著者
西村 勝広
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.1-9, 2018 (Released:2018-01-20)
参考文献数
18

古墳は古代の土木構造物である.近年,土木考古学という分野が提唱され,考古学のみではなく土木学的な研究の必要性が説かれている.本稿は,地方に所在する古墳時代前期の坊の塚古墳と後期の北山古墳群を事例に取り上げ,築造工法の合理性と変化について土木史の観点から論考した. 坊の塚古墳では,自然地形を合理的に利用した築造の可能性を考察した.また,墳丘と周壕をモデル化して,墳丘の盛土が周壕の掘削土によって合理的に賄われることを試論した.北山2号墳では,山麓部の傾斜面に墳丘を構築する場合の合理的な工程を,発掘調査から得られた平面図と土層断面図に基づいて復元した. これら築造時期の異なる古墳の合理性を比較し,古墳時代後期では工程の省力化が目立つことを示し,社会情勢の変化による古墳の普及と結び付けた.
著者
山口 徹也 森川 雄貴 盛岡 通 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.II_229-II_236, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
12

本研究では,電力負荷平準化による需要家の経済的便益という側面に着目して,電力負荷とPV出力の2つの変動を表すモデルを適用し,PV・BTシステムを設置・稼働した場合の費用効果を算定するモデルを構築した.産業工場の屋根にPVを設置し,BTからの放電をピークカットに用いた場合のパフォーマンスを表すモデルを用い,確率分布を推計し,分析評価を行った.現在のPV,BT価格を前提とした費用効果算定では,総支払額の削減には程遠いという結果となった.PVは現在価格の0.50倍になってもそれを導入することの費用効果がプラスに転じることはないが,BTの現在価格の0.8倍より下がると費用効果がプラスに転じる点が初めて現れた.PVとBTを組み合わせて導入する場合,価格低下が進むにつれて,需要家に費用効果がマイナスになることなく導入できるPVの容量が大きくなることがわかった.また,契約電力超過確率10%程度まで許容すれば,超過による罰則金を支払い,契約電力を削減した利得を多く得られなくとも,PV・BT容量を抑えて,導入費用を低減させる方が費用効果が大きくなることがわかった.
著者
森川 雄貴 野田 圭祐 盛岡 通 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.II_239-II_246, 2013 (Released:2014-03-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究では,街区・地区レベルでのPV-BTシステム導入による費用効果を算定するモデルを構築し,街区・地区レベルの電力需給マネジメントの単位(空間と用途)を変えることによる負荷平準化効果の違いを定量化することを目的とした.神戸市旧居留地区を対象に検討した結果,以下の4点の結論を得た.1)PV-BTを0.17[kW/100m2]導入し,地区全体で電力マネジメントを実施することによる最大電力負荷の低減効果は,導入前に対して1.2%程度であった.この低減効果はPV-BT導入量に関わるため,評価尺度をPV-BT導入量に対する削減率で表現すると70%程度と大きな効果が見られた.2)PV-BT導入量を変化させた場合の年間純便益は,地区へのPV-BT合計導入量が単位面積当たり0.25[kW/100m2]程度で最大となり,それ以上は低下する.3)用途混合度が異なる街区別のピーク負荷低減効果を明らかにしたとこら,住居系の混合割合が高い場合,住居系のピーク生起時刻が事務所系・商業系と離れているためにPV-BTによるピーク負荷低減効果が相対的に小さくなる.4)事務所系と商業系のみが混合している街区では,電力需要が標準偏差分だけ大きくなる方に変移した場合,BTによるピーク負荷低減効果は相対的に高くなる.
著者
中野 秀俊 大西 正光 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.227-244, 2014 (Released:2014-12-19)
参考文献数
30

建設プロジェクト契約には多くの不確実性やリスクが介在する.イスラム法を意味するシャリーアは,不確実性に関わるガラールやマイスィルを禁止する.したがって,プロジェクトに関わる契約は,契約内容によってシャリーアに抵触する危険性を含む.シャリーアに準拠したプロジェクト契約を遂行する場合,契約マネジメントにおける不確実性への対処方法のシャリーア適合性が重要な課題となる.現在のところ,イスラームにおけるシャリーア適合性に関して厳密な定義や普遍的な法解釈が存在するわけではない.また,地域によって適合性の解釈に多大な多様性が介在する.本研究では,プロジェクトに関わる完備契約を対象として,契約のシャリーア適合性を判定する理論モデルを提案し,典型的な契約スキームのシャリーア適合性について考察する.
著者
富田 孝史 本多 和彦 河合 弘泰 柿沼 太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1326-1330, 2005-10-07 (Released:2010-06-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1 4

2004年の台風16号は, 瀬戸内海東部の沿岸に大きな高潮被害を発生させた. これは, 台風による潮位偏差が極めて大きかったというよりも, 最大潮位偏差の発生が大潮の満潮に重なったためである. 現地調査によると, 備讃瀬戸を挟んで香川県側と岡山県側では高波の有無の影響により被害の様相は異なった. 瀬戸内海における高潮の再現計算を実施したところ, 海域の全体で潮位偏差は観測値よりも小さくなり, 天文潮位の変動を考慮すると備讃瀬戸ではさらに10cm程度小さくなった. そこで, 高松市の沿岸での海水位を観測値に合わせ込み, 市街地の浸水計算を実施した. その結果, 計算による浸水状況は実際の状況によく一致した.
著者
Obaidullah RAHIMI Keisuke MURAKAMI
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_25-I_30, 2017 (Released:2018-01-15)
参考文献数
8
被引用文献数
4

The Afghan government has planned the project of Kabul New City (KNC) in order to deal with the rapid growth of existing capital city, Kabul. The area of KNC is 1.5 times of existing Kabul City. The location of this new city is on a desert area beside the existing Kabul, and it is also surrounded by some watersheds with steep slope topography. Due to these topographical reasons, KNC will suffer a water scarcity problem. This study investigates the feasibility of a rooftop rainwater harvesting system in KNC to relieve the water scarcity problem. The volume of water which could be harvested by the system is estimated with using 10 years rainfall data. The volume of non-potable water consumption is also estimated from the current water use in Kabul city. As a case study, the efficiency of the rooftop rainwater harvesting system is cleared for a primary school, some types of houses and commercial buildings. An appropriate size of the water harvesting tank is also discussed based on the balance between harvested water volume and non-potable water demand.
著者
日比野 忠史 森本 優希 福岡 捷二 植田 彰
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_1471-I_1476, 2015 (Released:2015-11-10)
参考文献数
9

感潮河川では海水の遡上とともに河口から運ばれる有機泥が高塩分下で河岸干潟に堆積している.高塩分下で堆積する有機泥は有機泥,間隙水,流水中に存在するイオンの相互作用により輸送過程における物理運動に強い影響を与えている.本論文ではヘドロ化が進んだ河岸干潟において地盤を形成する有機泥の特性量を評価するためのテクスチャーとなる物理・化学量の個々の特性および相互の関係を考察した.さらに,感潮河川で輸送・堆積する有機泥の基本となる指標とその評価法についてまとめた.提案されたテクスチャーから実河川における有機泥の輸送・堆積状態について推定し,テクスチャーの妥当性を確認した.
著者
富山 潤 須田 裕哉 崎原 康平 山田 義智 堀口 賢一 岡部 成行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.11-23, 2019
被引用文献数
2

<p> 琉球大学では,点検に多くの制約を受ける離島架橋に対して戦略的イノベーション創造プグラム(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program:SIP)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術の開発技術のひとつであるひび割れ画像解析技術の実証実験を行い,目視点検の結果と良い相関を得た.この結果は橋梁管理者に評価され,本技術が実橋梁の点検業務の一部に利用された.本技術の実証実験に対する沖縄での取り組みは,新技術を地域実装に導いたひとつの実装モデルといえる.</p><p> 本論文では,本技術が実証実験から地域実装に至った取り組み,経緯および課題について考察する.さらに,新技術のコストメリット,効率性および高度化についても考察する.また,新技術の地域実装を通して新しい技術開発が行われた事例についても紹介する.</p>
著者
山崎 元也 宮脇 年彦 佐藤 喜久 坂田 廣介 高橋 克則
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.196-206, 2008

地球温暖化やヒートアイランド現象が世界的な環境問題となっている.旧日本道路公団においてもサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)において,利用者が感じる熱負担を緩和し,環境にやさしい休憩施設を目指し,種々の検討を行ってきた.東北自動車道蓮田SAにおいて,全国では初めての高炉スラグ微粉末を用いた給水装置を有する保水性舗装の施工を行い,当該舗装の温度低減効果を検討した.給水型保水性舗装は,通常舗装に比べて10&deg;C以上の温度低下が安定して持続できた.給水方法によって,温度低減効果が異なることを明らかにした.また,理論式による計算値と実測値の整合性についても検討した.
著者
関 克己 河合 弘泰 川口 浩二 猪股 勉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_965-I_970, 2012

全国港湾海洋波浪情報網(NOWPHAS)は,1970年に5地点で波浪観測を開始し,現在では20地点以上で30年以上のデータを蓄積している.このデータから気候変動の検出も試みられてきたが,地点毎の解析では統計的なバラツキが大きいこともあって気候変動指標との明確な相関性を捉えられなかった.そこで本研究では,日本海側を3海域,太平洋側を4海域にまとめ,季節毎に気候変動指標との相関性を調べた.その結果,(1)平均有義波高と最も相関性の高い気候変動指標は海水温である,(2)平均有義波周期は平均有義波高に比べて気候変動指標との相関が高く,特にNPIとの相関性は全海域を通じて高い,(3)最大有義波高と最大有義波周期は台風上陸個数との相関が最も高い,(4)高波擾乱回数は台風上陸個数やSOIとの相関が高い,ことが分かった.
著者
金子 貴之 河野 達仁 森杉 壽芳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.695, pp.59-65, 2002

本研究では道路混雑等の外部不経済対策である容積率規制と道路投資について考察する. 2地域2変数の一般均衡モデルを構築し, 容積率規制及び道路投資に対する評価法を作成する. 更に, 所与の道路容量に対する適正な容積率規制条件, 所与の容積率に対する適正な道路投資条件を導く. また, 容積率規制と道路投資の組合せ政策を考察し, 評価法を提案する. これにより, 容積率規制が行われている次善の経済においても, 常に適正な容積率規制が達成されている状況では, 道路市場のみで道路投資の便益を計測できることを述べる.
著者
山本 和生 橋本 成仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_441-I_448, 2013
被引用文献数
2

高齢化が進み,免許返納者は年々増加しているが,返納後の生活で買い物や通院に苦労している人も少なくない.そこで本研究では,岡山県内の都市部と中山間地域において65歳以上の免許返納者ならびに保有者を対象に行ったアンケート調査の結果を用いて,自動車を運転できない場合にどういった方法で買い物を行い,また医療行為を受けたいのか,意識とその要因について分析した.この結果,買物支援サービスや医療支援サービスの利用意向は,居住地域や身体の衰えなどから返納後の移動に困る場合に高まることが明らかとなった.一方で世帯構成による影響は小さく,返納後の自立した生活をサポートしていくためには,免許返納制度の推進と併せて,特に中山間地域などの不便な地域で生活支援サービスを拡充していくことが重要であると考えられる.
著者
平野 順子 馬籠 純 石平 博 竹内 邦良
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
水工学論文集 (ISSN:09167374)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.385-390, 2005
被引用文献数
1

A geo-referenced global dam reservoir database is constructed by assembling several published dam inventories and latitude/longitude coordinates that are digital obtained or decided from printed maps. This database is designed for hydrological applications on river basin scale to the global scale, and 15, 317 dams with 29 dam reservoir attributes are registered in it. A shoreline polygon data of the reservoir/lake is also provided for 4, 204 dams. The total storage capacity of the registered dams is 5, 594km<SUP>3</SUP>, which is equivalent to the 70% of total storage capacity of all reservoirs and lakes over the world (7, 000 km<SUP>3</SUP>). Since geo-referenced reservoir database which covers whole global area is rarely available, the database will greatly contribute for global scale water resources analysis and impact assessment of reservoirs on the freshwater systems.
著者
大屋 祐太 北野 慈和 グエン レ ズン 山田 朋人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.I_43-I_48, 2018

北海道において線状降水帯による豪雨災害は近年増加しており,代表的な例として2014年9月に同地域で初めて大雨特別警報が発生した事例が挙げられる.本研究では,線状降水帯を形成する複数の積乱雲内の風速場を詳細に解析するため,上記事例にドップラーレーダのドップラー速度を用いた三次元風速場推定手法(the Multiple-doppler Synthesis and Conitinuity Adjustment Technique, MUSCAT法)を適用した.線状降水帯の一部では高さ6km付近において線状降水帯に直交する流入風による鉛直循環構造が見られ,流入風の風下側では強い反射強度が対流圏上層まで到達するという特徴を得た.これらの特徴は,2015年9月に鬼怒川流域で発生した平成27年の関東・東北豪雨の線状降水帯においても観察された.
著者
瀬戸 心太 田口 諒
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:18808751)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_223-I_228, 2016

&nbsp;Japan Meteorological Agency announces emergency warning of heavy rainfall when 48-hour rainfall amount is expected to exceed the 50-year value at more than fifty 5km-grids. Spatial distribution of heavy rainfall is important to judge the emergency warning. In this study, by using the GSMaP data from 2001 to 2009, 50-year value of 48-hour rainfall amount is calculated all over Japan and the surrounding ocean. As the number of available GSMaP data is limited and GSMaP may be affected by surface snow cover, the calculation method needs to be modified. 48-hour rainfall amount exceeded to its 50-year value on prefecture scale at two heavy rainfall events which are said to be corresponding to the emergency warning. It is important to check the spatial scale of grids with high return period rather than the absolute value of return period. This method is applied for Kanto and Tohoku heavy rainfall in September 2015.
著者
水谷 英朗 馬場 康之 平石 哲也 間瀬 肇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_925-I_930, 2018

本研究は,過去に養浜が実施されている南紀白良浜海岸を対象に,海浜地形のモニタリングと各気象イベント毎の短期的な海浜変形特性を現地計測により把握した.現地計測より2017年の6月から9月の期間に高波浪をもたらした6/21低気圧及び台風5号および18号の各気象イベント毎の白良浜の海浜砂の移動実態を捉えることができた.2017年は沖側への養浜砂の流出がそれほど大きくなく,海浜砂の大部分が後浜へ打ち上げられていることが計測土砂量から確認された.また,SWANおよびXBeachを用いた波浪・海浜流の数値シミュレーションを実施した結果,海浜中央部の高波と浜中央部沖地点の海浜流が再現され,北部の権現崎岩礁部域の砕波による運動量輸送により時計回りの海浜流場が形成されることが示された.
著者
竹村 弥生 建山 和由
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.127-137, 2012 (Released:2012-02-20)
参考文献数
4

振動場における粒状材料の振動挙動とそれに与える振動条件や地盤条件の影響を解明する研究の一環として,室内振動実験を行った.実験では,粒子の接触状況を電気伝導を利用して測定する手法を採用した.この手法は,導電性を有する粒状体で供試体を作成し,これに振動を加えた際の供試体中の電気抵抗の変化を計測する手法である.粒子間の接触状況に応じて供試体の電気抵抗が変化するため,振動場における粒状体の挙動を把握することができる.実験結果を振動加速度,粒径の違いによって比較したところ,加速度が一定であれば振動数を変化させるより振幅を変化させるほうが,粒子のかみ合わせが外れ,粒子の相互移動が起こり易いということがわかった.また,粒子のかみ合わせの外れ易さは,粒子の粒径と振幅の比に依存することが明らかになった.
著者
一言 正之 桜庭 雅明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.22-33, 2017 (Released:2017-03-20)
参考文献数
37
被引用文献数
12

深層ニューラルネットワークと流出モデルを組み合わせたハイブリッド洪水予測手法を開発した.ハイブリッドモデルの構造は階層型の深層学習(ディープラーニング)を適用したニューラルネットワークを基本とし,入力層に分布型流出解析モデルの計算結果を加えることで両モデルを融合させた.具体的には,入力層は上流の水位,水位変化および流域の水分貯留量の推定値とし,出力層は予測地点の水位変化とした.学習時の入出力データには実測データを用い,予測時には実測水位・雨量データと分布型モデルの予測流量とを組み合わせた入力層データを用いた. ハイブリッド手法の結果は,元のニューラルネットワークおよび分布型モデルを上回る精度となり,特にニューラルネットワークで誤差の大きかった期間最大洪水で精度向上が見られた.
著者
鬼束 幸樹 秋山 壽一郎 白岡 敏 鎹 敬介 桃谷 和也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.III_403-III_409, 2016

河川には魚がすめる条件の一つとして避難場所の確保が要求される.魚は血合筋と普通筋の二種類の筋肉をもち,平時は疲労が蓄積しない血合筋を使用する.遊泳速度が維持速度を超え,普通筋を使用すると疲労が蓄積されるため,避難場所での休憩が必要になる.<br> 本研究は,横断方向幅を任意に変化させた遮蔽板を開水路に設置し,流速を系統的に変化させてアユの挙動について検討したものである.その結果,流速の増加に伴いアユの遊泳速度が増加することが判明した.これは,アユが下流に流されないように遊泳するためと考えられる.また,流速の増加に伴いアユの休憩エリアの利用回数および休憩時間が増加することが判明した.これは,アユが高速流を避けるためや休憩を目的として休憩可能エリアを使用したためと考えられる.
著者
具 滋永 メオル・アジズ オスマン 稲村 肇
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.737-746, 1997

従来, フィーダーコンテナ貨物需要予測はGDPの成長を基礎とした回帰分析を中心とし, 様々な方法が提案されてきた.しかし, これらの方法はいずれも国際競争を明示的に考慮できないという明らかな欠点を持っている.本研究は貨物量, 輸送運賃, 港湾料金といったフィーダー貨物の取扱量を決定づける変数間の関係を非線形の多次元曲面として捉え, この問題を解決している.モデルの信頼性は統計量によって検定された.モデルによる推計結果は韓国の港湾計画とそこで使用された推計値と比較され, その有用性を確かめている.