著者
鈴木 素之 長谷川 秀人 六信 久美子 山本 哲朗
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G (ISSN:18806082)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.445-451, 2006 (Released:2006-12-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

管理されずに自然放置された竹林の拡大による周辺環境や生態系への影響が顕在化している.森林の再生ならびに保全を検討する上で,地盤環境工学の見地から規模を拡大する竹林の諸性質を把握することは重要である.本文では,山口県下の竹林の分布状況をもとに,隣接した竹林の拡大による自然結合や他の植生または植物群落への竹の侵入の事例を報告するとともに,県内2地域を対象とした航空写真解析および現地調査により竹林の拡大速度を算出した.その結果,竹林の最前線は年間当り全体的に0.7m,局所的には2.5mで拡大していることを明らかにした.
著者
鈴木 猛康
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_152-I_160, 2012
被引用文献数
1

2011年東北地方太平洋沖地震では,牡鹿半島で水平方向に5.3mの地殻変動が観測されたのをはじめ,地殻変動は東北地方にとどまらず,関東,中部,そして近畿地方まで及んだ.この地震の後,山梨県の西湖では,湖面上のボートがゆっくりと1m程度の振幅で上下に振動し,湖岸では津波のような波が押し寄せ,魚や貝が岸に打ち上げられた.本論文では,西湖の近くで観測された地震動に含まれる1分程度の長周期地震動成分を分析し,その卓越周期と西湖の閉鎖水域の断面形状に基づいて定義されるセイシュの1次固有周期を比較している.さらに,西湖の模型を製作し,模型の閉鎖水域を長周期地震動の卓越方向に加振することにより,模型の矩形の閉鎖水域の長辺方向に大きな水面変動が発生することを確認している.その結果,本論文では,2011年東北地方太平洋沖地震の際に西湖で見られた津波のような現象を,サイスミック・セイシュによって説明するものである.
著者
後藤 仁志 Khayyer Abbas 五十里 洋行 堀 智恵実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.41-45, 2009 (Released:2010-02-09)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The paper presents a 3D-CMPS method for refined simulation of a plunging breaking wave and resultant splash-up. The Corrected MPS (CMPS) has been extended to three dimensions and 3D-CMPS method has been developed on the basis of 3D-MPS method. To enhance the computational efficiency of the calculations, the parallelization of 3D-CMPS method has been carried out with two different solvers of simultaneous linear equations corresponding to the Poisson Pressure Equation (PPE). The parallelization has been performed based on a dynamic domain decomposition strategy for an optimized load balancing among the processors.
著者
清野 聡子 足利 由紀子 山下 博由 土屋 康文 花輪 伸一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1136-1140, 2002-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
10

生物相や環境変遷の自然史文献がない海域では, 環境の基礎情報が決定的に不足しており, 管理や保全の計画の立案のための基礎情報がない. 瀬戸内海西部周防灘は豊かな生態系に恵まれているが自然史情報が欠落している. 大分県中津干潟では市民が中心となり研究者が支援する環境調査活動が行われている. その結果にもとづき, 無堤地区の海岸環境保全策の提言が行われた. 港湾開発時の環境アセスメント結果は広く公開されなかったため, 干潟の広域的な情報が含まれていたが活用され得なかった. 地域住民の主体的な調査は, 地元での環境学習や永続的環境管理の動機付けとなる. 今後は官学民の調査の各々の特性を活かした補間関係による情報の重層化と活用が不可欠である.
著者
野津 厚 宮島 正悟 中西 豪 山田 雅行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.877-890, 2006 (Released:2006-10-20)
参考文献数
35

想定東海地震のような,陸地の極近傍で発生する海溝型の巨大地震による震源近傍の強震動については,強震記録が存在しないため,不明な点が多い.本研究では,経験的サイト増幅・位相特性を考慮した統計的グリーン関数法により,想定東海地震の震源近傍における強震動の評価を実施している.強震動の評価に必要なサイト増幅特性はスペクトルインバージョンにより推定し,2001年4月3日静岡県中部の地震(MJ5.3)の強震記録を利用して強震動評価手法の妥当性を検証した上で,想定東海地震に対する強震動評価を実施している.その結果,震源近傍における地震動はサイト増幅特性に大きく依存し,サイト増幅特性の特に大きい場所では,1995年兵庫県南部地震の観測波を上回る地震動も想定されることがわかった.
著者
中田 勝康 秋山 賢治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.333-340, 1992-06-05 (Released:2010-06-15)
参考文献数
3

九州に残る城下町の中から久留米市 (福岡県)、鹿児島市 (鹿児島県) の城下町形態とその町割について整理し、現在の町並みに残っている地域用途と道路網への影響と問題点等を整理する。さらにこのような城下町遺産を都市づくりに生かしていく為の基本理念について論述し、久留米市寺町における提案を紹介する。
著者
金井 純子 照本 清峰 中野 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_7-I_14, 2014 (Released:2015-02-10)
参考文献数
13

東日本大震災では,障害者や要介護者の避難生活は困難を極めた.本論文は,地方自治体がBCPを策定する上で,保健福祉に関する災害対応業務をどのように位置づけて計画すべきかを検証することを目的とする.調査は,鳴門市の自治体職員468名を対象に,南海トラフ巨大地震を想定した場合の被災者生活支援業務について,業務を開始すべき時期と業務への関わり認識度を問う意識調査を実施した.その結果,保健福祉業務の開始時期に対する意識が3日以内に集中する傾向や,部署毎で業務への関わり意識に相違があることがわかった.これらの傾向を踏まえ,BCPの中に保健福祉業務をしっかり位置づける必要がある.
著者
竹村 紫苑 赤松 良久 鎌田 磨人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_105-I_110, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
16

パラオ諸島におけるマングローブの生育地としての干潟の形成と安定性に関わる流域特性を用いて潜在的生育地を推定し,広域的視点から生育地の脆弱度評価を行った.流域特性として土砂供給,土砂堆積,そして波の静寂性に関わる要因をGISを用いて算出した.そして一般化線形モデルを用いて流域内に生育可能なマングローブ生育地面積の推定を行った.その結果,流域山地部からの土砂供給量が多く,平野部の土砂堆積容量が十分で,かつ平野部の水理条件の良い河川が大きな内湾に流入する場所において潜在的生育地面積が大きかった.しかし,マングローブの潜在的生育地は限られた場所であり,パラオのマングローブ生育地のほとんどは脆弱な環境に立地することから,土地開発は慎重に検討する必要がある.
著者
園田 吉弘 滝川 清 齋藤 孝 青山 千春
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1026-I_1030, 2012

We examined fluctuation about sedimentary environment and benthic biota of the Okigamisenishi point in Inner Ariake Sea. and focused on the impact of formation of oxygen-deficient water and resuspension of fine sediments with the typhoon in Summer 2006. As a result, about the relation between oxygen-deficient water and benthos, benthos with poor mobility as Annelida, Mollusca fluctuated corresponding to change of dissolved oxygen, while Arthropod escaped from the ocean space of oxygen-deficient water. About the relation between water contet of fine sediments and benthos, decrease in water content was increased the stability of the sediments, and benthic species and population increased. Dissolved oxygen and water content are an important environmental factors of the benthic habitat.
著者
金 度源 大窪 健之 荒川 昭治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_115-I_123, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
23

日本の近代化を支えた伝統的な利水技術として代表される用水,疏水,水道といった水利環境は,国の重要な近代化遺産として保全される一方,その機能が失われることも少なくない.本研究では,既存の歴史的な水利環境を再生することで,歴史の保全と防災水利の確保を目指す.ケーススタディとして,明治期に造られ現在は老朽化や漏水などが原因となり配水が止められている「本願寺水道」を対象とした.本願寺水道の再生に向けた技術的な検討を基に,各対象地区の消防システムの運用に必要とされる水量と比較することにより,消防水利としての活用可能性を明らかとした.このケーススタディの結果をもとに,歴史的な水利環境の再生と活用を検討するためのプロセスについて整理を行った.
著者
松木 洋忠 江崎 哲郎 三谷 泰浩 池見 洋明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1-8, 2011 (Released:2011-08-19)
参考文献数
27
被引用文献数
1

河川流域の土地利用は過去の人間の働きかけの蓄積である.本論は,遠賀川の河川・流域の特性を理解するため,人為的開発が始まった古代の土地開発の変遷を把握しようとするものである.検討にあたっては,地質と地形による基本的な自然条件を整理した上で,縄文時代,弥生時代,古墳時代の各時代の最先端の土木施工技術を勘案しながら,遺跡等の分布と考古学的な研究成果に解釈を加えている.分析の結果,弥生時代の木製の鍬と鋤,古墳時代の鉄製刃先は,水田稲作の伝来以来,沖積地の開発に寄与したといえる.そして開発の対象地は,古墳時代までの土木施工技術に発達に伴って,干潟周辺の低平地から,上流の盆地や源流域に移っている.このような古代の土地開発の歴史は,今後の河川・流域管理を考える上で考慮するべき情報である.
著者
庄嶋 芳卓 秋葉 正一 加納 陽輔 井 真宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E1(舗装工学) (ISSN:21856559)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.I_89-I_95, 2012 (Released:2013-03-06)
参考文献数
11

我が国では経済発展に伴い産業副産物が多量に排出されており,それらの再利用を今まで以上に推し進め,廃棄処理をできるだけ抑制することが望まれている.例えば,非鉄金属精錬の副産物であるフェロニッケルスラグ(FNS)は,細骨材として再利用されているが,微粉末については再利用に至っていない.また,集塵ダストとして発生する微粉酸化鉄は,路床改良材として多用されているが,その性状には多くの解明すべき点がある.そこで,本研究では,FNSと酸化鉄の微粉末の再利用を目的に,それぞれに消石灰を混合し,室内試験を行い,路床改良材としての適用性について検証した.その結果,最も強度発現が期待できる混合割合を明らかにし,これをまさ土に混入した場合の路床改良材としての有効性について確認した.
著者
広瀬 望 武邊 勝道 大屋 誠 佐藤 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.60A, pp.605-612, 2014 (Released:2014-08-01)

Atmospheric corrosion of the steel surface of a bridge is largely due to salt spays generated over the ocean. The observed data indicate that the salt sprays first adhere to the steel, after which the extent of Cl− on the steel surface increases; however, the mechanism by which these processes occur has not yet been investigated. Our research objectives are to examine the relationship of atmospheric Cl− concentration with the extent of Cl− adhering to the steel surface and to clarify the effect of surface winds on the extent of Cl− adhesion. The results show that the extent of Cl− adhesion is positively correlated with atmospheric Cl− concentration and that the extent of Cl− adhesion depends on surface winds.Therefore, when estimating Cl− on a steel surface, we must consider the atmospheric Cl− concentration and the surface winds.
著者
鈴木 信行 鈴木 明人 濱田 政則
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.72-85, 2007 (Released:2007-03-20)
参考文献数
21
被引用文献数
2

建設施工にPMBOKなどの近代的マネジメント手法を適用することは有効である.本研究ではPMBOKの9つのマネジメント要素をどのように適用しているかをアンケート調査で求めた.その調査結果をもとにデザインストラクチャーマトリックス(Design Structure Matrix)を用いて建設施工マネジメントのプロセスを分析した.さらにマネジメント要素間の相互依存性をネットワークモデルと捉え,グラフ理論を用いてネットワーク特性を分析し,建設施工における効果的なマネジメント順序を提言した.その結果,従来重視されていないスコープマネジメント及びコミュニケーションマネジメントがマネジメント全体の効率化に重要であることが明らかとなった.
著者
鈴木 猛康
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.554-564, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
9

地震や豪雨等により災害が発生した際,災害対応の最前線となる市町村の庁内情報共有を支援するため,各種防災情報システムが導入されている.災害対応という危機的状況下で使われるツールであることから,防災情報システムのアプリケーションには高いユーザビリティが要求される.本論文では,筆者らが開発し,試験的に運用中である災害対応管理システム(庁内情報共有システム)について,ワークショップを通して収集したユーザーの意見を反映させ,また実際に情報入力を繰り返しながら,ユーザビリティに関する大幅な改善を行い,システムの更新を行っている.また更新システムを用いて地方自治体職員による入力評価実験を実施し,システムのユーザビリティ向上を確認するとともに,ユーザビリティ向上に対する各改善項目の相対比較について,AHP手法を適用した分析を試みている.
著者
野口 孝俊 野口 哲史 奥津 宣孝 小倉 勝利
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.567-577, 2010 (Released:2010-11-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1

東京国際空港では逼迫する航空需要に応えるため,沖合に4本目の滑走路(D滑走路)を建設する再拡張事業が進められている.D滑走路の建設工事は性能発注による設計・施工一括発注方式が採用され,維持管理を含んだ一体的な調達方式が適用された.予防保全的な考え方を導入することで,空港施設における合理的な維持管理計画の考え方を立案したので報告する.
著者
宮田 康人 松永 久宏 薮田 和哉 林 明夫 山本 民次
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_564-I_569, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
14
被引用文献数
4

塊状製鋼スラグの生物着生基盤機能の長期的検証を行うことを目的として,2002年3月に広島県因島の海域において造成した塊状製鋼スラグ潜堤材について,9年後(2011年)まで追跡調査を行った.その結果,製鋼スラグ潜堤材には,施工1年後から9年後の調査まで海藻の着生種数は,天然転石と同等もしくは同等以上であり,また時間とともに種類数が増加傾向であったこと,魚類,メガロベントス,マクロベントスが天然転石と同程度に着生したほか,絶滅危惧種として隣県の岡山県レッドデータブックに掲載されているマクロベントスも観察されるなどの知見が得られた.以上の結果から,製鋼スラグ潜堤材は,海藻着生場,底生生物生息場,および魚類の蝟集の場などとして施工から9年間にわたり機能が継続していることから,製鋼スラグ潜堤材の有用性が確認された.