気処理部における硝化反応(亜硝酸酸化)が速やかに進行しなくなるためであると考えられた.
著者
疋田 智 玉田 正樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-9, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
20

本研究の目的は,我が国喫緊の課題である南海トラフ巨大地震に伴う津波からの避難に,自転車,中でも電動アシスト自転車の有効性を検討することである.検証方法としてマルチエージェントシミュレーション(MAS)を用い宮崎県日南市の油津地区をモデルとした.MASの結果,自転車による避難は,電動アシストの有無によらず避難者自身が助かる可能性を高めること,渋滞が軽減されることによりクルマの避難完了率も向上する可能性があるという結果が得られた.また電動アシスト率が高いほど避難完了時間が短くなることが分かった.電動アシスト自転車のみならず通常の自転車も避難に有効であるという結果は,国や自治体の津波避難計画において,徒歩とクルマだけではなく自転車を想定することが有益である可能性を示唆している.
著者
古市 昌浩 酒谷 孝宏 蛯江 美孝 西村 修 山崎 宏史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.II_141-II_150, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

浄化槽分野の低炭素化推進に際し,1990年からの20年余の技術開発による温室効果ガス排出量の推移を明らかにし,この結果を基にさらなる削減施策のあり方について考察した.5から10人槽の浄化槽を対象に1990年から2013年を調査期間として,浄化槽のライフサイクルにおける温室効果ガス排出量を分析した.その結果,2013年度生産品の排出量は1990年度に対し,一基当たり35%削減され,ブロワの省エネ化と浄化槽のコンパクト化は効果的な低炭素化手法であったことがわかった.また,我が国の排出量削減目標である2030年度マイナス26%(2013年度比)の本分野での達成は,現時点で最高性能を有する浄化槽の普及にて可能となるものの,長期目標(2050年までに8割削減)達成にはさらなる削減施策が必要と示唆された.
著者
岡西 健史 藤田 一郎 古谷 勇樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_1279-I_1284, 2012 (Released:2013-03-26)
参考文献数
15

In open-channel turbulent flows with a rough wall, water surface profiles can be affected by the relative size of roughness element to a water depth and arrangement of roughness elements. In order to find characteristics of water surface profiles under various hydraulic conditions, an experimental study by using a simple surface flow visualization technique and a numerical study based on a large eddy simulation model that can take into account of water surface deformation were conducted for a rough wall boundary. Hemisphere particles were used as candidate of roughness elements for simplicity of establishing several particle distribution densities. It was made clear that water surface pattern can be classified by five types: flat, ripples, advection, parallel and cross. For sparse roughness elements, LES was conducted successfully to reproduce the above surface patterns.
著者
野津 厚 室野 剛隆 本山 紘希 本田 利器
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_448-I_458, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
28
被引用文献数
3 4

危機耐性に関する今後の議論の活性化に資する目的で,鉄道・港湾分野における設計指針の動向を概観するとともに,東日本大震災前後を問わず,危機耐性への配慮と見なすことのできる事例をとりあげ整理した.鉄道の分野では,車両逸脱防止装置,自重補償機構などのdeviceの開発・改良が進められている.一方,港湾の分野では,津波に対する「粘り強い構造」の開発が重要な課題となっている.危機耐性を考慮した設計においては,狭義の設計における想定を越える外力が作用した場合の構造物・システムの応答に対する深い理解が重要であると考えられる.また,鉄道分野・港湾分野に共通する今後の課題として,耐震の観点からの路線計画や港湾計画の重要性が挙げられる.
著者
兵頭 武志 北里 新一郎 本城 勇介 大竹 雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_191-I_196, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

港湾構造物は厳しい海洋環境にあることから,塩害が劣化の主要因とされる.特に桟橋上部工コンクリートの下面側は塩害による劣化進行が速く,維持管理上,重視すべき主要な構造部材である.上部工下面側については,通常の点検では,海上から小型船舶を使ってアクセスし,外観目視調査により概略の健全性評価を行う.さらに詳細に調査する場合は,コア採取による塩化物イオン量測定を実施することになるが,荷役作業など施設の利用中は調査が行えないことやコア採取時の足場の確保など,効率的に行うには制約や課題が多い. 本研究では,離散的な位置での情報から対象域全体の情報を推定する場合によく用いられる空間統計学(クリギング)を適用し,桟橋上部工におけるいくつかの塩化物イオン量の離散的なデータから対象全体の劣化状況分布を推定するとともに,目視点検結果と塩化物イオン量の分布の関連性を比較分析し,効率的な維持管理方法を提案する.
著者
中野 晋 蒋 景彩 上月 康則
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.397-402, 2022 (Released:2022-09-01)
参考文献数
10

令和3年7月に熱海市の逢初川源頭部で大規模盛土が崩壊し,深刻な土石流災害が発生した.逢初川源頭部付近で複数行われた地形改変に注目し,これらの地形改変が流出過程に及ぼした影響について数値解析により検討した.地形改変前と後の地形データを用いて令和3年7月豪雨時の雨水流出過程を計算し,逢初川源頭部付近の断面通過水量の比較を行った.その結果,尾根部を削って谷を埋めるなどの宅地造成に伴う地形改変の結果,北側を流れる鳴沢川流域から多量の雨水が逢初川側に流入し,盛土末端部では地形改変前の4倍に達する表流水が通過した可能性があることが明らかとなった.
著者
高山 知司 雨森 洋司 金 泰民 間瀬 肇 姜 閏求 河合 弘泰
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1371-1375, 2004-10-08 (Released:2010-06-04)
参考文献数
3

台風0314号は, 2003年9月12日の夕方に中心気圧950h Paで馬山の西側に上陸し, 朝鮮半島を横切って, 13日の未明に日本海側に抜けた. 当初, 釜山が大きな高潮災害に見舞われたとの報道があった. 外洋に面している釜山に大きな高潮が発生したことに疑問があり, 10月22日から2日間にわたって釜山の台風災害について現地調査をした. 本報告は, 釜山における現地調査の結果を示すとともに, 釜山の災害は高潮災害ではなく, 高波災害であることを明らかにしたものである.
著者
中島 勇介 武田 誠 久納 匠 松尾 直規
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_1465-I_1470, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
10

近年,大規模な浸水災害に関する検討が進められている.その中で,都市の地下空間の浸水に対する脆弱性が指摘され,検討も進められているが,まだ十分な状況とはいえない.本研究では,津波を外力とする浸水災害について,名古屋を対象に地下鉄の浸水に着目した数値解析的研究を行った.ここでは,津波解析モデルおよびネスティングモデルを構築し,地下鉄を有する都市の浸水解析を実施した.本研究により,内閣府で想定されている東海・東南海・南海地震による津波では,堤防が無い(崩れた)場合には大規模な浸水被害となるが,堤防が有る場合には浸水被害も小さいことが示された.また,堤防が無い場合,地下鉄名港線では水没する危険性も示されたが,実際には地下への流入を防ぐ対策が採られており,その対策の効果検証は今後の課題として残った.
著者
渡邊 康玄 高杉 優人 片山 小裕美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_775-I_780, 2021 (Released:2022-02-15)
参考文献数
10

砂防ダムは,土砂災害防止の観点から極めて有効な構造物であるが,河床縦断形や土砂輸送の不連続を生じさせ,河川環境の観点からはこれらへの対策が必要となっている.近年,既設の砂防ダムにスリットを入れ,大規模出水時には土砂を捕捉し,小規模出水時には土砂を流下させる機能を持たせて,河川環境の改善を図る例が多くなっている.河床縦断形や土砂輸送の観点からの知見は増えてきているものの,河床材料の質や河床形態の変化という点では,いまだ十分に明らかにされていない.本研究では,知床半島に位置するイワウベツ川の砂防ダムを基にした水理模型実験を実施し,小規模出水時に排出される土砂によるダム上下流の河道の応答と,その後の大規模出水時の河道の応答について検討を行った.その結果,ダムのスリット化により,河床高の連続性が回復するとともに,小規模出水では,ダムが存在しない状態及びスリット化以前の交互砂州形状を維持するものの,その後の大規模出水時には交互砂州の波長,波高とも増大することが把握された.
著者
宇津野 伸二 山路 徹 与那嶺 一秀 審良 善和 小林 浩之 渡部 要一 吉田 倫夫 前薗 優一 川瀬 義行 松本 茂
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.220-238, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本報では,海水中から海底土中部に設置された港湾鋼構造物の流入電流および電位を連続測定し,海底土中部の電気防食特性について検討を行った.海底土中部では海底面からの深度が深くなるにつれ防食管理電位に達するまでの期間が延びるものの,電気防食によって十分な防食効果が得られることが確認された.さらに,海底土中部の電気防食メカニズムを検証した結果,微弱でも防食電流を供給することにより,現在の設計で想定されている防食電流以下であっても防食効果は得られると考えられた.また,海底土中部の土壌抵抗が防食電流の供給に影響を及ぼすことを確認し,有限要素法を用いた電位・電流密度分布解析により,土壌抵抗率を考慮した電気防食設計手法を検討した.
著者
小林 俊介 片岡 智哉 宮本 颯太 二瓶 泰雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_439-I_444, 2019 (Released:2020-11-16)
参考文献数
18

本研究では,河川水中の5mm以下の微細なプラスチック片(microplastics,MP)の輸送特性を明らかにするために,平常時に江戸川野田橋で現地観測を行い,MP濃度鉛直分布を調べるとともに,採取されたMPを用いた室内実験を行うことでMPの上昇(沈降)速度を調べた.河川におけるMP濃度の鉛直分布には,水表面と底面付近にピークがあり,水表面(底面)には比重が1以下(1以上)のMPが比較的多く分布していた.また,MPの沈降速度(平均: 13.5 mm/s)は,上昇速度(平均: 2.68mm/s)よりも大きく,サイズと共に増加していた.従って,河川水中の鉛直混合下であっても,比重の大きなMPが底層に沈降していることが示唆された.
著者
宇野 宏司 谷口 夏海
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_1255-I_1260, 2020 (Released:2020-11-04)
参考文献数
10

その土地の自然災害被災履歴を暗示する災害地名は,地域社会の中で受け継がれてきた災害文化を構成する重要な要素の一つである.東日本大震災以降,最新の科学的知見に基づいた津波ハザードマップの見直しが進められたが,それらの根拠は現存する記録ベースにとどまっており,先人たちの知恵の結晶ともいうべき災害地名にはそれらを補完しうるハザードを顕示する可能性を秘めている.本研究では,全国各地に見られる一般的な津波災害地名地点を対象に,空間情報解析によってその地形分類や地質・土壌区分の特性及び相互関係を把握し,沿岸市区町村の災害地名による津波被災リスクの顕示性を明らかにした.