著者
出村 嘉史 大住 由布子 川崎 雅史 樋口 忠彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.158-168, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

本研究は,本居宣長という個人の目を借りて,門前町が形成されて京都の中でも有数の名所巡りの景域を形成しはじめる18世紀中葉の「清水祗園あたり」における,行楽の空間の構造を明らかにするものである.予め同時代の地図資料,絵図資料から領域の敷地及び経路の構成を把握した上で,本居宣長の『在京日記』(1752-1757)の全記述から「清水祗園あたり」における宣長の体験内容を読み解き,行楽の拠点となった場所と,宣長の足取りの特性を分析した.その結果,宣長によって経験された同景域における,細かなループ状の経路が幾つも重なりあい社寺境内と門前の両方を渡り歩く路傍に4種類の行楽の拠点が配置されている構造が見出され,それぞれの拠点における場づくりの性質が示された.
著者
徳永 宗正 曽我部 正道 後藤 恵一 山東 徹生 玉井 真一 小野 潔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.392-409, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

近年高速鉄道で採用の多い背の高い防音壁は,固有振動数が低く,従来支配的な設計要因とはならなかった列車風圧との共振による動的増幅が懸念された.本論文では,動的応答増幅を考慮した防音壁の設計法の提案を目的に,測定・数値解析に基づく検討を行った.列車通過時の防音壁の応答において,200km/h以下では列車荷重による応答が支配的となる一方,列車速度200km/h以上では列車風圧による応答が90%以上を占め,設計においては列車風圧のみを考慮すればよいこと,列車風圧による防音壁の応答は,列車風圧パルスと固有振動モードによる共振効果,後尾部パルスの重畳効果により増幅されること等を解明した.さらに,列車通過時の防音壁の動的応答を一般化し,防音壁の設計法として,シミュレーションによる手法と簡易法を提案した.
著者
神谷 啓太 布施 孝志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_759-I_769, 2016

近年,流動的な人口の把握が多分野から注目されており,GPSにより収集した大量の位置情報を用いたメッシュ人口のモニタリングが期待される.モニタリングでは異常状態の検知が重要だが,統計的異常検知手法の開発は扱うデータに応じてアドホックに行われている.本研究では異常検知問題を特徴付ける要因を整理し,メッシュ人口データのモニタリングを,半教師学習した統計モデルにより時系列データ中の文脈型異常を検知する問題と設定した.そして,時系列データの潜在状態数を推定可能な階層ディリクレ過程隠れマルコフモデルを援用した異常検知手法を提案した.シミュレーション実験では潜在状態の事後分布を比較する手法を用いることで高い性能を確認し,実データへの適用では列車運転見合わせが発生した時刻での高い異常スコアの検知を確認した.
著者
大枝 良直 角 知憲 中西 啓造 椿 辰治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, no.555, pp.83-90, 1997
被引用文献数
2

本研究では, 業務を目的とした航空旅客の出発時刻選択行動のモデルを提案する. 長距離業務交通では, 業務の開始時刻を規定されている. 旅客はこの時刻に合わせて旅行のスケジュールを決定することが多い. この行動が長距離交通の時間的変動を支配し, 高速交通機関の選択行動に影響を与えると考えられる. 提案するモデルは, 到着指定時刻に対し, 当日の航空便を選択するモデルとその前日の航空便を選択するモデルの2つからなる. これらのモデルは行動時刻に対して人が日常の生活パターンの中で感じる不都合の度合いを非効用の概念で与えている. モデルを千歳発東京着の航空路線に適用し再現性を確認した. このモデルにより, 交通所要時間の変化や空港の運用時間の変化に対する旅客の行動を予測することができる.
著者
大矢 淳 柴山 知也 中村 亮太 岩本 匠夢
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_880-I_885, 2016
被引用文献数
2

2011年台風15号を例として気象-海洋結合モデルを用いて再現計算を行う.次に,疑似温暖化手法を用いて作成した気象場を構築しこの統合モデルを適用し台風・高潮の将来予測計算を行う.さらに,高潮計算と先行研究で行われた津波計算とからそれぞれ浸水面積を算出し,治水経済調査マニュアルの方法に従って直接被害額と間接被害額を求める.本研究では,温暖化ガスの排出が多く,高潮の再現について比較的危険側に設定した場合における例を検討した.水害対策は防潮堤や内部護岸のかさ上げ,水門の新設,既存構造物の耐震強化,維持管理費用を含めた対策費用(以下:構造物費用)と家屋のピロティ化(以下:高床化)の費用の2つを検討した.台風と地震の発生確率を基に50年間の予想被害額は高潮で5.76兆円,津波で13.99兆円となった.構造物費用は,50年間で2.12兆円となり,高床化にかかる費用は51.3兆円となった.海岸構造物強化の対策を行った場合の費用便益比は9.32,高床化の場合には津波の浸水域で1.32となり,高潮の浸水域で0.38となった.
著者
尾高 慎二 神田 佑亮 西ノ原 真志 飯野 公央 谷口 守
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_753-I_760, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
15
被引用文献数
2

松江都市圏では,平成19年度から職場モビリティ・マネジメント(MM)を5年間継続的に実施してきている.また,平成21年度からは市民全体の取り組みとして「ノーマイカーウィーク」へと発展させてMMを展開している.本稿では,職場MMの継続効果として,交通現象面へ与える集計的効果,「まつエコ宣言(職場交通プラン)」策定による意識・行動変容に与える効果,取り組みの継続・定着状況によるまちづくり意識へ及ぼす効果の3つの観点から職場MMの継続実施効果を明らかとするものである.これらの結果,ノーマイカーウィーク実施中のみならず,通常時の交通量も減少すること,まつエコ宣言によりノーマイカーへの取り組みが活性化されること,取り組みの継続意向の高さや定着により,まちづくり意識に影響があることを示唆している.
著者
沢 一馬 山口 敬太 久保田 善明 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.42-53, 2013
被引用文献数
1

近代以前の琵琶湖や内湖沿岸の水郷集落では,集落内に張り巡らされた水路が,田舟による荷物の運搬,生活用水,農業用水等に用いられ,長きにわたり生業の風景を形成してきた.本研究は水郷の面影を残す数少ない集落の一つである伊庭(東近江市)を対象に,文書や地図資料に基づき明治・大正期の水路網構造を復元し,明治以後の水路網の変遷(埋立,暗渠化,付替えなど)ならびに住民による各時代の水利用の実態について明らかにした.その結果,集落内に網目状に広がる水路が多面的な役割を有していたこと,水路自体の役割の変化が水路構造の変容と持続に密接に関わっていたことを明らかにした.
著者
沢 一馬 山口 敬太 久保田 善明 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.42-53, 2013 (Released:2013-05-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

近代以前の琵琶湖や内湖沿岸の水郷集落では,集落内に張り巡らされた水路が,田舟による荷物の運搬,生活用水,農業用水等に用いられ,長きにわたり生業の風景を形成してきた.本研究は水郷の面影を残す数少ない集落の一つである伊庭(東近江市)を対象に,文書や地図資料に基づき明治・大正期の水路網構造を復元し,明治以後の水路網の変遷(埋立,暗渠化,付替えなど)ならびに住民による各時代の水利用の実態について明らかにした.その結果,集落内に網目状に広がる水路が多面的な役割を有していたこと,水路自体の役割の変化が水路構造の変容と持続に密接に関わっていたことを明らかにした.
著者
阿部 貴弘 篠原 修
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-10, 2012

近世城下町大坂の町人地は,堀川網や背割下水と呼ばれる下水路網などのインフラが実に見事に整備された,水系を骨格とする日本独自の大変興味深い都市構造を有していた.本研究では,こうした城下町大坂の町人地のうち,いまだ設計論理の解明されていない上町地区を対象として,近代測量図の地図計測による定量的分析という新たな方法論に基づく分析を行い,町割の基軸及びモジュール,設計単位,さらに開発過程を明らかにし,地区の設計論理を読み解いた.
著者
Ichiko INAGAKI Dian Sisinggih Sri Wahyuni Ratih Indri Hapsari Kengo SUNADA
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_1645, 2014 (Released:2015-05-18)

This manuscript in Journal of Japan Society of Civil Engineers, Ser.B1 (Hydraulic Engineering), Vol. 68, No. 4, I_103-I_108, 2012 was withdrawn by the Editor on October 3, 2013 at the request of the authors.
著者
坂井 晃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.673-682, 2012
被引用文献数
2

日本における震度は,周波数補正を施した3成分合成加速度から算出される計測震度が用いられ,10階級の気象庁震度階級として公表されている.このとき用いられる加速度振幅は,その値以上の継続時間の合計が0.3秒となるときの値であるために,それ以外の時間帯における加速度振幅の大小に依存しないことになる.本研究は,震度の時系列表示法について検討を加え,移動実効値法を用いた震度の最大値と計測震度の関係について比較検討した.また,地震時間帯全体の加速度変動量を考慮した震度の評価法として,移動実効値法による震度の時系列表示を利用した修正震度の算定法を提案した.
著者
金平 博樹 伊藤 学 窪田 陽一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.231-236, 1994

本研究では、明治から昭和初期 (第二次大戦以前) に埼玉県内に架設された橋梁を対象に調査を行った。県管理道路台帳、本邦道路橋輯覧や橋梁史年表 (藤井郁夫編) などから212橋のデータを収集した。この半数以上は一応現存している。また、県内戦前橋梁の現状を探るため、東北・高崎線沿線地域と荒川上流の秩父地方の現地調査を行った。これらの調査結果をもとに対象期間に架設された橋梁の特徴を述べ、考察するものである。
著者
羽田野 袈裟義 種浦 圭輔 渡邉 誠 中野 公彦 斉藤 俊 松浦 正己
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.270-283, 2006 (Released:2006-08-18)
参考文献数
27
被引用文献数
3 4

プーリ・ワイヤ・フロート・カウンタウェイト・ラチェット機構を組み合わせたつるべ式構成の波力エネルギー変換システムの力学モデルを提示している.計算では,フロートの喫水状態を時々刻々調べ,フロートの一部没水,全没水及び宙吊りに応じて計算式を使い分けている.また,水槽実験により力学モデルの検証を行い,フロートがローリングを起こさない場合にはエネルギー利得の実験と計算が良好に一致することを確認した.次いで,実稼動を想定して諸量の計算を行い,フロートの喫水状態により発電量,ワイヤ張力などの力学量の時系列変化に違いが出ることを明らかにすると共に,種々の波高と周期の組合せに対してエネルギー利得の評価を試みている.
著者
三浦 詩乃 出口 敦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.138-152, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
37
被引用文献数
5

本研究はアメリカ・ニューヨーク市交通局による施策の一つである「Plaza Program(プラザプログラム)」制度を対象とし,(1)制度化に至るまでの同市の歩行者空間に関する施策の変遷,(2)制度の運用方法及び計画された歩行者空間(プラザ)の空間的特徴について整理を行い,制度の特徴を明らかにした.さらに,(3)多様な種類の民間組織によるマネジメントの実態から,マネジメントの成果として,渋滞などの交通問題の緩和に加えて,コミュニティが抱える社会的課題への取組みや地域活動の活発化,景観の魅力向上がもたらされていることを提示した. 以上から得られた知見を総括し,プラザプログラムが短期間に普及してきた要因,従来の街路利活用のマネジメントの仕組みと比較した際の利点と課題を明らかにした.
著者
鈴木 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_870-I_875, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
9
被引用文献数
3

地球が温暖化すれば,海面上昇と台風強大化によって高潮による浸水リスクが増大する.そのため,全国の高潮浸水による被害リスクを,将来の海面上昇と高潮偏差の増大を外生的に与えて推計し,その地域分布を表すリスクマップを作成した.そのマップでは,三大湾,瀬戸内海,有明・八代海地域でリスクが大きい一方,北陸,東北,北海道地方では有意なリスクがみられる場所が限定的である.高潮や津波による浸水の被害ポテンシャルを把握するため,作成した浸水被害モデルを使い,陸域が浸水した場合の被害額を様々な浸水水位で計算し,浸水水位と浸水被害額の関係を表す関数を作成した.関数によれば,東京湾,大阪湾および瀬戸内海がT. P. 5mまで,茨城・九十九里と南海・東南海がT. P. 10mまで被害額の増加割合が大きい.
著者
Mostafizur RAHMAN 仲座 栄三 稲垣 賢人 田中 聡 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.62-70, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
13
被引用文献数
2

宮城県の貞山運河が東日本大震災の際の巨大津波に対して幾分かの津波減勢作用を見せたことは,当時の被災時のビデオ解析や災害後の被害調査結果などから明らかにされている.いま貞山運河はその地域の復興のシンボルとして,その保全や新たな防災活用が注目されている.本研究は,水理実験により,運河の持つ津波防災効果を解明することを目的としている.運河の津波減勢作用は,直立護岸の場合と比較され,浸水深の低減,津波到達時間の遅延,流速の減勢,比エネルギーの低減に関して,護岸の持つ減勢作用と同程度かそれ以上の効果を持つことが示されている.MPS法の妥当性を実験値との比較で示し,その応用として運河の両岸に盛土部を設置した場合の効果が議論されている.
著者
永井 健二 芥川 哲 高木 利光 浅野 剛 犬飼 拓志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.566-570, 2005

富士川は, 河口前面の水深約20m以深が海底勾配1/3という急勾配の海底谷となっており, 大規模な出水があった場合, 河口部から流出した土砂は河口テラスに留まることなく海底谷へと流失してしまう. そこで, そのような土砂流出への対応策を検討する上において必要となる, 河口から流出する土砂の移動・堆積状況について平面的な地形および粒度組成を考慮可能なシミュレーションモデルの開発を行った. 平成16年10月の台風22号および23号来襲に伴う出水時に実施した現地調査結果を基に, 浮遊砂を考慮した混合砂礫平面2次元地形変化モデルを構築し, これにより出水時の河口前面部における地形変化を再現し, モデルの妥当性を確認するとともに問題点・課題なども明らかにした.
著者
荻原 貴之 岩倉 成志 野中 康弘 伊東 祐一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_589-I_595, 2014

羽田空港リムジンバスは,復路(空港発)に対して往路(空港着)の利用割合が低い傾向にある.これは乗換えがなく着席して空港へ向かえる快適性を有する一方で,道路交通状況による所要時間変動が利用者へ不安を与えていることが一因と考える.<br>本研究では,この現状を踏まえ,羽田空港アクセスを対象に旅行時間信頼性が利用者の交通機関選択行動に与える影響を把握する.具体的には,リムジンバスの年間の実績所要時間データとアンケート調査から得た利用者行動データをもとに,平均分散アプローチによる交通機関選択モデルを構築し,旅行時間信頼性の評価を行うと共に各種提案されている旅行時間信頼性指標と利用者の選択結果との整合を考察する.結果として,標準偏差,BT,TT80-TT20,TT70-TT30等の指標が利用者評価と整合性が高いことが分かった.
著者
安倍 隆二 岳本 秀人 久保 宏 平尾 利文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
舗装工学論文集
巻号頁・発行日
vol.10, pp.119-126, 2005

本論文では, ブリスタリング現象が発生した新千歳空港の現場条件から, 室内試験によるブリスタリング現象を再現し, その現象が発生する要因を検討した. 検討結果として, ブリスタリング現象はアスファルト舗装の空隙率や試験温度に影響されることが検証できた. また, 対策工法として実施した表層に改質II型のアスファルトを適用したことや1層の施工厚を増す対策工法の効果等も併せて報告するものである.