著者
佐山 敬洋 立川 康人 寶 馨
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.226-239, 2008 (Released:2008-10-20)
参考文献数
39
被引用文献数
2 4

広域分布型流出予測システムの観測流量によるデータ同化手法を提案する.予測システムは斜面部の流れを表現する流出モデルと河道流れを表現する河道追跡モデルからなる.これらのモデルが持つ全ての状態量を実時間で観測更新することは計算付加が高く,実時間予測システムとしての実行可能性に困難が伴う.そこで,本研究では河道追跡モデルにマスキンガム-クンジ法を用い,河川流量を観測更新すると共に,流出モデルに起因する予測のバイアスを河川流量と同時に逐次推定する方法を提案する.この手法を桂川流域の洪水予測に適用し,斜面部の流出予測バイアスを補正することによって洪水予測精度が向上することを明らかにした.
著者
Kiyoshi KOBAYASHI Masayuki EGUCHI Akira OI Kazuya AOKI Kiyoyuki KAITO
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
Journal of JSCE (ISSN:21875103)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.551-568, 2013 (Released:2013-12-27)
参考文献数
20
被引用文献数
4

This study proposes a methodology to find the optimal inspection policy for road pavement with uncertain deterioration processes. Since the deterioration progresses are characterized by a lot of uncertainty, the pavement conditions cannot be deterministically evaluated unless the inspection or repair activities are carried out. The road administrators have to decide whether repair should be implemented based upon the results of inspection. In this paper, the value of the inspection is evaluated by using the real option theory, and the optimal inspection and repair model is formulated to investigate the optimal inspection frequencies and repair policy, which may minimize the expected life cycle costs. Finally, the validity of the methodology presented in the paper is investigated by a case study dealing with the expressway in the real world.
著者
吉野 真史 丸山 和英 木村 克俊
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_1246-I_1250, 2011

A person in a shallow beach near shoreline at Moheji Coast in Hokkaido died due to wave that had ordinary height in November, 2008. In order to reproduce the situation of the fall accident in a shallow beach, two-dimensional hydraulic model tests and numerical calculation were carried out to examine the wave force on a human body. The fall limit ratio was newly proposed for estimating the qualitative risk of person's fall accidents, and its applicability was confirmed. Based on these results, possibilities of person's fall accidents with ordinary waves were confirmed, and the safety tide level was shown for some wave conditions. A basic idea of the safety management was also proposed for shallow beach.
著者
藤島 博英 簗瀬 範彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_239-I_250, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
12

平成22年度現在,全地方自治体の約70%が総合評価方式による入札制度を試行的に導入したが,多くの地方自治体では本格的な導入に至ってはいない.その理由は,最も簡便な特別簡易型による型式でさえも,事務量の増大や入札期間の長期化などが負担とされているからである.その背景として,入札を担当する人員の問題や総合評価方式に相応しい工事規模や工種と実際の発注案件との乖離といった実務的な問題,さらに公共調達に関する自治体職員の意識の問題があるものと推定できる. 本研究では,北関東3県の入札担当職員の配置状況と事務量,そして,職員の総合評価に対する意識等,地方中小自治体が総合評価導入に対して抱える実務上の課題を抽出した. その結果,上記の課題に対して小規模であっても,比較的総合評価方式に対応している自治体のグループの存在を確認できた.一方,体制と工事発注量の不均衡から,今以上の総合評価方式の導入に限界を感じている規模の自治体グループの存在も窺えた.
著者
西澤 常彦 稲員 とよの 小泉 明 渡辺 晴彦 荒井 康裕 森 正幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.II_143-II_150, 2011 (Released:2012-03-16)
参考文献数
11

管路更新計画における更新順序の決定では,管路単体の物理評価だけでなく管路ネットワーク構造における上下流関係を定量的に評価することが重要である.すなわち,ある管路上で発生した断水事故の影響は,まず,直近の仕切弁を閉じて作られる断水領域として生じ,次いでその影響が管路のネットワーク上の発生箇所によって異なる形で波及するといえる.そこで本研究では,管路ネットワーク上の仕切弁で閉じられる個々の断水領域を需要者ユニットと定義することにより,管路事故時における水供給への影響度を需要者ユニット間の相互関連構造から評価する方法を提案した.さらに,ケーススタディで,提案したネットワーク構造に基づく影響度評価を行うとともに管網解析の結果との整合性を確認することで本提案の有効性を示した.
著者
中村 繁貴 高谷 哲 前田 良文 山本 貴士 宮川 豊章
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.450-461, 2013 (Released:2013-12-20)
被引用文献数
4

近年,多くの構造物が老朽化している中で,効率的な維持管理を実現する手段の一つとして,赤外線サーモグラフィが注目されるようになってきている.土木構造物への適用事例は増加しており,環境要因が測定結果に与える影響に関する研究も多く報告されている.しかし,構造物の維持管理における調査診断でははく離部を検知するだけでなく,はく落の危険性を評価することが,補修工法の選定などのためには重要である.本研究ははく落の危険性を定量評価することを目標とし,鉄筋腐食膨張圧模擬実験による各損傷段階の供試体に対して赤外線サーモグラフィ測定を行った.その結果,かぶりや破壊形態を考慮せずに劣化の程度を評価できる指標としてはく落危険度を提案し,測定温度環境を考慮したはく落予測を行うことが可能であることを明らかにした.
著者
林 優里 Janice . J. SIMSON 五味 馨 松岡 譲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.II_213-II_224, 2011 (Released:2012-03-16)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究では特定の機能に特化し製造業がほとんどない小規模都市において低炭素社会を実現するための対策費用を含む定量的な計画策定手法を開発し,これをマレーシアのプトラジャヤに適用した.基準年2007年,目標年2025年として社会経済指標,エネルギー需要量,CO2排出量の推計を行った.目標年対策導入ケースについては,交通対策重点,再生可能エネルギー利用促進,建物対策重点の3通りを想定した.その結果,対策の導入によりいずれの対策ケースでも「経済活動あたりCO2排出量を2025年までに2007年比で45%削減」という目標が達成可能であるという推計結果が得られ,対策費用は高い順に再生可能エネルギー利用促進,建物対策重点,交通対策重点となると推計された.C-ExSSにより,低炭素計画の方針および対策について,費用をふまえ地域に適した現実的な検討が可能になると考えられる.
著者
山田 吉彦 川上 哲太朗 川崎 一平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_402-I_407, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
8

海洋立国を目指す我が国では, 2007年に海洋基本法を制定した. この海洋基本法では, 地方自治体が同法の理念にのっとりその自然的社会的条件に応じた施策を策定することになっている. この法に従い竹富町(沖縄県)は, 独自に竹富町海洋基本計画を策定し, 海洋環境の保全と海洋の利活用を進めてゆく方針を固めた. また, 隣接する石垣市ではさらに海洋開発, 海洋保護区の設定も視野に入れた計画を策定することとなった. 海洋都市を意識する地方自治体は, 海洋基本法のもと,海洋とともに地域社会の将来像を構築しつつある. この地域における海洋基本計画は, 海洋基本法の理念が国民に定着するための指針となりえる.