著者
福井 次郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.28-41, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
19

大正後期から昭和前期に多数の橋梁を設計した増田淳は,個人ではなく設計事務所で設計業務を行っていた.しかし,この設計事務所の組織体制や,増田が全ての橋の設計の中心的立場であったかどうか等は不明であった.今回,旧独立行政法人土木研究所で発見された設計計算書,設計図に記入されている担当者のサイン,日付を分析し,設計事務所の組織体制,活動状況等を調査した.調査の結果,設計事務所の技術スタッフは約10名で,各職員の氏名や担当した構造物等が明らかとなった.その中で,稲葉健三は増田に劣らない設計技術を有しており,稲葉が設計事務所の中心的立場であったこと等が明らかとなった.
著者
岩倉 成志 渡辺 将一郎 土居 厚司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.709-714, 2000
被引用文献数
1

本研究は、道路交通の配分予測に用いられるBPR関数を応用した都市鉄道のリンクコスト関数の構築を目的とする。小田急小田原線上り方向の急行・準急列車を対象に運行本数と駅乗降者数によって変動する各列車の表定速度を表現可能なモデルを作成した。この後、パラメータ推定の安定性、再現性、パラメータ感度等のモデル特性に関する考察を行った。
著者
神谷 大介 宮良 工 赤松 良久 辻本 真希 乾 隆帝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.1-10, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
25

本研究では水資源に乏しい亜熱帯島嶼地域における河川自然再生を対象とし,利水安定性を考慮した自然再生優先度の評価を行った.具体的には,沖縄島の河川を対象とし,リュウキュウアユの定着ポテンシャルという視点から自然再生の優先度が高い8河川を決定した.これらの河川は,河川横断構造物であるダムや取水堰が定着阻害要因と考えられるため,利水安定性という観点から堰撤去の可能性を検討した.これらの結果,観光客数が増加するというシナリオにおいても安定給水が可能であり,取水堰撤去が十分可能であることを示した.
著者
夏秋 嶺 穴原 琢摩 琴浦 毅 岩塚 雄大 冨井 直弥 片山 裕之 西畑 剛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_748-I_753, 2016 (Released:2016-08-30)
参考文献数
3
被引用文献数
1

衛星搭載型合成開口レーダー(SAR)は,天候に左右されずに数十キロ四方の広範囲に位置する観測対象を一度に観測できる強みを持つ.SAR 画像の干渉解析は,二回の観測の間に生じた地盤高の変動を数センチ単位で計測できる性能を持ち,これまで地殻変動や被災域の検知を目的として研究されてきた.著者らは,陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)を利用し,SAR干渉解析による災害時の港湾の被害状況を迅速に把握するべく研究を進めている.本稿では,港湾施設を模した消波ブロック列を用い,干渉解析の適用可能性を検討し,標準偏差で約2 cmの精度を得たほか,平成26年台風第11号により被災した兵庫県神戸市の長田港および須磨港の防波堤の被災領域の検出を試みた結果についても報告する.
著者
佐藤 忠信
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.463-473, 2014 (Released:2014-11-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

地震動位相を線形位相遅れとそれからの変動部に分解したときに,波動が伝播する媒質の不均質性に内在する自己相似性が,位相変動部における低振動数側での位相の増加傾向と高振動数側でのそれとの間に相似性を発現させるという仮説を立て,それから必然的に導出される位相の確率特性を数理的に明らかにし,最も単純な場合に,それが非整数ブラウン運動過程としてモデル化できることを示す.この結果が,実地震動位相の解析を通してこれまで得られている知見と一致していることを述べた上で,地震動位相の不確定性が地震動振幅の減衰特性として評価できること,さらに,単純な断層破壊過程と局所的地盤伝達関数を用いた強震動模擬モデルを利用して,位相の不確定性が強震動の振幅特性に及ぼす影響をHurst指数により定量的に評価できることを示す.
著者
横松 宗太 湧川 勝巳 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.24-42, 2008

自然災害により家財を喪失した家計は,復旧のために自己資金以外に外部資金を調達することが必要となる場合がある.しかし,家計が金融機関から借入れができないという流動性制約に直面する場合,家財の復旧過程が遅延することによる被害が発生する.本研究では,流動性制約下における家計による家財の復旧行動をモデル化し,家財が低い水準に止まることや,復旧過程が遅延することにより発生する流動性被害について分析する.そして,防災投資が「期待被害額の減少効果」のみならず,低所得層の家計に対して「期待部分復旧被害額の減少効果」や「期待復旧遅延被害額の減少効果」をもたらすことを明らかにする.また,災害保険や政府による復旧資金の貸付制度というリスクファイナンス手段が,家計の復旧過程に及ぼす機能について考察する.
著者
大角 恒雄 福島 康宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_69-I_78, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
26

西アジアに甚大な地震・津波被害を及ぼしたAD 365年クレタ(Crete)沖地震は,M8.5クラスであったことが言われている.この地震による津波はギリシャ沿岸のみならず,古代都市であるアレキサンドリア(Alexandria),シリア地域に大きな被害を及ぼしたことが伝えられている.AD 365年の地震は,東部地中海地域の代表的地震であるが,Pirazzoli(1986)は東地中海周辺の海岸線の隆起地形に着目し,AD 350-550年が過去2000年に遡ってこの地域で最も顕著な地震の活動期の一つであったことを記述している.当時の痕跡である現地の地盤隆起は今でもクレタ島には存在し,その特徴と数多くの研究者のAD365年クレタ沖地震のパラメータを検証し,統計的グリーン関数法を用いて当時の地震動を推定した.
著者
河田 恵昭 鈴木 進吾 越村 俊一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1276-1280, 2005
被引用文献数
2

臨海都市域はその集積性および空間利用の多様性から, 一旦津波が浸入すると甚大な被害を受けることが指摘されている. 本研究は大阪湾沿岸都市域を対象に, この地域に整備されている防潮堤に付随する防潮扉を閉鎖することによる市街地の減災計画手法について検討した. 第一に長期評価が発表された大阪湾断層帯で発生する津波の特性を解析した. 第二に防潮扉の物理的機能維持や閉鎖体制などに内在する不確定性を確率で表すことにより, 防災対策効果を含んだ地域脆弱性の評価手法を開発した. 第三に防潮扉ごとの閉鎖強化による浸水危険域面積および一般資産被害の軽減効果を量る指標を検討し, その優先順位を決定する手法を考案した.
著者
橋本 成仁 恒藤 佑輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1291-I_1299, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

地域住民が生活交通の運営に参加もしくは主体となって運営を行うという取り組みが全国的に行われている.本研究では,このような住民主体の生活交通運営を行ている地域において,現時点では最も多く利用する交通手段が自動車である住民に着目した.その住民にとってこの取り組み自体が,暮らしにおける満足度,ひいては主観的幸福感とどのように関係しているか,近年関心が高まっている運転免許返納意向と関連させたうえで意識やその構造を分析した.この結果,最も多く利用する交通手段が自動車である人々にとって,住民主体での生活交通運営に対する支援意識は,運転免許返納意向と関連しており,そのうえで支援を行っていくことは,かかわった住民の主観的幸福感向上にポジティブな影響を与えている可能性を明らかにした.
著者
岩柳 智之 田中 伸治 中村 文彦 有吉 亮 三浦 詩乃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1069-I_1079, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
12

わが国では道路橋の急速な老朽化を迎え,またその損傷が深刻なために修繕・更新費は莫大であり,その全てを予防保全型で維持管理することにも限界がある.そのため廃橋を維持管理の選択肢として取り入れる必要があるが,地域の理解を得るために廃橋の効果や影響を客観的に示す方法が必要となる.そこで本研究では廃橋による費用対効果計算として将来の維持管理・更新費用の縮減効果と地域の効用の低下による損失を比較する方法を提示した.そして実地域を対象とした計算を行い,廃橋が受け入れられる余地を検討し,廃橋を含めた維持管理のあり方を議論した.計算の結果,廃橋の効果がある橋梁はなかった.しかし,他の橋梁と比較し,維持管理・更新を続ける効果の低い橋梁が見られ,廃橋にする場合,しない場合それぞれの望ましい管理方針を示した.
著者
遠藤 秀文 Rahmadi Prasetyo 西平 守孝 大中 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1196-1200, 2006-10-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
5

これまで, 無性生殖によるサンゴ移植では, サンゴ種や固定方法の違いによる移植後のサンゴ群体の残存率や成長率について, 長期的かつ定量的に検討された事例は少ない.本研究は, バリ島クタ海岸の礁池においてサンゴの群集の人為的再生の可能性を検討するため, 数種類の固定材料を用いて礁池に設置した20個の自然石基盤の上面および側面に数種類のサンゴ片を移植し, 2年以上にわたり定期的に移植したサンゴの残存, 再固着および成長状況について観察したものである.この研究により, サンゴ移植の実用化に際して必要な移植サンゴの種類や固定方法等による残存率および成長率について定量的なデータが得られたとともに, 海水温とサンゴの成長および影響についても定性的に把握することができた.
著者
三田村 純 藤田 素弘 鈴木 弘司 鏡味 志津枝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.997-1007, 2008
被引用文献数
1

本研究では、名古屋市域へ公共交通機関を利用して通勤する市民が多く、2000年の東海豪雨で被害の大きかった東海市・大府市を対象として、当日の豪雨下の帰宅行動を、徒歩・公共交通機関利用者を中心にアンケート調査を実施し、このデータに基づいて帰宅状況を分析した。本研究の結果から、徒歩・公共交通機関利用者の多くが、鉄道等の運休に伴う宿泊地の変更や徒歩での帰宅を余儀なくされ、困難な帰宅行動を経験したことが明らかになった。また、困難な帰宅行動を経験した人ほど、集中豪雨に対する心掛けや情報提供サービスに対する関心が高いことが分かった。将来豪雨時に自宅へ帰るか、帰らず他に宿泊するかの、徒歩公共交通・帰宅行動選択モデルを構築したところ、本研究においては、移動距離、地下鉄乗車時間、集中豪雨の重要情報入手タイミングなどの変数が無理な帰宅をしない変数として重要であることが分かった。これらの徒歩公共交通利用者の帰宅行動特性を周知した上で、適格な情報を帰宅時間帯よりも早く流すことができれば、減災対策として有効であろうと思われる。
著者
佐藤 兼太 越村 俊一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_145-I_150, 2015 (Released:2015-11-10)
参考文献数
11

3次元流体解析による市街地スケールの大規模津波浸水シミュレーションは,計算負荷・コストの点で依然課題があり,京コンピュータなどのHPCIを活用した事例など,限られた環境でしか実現できていない.陽的な解法であることと並列化効率が高いことは,大規模領域における解析には重要な要件であり,その点で格子ボルツマン法(以下,LBM)が注目されているが,自由表面流れ解析において計算が不安定となりやすいことが報告されている.本研究ではLBMで現れる擬似的な圧縮性に注目し,簡便な非圧縮流体モデルを適用することで計算の安定を図った.本研究で提案した手法により時間刻み幅が大きく,従来のLBMでは計算が不安定となる条件においても安定した解析が可能となった.必要な計算量を従来のLBMと比べ,削減することが可能なモデルを開発した.
著者
本田 利器 高橋 良和 Pradono Mulyo Harris Kurniawan Rudi
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会 報告集
巻号頁・発行日
vol.28, pp.216, 2005

2004年スマトラ沖大地震の際のバンダアチェにおける地震動の強さや, 地震動による被害の分布等を推定する基礎資料を得るため, アンケートによる震度評価を行い, 地震動強度の評価を試みた. 市内の幹線通り沿いや, 津波により甚大な被害を受けた海岸部では, 震度は5強~6弱程度であり, これらの地区でも, グランドモスク周辺と同等の地震動及び同程度の地震動被害が生じていたと考えられるという結果を得た.
著者
宮下 衛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.21-29, 2011
被引用文献数
1

LED照明の色と照度のゲンジボタルおよびヘイケボタルの産卵に対する影響を調べた.試験は,白,青,緑,黄色,赤色の5色のLED照明を用いて行った.毎夜,雌雄のホタルの成虫を入れた容器をLED照明下に置き,卵の受精の有無と孵化した幼虫数を調べた.ゲンジボタルは黄色の0.1lxおよび白・青・緑色の20lxのLED照明下で受精卵は産まれなかった.一方,ヘイケボタルは青色LEDの10lxの明るさで産卵が阻害された.本試験の結果から,黄色のLED照明は,高圧ナトリウムランプの道路照明と同様にゲンジボタルの交尾行動を阻害すると考えられた.
著者
天野 光三 前田 泰敬 二十軒 起夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.115-124, 1984

大阪都市圏の鉄道網の発達が、都市の発展過程と、どのような関係を持ちながら変化してきたか、また、鉄道開設に至るまで、その地域の交通事情はどうであったか、さらに、鉄道路線が計画された経緯等を調べ、鉄道開通前後より、現在に至るまでの市街地の発展情況を把握し、過去から未来に向って、時系列の中で考察し、新規路線の都市に与える効果の予測に利用出来ればと考えるところである。今回の発表は、そのうちの一部分として、比較的鉄道路線の競合性の少ない、東大阪地域での鉄道と都市の発展の関係を調査したものであり、不十分な資料ではあるが、一応この地域の交通慕情と歴史的背景を知ることができた。この地域の昔からの主要陸上交通は、大阪対奈良であり、大阪に陸揚げされた物資や、河内地方の産物を大和へ、また、大和の産物を大阪へと輸送する通路として、東西方向の道路が、古来より幾條にも開かれていた。南北の交通路は、大和川と淀川を結ぶ古くからの中小河川と、東高野街道など、生駒山麓に沿った街道がある。明治以降も東西方向の鉄道が先に開設され、南北を結ぶ鉄道は今だに実現していないが、これに代わるものとして、南北方向には、道路網が発展し、鉄道の補間的な役割をしている。
著者
清宮 理 古川 巖 村上 晋二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.24, pp.837-840, 1997

兵庫県南部地震を契機に空港施設の大規模地震に対する耐震性の評価手法の開発が望まれている。地盤の振動による舗装版の有限要素法による評価手法を筆者らは提案しているが、この手法の妥当性については検証が今までなされていない。釧路空港の滑走路では釧路沖地震において滑走路に何本かのひび割れが生じた。この事例を対象に地震応答計算を実施しひび割れ発生の有無について検討した。舗装版目地のばね定数は載荷試験の結果を使用している。計算によると滑走路に生じたひび割れをよく再現できることが判明し計算法の有効性が検証できた。また兵庫県南部地震クラスに対しても滑走路にはひびが入るが破壊までには至らないことが推定された。
著者
福島 大輝 山田 朋人 宮崎 真
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_1759-I_1764, 2013 (Released:2014-03-31)
参考文献数
9

This paper discussed the land and sea breeze circulation (LSBC)between Ishikari and Yuhutsu areas in Hokkaido. The diurnal variation of LSBC during boreal summer(July and August) of 1985-2009 was mainly investigated by using various data. LSBC was observed between Ishikari and Sapporo up to 13km from coastal zones of the Japan Sea. Tomakomai to Atsuma area also showed LSBC around16km from coastal zones of the Pacific Ocean. For inland region that area from Chitose to Naganuma, southerly wind was observed all day long. The reason is related to a fact that this inland region has strong southerly wind associated with the meridional temperature gradient between Ishikari and Yuhutsu area. Thermal balance between SST and temperature of land could be important to control the horizontal scale of LSBC. In the La-Nina years, SST over the Japan Sea at the vicinity of Sapporo area was higher than the climatology, and LSBC was enhanced and expanded its spatial scale.
著者
加藤 伸悟 増田 貴則
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.III_389-III_401, 2014 (Released:2015-03-05)
参考文献数
69

水界の食物網モデルには,栄養塩濃度の違い(栄養塩段階)によって異なる食物網動態の変化を表現しうることが求められる.また主要な分解者・基礎生産者である細菌は,食物網全体に影響をおよぼすものと考えられる.本研究では,観測事象による検証を踏まえた食物網モデル構築と,それを用いて細菌が食物網動態におよぼす影響を示すことを目的とした.本モデルは,栄養塩段階ごとの食物網動態を表現しうるものであることが示された.細菌はリン再生を変化させ,水界バイオマスに影響をおよぼした.また,細菌を出発点とする微生物食物連鎖は,下位生産者への捕食圧,上位捕食者へのエネルギー伝達の面で重要な役割を果たし,食物網動態の適切なモデル化に寄与している.細菌を出発点とするインパクトは食物網全体に影響を与えるものであることを示した.