著者
中西 航 小林 巴奈 都留 崇弘 松本 拓朗 田中 謙大 菅 芳樹 神谷 大介 福田 大輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_787-I_797, 2018
被引用文献数
4

観光施策の検討において,周遊行動の実態把握は重要である.アンケート調査やプローブデータの利用など様々な方法が存在するが,コストや普及率の問題から十分なサンプル数を得ることは容易ではない.本研究では,パッシブなデータ取得手段であるWi-Fiパケットセンサーを用いた周遊行動把握の可能性を検討する.沖縄本島・本部半島周辺の複数観光地にセンサーを設置し,観光客が所有するモバイル端末からのプローブリクエストデータを複数日にわたり計測した.計測データからプローブリクエストの特性を把握し,来場者数の推定可能性を確認したうえで,複数地点での同一端末の計測情報を用いて観光地間のOD表とトリップチェインの作成を行った.来場者数の時系列変動や地点間流動量の大小関係について妥当な結果を得るとともに,課題を整理した.
著者
大塚 夏彦 大西 富士夫 泉山 耕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_25-I_30, 2017 (Released:2017-08-22)
参考文献数
8
被引用文献数
1

2010年以降,北極海航路による東西輸送が拡大中である.当初は燃料や資源の高騰を背景とした欧州・アジア間輸送が拡大し,それが2014年に急減した後は,ロシア北極海沿岸の資源開発が駆動力となって,輸送貨物量は増大傾向にある.夏期北極海では海氷減少が進行中で,船舶の航行環境は緩和しつつあり,近年は多様な船が夏の北極海港航路を航行する様になってきた.北極海航路の輸送距離短縮により,燃料費や船体償却が低減され,ロシアの砕氷船料金などのコスト増を相殺する効果が出る.これにより,バルク貨物は輸送コスト削減が実現しやすい.当面はロシア北極海沿岸での天然資源開発に関連するバルク貨物が,北極海航路の主要貨物となって,海上輸送が拡大していくと考えられる.
著者
山村 明義
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.44-55, 2014 (Released:2014-01-20)
参考文献数
11

近年,首都圏における,朝ラッシュ時の遅延は鉄道事業者にとって大きな課題となっている.特に,稠密運転路線においては,一旦小規模な障害により遅延が発生すると,後続列車に遅延を伝播させ,拡大する傾向にある.そこで,東京地下鉄では,列車運行実績データを活用することで,遅延状況の可視化を行うと共に,遅延規模の指標化(Static Index,Active Index),遅延発生要因の分析,対策の実行というアプローチを確立した.このアプローチを,遅延・混雑の激しかった東西線をモデルに実施し,ダイヤや駅オペレーションのソフト面の改善,信号設備・駅設備・車両設備のハード面の改善を行うことで,遅延短縮を図ることができた. 本稿では,そのプロセスと遅延改善策について述べ,その改善効果を検証すると共に,首都圏稠密運転路線における遅延改善のあり方を考察する.
著者
佐藤 翔紀 高橋 祐貴 川端 祐一郎 宮川 愛由 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_513-I_524, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
20

自然災害のリスクが高い我が国においては,中央政府と地方自治体双方の努力により「ナショナル・レジリエンス」を確保することが急務となっている.国のみならず地方自治体の取り組みが重要な役割を担っており,その実態の把握と,取り組みを改善する手段についての研究が不可欠である.本研究では,地方自治体に対するアンケートを行い,地方自治体における防災政策の現状を確認するとともに,防災に関する地方自治体間のやり取りや,近年公共政策の領域においても活用の可能性が指摘される物語型の情報共有が,防災政策の充実を促す傾向が観察されるか否かを検証する.
著者
張 馨 中村 英樹 井料(浅野) 美帆 陳 鵬
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1031-I_1040, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
7
被引用文献数
5

信号交差点における横断歩行者の歩行速度特性を知ることは,歩行者の安全性の向上に極めて重要である.そのため,横断歩道の幾何構造および信号現示などによる横断歩行速度の変化を定量的に評価する必要がある.そこで本研究では,様々な横断歩道長や歩行者青時間長の横断歩道における歩行者青(PG)時の横断歩行速度を,横断の前半・後半に分けて分析し,これらを推定するモデルを構築した.その結果,横断歩道長が長くなるほど,また青時間開始から時間が経つほど,横断歩行速度が速くなることがわかった.さらに,これを既存の歩行者青点滅(PF)時間を対象としたモデルと比較し各説明変数の感度分析を行ったところ,青点滅時の方が全体的に横断歩行速度が速く,横断歩道長や横断開始タイミングに対する感度も高い傾向が見られた.
著者
羽深 裕希 丸山 喜久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_257-I_264, 2015

本研究ではグラフ理論の一つであるスペースシンタックス理論を用いて緊急輸送道路をグラフ化,統合値を算出し,災害時に物資を集積する拠点の配置場所を提案することを目的とした.東日本大震災の際に行われた「くしの歯作戦」および岩手県の後方支援拠点の選定の事例をスペースシンタックス理論により評価した.この結果を南海トラフ巨大地震の危険性が高い四国地方および高知県に対して適用し,高知県において後方支援拠点と同様の性質を持つ広域物資拠点の設置場所に関する検討を行った.
著者
畑 一洋 佐藤 誠 島田 武 佐藤 昌志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1133-1136, 1997

地震による橋りょうなど道路構造物への被害は、構造物の種類・形状などを問わず地盤条件の不連続な地域においても発生する確率が高いと考えられている。古くから沖積地盤に地震被害が多くなることが知られているが、最近の被害報告によれば沖積地盤の中でも、特に被害が集中する区域のあることが指摘されている。<BR>これらのことから、著者らは、北海道の地震における地域特性を考慮した推定地震動を分析し、道路構造物の被害発生に関する地震動特性の解析手法について提案を行い、これまでの研究においてその有効性を考察している。
著者
伊藤 竜生 山崎 宏樹 船水 尚行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
環境工学研究論文集 (ISSN:13415115)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.481-486, 2008

製造、運転コストの小さいコンポスト型トイレの試作行い、その運転性能およびコストについての検討を行った。トイレの仕様として、水分負荷を小さくできるし尿分離型で、動力を必要としない手動撹拌とした。その結果次のことがわかった。糞便の総投入量の増大につれておが屑マトリックスの重量が増大したが、約50%の有機物が分解した。含水率は約55%で安定した。条機酸の生成は反応初期に見られたが、開始後約2週間で条機酸の生成は認められなくなった。4人家族が使用することを想定した糞便の負荷でも好気的なコンポスト化が行われた。大腸菌数や大腸菌群数はこれまでの加温型のトイレに比べ高かったため、何らかの不活化処理が必要と考えられる。撹拌に要する力は使用期間が長くなるにつれて大きくなったが、減速器の使用などにより必要な力を小さくすることが可能である。しかしながら、撹拌の回転数やスクリューの強度についての検討が必要である。このスクリューにおける撹拌に必要な力は、撹拌されるマトリックスの重量の増加およびスクリューと反応槽の壁面との距離の減少に伴い増加した。材料のコストは約22万円であったが、その大部分はスクリューであった。インドネシアでは約Rp.10, 000, 000 (約100, 000円) であり、トイレの総建設費用を上回った。また、材料費は反応槽用の壁面用塩ビがコストの66%を占めた。
著者
吉田 隆治 高橋 浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.25, pp.441-444, 1999

著者らは海底軟弱地盤上の水中盛土工法として軽量モルタルを袋詰めにして用いる袋詰め投入工法を提案している. 本工法は変形追随性を有し, 未硬化の状態で水中投入すれば締め固めを必要としないことが水中投入実験から確認されている. しかし, 盛土材の軽量化に伴う拘束圧の低下により地震時の変形や沈下が懸念された. そこで, 本工法による水中盛土地盤の耐震安定性を確認するため, 振動台実験および簡単な解析的検討を行った。その結果, 未硬化の状態で袋詰め材を投入すれば地震時の水中盛土地盤の沈下は抑制でき, 今回の実験の範囲ではL2相当の地震動に対して安定であることが確かめられた. 本工法による水中盛土地盤の強度定数は確認できていないが, 静的震度法による検討結果から未硬化の状態で袋詰め材を投入すればかなり強度の高い地盤が構築できたことが推測される.
著者
荘司 喜博 高橋 邦夫 浅井 正 角田 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.637, pp.137-148, 1999-12-20
参考文献数
14
被引用文献数
5 1

発電事業などの副産物である石炭灰は, いまだに大量が産業廃棄物として処分されている. 石炭灰は, セメントを添加して固化し, 必要な強度をもたせることにより, 軽量で高強度な地盤材料として利用できる可能性がある. そこで, 石炭灰を固化処理した地盤から岸壁に作用する土圧の算定手法を提示し, 土圧軽減効果を評価した. また, 室内および現地で試験を行い, 配合設計と施工条件を検討した上で. 酒田港の大型岸壁建設工事で, 約5万m<sup>3</sup>の石炭灰を裏込め工事に使用した. この結果, 少量のセメント添加で (<i>c</i>/<i>w</i>=5%). 砕石に相当する土圧低減効果を発揮する裏込め (地盤強度; <i>qu</i>≧2.0kgf/cm<sup>2</sup>≒0.196N/mm<sup></sup>) が施工できること, また, 建設コスト縮減の面でも効果があることが確認された.
著者
米田 昌弘 西澤 毅
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.658, pp.193-205, 2000-09-20

本研究では, 橋軸方向にオールフリーまたは弾性拘束された長大鋼斜張橋を対象として, 遊動円木振動数の簡易推定法を提示するとともに, 橋軸方向地震時における桁端部の水平移動量と主塔基部曲げモーメントを推定できる実用算定法を提案した. 数値計算例より, 提案した手法は, 長大鋼斜張橋の耐震性についての比較検討や基本構造の選定, さらには構造諸元がほぼ確定した段階における地震応答解析結果を概略照査する際に, ほぼ十分な精度で適用できることを示した.
著者
北沢 正彦 石崎 浩 江見 晋 西森 孝三
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.1990, no.422, pp.343-352, 1990
被引用文献数
2

This report deals with the seismic design of the Higashi-Kobe Bridge, which is a long-span cable-stayed bridge. In this bridge, the main girders are supported by all towers and piers in such a way that the girders are all movable (herein referred to as &ldquo;all free&rdquo;) in longitudinal direction. This supporting method was adopted with an aim to lengthen the fundamental bridge period to a reasonable long period. By using this supporting method, the effects of the inertial force of the superstructure on the bridge towers and the caisson foundations were greatly reduced, thereby resulting in a more rational and economical bridge design.
著者
岸 利治 前川 宏一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.526, pp.97-109, 1995-11-20
被引用文献数
19 28

コンクリート構造の耐久性照査において, 使用材料の特性値を一般化した形式で与えることは, 効率的な材料設計に不可欠である. 特に温度応力解析では, 任意の条件に対応可能なセメントの発熱モデルを与えることが求められる. 本研究は, セメント水和反応を構成鉱物ごとに記述し, ポルトランドセメントの種類による差を, 鉱物組成の違いとして表現した水和発熱モデルを提案するものである. 各鉱物反応の発熱速度は, 温度一定条件下の基準発熱速度と温度活性の2つの材料関数により表現され, 鉱物反応ごとに異なる温度依存性を反映して, 任意の温度履歴に対応したセメント総体としての発熱過程が定量化された. 構築した水和発熱モデルは, 断熱温度上昇値及び擬似断熱試験K体の温度計測結果によって検証した.
著者
松尾 栄治 保井 渉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E (ISSN:18806066)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.249-258, 2009 (Released:2009-06-19)
参考文献数
10

遠赤外線減容処理を施した発泡スチロール骨材は軽量モルタル用としての用途が期待できる.筆者等はその強度特性を中心とした基礎物性について明らかにしてきた.本稿では,軽量化以外の付加価値として断熱特性に着目し,配合条件や部材厚さが断熱効果に及ぼす影響を日射量との関係から明らかにした.さらに高温時の断熱特性についても実験的考察を行った.
著者
宇多 高明 百瀬 尚至 遠藤 和正 三波 俊郎 古池 鋼 石川 仁憲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_1206-I_1211, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
2

遠州灘海岸(天竜川河口から浜名湖の今切口)の広域の海浜変形について深浅測量データなどを基に分析を行った.対象海岸のうち,馬込川河口から今切口の間では,沖合の2箇所に規模の大きな深みが定常的に存在し,その背後では汀線が後退している.また,粗粒材養浜区間では汀線はほぼ維持されているが,汀線より200m以上沖では砂分の供給不足により徐々に侵食が進んでいる.海浜縦断形は一様な緩勾配斜面から凹状の断面へと変化しつつあり,当初は馬込川河口の西側近傍にのみあった凹状の海浜縦断形が西側へと広がりを示していることが実測データから明らかにされた.
著者
高橋 和也 本田 敦 野澤 剛二郎 土肥 哲也 小川 隆申
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.167-172, 2015 (Released:2015-05-20)
参考文献数
8
被引用文献数
3

列車速度500km/h領域の超高速鉄道のトンネルでは,微気圧波の低減対策として坑口にトンネルより大きな断面積を持つ角型の緩衝工が設置されている.緩衝工をトンネル断面と同じ円型にすると,建設コスト低減などの利点がある一方で,緩衝工の効果が減少したり,突入時の空気振動が発生する恐れがある.本報告では,超高速鉄道における微気圧波の低減効果を確保し,かつ空気振動を十分なレベル以下とする円型緩衝工の可能性を検証することを目的とする.そのために,1) 緩衝工の断面形状をパラメータとした1/31スケールの模型試験と,2) 山梨実験線に設置した円型緩衝工の現地計測を行い,これらの結果より円型化による微気圧波ならびに空気振動への影響を確認することで,その有効性を明らかにした.
著者
中山 昭彦 久末 信幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_577-I_582, 2015 (Released:2016-01-29)
参考文献数
17
被引用文献数
3

In order to conduct a Large-Eddy Simulation (LES) of turbulent free-surface flows using a smoothed particle hydrodynamics (SPH) method, models needed to account for the turbulence effects and the motion near solid walls have been studied. A method that employs an eddy viscosity in a realistic viscous stress model and the turbulent wall model based on the wall stress is proposed. The model parameters are verified in laminar and fully developed open channel turbulent flows. The laminar flow is calculated well but the results of the turbulent flow are not as good as those of fixed grid methods. Detailed flow characteristics of turbulent flow of collapsing water column observed experimentally are found to be reproduced very well compared with the results of existing methods that do not consider turbulence or the viscous effects.