著者
楊 翠芬 玄地 裕 匂坂 正幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.II_517-II_526, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
24

本稿では耕作放棄地の活用によるバイオ燃料生産の可能性について検討した.また,耕作放棄地率が高い福島県をモデル地域とし,多収量米およびスイートソルガムを栽培して,バイオエタノールの生産・利用の最適化モデルを構築し,GHG排出量の少ないバイオエタノール生産・利用システムを検討した.結果としては,日本では農地への復元可能な耕作放棄地にて資源作物を栽培して約54万kLのエタノールが生産できる.また,福島県における水田・畑地への耕作放棄地にて多収量米およびスイートソルガムを栽培して年間約3.5万kLのエタノールが生産できる.バイオエタノールの使用により約3.2万t-CO2eq削減できる.また,多収量米よりスイートソルガムからエタノール生産のGHG排出削減効果が高かった.
著者
山本 俊行 木方 千春 鈴木 美緒
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_815-I_822, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

自転車対歩行者の事故は近年増加傾向であり,自転車運転者に高額な損害賠償が発生するケースも増えているため,より一層の安全対策が求められている.本研究では,自転車利用実態及び自転車の安全制度の現状を把握し,これからの保険・保障制度のあり方を検討するために,自転車に関連する交通事故の補償,すなわち,損害賠償保険制度の現状調査を実施した.さらに,損害賠償保険に対する自転車利用者の意識調査を実施した.調査結果より,自転車利用者の損害賠償保険加入率は低く,損害保険会社も自転車の損害賠償保険から撤退する傾向にあることが明らかとなった.また,加入率の低さは自転車利用者の損害賠償保険に対する知識不足や自転車事故に対するリスク認知バイアスが原因である可能性が示された.
著者
澁谷 直隆 杉本 博之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.59A, pp.230-243, 2013 (Released:2014-03-14)

The governments of many communities have been trying to create their bridge maintenance planning. Generally their economic conditions are not good, the low maintenance costs and the smooth annual expenditure are required. For these requirements, the good approximation of the maintenance costs corresponding to the members and the materials of bridges are necessary. And also the real deterioration curves of the members of bridges are required. Some better models of these items are proposed in this paper with the improved GA process and make it possible to formulate the realistic BMS optimization problem. 300 really existed bridges problems are solved and show the effectiveness of the proposed optimization system.
著者
岩田 敏和 中井 照夫 ホサイン シャヒン 菊本 統 石井 健嗣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F1(トンネル工学) (ISSN:21856575)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.I_33-I_44, 2011 (Released:2012-03-26)
参考文献数
11

双設トンネルの掘削に伴う周辺地盤とトンネルへの影響を予測することは重要である.しかしながら,従来の設計法や数値解析,モデル実験は地盤-構造物の相互作用を必ずしも適切に評価しているとはいえない.そこで,本研究では変位・応力混合制御型のトンネル掘削模型装置を2連用いた2次元モデル実験と有限要素解析の両面からトンネル-地盤の相互作用の解明を試みた.両トンネルの位置関係と距離を変化させた検討の結果から,後続トンネルを掘削する位置の違いによって先行トンネルに異なるモードの偏土圧が作用することや,掘削に伴う両トンネルの移動を確認できた.また,解析は実験の傾向をよく捉え,双設トンネル掘削時の挙動を予測する有効なツールとなると考えられる.
著者
野口 孝俊 渡部 要一 鈴木 弘之 奥 信幸 大和屋 隆司 渡邊 雅哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C(地圏工学) (ISSN:21856516)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.305-320, 2012 (Released:2012-05-18)
参考文献数
5
被引用文献数
3

東京国際空港(羽田空港)では,新たな離発着能力を創出するために,羽田空港再拡張事業として,沖合に4本目の滑走路(D滑走路)を新設する事業が2007年3月末に着工され,2010年10月末に供用開始した.羽田空港D滑走路の建設事業は,軟弱地盤が厚く堆積する地盤上の建設であること,河口部に位置するため,洪水時の河川流量を確保する観点から一部に桟橋構造が採用されていること,短い工事期間が設定されたことなどから,最新の土木技術を集結し,さまざまな設計・施工上の工夫をした.本稿は,当該事業の埋立部を中心に主に地盤工学の立場から,地盤改良工の施工,軽量土の施工と品質管理,埋立部の計測施工,盛土の施工と品質管理,供用開始後の維持管理について,その概要をとりまとめたものである.
著者
大石 希 浅岡 朝泰 高木 朗義 北浦 康嗣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_197-67_I_208, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
12

プロサッカーチームはJリーグが掲げる百年構想に従い,サッカー以外の活動を行うことで,地域の魅力向上など地域活性化に貢献している.その一方,チーム運営には厳しい現状があり,プロサッカーチームの存在意義が問われている.本研究ではプロサッカーチームがもたらす市場価値のみならず,非市場価値を評価し,プロサッカーチームが地域活性化に貢献していることを明らかにする.具体的には,FC岐阜に対するアンケート調査を実施し,大分トリニータのデータも用いて,CVMや機会費用,消費者余剰法によりプロサッカーチームによる地域活性化の便益を評価する.その結果,試合開催時における便益以外にも,生涯体育や社会貢献などの地域貢献活動に対する便益が小さくないことを示す.
著者
荒井 康裕 小泉 明 堀川 博哉 稲員 とよの Bambang BAKRI
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.III_337-III_344, 2013 (Released:2014-03-03)
参考文献数
15
被引用文献数
1

我が国の水道施設は, 人々の活動を支える社会基盤として欠かすことのできない存在である. しかし, 資源やエネルギーの大量投資に伴って環境負荷を与えている一面もある. さらに, 高度経済成長期に集中的に建設された施設の老朽化が進行し, 現在では大更新期といった難局面も迎えている. ライフラインとしての水道管路を今後も維持して行くためには, 可能な限り環境負荷の小さいシステムへ移行することが重要な検討課題の1つに挙げられる. 本論文では, 管路施設とポンプ施設から構成される水道管路システムに着目し, LCA(Life Cycle Assessment)の観点から, 建設, 運転, 維持管理, 更新の各々のプロセスにおけるCO2排出量の算定を行った. 車両輸送と管路輸送の比較により, 後者(管路)による水輸送の優位性を示した. さらに, 人口密度の大小, 管路配置形状の違い, 管路口径の大小がCO2排出量にどのような影響を及はすか多面的に明らかにした.
著者
青木 えり 栗栖 聖 花木 啓祐
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.II_165-II_176, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
40

地方自治体規模で市民の環境配慮行動が重視されているが,行動変容に有効な要因,要因間の関係等まだ明らかになっていない部分も多い.そこで,社会的な要因と個人的な要因の両面から現状を明らかにするため,環境配慮行動に影響を与えうる社会経済的指標を市町村レベルの統計値から調査・整理すると同時に,全国47都道府県を対象に,市民の環境配慮行動実施状況や意識,個人属性を調査する大規模アンケートを実施した.市民の環境配慮行動としては44の日常行動と13の機器導入を対象とし,各行動の実施度の違いや,促進・阻害要因の差異を分析した結果,行動により異なる要因が影響を及ぼすが,全体として個人属性や心理的な要因の方が社会的な要因より大きな影響を及ぼす環境配慮行動が多くみられた.また地方自治体の環境施策では,レジ袋や可燃ごみ有料化が関連行動に正の影響を与えていた.
著者
藤島 博英 簗瀬 範彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_181-I_192, 2012 (Released:2013-03-12)
参考文献数
15

平成17年,「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が制定された.以後,地方自治体において,総合評価方式の導入が進んでいるが,広域自治体の4割強は試行段階にあり,基礎自治体の本格的実施は,7%未満である. 本研究は,すべての広域自治体を対象に公共調達実施状況,第三者委員会の運営状況および基礎自治体に対する支援状況に関するアンケート調査を実施した.アンケートの分析結果,地方自治体において総合評価の実施の大きな隘路となっている制度的要件は,第三者委員会であることを明らかにできた.しかし,職員配置状況から,小規模な広域自治体ほど,運営の負担が大きいため,第三者委員会の開催にかかる事務的負担を軽減するような制度的運用を行うことが,技術評価を伴う総合評価の導入促進に効果的であると考える.
著者
鈴木 美緒 吉田 長裕 山中 英生 金 利昭 屋井 鉄雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_867-I_881, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
58

近年,世界的に自転車の環境にやさしい交通手段としての特性が見直され, わが国においても自転車の都市交通における位置付けが見直される好機にある.特に,わが国の自転車は歩道走行が常態化していることから,歩行者の安全性を確保するべく,道路に走行空間を創出する動きが急速に進んでいる.しかし,実際には実務主導型で整備されているのが現状であり,このような一過性の政策では,時間を要するネットワーク整備は完成し得ない.そこで本研究では,17自治体を対象に自治体へのヒアリング調査を行ない,自転車交通に関する政策目標,ネットワーク計画の策定やその走行空間の考え方の違いを明らかにし,継続的な自転車走行空間整備が行なわれるための計画推進体制および実施協議体制のありかたについて考察した.
著者
菅原 慎悦 城山 英明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.441-454, 2011 (Released:2011-11-18)
参考文献数
47
被引用文献数
1

本研究では,フランス地域情報委員会(CLI)関係者へのインタビュー調査に基づき,原子力施設をめぐる日本とフランスの自治体関与のあり方を整理した上で両国の比較分析を行い,フランス事例の日本への示唆となる点を指摘する.その結果,両国ではローカル・コンテクストの差が大きいものの,それを考慮した上でなお参照に値する示唆として,(1)原子力規制体系への自治体の位置づけの明確化,(2)事業者及び規制機関と自治体との双方向コミュニケーションの回路の確保,(3)規制目的としての「透明性確保」の明示化,という3点を得た.
著者
渡辺 勉 曽我部 正道 山崎 貴之 奥田 広之 涌井 一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.53A, pp.77-86, 2007 (Released:2007-08-01)

Many floating tracks have been used for only low-speed trains as vibration reduction system. A study was carried out on dynamic response and running quality, using various floating tracks for high-speed train. A simulation program, DIASTARS was used in this analysis. In this program, the Shinkansen vehicle is three-dimensionally modeled as having a body, two trucks, and four wheelsets connected to each other by spring and dampers. The floating tracks were modeled by three dimensional finite element methods. In this study, the wheel load variations and vehicle body accelerations were investigated by dynamic interaction analysis between vehicle and track. The parameter was the train speed and the stiffness to support track.
著者
Shinya HANAOKA Yuichi INDO Terumitsu HIRATA Tomoyuki TODOROKI Taro ARATANI Teppei OSADA
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
Journal of JSCE (ISSN:21875103)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.286-297, 2013 (Released:2013-10-18)
参考文献数
2
被引用文献数
10

During the initial stage of a disaster, aircraft operate intensively and simultaneously use several airports as bases, given their mandate to promptly perform their duties. Previously, disaster management faced challenges such as insufficient airport apron space, shortage of aircraft fuel, and inadequate information sharing among various involved organizations. During the Great East Japan Earthquake, aircraft— pri- marily civilian and government helicopters—used the Iwate Hanamaki Airport, Yamagata Airport, and Fukushima Airport as bases immediately after the disaster struck. These aircraft performed tasks such as information gathering, emergency rescue, and personnel and goods transport. For this study, we interviewed personnel in the organizations involved in operating these aircraft and airports during the disaster. Further, we considered the operational realities of disaster response activities at each airport to identify the lessons learned and challenges met. We present our findings and detail the role of an airport as a disaster management facility and the challenges faced by an airport during a disaster.
著者
湊 太郎 横山 由香 大石 友彦 佐藤 義夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.54-59, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
26
被引用文献数
1

豊かな水産資源を効率的かつ持続的に利用するためには,より健全な沿岸海域環境を取り戻し,それを長期にわたって維持する必要がある.本研究では,海域環境改善の手法として,底質に光を照射し付着藻類の光合成を促すことにより,底層水の貧酸素化を抑制する方法に着目した.ここではまず,無酸素状態からの溶存酸素量の増加の可能性を調べるため,自然堆積物を用いて室内実験を行った.人工光源として,本研究ではLEDを採用した.その結果,光を照射することによって,溶存酸素量が増加し無酸素状態を脱することが確認された.このことから,底質にLEDを用いて光を照射する方法は,無酸素状態の環境を改善するために非常に有効な手段であることが明らかとなった.