著者
菅原 正則 松田 圭大 木幡 行宏 畑山 良二 川端 伸一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E1(舗装工学) (ISSN:21856559)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.I_274-I_282, 2023 (Released:2023-02-22)
参考文献数
17

ガラス発泡軽量材は廃ガラスを原料とするリサイクル軽量材である.寒冷地においてガラス発泡軽量材を地盤材料として使用する際は,凍上性や凍結融解抵抗性の確認が必要であるが,それらを検討した事例は非常に少ない.本研究は,ガラス発泡軽量材に対して凍上試験や熱伝導解析を行い寒冷地での適用性を検討したものである.軽量材は,非凍上性材料であり,凍結融解後のCBR値の低下もみられない良質な材料であった.また,粒子内に多くの間隙が存在することが確認され,その効果により一般的な砕石と比較して優位な熱的性質であることを示した.さらに,車道舗装の凍上抑制層や路盤に軽量材を用いたモデルを作成し,凍結深さの抑制効果を熱伝導解析によって明らかにした.
著者
新保 泰輝 寺山 一輝 越野 亮 沖野 浩太朗 荒木 光一 吉田 龍史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集H(教育) (ISSN:18847781)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.1-9, 2022 (Released:2022-01-20)
参考文献数
16

頻発激甚化する自然災害による被害を低減するためには住民自らが常日頃から災害渋滞時の避難行動を学習し,適切な避難経路を考える必要がある.本研究では,災害時に生じる渋滞を考慮した避難経路を学習できる「防災すごろく」のアプリケーション(アプリ)を開発した.本アプリではランダムな出発点から避難所に向かう間に豪雨,火災,渋滞の発生に伴う避難方法や避難経路の変更を学ぶことができる.また,ゲーム性を考慮し,グループ同士で得点を競うことや防災クイズを実施することで学習意欲の向上を図った.更に,災害疑似体験ならびにゲームに対する慣れを軽減するためにVRコンテンツを用いた災害表現を行っている.本アプリによる防災教育を行い,アンケートを実施した.その結果,本アプリの学習効果が示されると共に課題も明らかになった.
著者
上条 陽 藤垣 洋平 パラディ ジアンカルロス 髙見 淳史 原田 昇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00244, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
14

本研究では,対象地域における人口全体の移動需要を考慮し,現況に加えて人口・施設分布を集中または分散させた異なる都市構造を仮定した移動需要データを生成し,異なる都市構造におけるシェア型自動運転サービス(SAV)の利便性・運送効率の比較評価とSAVの地域実装による影響分析を行った.SAVの利用意向を尋ねたSP調査から推定された交通手段選択モデルをもとにエージェントベースシミュレーションを実施した.対象地域は地方中小都市である群馬県沼田市と利根郡周辺とした.人口・施設分布を集中させ,移動需要が中心部に集中するほど利便性・運送効率は増しSAVの運用にあたっての好影響が強まった.一方で,利便性の地域間格差については,中心市街地から離れた人口低密度地域にて顕著にSAV待ち時間が長くなる結果が得られた.
著者
大野 浩史 菊池 雅彦 久保田 尚 小嶋 文 加藤 哲平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00064, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
10

東京一極集中緩和のため,地域との繋がりを構築する取り組みが重視されている.地域との繋がりの構築において注目される「関係人口」は,人々の地縁・血縁との関連があり,その地域との所縁がある住民意識を表す際に「故郷」がよく用いられる.しかし,「故郷」に対する住民意識の実態は十分には明らかになっていない.以上から本研究では,埼玉県在住者を対象にアンケート調査を実施し,居住履歴の分類から,「故郷」に関する意識,「故郷」のまちづくりへの参加意欲等を検証した. その結果,埼玉県で生まれ育った人々は,自身が生まれ育った埼玉県を「故郷」と意識する傾向があり,「明確な「故郷」を持たない」という人は少数であった.また,地方出身の1代目は現住所以外を「故郷」と意識し,まちづくりへの参加意欲が高い傾向が確認できた.
著者
加藤 真人 川端 祐一郎 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00052, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
16

COVID-19が感染拡大する中,国による緊急事態宣言等や自治体の独自施策によって飲食店営業時間の短縮や休業の要請及び「命令」が繰り返し行われてきた.こうした要請や命令は都市活動に甚大な影響を及ぼすため都市政策上極めて重大な要素であるにもかかわらず,そうした命令を正当化するのに十分なだけの効果があったか,また緊急事態宣言等の措置についても都市全体の感染拡大防止にどの程度有効であったか十分に検証・評価されてきたとは言い難い.本稿では,分析1で当該26店舗が東京都の「時短命令」に従ったことで防止されたと考えられる新規感染数を試算,分析2で緊急事態宣言等が,分析3で宣言等発令の根拠とされる人流抑制がそれぞれ東京都の実効再生産数に与えた影響を分析する.
著者
三浦 詩乃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00048, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
58

本研究は,都市のリバビリティ向上に資する街路デザイン施策の普及における,基礎自治体イニシアチブの意義と課題を明らかにすることを目的として,近年世界的に会員を広げる全米都市交通担当者協会およびGlobal Designing Cities Initiativeを対象とした.資料調査,ヒアリングおよび交通統計データ集計からイニシアチブの特性と普及実施成果を明らかにし,会員都市のアウトカム達成状況から問題点を提示した.また,連携拡大の要因として,欧州の環境ガバナンス施策の普及を担うTMNとの類似点を示した.得られた知見を総括し,街路デザイン担当部局のキャパシティ向上の観点からのイニシアチブの意義とともに,普及内容実践による会員都市における交通環境への効果を高めるために,近隣自治体の参画促進といった課題が残ることを導出した.
著者
石川 翔大 田中 皓介 寺部 慎太郎 柳沼 秀樹 海野 遥香
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00038, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
15

COVID-19が世界各地で感染拡大し,2020年度にはそれまでの東京圏の転入超過傾向から一転し,月次データで見れば転出超過となる月が連続して見られた.これは,COVID-19の感染拡大が東京一極集中に対する人々の意識に対して少なからず影響を及ぼしていることが想定される.そこで本研究では,COVID-19の感染拡大前後での,国民の東京一極集中に対する賛否意識の変化を把握することを目的とし,全国の国民を対象に,COVID-19感染拡大前後(1回目:2020年1月23~24日,2回目:2021年5月21~26日)でパネル調査(N=515)をWebアンケートにより実施した.その結果,東京一極集中に対して有意な意識変化はみられず,一極集中に対して態度が肯定的に転じた人および肯定的な態度を継続した人々は,医療福祉施設不足のデメリットの認知強度に上昇がみられないことなどが明らかとなった.
著者
野中 美貴子 阿部 貴弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00016, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
7

近年,インフラを観光対象としたインフラツーリズムが全国で展開されはじめている.インフラツーリズムは,インフラへの理解促進とともに,周辺地域の活性化や観光振興につながる取り組みとして期待されている.本研究では,全国のインフラツーリズムを対象に,アンケート調査,ヒアリング調査,さらに現地調査に基づき,対象施設ごとの取り組み内容や発現効果を把握し,インフラツーリズムの効果を類型化するとともに,取り組みと効果との関係や,効果の相互関係について考察した.これらの成果は,インフラツーリズムの効率的かつ円滑な実践に資する研究成果であると考える.
著者
竹下 祐二 衣川 優希 池田 結
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00215, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
7

時間雨量に基づいて算出される実効雨量の時系列を用いて,降雨浸透により河川堤防のり面内に生じる土中水分動態の簡便な推定方法を検討した.一級河川堤防裏のり面において計測された128の降雨事例に対して,堤防のり面上の位置や深度ごとに土中水分動態と実効雨量の時系列パターンとの相似性を評価し,両者の相関係数が最も高くなる実効雨量の半減期を最適半減期として算出した.最適半減期の短期的または長期的な極値として,対象堤防のり面に固有な短期最適半減期と長期最適半減期を提案した.これらの最適半減期を用いた実効雨量の時系列と土中水分動態との相似性を累加雨量や最大時間雨量の異なる降雨事例に対して確認し,堤防のり面内の土中水分動態を推定するための雨量指標として,実効雨量の有用性を検討した事例を報告した.
著者
小泉 圭吾 岩本 遼生 藤原 優 久田 裕史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00105, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
28

近年,豪雨による表層崩壊が多発している.これに対し筆者らは,これまで雨水浸透のみによる表層崩壊に着目して研究を進めてきた.一方,実情は排水設備の不具合や,排水構造物の流下能力を超過した水の流入による崩壊が発生しており,高速道路の斜面崩壊の約半数は,このような排水構造物の不具合に起因していると報告されている.従って,降雨による表層崩壊の問題を考える上で,雨水浸透のみならず排水構造物からの溢水を伴う崩壊現象についても明らかにしていく必要がある.本論文では,数値解析によって雨水浸透のみと,溢水を伴う浸透の違いを評価し,模型斜面実験によって浸透から変形までのメカニズムの違いを考察した.その結果,溢水を伴う表層崩壊は,雨水浸透のみによる崩壊とは浸透挙動や崩壊形態が異なることを明らかにした.
著者
谷口 健司 小刀祢 海斗 高山 雄貴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00117, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
20

気候変化に伴う大雨の強大化が懸念される中,氾濫を前提とした水災害対策が不可欠となりつつある.一方,我が国では将来的な人口減少が想定され,発生する余剰地を活用した水災害リスクの軽減が期待される.本研究では,石川県小松市周辺を流れる一級水系梯川を対象とし,気候変化下での大規模降雨発生時の氾濫解析を実施し,浸水深分布及び氾濫被害額の推定を行った.人口減少下での都市構造変化について,応用都市経済モデルを用いた推定を行ったところ,氾濫被害額の減少は約14%となった.人口減少下で水災害リスクの低い地域に生じる余剰地への移転促進策の実施を想定した都市構造変化の推定では氾濫被害額の減少は16%程度となった.既往研究では潜在的に約40%の被害額減少が示されており,効果的な移転促進策検討の必要性が示された.
著者
田中 智大 河合 優樹 立川 康人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00096, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
14

日本全国一級水系を対象に,気象庁気象研究所の150年連続実験1メンバーから得られた年最大流域平均雨量系列に非定常水文頻度解析を適用した.まず,d4PDF過去実験が非定常境界条件のアンサンブル実験であることを利用し,定常および非定常の頻度解析による極値雨量が整合的であることを明らかにした.次に,150年連続実験の非定常頻度解析とd4PDFの定常頻度解析から得られる100年確率流域平均雨量の過去から現在,近未来,将来への変化率を比較した.両者は全水系平均値でよく一致したが,水系単位では150年連続実験の空間的ばらつきが大きい結果となった.これは,150年連続実験のアンサンブル数が一つであるためと考えられ,水系単位の変化や水系間の違いを論じるにはアンサンブル数を増やす必要があることがわかった.
著者
坂下 克之 畑 明仁 小野 祐輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00207, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
16

模擬地震動作成時の位相の設定方法には,標準的なものとしては波形の包絡形状を規定する方法があるが,サイト固有の位相特性を反映できないこと等から,近年では位相特性の客観的かつ定量的な指標として群遅延時間が注目され,これを用いた模擬地震動作成方法が研究されている.その一般的な方法は,所定の確率分布に従う群遅延時間を振動数軸上でランダムに発生させて位相を決定するというものであるが,作成波は左右対称に近い包絡形状になる・ピークが集中する傾向がある・ノイズ成分が目立つ等の課題・留意点が認められる.そこで本研究では,波形の包絡線関数と群遅延時間のばらつきを関係付けることにより,波の包絡形状の設定とサイトの位相特性の反映とを両立できる新たな模擬地震動の作成方法を提案した.
著者
橘 才造 森山 仁志 松村 政秀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00202, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
17

強地震時の横荷重の作用により,鋼I桁橋桁端部の支点上補剛材に局部座屈や破断が生じ,早期復旧に支障を来した.一方,橋軸方向の水平荷重に対して主桁ウェブや主桁下フランジの局部座屈を防止するため,支点上に設置される補強リブの有無が横荷重を受ける桁端部の耐荷性能に与える影響は明らかにされておらず,横荷重に対する桁端部の設計法も確立されていない.そこで,本論文では,横荷重に対する桁端部の耐荷性能および補強リブの設置効果を明らかにするため,桁端部の部分縮小模型を用いた繰り返し水平載荷実験および桁端部の構造条件に着目したパラメトリックFEM解析を実施した.その結果,補強リブの設置により桁端部の耐荷性能は向上するが,その高さが横桁取り付け位置より低いと,設置効果が期待できない可能性があることがわかった.
著者
野寄 真徳 横山 秀史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00197, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
33

列車走行に伴う地盤振動の低減対策には多くの研究例がある.しかし,低減メカニズムの明確化や低減効果の定量化が行えていない対策工が多く,振動低減対策を現地で実施する際の対策工の選定は,既往の事例や技術者の経験的な判断に大きく依存すると考えられる.そこで本論文では,近年研究が進められている走行列車・軌道・構造物・地盤をモデル化した数値シミュレーションを用いて,対象箇所の振動を増大させている要因の抽出方法と,抽出した振動増大の要因に基づく振動低減対策の提案に関する検討を行った.その結果,振動源の特性,構造物の振動特性,地盤の伝播特性の3つを個別に評価し,着目した周波数帯域の振動増大の要因を抽出することができた.また,抽出した振動増大の要因を振動低減対策の提案へつなげるためのフローを取りまとめた.
著者
宇多 高明 田村 貴久 小金 宏秋 横田 拓也 芹沢 真澄 大谷 靖郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_427-I_432, 2021 (Released:2021-11-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1

初期地形として平行等深線地形を与え,江の島をおいて方向分散法により波浪場を定めた上,BGモデルにより地形変化計算を行った.この結果,江の島背後の舌状砂州の再現が可能となった.次に,計算された地形を初期形状として,湘南港や片瀬漁港などの施設建設後の地形変化を計算し,その上で片瀬漁港での航路浚渫を考慮した計算を行ったところ,片瀬西浜の汀線後退には片瀬漁港沖での航路浚渫の影響が大きいことが明らかになった.さらに,引地川河口以西では冬季にSSW方向の季節風の作用により汀線砂が斜め陸向きに運ばれ,海岸線に沿う遊歩道に堆積するが,BGモデルとセルオートマトン法を組み合わせて飛砂も含む海浜変形の予測を行った.最後に,片瀬西浜での侵食対策としては,片瀬西浜で2万m3/yrの養浜を行うことが望ましいことを明らかにした.
著者
中島 秀之 野田 五十樹 松原 仁 平田 圭二 田柳 恵美子 白石 陽 佐野 渉二 小柴 等 金森 亮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_875-I_888, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
22
被引用文献数
4 5

バスとタクシーの区別を無くした,主として都市部を対象とした新しい公共交通システム(Smart Access Vehicle System)の概念を示す.これは,コンピューターにより全ての車輛の位置と経路を管理し,固定路線やダイヤを持たず,乗合いで,デマンドに即時対応するシステムである.これを交通サービスのクラウド化と呼ぶ.タクシーの利便性とバスの経済性を併せ持つことが可能である上に,渋滞,事故,天候変化,災害などに柔軟に対応できる.筆者らは函館市内において小規模な実験を行い,数日間の完全自動配車に成功している.
著者
廣部 紗也子 小國 健二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.38-48, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

乾燥破壊現象における亀裂の特徴的な幾何形状の支配法則は未だ解明されていない.既存研究は,乾燥に伴う不均一な水分分布が亀裂パターン形成の重要な役割を担うという直観に反し,解析領域内での一様な水分分布を前提とするか,水分移動・変位場の発生・破壊の擬似的な連成解析に留まっていた.本論文では,乾燥破壊における亀裂パターン形成の問題に対し,i) 乾燥に伴う水分移動と体積変化,ii) 不均一な体積収縮を反映しつつ,つりあい状態を満たす変位場の発生,iii) 亀裂の形成,全ての連成モデルを提案する.粒子離散化有限要素法による固体連続体の変形及び破壊の過程の解析と,破壊面の形状を反映させた拡散係数をもつ拡散方程式の有限要素解析の弱連成解析を行うことで,乾燥破壊現象に特徴的な亀裂パターンとその幾何形状の変化を再現する.
著者
笠原 太一 福田 信二 木村 匡臣 浅田 洋平 乃田 啓吾
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.G-0268, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
32

島嶼地域での水資源開発のために建設された河川横断構造物等は,河道内の物理環境を改変し,生態系に影響を及ぼすことから,総合的な環境評価が求められる.本研究では,石垣島宮良川流域における網羅的な魚類生息環境調査によって物理環境と魚類相の流程分布を明らかにし,河川横断構造物の影響について検討した.結果として,宮良川全域で29科72種確認され,純淡水魚が7種,通し回遊魚が17種,周縁性淡水魚が37種および海産種が11種観察された.また,水域区分ごとに水温や水深などの物理環境条件が有意に異なっており,魚類相にも差異がみられた.本調査結果から,石垣島宮良川において河川横断構造物は,湛水部形成による物理環境の改変と感潮域境界部における魚類の移動阻害により魚類相の流程分布に影響を及ぼす可能性が示唆された.
著者
多田 直人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00006, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
4

2018年9月にインドネシアの中部スラウェシ州において,発災後数分で到来した津波と人類史上稀に見る液状化による大規模流動(Nalodo)により約4,500名が犠牲となる地震が発生した.当時JICA専門家として同国国家防災庁に派遣されていた筆者は,他のJICA専門家らと共同して,復興マスタープランの策定とそれに基づく復興事業を支援した.その過程で,津波堤防についての科学技術的な説明,液状化による大規模流動の発生メカニズムの解明等を実施した.誠実な態度で取り組んだ結果,その後に発生した大規模洪水への対応をはじめとする防災政策について,同国政府は専ら日本を頼るようになった.日本が信頼を得た理由を分析し,今後の海外支援に向けて提言する.