著者
浜田 成一 杉原 栄作 貝戸 清之 水谷 大二郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.84-101, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
32
被引用文献数
2

建設業法上,建設企業は総合工事企業と専門工事企業に分類される.本研究では,老朽化が進む社会基盤施設に対する維持・修繕工事の需要の増加と,資本金階層別の建設企業の維持・修繕工事の受注件数や請負契約金額に関して,統計調査データの分析やヒアリング調査を実施し,一般的な維持・修繕工事の大半は,資本金1,000万円以上5,000万円未満の専門工事企業が受注していることを明らかにした.さらに,1)官公需法の下では維持・修繕工事において専門工事企業が中心的な役割を担うこと,2)それにより維持・修繕工事の不完備性を軽減し得ること,3)発注方式として,設計・施工一括発注方式が望ましいことを述べた.一方で,専門工事企業には技術の専門性のみならず,維持・修繕工事全体を管理する総合技術力が要求されることに言及した.
著者
川島 一彦 高橋 良和 葛 漢彬 呉 智深 張 建東
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.825-843, 2009 (Released:2009-09-18)
参考文献数
11
被引用文献数
3

本論文は2008年5月12日に中国で発生した中国四川地震(汶川地震)による橋梁被害を示すものである.現地調査は2008年8月9日∼15日を基本とし,この他,複数回の個別調査も行った.本地震による主要な強震記録とその特性,中国における橋梁の耐震設計の概要と設計地震力,被害との関連も検討する.最後に,本文に示す橋梁被害から得られた四川汶川地震による橋梁被害の特徴及び原因について示す.
著者
本田 利器
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_1078-I_1086, 2018 (Released:2018-11-01)
参考文献数
32
被引用文献数
2

耐震設計での想定を越える状況における性能を考える「危機耐性」という概念が議論されるようになっているが,定義が曖昧な面もある.危機耐性を指向した設計の実装に向けては,概念を理論的に整理したうえで具体化することが求められる.本稿では,情報という観点を設けて,危機耐性を指向した設計の考え方について考察した.親和性の高いレジリエンスの研究との比較などから,コミュニティ(社会)との連携の重要性等を示した.また,設計手順についても述べ,ストレステストのための仮想的外力としての地震動や,コミュニティと技術者の情報共有を促す体系の重要性について考察した.共有情報のマネジメントとしてリスクガバナンスが重要であること,および,設計指針ではなく認証制度として実装することの妥当性を示した.
著者
西内 裕晶 川崎 智也 轟 朝幸 牧野 悠輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1177-I_1185, 2016

本研究は,近年,その実施が増えている中学生を対象としたスケアード・ストレイト的自転車交通安全教室に着目し,講話や自転車乗車講習のような従来の自転車交通安全教室と比べて,教室実施前と実施後で受講者の安全意識の変化を分析した.具体的には,2種類の自転車交通安全教室を別々の中学校にて実施し,安全教室の実施前,実施直後,実施1ヶ月後において,法令理解,危険認知(危険察知,回避行動,実践意志,危険回避)についてアンケート調査を実施し,調査結果を安全教室の種類の違いにより比較するものである.その結果,スケアード・ストレイトの有無により安全意識に顕著な違いや変化は見られないものの,危険認知度については実施しない場合よりも経時変化が少ないことが分かった.
著者
藤波 潔 MAINA James 松井 邦人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.781, pp.171-179, 2005

トラックやトレイラーのような大型車が左折するとき, 舗装表面では鉛直方向の荷重だけでなくすえ切り荷重のようなトルクが作用することが知られている. しかし, トルクによる多層構造物の応答解析の類例は皆無に近い. 本研究では, 多層弾性構造の表面にトルクが生じるような円形分布のせん断応力の作用に対する理論解を誘導している. すでに求めた鉛直方向の分布荷重作用時の理論解とこの理論解を組み合わせることにより, すえ切り荷重作用時の舗装に発生する応力, ひずみ等を予測することが可能となる.
著者
大町 達夫 紺野 克昭 遠藤 達哉 年縄 巧
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.489, pp.251-260, 1994
被引用文献数
20

常時微動にレイリー波が多く含まれていることを前提に, 微動の水平動と上下動の振幅比を用いて地盤の卓越周期を推定する上で障害となっていた幾つかの問題点を理論的に解明するとともに, 常時微動と表面波との関連性を明らかにした. それに基づいて多層地盤の卓越周期の簡便な推定手順を具体的に提案した. 最後に, 東京都区内の全中学校を測定点とする常時微動を実測した結果を用いて東京都区部の周期マッピングを行い, 既往のマップと比較して提案の実用性を実証した.
著者
木下 雅敬 コッボス マイケル パブロビッチ ミリヤ
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.502, pp.131-142, 1994
被引用文献数
2

コンクリートが側方より拘束を受ける時, その軸方向の強度及びダクティリティーが大幅に改善される. この様なコンクリートの挙動は一般に三軸圧縮試験等で能動的に拘束を与えることにより調べられているが, 実際の構造物では, 拘束力は受働的に作用する. 本文では, 受働的な拘束を受けるコンクリートの挙動を基礎的な実験により調査し, この様な条件下での強度特性, 弾性定数及び塑性歪み等について検討を加えた.
著者
木下 雅敬 パブロビッチ ミリヤ コツボス マイケル
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.502, pp.143-154, 1994

コンクリート充填鋼管等では, コンクリートが鋼材により拘束されることにより, その強度及びダクティリティーが大きく改善される. 本文では, このような受働的な拘束を受けるコンクリートの構成モデルを提案している. また, 提案された構成モデルを組み込んだFEM解析コードを開発し, 偏心圧縮を受けるコンクリート充填鋼管の挙動を解析した結果, 解析結果は実験結果をうまく再現している.
著者
遠藤 徹 中野 雄介 板谷 天馬 筏 紀晶 矢持 進
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_1196-I_1200, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
10

It is thought that a salt marsh located at coastal urban area absorbs and emits large amounts of carbon dioxide (CO2). In this study, a field investigation on CO2 budget was conducted at Osaka-Nanko bird sanctuary, and CO2 fluxes were measured at tidal flat, sea surface and reed field by using chamber methods in order to estimate CO2 budgets of the salt marsh. The results of this study were as follows: (1) CO2 fluxes of tidal flat and reed field were one order larger than that of sea surface. (2) It was estimated that CO2 flux emitted from tidal flat was 3.26 g/m2/day and CO2 flux absorbed by reed grass field was 1.53 g/m2/day in October 2013. (3) It was suggested from the result of seasonal change of fluxes that the absorbed amount of CO2 becomes larger on summer than on autumn.
著者
メンサボンス アイザックF 加賀屋 誠一 山村 悦夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.506, pp.119-127, 1995

本件級は, 地方道路投資のための意思決定モデリングにおいて2つの顕著な問題を扱っている. すなわち, 公平性と効率性のトレードオフ問題と意思決定での受益者参加の問題である. このような, 問題を統合化するモデリング手法の開発と, その地方道路投資問題への適用がここでの目的で, それらの問題は, 多基準数理計画プログラミング問題としてモデル化された. そして, それは投資によるアクセスビリティの増加量を最大化する目的と, 分布するアクセスビリティ格差最小の目的を同時に満たすように表現, 定式化された.ε制約法が, 非劣解の集合を一般化するために用いられ, また選好解の決定は, 地方開発機関に対する各リンクの重要度の情報を集約し, その重要度を基にして非劣解から選好するプロセスを導入することでおこなわれた. その結果, 道路投資のための意思決定で, 各機関の参加が図られた. このような方法は, ガーナオフィンソ地区に適用され, 実証分析がおこなわれた. その結果, 開発途上国の道路投資決定法に有効であることが明らかにされた.
著者
榎本 拓真 中村 文彦 岡村 敏之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.347-354, 2009

中心市街地活性化において,商店街をはじめとした商業集積地の再生は重要課題のひとつである.本研究では,商業集積地再生のための空間デザインを考える上で,重要と考えられる歩行空間に着目し,街路における歩行者挙動と自動車挙動,道路構造との間の関係を解明し,商業集積地内街路の歩行空間デザインへの知見を導き出すことを目的としている.結果として,自動車速度,交通量をコントロールし,歩車道を明確に分離しない道路構造を用いることで,乱横断が発生可能な状況となり,自動車交通との兼ね合いを図ることで安心,安全で快適な歩行空間が実現可能であるということを示した.
著者
高野 保英
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.III_575-III_583, 2012 (Released:2013-03-15)

著者の要望により、下記の論文を撤回します。 記 高野保英:係留型気球を用いた小型サンプラーによる浮遊粒子状物質(SPM)個数濃度鉛 直分布計測, 土木学会論文集G(環境) , Vol.68, No. 7, pp. III_575-III_583, 2012. 著者の撤回要望の理由: 論文において使用された浮遊粒子状物質(SPM)の定義に誤りが あるため。 以上
著者
堀 智仁 玉手 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_83-I_88, 2015 (Released:2016-01-31)
参考文献数
6

基礎工事用建設機械のような大型建設機械の転倒災害を調査すると,敷鉄板の端部に履帯が位置した際に大きな沈下が生じて転倒に至った事例が多く見受けられる.このような機械の安定設置に関する検討では,敷鉄板の敷設による接地圧の低減が考慮されている.しかし,履帯が敷鉄板の端部に位置した場合の接地圧増加についてはあまり考慮されていないのが現状である.建設機械は現場内を移動するため,敷鉄板の端部に機械が位置した状態でも支持されるか確かめる必要がある.本研究では,敷鉄板の敷き方と荷重分散の関係について実験的な解析を行った.その結果,敷鉄板を重ね敷きする場合,その重ね方によって荷重の分散効果が異なることが明らかになった.
著者
金井 雄太 福井 恒明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-12, 2013

近世に岡城の城下町として建設された大分県竹田には,城下町の町割の大部分が現在まで残っている.この竹田において,絵図および文献から,設計論理の解明を試みた.城下町建設以前の土地利用,街区や屋敷割,城下町の変化などを分析・考察した結果,竹田城下町は巨視的に見れば他の城下町と同様の碁盤の目の構造を取りながら,細部は微地形に則した設計がなされていたことがわかった.また,厳しい地形的制約の中で城下町を拡大するため,周囲の農地を城下町に組み入れる,寺院を城下町外へ移転させてその跡地を利用する,街区の寸法そのものを拡大する,などの手法が採られていたことがわかった.
著者
羽鳥 剛史 鄭 蝦榮 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.148-167, 2008

本研究では,第3者委員会の実施が,住民のプロジェクト計画に対する信頼形成に及ぼす影響を分析する.その際,第3者委員会の役割として,1)プロジェクト評価情報の集約,2)プロジェクト計画に対する住民の信頼形成,という2つの役割に着目する.その際,公開の場で実施される第3者委員会を,2つのコミュニケーションモデルを統合した連結ゲームとして定式化する.具体的には,行政と第3者委員,行政と住民のコミュニケーション関係を主観的ゲームとして記述する.その結果,連結ゲームでは,委員の戦略的発言により,非効率的なコミュニケーション均衡が実現する可能性があることを指摘する.さらに,第3者委員会の公開制度が有する問題点を克服するための方策について理論的に考察する.
著者
溝上 章志 中山 直智
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.737-744, 2006

本研究では, JR新水前寺駅周辺地区交通結節点整備事業の評価のために開発された時間帯別交通量配分と交通シミュレーションを結合したマクローミクロ結合交通流動分析法を長崎市中心部の街路整備事業に適用し, その移転可能性についての検証を行った. その結果, 以下のような知見が得られた. 1) 観測に代わってミクロシミュレーションから所要時間と交通量データを生成する本分析法は, リンクコスト関数の推定に有効であり, かつ移転可能である. 2) ミクロシミュレーションを適用する地域の外で幹線道路整備などが同時に実施される場合は, 広域ネットワークフローが変化し, ミクロシミュレーションの入力となる入出力交通量が変化することから, 時間帯別交通量配分と交通シミュレーションを結合したマクローミクロ結合交通流動分析法を適用する必要がある.
著者
三木 千壽 冨永 知徳 柳沼 安俊 下里 哲弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.759, pp.69-77, 2004
被引用文献数
1

鋼製橋脚の隅角部に発見された疲労き裂について溶接補修を行ったところ, 鋼材の内部に割れが発生した. この割れについて直接観察, 板厚方向引張試験および材質面からの調査を行うことによって, 古くて板厚方向特性の良くない鋼材に起因したラメラティアであると判定した. 同時に, 主に文献調査を行うことによって, 1973年以前に建設した鋼製橋脚についてはラメラティア発生の可能性を検討すべきと判断した. 特に鋼材成分中の硫黄 (S) の量が0.01%以上, 板厚方向引張試験での絞り値 (φz) が15%以下の場合は, 補修に溶接を用いる場合は特別な検討が必要である. その検討手法に関する案を示した.
著者
三木 千寿 平林 泰明 時田 英夫 小西 拓洋 柳沼 安俊
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
no.745, pp.105-119, 2003-10-21
被引用文献数
5 5

首都高速道路の鋼製橋脚隅角部に疲労き裂が発見され, その補修対策の検討が進められている. き裂の発見された橋脚は566脚にのぼり, この調査結果を元に損傷データベースを作成し, これを元にき裂状損傷の分析を実施した. 損傷脚のうち比較的大きなき裂を有する253脚について, 溶接ビードの切削を含むき裂状損傷の詳細な調査を実施し, 板組み毎の疲労き裂パターンの分析を実施した. さらに板組み模型による溶接性の検討, 施工試験による確認等を行い, 板組みに起因する未溶着部である固有内在キズがき裂の発生起点となることが判明した. 以上の知見に基づき鋼製橋脚の板組みとき裂パターンの関係について報告する.
著者
木村 剛士 中野 晋 天羽 誠二 白川 卓磨
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.296-300, 2007

Konaruto Channel in the position that links Kii Channel to Seto inland sea shows peculiar tide characteristics, but long-term observations on tide level have not been performed in this channel. Therefore an accurate storm surge prediction was impossible because a tide level prediction was not possible. We carried out tide level observations in three harbors of this channel for one year and obtained tidal harmonic constants. We performed storm surge simulationsu sing the obtainedh armonicc onstants and were able to get good reproductionr esults. Furthermore, as a result of the reproductive storm surge calculation of typhoon 16 in 2004w hen a large storm surge disaster occurred in Takamatsu City, it became clear that storm surge more than 2m above sea level occurred in the northern coast of Naruto City.
著者
会田 裕一 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_791-I_798, 2017
被引用文献数
1

台湾初のLRTプロジェクトが高雄市において2019年の全線開業を目指して進められている.計画から全線開業まで19年間を要する一大プロジェクトである.建設に長期間を要したのは,事業化の段階で民間投資に適したプロジェクト組成ができなかったことが一因であった.そこで,本研究は高雄LRTの事業計画の資金計画に着目し,事業推進上の課題を抽出すると共に課題への対応策を解明することを目的とする.その結果,事業費増加による高雄市の財政負担増,事業収入の低下といった課題が明らかになった.このような課題に対して,中央政府による公的な補助制度,開発利益還元施策や都市政策との連携による利便性の高いまちづくり促進など日本においても学ぶべき知見が得られた.