著者
金井 純子 中野 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_131-I_136, 2018 (Released:2019-02-19)
参考文献数
20

本研究は2016年熊本地震における福祉避難所の運営状況について調査し,福祉避難所の運営上の課題について分析した.福祉避難所を開設した熊本県益城町の2つの特別養護老人ホームを対象に,避難者及び避難者に対する支援者の数がどのように変化したかを聞き取りと質問票によって調査した.地震発生から1週間の間,両施設では大きな混乱が生じた.その要因は被災によって出勤できる職員が少なかったことと多くの一般避難者を受け入れたことであった.このような混乱を避けるためには,BCPの中に福祉避難所の開設手順を加えることが必要である.
著者
杉本 賢二 奥岡 桂次郎 秋山 祐樹 谷川 寛樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.II_293-II_300, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
22

自然災害による被災地域の復旧・復興に向け,被災前の社会状況に回復するために必要となる資材投入量の把握や,効率的な災害廃棄物の処理計画が求められる.本研究では,空間・属性詳細なマイクロ建物データと,災害被害分布情報との重ね合わせにより「失った建築物ストック」を推計する手法の構築を目的とする.マイクロ建物データの建物情報より建築物ストック量の空間分布を推計し,それに平成28年熊本地震の計測震度分布による建物倒壊判定を行い推計した.その結果,熊本県における建築物ストックの約6割が震度6弱以上の強振動域に分布しており,全壊棟数の推計結果は被害調査報告に近しい値となることが示された.また,地震動による建物被害により260.7万トンの失った建築物ストックが発生し,その半分がコンクリートであることが明らかになった.
著者
橋本 隆雄 松下 一樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_522-I_533, 2018 (Released:2018-11-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

2016年熊本地震では,震度7が2回,震度6弱以上が7回発生し,熊本市,益城町,西原村,南阿蘇村等の宅地擁壁の被害が広範囲に数多く発生した.そこで,延べ2,870人被災宅地危険度判定士が熊本県内の被災した12の市町村において43日間で20,022件の判定を行った.本論文では,各市町村の宅地被害状況について被害項目ごとに分析し,既往地震と2016年熊本地震の比較を行った.その結果,熊本地震による宅地擁壁の被害は,空石積擁壁が29%(約1/3)を占め,傾斜・倒壊及び崩壊の被害が非常に多くなっている.宅地地盤の被害は陥没17%,沈下24%,段差15%が非常に大きく,のり面・自然斜面の被害は滑落・崩壊87%が非常に大きく,既往地震と比較すると被害割合・量ともに非常に大きいことが明らかとなった.
著者
日高 菜緒 橋本 尚史 中村 真貴 馬越 一也 野中 哲也 小畑 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.69A, pp.637-647, 2023 (Released:2023-04-11)
参考文献数
16

In this paper, a method to semi-automatically construct an analysis model from point clouds of steel truss bridges is proposed. The authors proposed practical analysis models of truss bridges based on structural experiment and reproduction analysis of end sway bracing. For efficient seismic reinforcements enormous existing bridges, it is necessary to construct analysis models efficiently. Therefore, point clouds that represented 3D features of targets are used to construct analysis models without using drawings. The proposed method is applied to point clouds of end sway bracing in a truss bridge and verified its accuracy based on structural experiments and reproduction analysis.
著者
植村 洋史 松中 亮治 大庭 哲治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.I_1127-I_1135, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
24

本研究では,1981年から1990年に廃止された地方鉄道の駅と存続している地方鉄道の駅を対象に,30年4時点分の駅勢圏人口パネルデータや廃止前の鉄道に関する様々なデータを構築したうえで,地方鉄道の廃止が駅勢圏人口に及ぼす因果効果を,差分の差分法によって推計した.まず,欠損しているデータを多重代入法で補完したうえで傾向スコアを推定し,層別化を行ったうえで分析した.その結果,地方鉄道の廃止によって4-8%程度の駅勢圏人口への負の平均処置効果が確認され,地方鉄道の廃止が駅勢圏人口に負の影響を及ぼすことを統計的に明らかにした.また,鉄道の廃止による駅勢圏人口への影響は,鉄道廃止前の地域特性によって異なる可能性があることが示唆された.
著者
靏巻 峰夫 藤川 滉大 中島 大雅 岡崎 祐介 佐藤 克己 吉田 綾子 森田 弘昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.II_333-II_342, 2020 (Released:2021-03-08)
参考文献数
22

人口減少下に入った我が国では,公共サービスの量と質の維持が,今後,問題となると考えられる.下水道,ごみ処理分野でも同様な状況であり,早急な対策が必要である.下水道直投型ディスポーザー(以下,「DP」)の導入は,可燃ごみの減量化と取り扱いに難がある厨芥類の除外によってごみ処理での効率化が期待できる.一方で,下水道に投入された厨芥類によって下水処理への水質負荷の増大による負の側面がある.本研究ではDP排水の管路内での水質模擬実験のデータに基づき下水処理施設に到達する水質負荷の変化を予測し,その結果を反映した温室効果ガス(以下,「GHG」)排出量予測によって下水処理,可燃ごみ処理の影響を検討した.結果として,DP排水による下水処理での増加に比較して可燃ごみ減量による削減が大きく,直投型DPの導入はGHG排出量削減に寄与することを明らかにした.
著者
濱田 孝治 吉田 司 岡村 寛 原 武史 鈴木 輝明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_1129-I_1134, 2019 (Released:2019-10-17)
参考文献数
23

浮魚類群集(イワシ類)は内湾における主要な漁獲対象種であり,自然的,人為的な環境変動に伴う漁獲量の変動や漁場形成の変化は大きな関心事である.本研究では機械学習の一つであるGradient Boostingを用いて内湾の浮魚群集の分布量を推定する統計モデルを構築し,伊勢・三河湾のカタクチイワシ漁獲量の時空間的分布の推定を行った.モデルは標本漁船による実測結果をよく再現した.
著者
米田 一路 齋藤 美樹 西山 正晃 植木 洋 坂上 亜希恵 渡部 徹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.III_23-III_32, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
35

牡蠣を人為的にノロウイルスGII.2とGII.4に汚染する実験を行い,牡蠣に蓄積されたノロウイルス量の分析を行った.ノロウイルスGII.2(陽性率:80.0%)はGII.4(陽性率:60.0%)よりも牡蠣に蓄積されやすい傾向があった.遺伝子型に関わらず,高濃度のノロウイルスGIIを添加した人工海水で24時間飼育しても,ノロウイルスGIIを蓄積しない牡蠣が存在し,ウイルス蓄積量の多い牡蠣(中腸腺1g当たり約4.08log copies)と少ない牡蠣では100倍以上の個体差があったが,牡蠣のノロウイルスGII蓄積量は,個体重量や中腸腺重量とは相関がなかった.今回の実験で確認されたようなウイルス蓄積量の少ない牡蠣を選別して養殖できれば,より安全性の高い牡蠣の提供につながるだろう.
著者
森 祐哉 西山 正晃 米田 一路 渡部 徹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.III_307-III_316, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
30

山形県庄内地方を流れる赤川,最上川から大腸菌を分離し,その分離株について,系統発生群の分類とその薬剤感受性を評価した.1年間のモニタリングにより,653株の大腸菌が得られ,7つの系統発生群のうち,病原性の高いB2群に最多の217株(33.2%)が分類された.全大腸菌分離株のうち,1薬剤以上に耐性を示した株は175株(26.8%)であり,第三世代セフェム系抗菌薬であるCTXやCAZや,カルバペネム系抗菌薬(IPM)に耐性を示し,ESBL産生菌やCREの疑いが高い株が存在した.また,66株(10.1%)が異なる3つ以上のグループの抗菌薬に耐性を示す多剤耐性菌であり,その中には合計7薬剤に耐性を示す株も存在した.大腸菌による汚染度の低い河川から上記のような薬剤耐性大腸菌が検出されたという事実は,環境中における耐性菌のモニタリングの重要性を示している.
著者
松尾 栄治 玉滝 浩司 保井 渉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E (ISSN:18806066)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.368-378, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

コンクリートの軽量化に対するニーズは潜在的に大きいと推察されるが,軽量骨材を使用することによる管理業務の煩雑さ,軽量コンクリートの引張強度の低下および経済性の問題などが実用化の促進を阻んでいると考えられる.本研究では,遠赤外線減容処理を施した発泡スチロール廃材を細骨材代替とした軽量モルタルを研究開発の対象とした.本稿では,構造材として必要な圧縮強度を確保するための配合条件を明らかにするとともに,各種静的強度を実験的に求めた.また,その前段階として,最も懸念される事項である材料分離特性を,ペーストの粘性から定量化することで実用的な配合条件の提案を行った.
著者
鹿沼 俊介 藤野 創太 羽深 昭 木村 克輝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.78, no.7, pp.III_33-III_41, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
26

嫌気性MBRにおけるSRTの延長とHRTの短縮が下水汚泥消化効率に与える影響を明らかにするため,SRTを3条件(30,60,90日),HRTを2条件(30,15日)設定し,各運転条件における糖,タンパク質および脂質の分解率を求めた.それら有機物分解率はSRTが30日の条件に比べ,60日や90日と長い条件において上昇した.バイオガス生成速度はHRT短縮に伴う有機物負荷上昇により,HRTが30日の条件に比べ15日での運転において約2倍に増加した.膜間差圧は最大で41kPaに達したが,比較的内径の大きい中空糸膜を用いてクロスフローろ過を行ったことで154日間膜洗浄および交換を行わずに連続膜ろ過がなされた.運転終了後の膜洗浄の結果,不可逆的無機ファウリングが支配的であった.無機ファウラントとしてCa,PおよびMgが多く抽出された.
著者
大谷 壮介 田畑 直樹 東 和之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_480-I_485, 2019 (Released:2019-10-09)
参考文献数
14

本研究では,カキ殻付着生物に着目して有機物の分解機能の定量化を行った.調査は2016年7月から2017年3月まで2か月ごとに大阪府貝塚市二色浜近傍において水質調査を行い,採集したカキ殻は実験室において酸素消費速度の計測を行った.殻上付着生物は付着動物(840μm以上)と付着有機物(840μm未満)の2つに分けて,付着動物には多毛類,藻類,ホヤ,二枚貝等が確認できた.また,殻上付着生物量は水深が深くになるに伴って大きくなり,付着動物の重量は付着有機物よりも大きかった.カキ殻上の付着生物による酸素消費速度は75.2±74.2(4.59-239)mgO2/m2/hourであり,そのうち80.5±14.0(47-97)%は付着有機物によるものであった.また,付着有機物による酸素消費速度は付着動物の酸素消費速度の5.63倍であった.以上のことから,カキ殻は付着生物に生息場を提供して有機物の分解機能を促進していることがわかった.
著者
大槻 順朗 乾 隆帝 野田 洋二 皆川 朋子 一柳 英隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00112, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
22
被引用文献数
2

海・河川域双方を生息場とする通し回遊魚3種(カマキリ,シマウキゴリ,スミウキゴリ)を対象に,海・河川水温を加味した気候変動による影響を評価した.1980年代~2010年代の水温の公共観測値を1級水系ごとに整理し,沿岸・河川河口域の月別の平均値と変動勾配を得た.水温を含む生息環境条件を説明変数とし,生息有無を評価するモデルを構築し,変数の重要度を比較した.また,構築したモデルで将来の想定水温での生息可能性を評価した.その結果,カマキリ,スミウキゴリでは2月海水温,シマウキゴリでは4月河川水温が生息確率へ最も強く影響する水温に抽出された.水温の変動勾配は海域(+1.29℃/100yrs)よりも河川河口域(+3.93℃/100yrs)で大きく,将来の想定水温では3種ともに河川水温上昇による制限がより強いことが示唆された.
著者
山野 亨 桐山 魁 岡本 修 猿渡 雄二 荒木 義則 森安 貞夫 高田 知典 河村 圭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.F3-0127, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
11

近年,多大な人的被害を及ぼす豪雨に伴う激甚な土砂災害が起こっている.土砂災害発生時には,迅速な土砂災害調査が必要である.そこで我々は,マルチバンド受信機を使用することで,作業効率や調査員の安全性の向上を目指す災害調査支援システムを開発している.本稿では,広島県の災害復旧現場において,開発するシステムに使用する受信機の測位性能を評価する.劣悪環境下における定点測位精度の確認を目的とした砂防堰堤における実験では,水平方向の測位結果のばらつきが22mm(2DRMS)以下であることを確認した.森林中の測位性能の確認を目的とした森林中における実験では,水平方向の測位結果のばらつきが0.65m(2DRMS)以下であることを確認した.この結果,土砂災害調査におけるマルチバンド受信機の有用性が確認できた.
著者
山田 泉 青山 久枝 伊豆 太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.F4-0200, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
15

空港アスファルト舗装の維持管理の効率性と計画性の向上のためには,空港面における航空機の日常的な交通量の把握が有益と期待される.本稿では,空港面において航空機の位置の把握に用いられるマルチラテレーションのデータを用いた誘導路の交通量データの作成手法を述べる.次に,羽田空港における5年分の交通量データと舗装の補修工事の記録をもとに,誘導路の交通量と補修件数の関連性について分析し,空港アスファルト舗装の維持管理のための交通量データの活用の可能性について考察する.
著者
二宮 仁志 渡邊 法美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00144, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
48

近年,我が国では,建設業従事者・技術者の大量退職,若年層の入職率低迷や離職率の高さなど技術者不足が深刻化している.優秀な人材確保には,労働条件の改善のほか,建設業の魅力・やりがいを感じ高めていく必要がある.働き方改革をはじめ,職場環境や処遇の改善等が推進されてきたが,激甚災害の増加やインフラの大量更新など業務量の増大,感染症拡大に伴い労働環境が急変する中,建設技術者のモチベーションは,必ずしも向上していないとの懸念もある.更なる生産性向上には,その維持・向上は極めて重要な課題といえる.本研究は,ライフストーリー法を用いて建設技術者のワークモチベーションの変遷プロセスについて調査・分析することを目的とする.有機的統合理論を援用して,自律性の程度を評価・プロセスの可視化を試みる.
著者
中山 岳彦 斉藤 成彦 佐藤 賢之介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00258, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
12

RC部材の接合部は鉄筋が過密配置となり,その干渉から生産性を低下させる原因となっている.橋脚フーチングと杭基礎との部材接合部においては,フーチング下面鉄筋と杭基礎鉛直方向鉄筋の干渉がしばしば生じる.しかしながら,その破壊挙動は複雑であるため,詳細検討がなされず鉄筋干渉の改善がないのが現状である.そこで本論文では,杭基礎フーチングのせん断破壊挙動を明らかにするために,剛体バネモデルを用いて非線形数値解析を行った.実験試験体との比較により解析の妥当性を示したうえで,せん断破壊挙動の詳細な考察を行い,フーチング下面の鉄筋配置の影響について検討を行った.さらに杭が多列配置されるような実構造物スケールの杭基礎フーチングについて解析を行い,鉄筋干渉を避け生産性が改善できる配筋の可能性を示した.
著者
結城 拓海 佐々木 葉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00191, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
28

本研究では,東日本大震災に関連して整備された国営追悼・祈念施設を含む震災復興祈念公園の一つである石巻南浜津波復興祈念公園を対象として開園後約半年の時点での来訪者に対するアンケート調査を実施した.これによって来訪者の属性,状況,利用行動,印象の観点から利用実態を明らかにした.さらに,来訪者の認識に基づいた来訪者像の分類を行った結果「日常利用追悼」,「象徴的追悼伝承」,「防災学習特化」,「場所記憶追憶」,「レクリエーション重視」,「不定形想起」と解釈した6類型が抽出された.これらは外部から観察可能な単独の指標によって説明されうるものではなく,来訪目的や園内での行為との関係を反映したものであることを具体的に説明した.
著者
鈴木 渉 中村 文彦 有吉 亮 田中 伸治 松行 美帆子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00169, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
12

鉄道駅での改札通過データには,乗車券単位で駅での入出場の情報が長期的に記録されており,利用頻度や利用時刻といった個人単位の交通行動データの取得が可能である.そこで本研究では,昨今の急速な社会情勢の変化に伴う,個人ごとの利用頻度や利用時刻の変化に着目し,習慣的な鉄道利用減少の特性を明らかにすることを目的とする.まず,各々の変化量と,年齢や性別,券種といった個人ごとの属性との関係性を整理した.そして,重回帰分析を用いて,習慣的な鉄道利用が減少した人の中でも,定期利用でなくなった若年層の利用習慣の変化がより大きい可能性があること,また定期利用でなくなった若年層であるほど乗車時刻が変化した一方,定期利用を続けており年齢の高い層ほど乗車時刻が変化していない可能性があることを,定量的に明らかにした.